第四編「浄霊者(じょうれいしゃ)」
この話から、連載想定の内容となりました。
■粗筋>
美晴は、黄泉返りつつある荒御霊を鎮める使命を持った巫女。乏しい霊力の限り[
を尽くして人知れず妖霊を鎮め、被害を最小限に抑えてきた。だが彼女の前に現れ
た浄雲は、荒御霊を抑えるのでなく、消滅させることによる浄霊ができる仏僧だっ
た。美晴のやり方を「霊を中途半端に苦しめる」と異を唱える浄雲は、和魂となっ
た荒御霊まで浄霊を企てる。しかし、その和魂には老婆が願い事をかけている真っ
最中であった……。
■人物>
更科美晴:冷たく無気力ない感じの美少女。
浄雲:旅の仏僧。20歳くらいの青年。
師僧:浄雲の師。顔は出ないが老人。
布教者:新興宗教の布教者。
岩神泰造:美晴の伯父。重病。
奥さん:近所の奥さん
中里:中里の伯父さん。泰造の兄。
谷原:谷原の伯父さん。退蔵の兄(長兄?)。
華村冴子:古文担当の教師。美女。
[1]
□
シャラーン… シャラーン…
2人の旅装の僧が、日差しの強い町中を歩いている。(師僧と浄雲)
日差しの強さに、背景も二人の姿も霞んでいる。
二人とも釈杖と鉢を持っている。
師僧(小声)「…什摩 どこであろうと野山には獣が棲んでおり
物の怪というものがある…」「野山が拓かれ町になってたとえ獣が
いなくなっても、物の怪や魔霊がすべてなくなるわけではない……」
□
師僧(小声)「不浄な存在となってしまった衆生にも菩提心を起こさせ
仏門に帰依させ成道の道を指し示す……これがわれら仏徒のつとめである
わかっておるな 浄雲」
浄雲(小声)「はい お師様」
□
師僧(小声)「それにしても酷い処だ…土地神がいないのか?
それとも……」
[2]
□T「浄霊者」
□ 民家の玄関先。
布教者が来ている。
布教者「あなたはですね霊の恐さをわかっていないんです」
[3]
□
奥さん「は、はあ……」
布教者「神はこの世に聖典を遣わされたのです。『めざめの会』の教祖様が
それを書物に残されました」「これを読まなければあなただけでなく一家の
皆さんまで不幸になるのですよ」
□
外を通りかかる美晴。無気力な表情で横目で見ている。
□
奥さん「すみませんうちは浄土宗、なむあみだぶつですからそういうのは
結構です」
□
布教者「昔は知りません。ですが今の仏教にどれだけの霊力が
ありますか? お寺だって金もうけのことしか考えてない。ちがいますか?」
美晴(後ろから)「あのう お話し中、すみません」
□
奥さん「あ、お稲荷さんとこの…」
美晴「回覧版です。」
奥さん「ありがとうっ! さっそく読まないと」
□
バタン
扉が閉められてしまう。外に残った布教者と美晴。
布教者「……」
美晴「……」
[4]
□
ジロリ
布教者「…なぜ 布教の邪魔をするのですか」
□
美晴(無気力に)「…回覧版を届けにきただけです」
□
布教者「あなた元気が無いですね。なにか悪い霊が憑いてるんじゃ?
