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第三編「祟り祠(たたりほこら)」

■粗筋>

 博昭は、不可解な少女・美晴のことが気になる。博昭のアタックにペースを崩し

た美晴だったが、ある日、博昭は荒御霊の復讐を受けることに……。


■人物>

更科美晴:冷たくて無気力な感じの美少女。

真里谷博昭:美晴に興味を持つ男。

華村冴子:古文担当の教師。美女。実は

  美晴に封じられてる妖霊(荒御霊)。

岩神泰道:美晴の養父。

男子A:博昭の級友。太目。

男子B:博昭の級友。長髪。

男子C:博昭の級友。小柄。


 

[1]

T「祟り祠」


[2]

  シャッ!

  御幣が振られる。

  道端の小さな祠(京都の路地にによくあるような)

  美晴、道端の祠に祝詞を上げている。

  後ろから全景

美晴(御幣を捧げ目をつぶり)「高天原に御おやすめ大神(おほかみ) 数多(あまた)の神たちを

 (つど)えて永遠(とことわ)に神つまります」「神ろぎ神ろみの(みこと)もちて

 (かむ)いざなぎの命 筑紫(つくし)日向(ひむか)の…………………」

  祝詞を唱えていなければただの女子高生なのだが……。

美晴「神ながら(たま)()えませ!」

  柏手。パン! パン!

  祠の前にお供え物が。酒徳利2つ、米、塩。


[3]

 離れたところをガヤガヤと通りがかる

  男子高校生たち4人。その中に博昭も。

  博昭、美晴に気がつく。

□ 

博昭「なんだ、あれ?」

男子A「ん?」「ああ 2-Eの更科じゃないか」

  祠の前に立ち尽くす美晴の後ろ姿。

博昭の声「なにやってんのあんなとこで?」

誰かの声「変わった奴なんだよあいつ。ユーレーが見えるって噂だぜ」

 「霊能少女かあ? うっさんくせ~」

  凝視する博昭。

誰かの声「変な奴でなけりゃルックスは悪くないんだけどな~」

 「なんだオマエああいう暗いのが好み?」

  ふきだしで繋ぐ。

  博昭から見た美晴の後ろ姿。

誰かの声「いや、なんつうかこう、背筋ゾクッとくるようなところがあるじゃん」

 「お前は 背筋じゃなくて下の方がゾクッとしてんじゃねえの?」

 「…きみ、下劣ね。」


[4]

□ 学校。

看板「蒙木台高校」


  廊下を歩いてる博昭、窓の外を見てふと気がつく。

  花壇の側で、下を見て立ってる美晴。

  博昭、窓から顔を出し

博昭「更科さん…だっけ? 何やってんの?」

  美晴、ふりむき、悲しげな目で博昭を見つめ返す。


[5]

  窓から外へ出る博昭。

博昭「何かあんの そこ?」

美晴「死んでるの」

博昭「え?」

  雀の死骸。虫がたかってる。

博昭「うわ……ひでえ」「お墓つくってやるのか? 手伝おうか?」

美晴「自然死は摂理……繕っても穢れは穢れ。埋葬したところでただの

 自己満足だわ」

博昭(驚いて)「…女の子らしくないこと言うね、更科さん」「かわいそうとか

 思わないの?」

  美晴、横目で博昭を見て

美晴「…………」「もっとかわいそうなものがいろいろある」


[6]

□ 背を向けて去る美晴。

□ 下を見ながら

博昭「なんなんだあいつは」

  虫がたかった雀の死骸。

博昭の声「けっ!」

  雀の死骸を踏み潰す博昭の足。


□ (場面転換)教室。

  休み時間の教室。

誰かの声「そうそう あそこの女学院のコでさ」

 「ぬかせ」

  はっはっは


[7]

