パイロン
ある日突然に、地球に滅亡の危機が訪れた。
地球の公転軌道上に、巨大な物体が現れたのだ。
世界中の天文学者が、巨大な物体の正体を探る。そしてその正体が判明すると、皆が皆、口をぽかりと開けた。
それは、パイロンだった。
工事現場や駐車場に置いてある、赤くて三角形のあれだった。
なぜそんなものが公転軌道上にあるのか?
なぜ星よりも大きなそれがあるのか?
疑問はいくらでも浮かんだが、誰も答えることができなかった。
怯え、逃げ惑う人々。
しかし、どこに逃げられるというのか。
やがて恐怖から人類は一つにまとまった。
知恵を絞り、手を取り合い、この危機に立ち向かうのだと。
まずはあるだけの核兵器を宇宙船に積み、パイロンにぶつけた。
破壊はおろか、公転軌道上から動かすことさえできなかった。
パイロンをどうにかするのが無理なら、地球の方を動かしてはどうか。
科学者達は計算し、どう動かしても激しい気候変動が起きて、全ての生物が死に絶えることを明らかにした。
もう地球は諦めて、火星に避難しよう。
技術の粋を尽くし、火星への避難船が作られた。乗員は二万人。
手を取り合っていたはずの人類は、戦争を始めた。
生き延びるために人を殺して殺された。
戦争は終わらなかった。
パイロンは近づき、空を覆い尽くした。
真っ赤な空を仰ぎ、全ての人類が自分達の無力さと無能さを呪った。
地球はパイロンに衝突し、粉々に砕け散った。
それからしばらく経った頃、巨大なパイロンを、同じく巨大な右手が掴んだ。
それから地球の、言語とは異なるコミュニケーションが宇宙に響き渡る。
「おい誰だ。こんなところにパイロンを放置した奴は」




