第二シリーズ「破結界(はけっかい)」
■解説>
某氏のリクエストにお応えし、新シリーズ第二弾です。
新シリーズは旧シリーズと同じ舞台・同じ人物の物語で、いちおう通して読んでいることを前提に書かれていますが、時間の流れ等は必ずしも旧シリーズのエピソード順に即していません。同時進行だけど別の一話完結物という前提でお読み下さい。
■粗筋>
■人物>
美晴:更科美晴。冷たく無気力な美少女。
華村:華村冴子。実はこの地に昔からいた荒御霊。
拓則:田鎖拓則。バスケ部所属。
早苗:坪井早苗。自称霊能少女。
隆昌:バスケ部員。
梨奈:クラスメート
浄雲:旅の青年僧。美晴と対立しつつも惹かれあっている。
[1]
□
ザー…
雨が降っている。
□
ザァァァー…
雨に濡れる学校。と体育館。
□
トンッ
バスケットボールがバウンド。
□
ピッ
トスッ
二列に並び、パスの練習をしてるバスケ部員たち。
□
キーン・コーン……
声「本日はこれまで!」
一斉に声「ありがとーございましたっ」
[2]
□
T「破結界」
□
ザァァァァ……
外に降りしきる雨。
□
男子更衣室の札。
[3]
□ 更衣室。
拓則「あ、しまった」
隆昌「どうした、田鎖?」
□
拓則「リストバンド、体育倉庫に置いてきちゃった」「ちょっととってくらあ」
隆昌「おう」
□
ガラー…ン
誰もいない、明りも消えた体育館。
□
ザーーー
窓の外は雨。
拓則「誰もいない体育館て、いつ来ても気持ち悪いよな……」
□
拓則、電灯のスイッチをいじるが…。
拓則「ゲッ! 元スイッチから切ってある」
□
ガラ…ガラッ
体育倉庫の扉を開く。
拓則の声「しょうがねえな…」
[4]
□ 体育倉庫の中。
驚愕する拓則。
真っ暗な倉庫の奥、びしょ濡れの高校生らしきシルエットがこちらを
振り向く。
□
うわあぁあぁあ!
悲鳴が体育館に響く。
□ 進路指導室。
□
腕を組んで座ってる華村。
対面してるのは美晴。
美晴「で……」
[5]
□
美晴(無気力に)「なんの用でしょう? 私は指導室へ呼び出されるような事
した憶えは何もありませんが」
□
華村(すこしイライラ)「私があなたに用といえば決まっているでしょう?」
□
美晴「昨日、真里谷くんを行方不明にしたばかりでもう次の贄をお求め
ですか?」
華村(気がついたように)「あ、それはそれとして」
□
華村「このごろ、生徒に流れてる噂を聞いてない? 学校に幽霊が出る
とかいう」
□
美晴「聞いてます」
華村「だったら!」
[5]
□
華村(いらいら)「この学校に余計なノラ御霊がまた入り込んでるのよ?」
「追っ払うなり鎮めるなりするのがあなたの役目でしょ」
□
美晴「そんな義務を負った憶えはありませんが……」
華村「とにかく! ここに御霊は1体居れば充分なの!」「早いとこ
なんとかしなさい」
□
美晴(溜息)「……はい」
□
ザァー……
降り続く雨。
□
雨の中、路傍の地蔵に、笠を着けた浄雲
が経を上げている。
浄雲「遠離一切転倒夢想 究境涅槃三世諸仏
依般若波羅蜜多…」
[6]
□
美晴、傘を差し遠方から無表情にそれを見ている。
□
ジャラ…
美晴に気づく浄雲、数珠を手に。
浄雲「…美晴さん?」
□
美晴、力無い目で見ているだけ。
□
浄雲、疑問顔。
浄雲「何か?」
□
美晴(視線を逸らして)「…別に」
[7]
□
ザーーー
背を向ける美晴を、浄雲は呆然と立ち尽くしながら見送る。
□
雨に濡れる路傍の小さな古い石碑。文字はすでに摩滅して読めない。
□ 同じく祠。
□ 同じく露座の地蔵。
□ 壊れた祠。
□ 美晴、傘を差して家路をたどっている。
モノローグ「蒙木台を囲んでいた結界の数々……そのほとんどがもう
用を成していない」「結界の代わりに御霊を慰めるのは人間の生き贄…」
□
ザーーー
傘を差しながら天を仰ぐ美晴。
