村を出る
はーい、ここでようやく序章っぽい何かが終わります!
『序章っぽい何かは一稿目で終わったジャンw!』という突っ込みや野次は今回無視していきますので……っ!
村を出る途中で人通りがなかったので、いくつかの近くの民家に「勇者が倒れている。医者を呼んで、急いで見せろ」と声をかけて回り、誰もいない――人が隠れた村の出入り口を超えた。
出入り口の兵は、今どうしているのだろう。もしかしたらオレたちの死闘を見ていて、いち早く医者を呼んだ可能性もあるが――
「――どちらでもいいか」
そこまで考えて、そう切り捨てた。
あの勇者はたぶん生きるだろう。処置さえ間違えなければ、腕を失ったくらいで人は死なない――というのを、オレは今までの勇者から学んでいた。
父様を連れ立って、五体不満足で帰ってきた勇者は1人ないし2人はいたのだ。
すでに他人となった――というより、もともと他人の――勇者については村の人たちに任せて、オレは出入り口に近づくほどに、この村の空間からとめどなくわく思考を振り払うようにして心なしか急ぎ足で村を出た。
「……あっけない、というべきか」
村を出たこと自体は何度もある。15歳未満なら、仕事の合間に――あるいは仕事中にも――行動の自由はあるのだから。
とはいえ、研修という名目の仕事を抜け出すと、後々いい仕事にありつけなくなるからさぼる人はほとんどいないのだけど。
ともあれ、オレは何度も村の外に出たことはある――だが、そのいずれも、すぐに帰ってくるつもりだった。
夕飯まで剣を振るう。食糧確保のため、休日に獣を狩る。村にはないものを求めて町まで買い物に出る――など。いずれも数日、あるいは一日足らずで帰ってくるような『用事』や『修練』程度だ。
「……オレはもう、ここには帰ってこないんだな」
そして、しばらくは――帰る場所すらない。
「…………」
その事実をどう受け止めたものかと沈黙が降りて、そしてどうやっても受け止められないと無言になる。オレはそんな経験をしたことがないのだ――知らないうちから受け止めることなどできはしない。
たとえそれが、予想し、想像し、覚悟していたものだとしても。
……だから、そう。
「進むしかないなっ」
――オレは、進むしかない。
そのことだけに光を当てるように――そのこと以外を陰に隠すように、オレはそう声を出し、村に背を向けて歩きだす。
――さぁ、ユートという魔王の冒険を、ここから始めよう。
へへ……信じられるか?
こんなだらだらした文章で、ここまで続いて……ようやく一日分だぜ?
今後はもう少し飛び飛びで行きたいと思いますので……;;