博昭「しかし……寄ると集まると女の話だな俺達って」

男子B「しょうがねえじゃん、年頃なんだから」

  はははは……

  考え込んでる博昭。

誰か(博昭の後ろで)「その割に 今、つきあってる相手がいなかったりして」

  ははは……

誰か「この年で1人の女に縛られたくねえよ」

  ははは……

男子A「なあ、真里谷!」

博昭「え? あ ごめん、聞いてなかった」

男子Bの声「どうしたんだよおまえ、このごろ少し変だぞ?」

博昭の声「いや なんでもねえよ、ちょっと調子悪いだけだ」

  扉の外から悲しそうな顔で覗いてる美晴。


[8]

  廊下。

誰かの声「そうかあ? あやしいぞ」

  ははははは……

  キーンコーンカーンコーン……と音が響き、

  教室の外では廊下できびすをかえす制服のスカート。(美晴)


□ 教室。

華村の授業。

朗読「二星(にせい) 偶々(たまたま)逢えり……」

  窓から外を見て気がつく博昭。

  グランドでは体育の授業中。ランニング

  してる中に体操着姿の美晴も。

博昭(心の声)「あれで変人でなければなあ……」

  へたばってしまってる美晴。

  どんどん抜いて行くクラスメート。

博昭の心の声「あ 体力ない」

  くすっ


□キーンコーン……


[9]

  水で顔を洗ってる美晴。

  美晴の後ろから

博昭「よっ 更科さん」

  気がつく美晴。

  タオルで顔を拭く美晴

美晴「……気安く呼ばないで」

博昭「じゃあ、美晴ちゃんて呼ぼうか?」

  タオルの影で目を見開いて赤面してる美晴。

  タタタタタ……

  走り去っていく美晴

博昭(心の声)「お 脈アリ♪」


[10]

  教室で席についてる美晴。

  ひょこっと顔を出す博昭。

博昭「更科さんっ」

  校庭、大木の側に立ってる美晴。

博昭「なにやってんの?」

  廊下でゴミバコを運んでる美晴

博昭「手伝おうか、美晴ちゃん?」

美晴(不快そうに)「…………つきまとわないで!」

博昭「怒った顔もまたいいね」

  驚く美晴。

  ぷいっとして去って行く美晴。


[11]

□ 教室

男子B「真里谷~ おまえこのごろ更科をおっかけてるんだって?」

男子A「なんだそれ、聞いてねえぞそんな話」

博昭「まあまあ……ちょっと興味があってさ」

男子C「まあたしかに、俺達がつきあった女にああいうタイプはいなかった

 けどさ」

男子A「にしてもゲテモノ~」

博昭「どうだ、俺が更科をオトせるかどうか賭けねえ?」

男子A「乗った!」

男子B「よし俺も失敗に五百円!」

誰か「セコいなお前(汗)」


[12]

□ 町中。帰宅途中の美晴。

  うしろに博昭。

美晴(振り向いて冷ややかに)「ついてこないでよ」

博昭(ニッコリ)「たまたま行く方向が同じなだけだよ」

美晴(背を向け)「どこへ行くの?」

博昭「さあ? 足の向くまま気の向くまま……」

  日暮れ。


[13]

  木々に囲まれた木製の鳥居がいくつか。鳥居の上に「常川稲荷」と汚れた

  看板。手前には壊れかけたた狐の石像。

  美晴の後について鳥居をくぐる博昭。側に稲荷神の祠がある。

  祠には小さな狐の人形が並べられてる。

博昭「稲荷神社?」

  パン…パン…

  稲荷祠に柏手を打ってる美晴。後ろで見ている博昭。

  祠を離れる美晴。

博昭「もしかして……更科ん家ってお稲荷さんの神主さん?」

美晴(振り向き淋しそうな顔で)「さあ?」「使い魔のお狐さんかもね」


[14]

  50年くらい経ってるような建物の前。

  扉は曇りガラスの引き戸。

  木の塀は崩れかかって、庭は草ぼうぼう。

美晴「ここが私の家。お察しの通り稲荷(ほこら)の管理人よ」

 「これで満足でしょう帰ってよ」

博昭「今度 遊びに来てもいい?」

美晴「…………」「度を過ぎた好奇心は身を滅ぼすのよ」

博昭「いや好奇心とかじゃなくて更科さんと友達に……」

  ピシャッ!