私は今、そういう不幸な人の為に本当の神の教えを……」
美晴「…すみません、帰りますんで」
□ 帰る美晴。ついてくる布教者。
布教者「いいですか。今の世の中はなにかと……」「つまり間違った教えに
支配されて世界はどんどん……」「今こそ正しい神の教えにですね……」
□
常川稲荷の鳥居。
□
その前に立ってる美晴。
美晴「うちは神社の管理人なんです。だから宗教はけっこうです」
[5]
□
布教者(唾を飛ばしながら)「何を言ってるんですか! あなたのような人々
こそ本当の神の教えに目覚める必要があるのですよ。」「いいですか
わが『めざめの会』は宗教学者の高村先生にも『理想的宗教の形だ』と
評されてましたし、教祖様はローマ教皇やダライ=ラマにも認められ…」
□
美晴「……その先生とローマ教皇とダライ=ラマは、入信したんですか?」
□
布教者「え……それは……」
美晴「……」
□
布教者「とにかく! こういう淫祠邪教は人を惑わす不浄な宗教なのです!」
祠の前の狐の人形をはたいて叩き落とす。
□ 美晴、後ろから止めようとする
美晴「乱暴はやめてください!」
布教者「なにするんですか放しなさい!」
???(絶叫)「喝ーっ!!」
[6]
□
シャラーン……
釈杖を手に旅の僧(浄雲)が登場。
浄雲「あなたの宗教的情熱はよくわかりました。だけど他人の家の設備を
荒らすのは犯罪です」
□
呆然としてる美晴。
布教者「またわけのわからん奴が来た」
□
もう2人がやってくる。1人は中里。(もう1人は公証人)
中里「お取り込み中かな?」
美晴「中里の伯父さん!」
中里「神社の儀式でもやってたのかい? 泰造はどうだ?」
□
美晴「あまりよくない状態です。意識のハッキリしないときが多くなって」
□
中里「弟に会うのもこれが最後かもしれないな。」「いいか?」
美晴「はい。奥の部屋で寝ています」
家の方に去って行く中里。
[7]
□
布教者「とんだ邪魔が入ったな」
浄雲「いや天のお導きかもしれない。こういうことは人知ではわからない
ことです」
□
布教者「いいですか! 私はねこの祠に宿ってる不浄な低級霊を!」
浄雲「…この祠には霊も神もいませんよ」
□
驚く美晴。
□
浄雲(合掌)「そも、稲荷神とは」「須佐男大神の息女・
宇迦之御魂大神。しかしこの神でなくインド婆羅門教の神・
茶枳尼天を稲荷の名で祭ってることもある」
「この祠にもかつては茶枳尼天の霊が宿った痕跡がありますだが今は
何者もいない」
□
セリフでつなぐ
浄雲、キツい目で美晴を見る。
□
美晴、目を逸らす。
[8]
□
浄雲「ここにはようやく結界らしきものが残ってるに過ぎない。壊しても
百害あって一利無しです」
布教者「なんでお前にそんなことがわかるんだ!!」
□
浄雲(合掌)「一切の先入観を離れ、あるがままに観てあるがままに感じよ。
難しいことですがそれが仏の教えです」
□
美晴「あの……」
気がつく浄雲。
□
美晴「ダキニ天て何ですか? お狐様はダキニ天っていう名前なの?」
□
浄雲「茶枳尼天とは…」
ピーン
浄雲「ン!?」
[9]
□
浄雲(真剣な表情で)「死者が出る」「かなり近くだ。君の家じゃないか?」
□
ハッ
美晴「…伯父さん!」
□
タタタッ
走り去る美晴。
布教者「邪教の信徒だから罰が当たって死ぬんだ」
浄雲「あなたのとこの信徒は死なないと?」
□
布教者「もちろん死なない。永遠の命を得る」
浄雲(釈杖をささげ持ちながら)「成仏…ですか」
□
フフン!
布教者「そんな低級なものではない」「どれ私が亡者に引導を渡してこよう」
[10]
□
ジャッ
浄雲、釈杖で布教者を止める。
浄雲「まちなさい。あなたはあの家に歓迎されない。立ち去った方がいい」
布教者「お前にそんなこといわれる筋合いはない!」
□
浄雲「『不退去罪』というのを知ってますか? 人の家で帰れと言われたのに
帰らないと、刑事犯罪になるのです。勧誘とか押し売りとかね」
「あなたがそうなったら団体にも不利益では?」
□
あせる布教者。
布教者「くっ…」
□
ペッ!