□
ザーーー…
モノローグ「そして贄となった魂もまた荒御霊となり……よその荒御霊も
呼んできてしまうのかもしれない」「浄雲の言った通りここは、町ごと
穢れているのかもしれない……」
美晴「…下劣ね」
□ (時間経過)学校。
ザァァァ…
雨は降り続いている。
キーンコーン
カーンコーン…
[8]
□ 体育倉庫
バスケ部員3~4人と早苗がいる。きょろきょろしてる様子。
早苗「ふーん…」
□
早苗「霊は……とくにいないようね。」
拓則の声「そんな馬鹿な…」
□
早苗「私の霊感を疑うの?」
拓則「いや、そんなことはないけど…」
□
隆昌「田鎖~。やっぱお前、何かを見間違えたんだよ」
拓則「いや! 本当に見たんだってば、ここで!」
[9]
□
早苗「地縛霊ならともかく浮遊霊だったら移動してしまうわ」
「でもここがスポットだとすればまた来るでしょう。それまでは大丈夫よ」
□
早苗「念のため結界を張っておきましょうか」
早苗、みんなが見守る中で、何やら書き付けた紙を壁のところどころに
貼っていく。
□ 廊下
美晴、一行とすれ違う。
拓則「いや~、クラスに坪井さんみたいな霊能少女がいるって心強いな」
早苗「このくらいはお安い御用よ」
□
早苗の背中あたりに黒い空気が渦巻く。
□
驚いて目を見開く美晴。
□ 校外。
ザァァァ
まだ雨が降っている。
□ 体育倉庫。
壁に張られた紙片。
[10]
□
ゴゴゴゴ・・・
床からせりあがってくる、白くてワケのわからない霊体。
□ (場面転換)音楽室。
□
梨奈など女子2~3人をつれて早苗が。
早苗「いかにも出そうな雰囲気のところね」
□
早苗「いいわ、もう出ないよう結界を作っておくから」
梨奈「ありがとう早苗!」
[11]
□
ガラ
扉を開けて入って来たのは華村。
華村「何をやってるの? 吹奏楽部以外の人は音楽室の使用に届けが
必要なはずよ」
梨奈「華村先生!」
□
梨奈「ここに霊が出るって噂だから、坪井さんにおまじないを・・・」
頭を抱える華村。
華村「あんたたち、まだお化けを信じるような歳?」
□
早苗「華村先生…霊の世界はあるんです」
華村「あなたも!」「非科学的なこといつまでも言ってるとろくなコト無いわよ」
□
華村、みんなを追い出す。
華村「さ、ここはもう鍵を締めるから」
梨奈「あン!」
□
華村、ふと何かに気づく。
□
音楽室の隅の壁に、早苗の貼った護符が。
[12]
□
ビリッ!
華村、舌なめずりしつつそれを破り取る。
□ 教室。
ザァァァ
雨の中、美晴が窓辺に立つ。
□
無表情で窓の外を見下ろしている美晴。
美晴「・・・・・。」
□
早苗たちが教室に入ってきたことに、美晴は気づいた。
梨奈「先生って なんにもわかってないのよね!」
□
梨奈「なにか問題が起こったら華村先生のせいなんだから!」
[13]
□
早苗、席に座るとまた紙片に何かを書きはじめる。
早苗「なに…あとでこっそり貼っとけばいいわ」
梨奈「おねがいね 早苗」
□
美晴、早苗の後ろから…
美晴「坪井さん。そのお札は…」
早苗(書きながら、ふりむきもせず)「ん? 悪霊除けの護符よ」
□
美晴の冷たい笑みが浮かんだ口元。
美晴「それ、やめたほうがいいわ」「霊に下手に干渉するとそのしわよせは
自分にかかってくるわ。人間と同じで」
□
少女A「うっさいわね! あんたに何がわかるのよ!!」
梨奈「そうよ 素人は口出しするんじゃないわよ!」
早苗(書きながら、ふりむきもせず)「まあまあ」
□
早苗(護符を確かめつつ)「ひとは目に見えないものはなかなか信じないのよ。
しかたないわ」
梨奈、美晴に向かって顔をしかめ舌を出す。
□ (場面転換)
ガラ
拓則「しつれーしまーす」
[14]
□ そこは教員室。
デスクには華村が。
拓則「華村先生、なんか用ですか?」
□
華村、向き直り