  美晴、扉を閉じてしまう。


[15]

  溜息をついて微笑する博昭

博昭「じゃあ また明日…」

  振り返る直前に気がつく博昭

  表札に「岩神」の文字。

  驚いてる博昭。

□ 

  玄関の中。

  開いている小窓の外で博昭が帰っていく。

  そちらに背を向けて、下を向いて困惑している美晴。

  フゥッ

  溜息を吐く美晴の横顔。


[16]

□ 暗い部屋に正坐してる美晴。

美晴「伯父さま、ただいま帰りました」

  布団が敷いてあるが、暗くてよく見えない。

泰道「美晴ちゃんか」「どうだ 学校の様子は?」

美晴(悲しそうに)「……だんだん悪くなっていきます」「学校に限らず

 このあたりに荒御霊(あらみたま)が多すぎます」

美晴「せめて 先生の姿をとってる荒御霊をこの蒙木台から外へ出さない

 だけで私には精一杯で……」

泰道「そうか……」「人の心が荒れれば御霊も荒れる……しかたないのかな」

  ゴホッゴホッ

  バブルアウト


[17]

□ 教室。

□ 右を見てる美晴。

□ 左を見てる美晴。

□ 通りすがりの華村。

華村「どうしたの更科さん?」

美晴「華村先生……! いえなんでも」

華村「まるで誰かを捜してるみたいだったけど?」

美晴(顔を赤らめ目を逸らす)「……」


[18]

華村「ところで……そろそろ季節が変わるわね」

美晴「……」「贄をお求めですか。でもいなくなっても気にされない人が

 今みつかりません」

華村(にっこり)「うふふ……私は別にこだわらなくてよ? たとえば……

 2-Bの真里谷くんなんかどうかしら」「真里谷博昭くん。」

  ビクッ!!

  表情がこわばる美晴。

華村「うふふ……あなた次第よね」

  去っていく華村。

  拳を握って見送ってる美晴。


[19]

  トイレの前を歩く美晴の足。

声「この2・3日、どうしたん? 更科は諦めたの?」

  おどろく美晴。

  男子トイレ。博昭と男子A、B。

博昭「へへへ 手だよ 手! 側にいるのが当たり前になっちゃったころ、

 急に離れられると今度は物足りなくて淋しく感じるものなんだ」

男子B「たしかアカネや千沙ちゃんもその手でオトしたんだよなお前」

  ははははは…

博昭「でもふられたじゃん」

男子A「何言ってんだよ、飽きて向こうから別れるようにしむけたくせに」


[20]

□ 廊下。

博昭の声「それはそれとして今度は賭け金ごまかすなよ?」

誰かの声「わかってるよお前が更科をオトせたらちゃんと払うって」

  ははははは……

  立ち尽くしてる美晴の足。


□ (場面転換)雑草に囲まれたちいさな祠の前。

  美晴に後ろから声を掛ける博昭。

博昭「更科さんっ 久しぶりなにやってんの?」


[21]

美晴(ちらっと見るだけ)「…………」

博昭「拝んでたわけ? 更科さんってやっぱ宗教家?」

美晴「……あっちへ行ってよ」

博昭「熱心だね。恋愛運でも祈ってたの?」

  去り際に

美晴「あなたたちみんな色情霊にでも憑かれてるんじゃないの?」

 「……下劣ね。」

  フキダシで繋ぐ。

  去ろうとする美晴。

博昭「ちぇっ!」

  ガツッ!  博昭、祠を蹴飛ばす。


[22]

  無表情のまま目だけ驚愕してる美晴。

  倒れた祠。

美晴(汗)「な……なんてこと!」

博昭「え?」

美晴「自分が何をやったかわかってるの?」

博昭「罰が当たるって? 迷信だよ迷信」「こんな小さな祠に神様なんかいねえっ

 て。せいぜい低級霊さ」

美晴「霊に低級も高級もない! この祠がここにあるのは……!!」

  ドロドロドロドロ……


[23]

  ザーッ!