唾を吐き去っていく布教者。
布教者「わけわからん!」「オマエらはみんな地獄行きだ!」
□
浄雲(早九字を切って)「臨兵闘者皆陣列在前…ウン!」
「神域の結界を唾で汚す者が神の使徒のわけが無いと彼に早く気づかせ
給へ…」
[11]
□ 家の中の一室。
顔に布を被せられてる泰造。
手前には線香立てと線香の煙。そして白木の位牌。位牌に貼られた紙は
「敬祠院保善泰道信士
俗名 岩神泰造」
□
呆然と見ている美晴。
□
制服姿で呆然と正坐している美晴。その後ろで声が行き交う。
???「稲荷社の土地の管理は美晴にという遺言があるって?」
???「未成年に不動産の管理が出来るわけないだろう! 第一岩神家じゃ
ない外戚じゃないか」
???「いやでもここは跡を継がなかったお兄さんが言うことじゃ……」
???「遺留分はどうなるんだ?」
???「なにも通夜の席で相続の話を」
???「じゃあお前は権利放棄するんだな」
???「それとこれとは話が違う」
[12]
□
無気力に眺めている美晴。その後方で言い争ってる親戚達。
谷原「そんなことより 喪主は長兄の俺がやるけど異存無いな?」
???「待てよ 美晴ちゃんじゃないんですか?」
???「子供を喪主にするわけにいかんだろ、親族の恥だ」
???「でも遺言は……」
谷原「会社の連中も来るんだぞ、俺の顔を潰す気か?」
???「それとこれとは問題が違う……」
???「で、葬儀の費用は?」
???「美晴に出させればいい、土地を相続するんなら当たり前じゃろ」
□ 線香のくゆる泰造の枕元
???「じゃあ香典も美晴に?」
谷原「美晴は高校生じゃないか。知り合いの持ってくる香典の額なんざ知れ
てる。美晴にやることはない」
「それぞれが知り合いの香典を持って帰るべきだ」
???「そんな話聞いたことないですよ兄さん!」
???「でもそれじゃあ……」
□
けんけん ごーごー
美晴(溜息+小声)「…下劣ね。」
[12]
□ 玄関口に入ってくる浄雲。
浄雲「失礼……浄雲と申します。ホトケ様が亡くなる時にこちらのお宮に
たまたまお邪魔しておりまして」「これも何かの御縁と思います
お経の一つなりと上げさせていただきたいのですが」
□
谷原「なに、真言の坊さん? うちは法華のお寺さんに頼んだからあんたは
お呼びじゃ無いよ。忙しいんだ、帰ってください」
□
谷原、浄雲に背を向け
谷原「ケッ、お布施目当ての乞食坊主が」
□
浄雲「……」
浄雲、笠を直して出て行こうとする。
□
美晴、浄雲に気がつく。
[13]
□ 稲荷祠。
転がった狐を直している浄雲。その後ろから美晴が。
美晴「お坊さん」
□
浄雲「名乗ってませんでしたね。私は浄雲。B山の学僧です」
□
美晴「私は…更科美晴」
□
浄雲「ホトケさんは美晴さんの伯父さまだそうで?」
美晴「唯一の家族で、ほとんど育ての父でした」
□
浄雲「お養父さんが亡くなったわけか」「ご親族はあの調子だしこれから
どうされる?」
□
美晴、無表情。
□
美晴、無表情のまま涙だけ出てくる。
[14]
□
浄雲「泣くなというのが無理でしょう。今は思い切り泣いた方がいい」
「でも葬儀が終ったら泣いてはいけない。伯父さんを、心残り無く送り出して
あげなさい」
□
美晴、浄雲にしがみつく。
片手で背中を撫でてやる浄雲。
□
美晴、何かを叫ぶ。(無声)
[15]
□ 夜。
鳥居の前に車が止まってる。出て行く車もある。
???「じゃあ、明日、告別式で」
???「お疲れ様でしたー」
???「やれやれ、だ」
バタン ブブゥー
□ 座布団の乱れ飛んだ座敷。
食い散らかされた跡のテーブル。 誰もいないその向こうで横たわる
故人・泰造。
□
縁側に腰掛けてる浄雲。
浄雲「伯父さんは亡くなる前に茶枳尼天の法を修したような気配がある
尋常な弔いかたで成仏できるかどうか……」
□
美晴「ダキニ天て……なんなの?」
[16]
□
後方に茶枳尼天のイメージ。
浄雲「ダキニ天とは…」「インドの伝説にあるダキーニー。人間の肝を食う
夜叉でした。しかし肝を食えば人は死んでしまう。だから食うなら、命の
尽きる人の肝だけにするようにと釈迦如来に諭され、仏法守護の神と
なったのです」
□
美晴「人の…肝…?」
□
浄雲「残念ながら成道はしていない。一度人間に転生してからでないと神は
成道できませんから」「しかし茶枳尼天は強力な力を持っていて、死後に
肝を差し出す約束をした者にはどのような願いでも叶えると言われてます。
徳川家康も茶枳尼天の力で天下をとったという話が伝わっている」
「そして茶枳尼天は白い狐に乗って現れるといいます」
□
美晴(考える)「白い狐……」
□
浄雲「美晴さんからは強い気を感じるがおそらく何らかの行を修したことが
あるのでしょう」「ダキニ天の秘法ではないようだが」
[15]
□
美晴「お父さんや伯父さんからすこし習ったわ…荒れた御霊の鎮め方を」
□
浄雲「!」「そうだったのか!」
□
浄雲「これほど悪鬼魍魎の徘徊する町で、しかも守護神もいないのに
均衡が保たれてる……その謎が解けた!」「君の働きであり
また君が元凶だったんだ」
□
美晴(不愉快そうに)「悪鬼魍魎って何?」「荒御霊はたしかに溢れているわ。
だけど荒御霊は鎮まれば和御霊……神様になるのよ」
[16]
□
浄雲「荒御霊…たしかに人が機嫌を取れば悪鬼魍魎も猛威を振るわなくは
なる。阿修羅や茶枳尼天のように善神にもなるだろう」「だが……」
□
キツく!
浄雲「一時のがれにすぎない!」「祭る人が絶えれば和御霊は再び荒御霊と
なる!」
□
美晴「どうしろというんですか」
浄雲「成仏させることです。魂が魂のままで他者に害を与える…それは自らも
傷つけることだとなんとかして荒御霊に伝えて」
□
浄雲(合掌)「然れば魑魅魍魎といえども涅槃への道が開かれ仏とならん」
□
美晴(驚愕+恐怖)「つまり……消すって言うの!? 荒御霊を!!」
[17]
□
浄雲「消えるとかなくなるとかそういうことじゃない
一即多・多即一・色即是空
どう変わろうと世界の一部です。形を変えてまた現れる、そのために
今の形をやめる……」
□
美晴「今の形をやめる……死ぬってことじゃない、それ!!」
□
浄雲「形ある物は壊れる。諸行無常 諸法皆空、死もまた変化の一過程に
過ぎない」
□
美晴「御霊は……御霊は人間より古くからこの地に住んでいた」「後から来た
人間が、都合で追い出したり消したりなんてそんな傲慢なことを!」
「侵略者が正しくて侵略された者が消えるべきだなんて、そんなことは
……有り得ない!」
□
浄雲「違うんだ美晴さん私が言ってるのは…」
美晴「帰って…帰ってください」
□
浄雲、後ろ髪を引かれつつ立ち上がる。
[18]
□
下を向いて拳を握り締めている美晴。
夜の闇の中に去って行く浄雲。
□
森の薮が風でかすかに動く。
□
翌日。道端の石碑。
石碑に読経している師僧と浄雲。
石碑「馬頭観音」(*)
師僧(杖と数珠を持ち片手合掌)
「観自在菩薩
行深 般若波羅蜜多時
照見五蘊皆空 度一切苦厄
舎利子 色不異空 空不異色
色即是空 空即是色…」
(欄外注:馬などの動物が路上で死んだ場所に建てられる石碑。なお人間が
路上で死んだ時には地蔵が置かれる。)
□
師僧(合掌したまま)「般若波羅蜜多の心を理解することは生きてる人間にさえ
かなり困難だ」「まして人間でさえない存在に読経による同調だけでそれを
伝えることは…」
浄雲「お師様……」
□
師僧(振り向いて)「わしはもう行かねばならん。しかしここは捨ておける場所では
ない。すでに結界も壊れておる」「浄雲 お前はしばらくこのあたりに残れ。
何が出来るかはわからんが……」
[19]
□
緊張した表情で
浄雲「……」「…はい」
□ (場面転換)美晴の家。
泰造の葬儀の最中。僧侶が読経している(後ろ姿)。