  いきなり降り出す雨。驚く博昭と立ち尽くす美晴。

博昭「うわっ!?」

  ビシャアッ!

  いなづまの光に雨に濡れながら

美晴「結界が壊れて荒御霊(あらみたま)が解き放たれた…もうどうしょうもないわ

 贄が無ければおさまらない……」

  雨を避けようとしながら

博昭「え?」

  バシャ……バシャ……

  去ってゆく美晴。

  呆然としてる博昭。


□(場面転換)雨の中の常川稲荷。

  ザーーー

  ザーーー


[24]

  ザーー・・・

  稲荷の祠の前で雨に濡れてる美晴の後姿。

  頭からぐしょ濡れの美晴。

  博昭の笑顔が浮かぶ

博昭(回想)「更科さんと友達に……」

  沈黙している稲荷祠。雨に濡れてる小さな狐の人形。

美晴「『狐は鼠を追い払って大切な穀物を守るだから稲荷神の使いと

 された』……和御霊。」「でも西洋では狐は家畜を殺す害獣……

 悪魔 つまり荒御霊」

  濡れた地面に、膝をついてぺたんと座り込んで、うな垂れてる美晴。

美晴「私は……いつまで何も知らない人たちを贄に捧げ続けなければ

 ならないんですか!」「荒御霊はどうしたらみんな和御霊になって

 くれるんですか!?」

  髪から垂れる雨しずく。

美晴「いつ……友達を作っていい私に……なれるんですか」

 「教えてください……お狐様」


[25]

  ザァァァァァ・・・・・

  座り込んだ美晴と沈黙する祠の上から

  降り続けてる雨。

  沈黙してる狐の人形。

  雨の降り続ける森。

  雨の降る町中。


□ (場面転換)博昭の部屋。

博昭「う~、濡れた濡れた。いきなり豪雨ってなんだよあったく。」

  半裸で、タオルを使っている。

  ぴんぽ~ん


[26]

□ 玄関

博昭「はい……え!?」

  玄関の前にに傘を持って立ってたのは華村。

  ザーーーー

博昭「華村先生!? なんで……」

華村(無気味に笑い舌なめずり)「うふふ……」

博昭「?」

  ビシャァァァッ!

  落雷とともにいきなり溶けてゲル状の物体となる華村。

博昭の声「!!」


[27]

  ゲルに飲み込まれていく博昭。

博昭「なんだ! なんだこれはあああっ!?」


  雨の中、傘もささずに遠くから見ている美晴の姿が。

博昭「更科! 更科! 助けてくれぇ!」

  しかし飲み込まれていく博昭。

  うわああああああ……

  どんどん飲み込まれて行く博昭。


[28]

  ゲルの中に浮き出る華村の頭部。

華村「更科さん、あなたのものをとっちゃったかしら? ふふふ……」

  雨に濡れて怒りの表情の美晴。

華村(またゲルに溶けていきながら)「あらまあ……嫉妬してるのね

 あなた……ふふふふふふ」

  雨か涙か、美晴の頬に流れるもの。

美晴「…下劣ね。」

  美晴は歯を食いしばり、雨雫を払うような手つきでお札を額の前に掲げる。



 <終>

 

 当時『河童沼』にいただいた批評、「もっとヒロインの心理を描くべき」「設定がよくわからなくて不親切だ、ヒロインの設定を説明しろ」他いったいくつかの批判に対応して書いた話でした。

 これを掲載した後、「これはシリーズ物ではなく連載物にしないとダメ。ヒロインにライバルも登場させないといけない。また、主人公が毎回変わるのもダメ、美晴自体を主人公にすべき。」というような批判もあり、それに従ってこの次の『浄霊者』からは美晴が主人公の連続物として書かきました。

 ……そうしたら雰囲気が変わってしまい、「完成度が落ちた」とも言われましたが、もともと苦手ジャンルを無理な制約で書いててそんなに何もかも完璧にできる力があるなら、とっくにプロで活躍しとったろうし。(TT)

 では次回もよろしくおねがいします。


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