読経(ページの最後まで飛び飛びに)
「妙法蓮華経如来寿量品偈~」
「自我得仏来 所教諸劫数
……………」
□
弔問客の中に喪服を着た華村が親戚にお辞儀をしている。
読経の声
「無量百千万 億載阿僧祇
……………」
□
美晴、制服姿で親族の中に座りお辞儀している。
読経の声
「常説法教化 無数憶衆生
……………」
[22]
□ 焼香する華村。(アップ)
読経の声
「令入於仏道 爾来無量劫
……………」
□
読経の吹き出しでつなぐ
冷ややかに横目で見ている美晴。(アップ)
□ (場面転換)白い紙で封印された稲荷祠。
□
稲荷祠の前に立つ浄雲。ふと見上げて。
□
浄雲「……なるほど」
[21]
□
稲荷祠の真後ろ、木々の隙間から見える丘の上の蒙木台高校。
□
森の中、薮の蔭に狐の目のようなものが光る。
□ たそがれ時。町中を歩く布教者。
布教者「くそ面白くない!」
□
布教者「この町の奴らはろくに話も聞こうとしない」「みんなまとめて地獄に
落ちろ!」
ぶつぶつ……
□
常川稲荷の鳥居の前に来てふと気がつく布教者。
□
鳥居のそばに、割れかけてる石の狐。
[22]
□
布教者「こんな偶像をありがたがってるからダメなんだオマエらは!」
石の狐を思い切り蹴り飛ばす。
ガッ! バランスを崩す石像。
□
ドン! 倒れて割れる石像。
□
気持ちよさそうに、馬鹿にした笑い。
布教者「ふん!」
□ 立ち去ろうとする布教者。
その後から包むように襲い掛かる「気」。
シャァァァァ……
[23]
□
気になって振り向く布教者。
□
とたんに恐怖で顔が歪む。(アップ)
[24]
□
巨大な白い狐を連想させる気の塊が布教者に襲い掛かる。
布教者(悲鳴)「うわああああああっ!」
□
悲鳴でつなぐ。
狐状の気の塊、布教者を押し倒して圧し掛かる。
□
大きく口を開ける気の塊。
□
恐怖に顔を歪ませる布教者。
□
布教者「な、なんだ! なんだこれは!!」
[25]
□
気の塊に今にも食いつかれそうになって必死に抵抗してる布教者。
後ろの闇の中から近づいてくる、お札をかかげた美晴が。
美晴「あなたは結界を壊して荒御霊を目覚めさせてしまった」
「怒り狂った御霊を鎮めるには贄が必要です。それも生きた贄が」
布教者「おっ おまえは邪教の信徒!」
□
布教者「な、なんとかしろ! これをどけろ! 早く!」
□
美晴「私にそんな力はありません」「あなたの神様に助けを求めたら
いかがですか?」
□
グワァァァァッ
いまにも食いつこうとする狐状の気の塊。
布教者(絶叫)「助けてくれぇぇぇっ!」
[26]
□
美晴と別方向に現れた浄雲。
浄雲(早九字を切って)「臨兵闘者皆陣列在前!!」
驚く美晴。気の塊は動きが止まる。
□
浄雲(絶叫)「喝ーーーっ!」
□
グググ…ゥゥ
うな垂れるようにあとじさる気の塊。
□
美晴「何をするよ浄雲!」
[27]
□
浄雲(汗を吹き出しながら)「心霊に悪い業を重ねさせてはいけない!」
「これ以上の罪はやめさせるんだ、美晴さん!」
□
驚いて呆然としてる美晴。
□
浄雲「折伏! 南無不動明王、ノウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カーン!」
シャァァァァ……
気の塊、苦しんでいるかのように身を捩る。
□
シャァァァ…
消えて行く、気の塊。
□
ァァァ…
消えて行く、気の塊。
[28]
□
一目散に逃げ去る布教者。
布教者「ひぃぃぃ!!」
□
美晴「……消したの!?」
□
浄雲「いや。いっときねぐらに戻ってもらっただけだ」「アレに悟りを伝えるには
私は未熟……だがいずれやらねばなりません」「力を貸してください、美晴さん」
□
浄雲に背を向け目をつぶる美晴。
美晴「…下劣ね」
□
美晴「あなたとは気が合いそうにないわ!!」
怒りの表情で立ち去る美晴と、後ろからそれを見送るしかない浄雲。
<つづく>