華村「幽霊の噂の出所を調べてみたの」「田鎖君、あなたも元凶の一人みたい
ね」
□
拓則「俺だけじゃ無いですよ。びしょ濡れの男の幽霊が出るって噂はほかに
も…」
華村の声「おだまりなさいッ!」
□
華村「そんなくだらないデマで生徒たちが動揺してるわ」「あんたたちは楽しいん
でしょうけれど、大勢に迷惑がかかるからやめてくれないかしら?」
拓則「いや、俺は本当に……」
□
華村「本当にこの学校に幽霊がいるって言うなら、私の前につれてきなさい」
「証明できない嘘を主張するのはガキのすることよ?」
[15]
□
拳がきつく握り締められる
拓則の声「で、でもっ! 俺は本当に…」
□
口惜しそうな表情で下を見る拓則。
拓則「本当にッ……!」
□
ふ・・・
華村、なぜか冷笑を浮かべる。
□
美晴がプリントの束を運んでちょうど
そこへやって来た。
美晴「無茶なことを言いますね、華村先生」
□
美晴、机にプリントを置きながら
美晴(冷静に)「仮に校内を餓えたライオンがうろついてたとして。それを
教員室までつれてくることできる人なんていますか?」
拓則「更科…」
□
美晴(力無い目つきで目を合わせないまま)「先生の理屈っていつもいつも
詭弁が多すぎです」「生徒はしょせん子供って馬鹿にしてるんじゃないで
すか?」
[16]
□
華村(ムカ)「そこまで言うのなら出たというところへ連れてって貰いましょう
か」「更科さん、あなたも一緒に来るのよ」
□
美晴「・・・・・・。」
無表情のまま横目で見る。
□ (場面転換)体育倉庫前。
華村の声「え……ここ?」
拓則の声「はい」
□
華村、ちょっと焦ってる。
華村「そ、そう…ここなの」
美晴、華村を横目で見ている。
□
美晴「・・・・・。」
美晴、力なく口を開けて見上げる。
美晴「……なるほど」
[17]
□
拓則「え?」
美晴(華村に)「どうします、先生? 中に入ってみますか?」
□
華村「ああ、私、大事な用事を思い出したわ」「更科さん、私の代わりに
幽霊の出た状況を田鎖君から聞いといて」
□
ツカツカ…
華村、虚勢を張るかのように立ち去る。見送る美晴たち。
美晴「・・・・・。」
□
美晴(気がついたように)「じゃ、入ってみる?」
拓則、肯く。
□ 体育倉庫の中。
□ ちらり、と横目の美晴。
□ 早苗の護符。
[18]
□
美晴(後ろ姿)「ひどい空気ね…」
美晴の後ろから迫る影。
□
ダンッ!
拓則、いきなり後ろから美晴に襲い掛か
り、抱き着てそのまま壁に押し付ける。
美晴(驚)「!!?」
□
ハァッ ハァッ ハァッ
拓則、目が正気でなくなってる。
□
美晴「田鎖君? どうしたの!」
[19]
□
拓則、美晴に顔を近づけてくる。
拓則「わ、わからない…!」「だけど…更科、オ、オ、オレ…!」
美晴は逃れようとするが、両腕を上から抱えられ動けない。
□
拓則の両手が美晴の両胸をわし掴み。
美晴「やめて…田鎖君、やめてっ!」
□
拓則、美晴の耳に舌を…。
美晴(目をつぶって歯を食いしばる)「~~~っ!!」
□
ガキッ!
美晴のカカトが拓則の足の甲を思い切り踏ん付ける。
□
ガンッ!
美晴、後頭部で拓則の鼻面を直撃。
拓則「うっ!」
□
拓則のいましめを離れ、怒った表情で美晴が振り向く。
美晴「下劣ね!」「悪ふざけはいいかげんに……」
[20]
□
鼻血を抑えてうずくまってる拓則の後ろに、わけのわからない
ぐちゃぐちゃの霊体が。
美晴「!!」
□
バッ
慌ててお札を構える美晴。
□
霊体、床に吸い込まれるように消えて行く。
□
更に消えて行く。
美晴の声「!?」
[20]
□
美晴「どういうこと?」「…………まさか!」
□ 教員室。
ハッ!
華村、机に向かっていたが、ふと気がつく。
□
入り口に、無表情でたたずんでいる
華村「……さ、更科さん?」
□
美晴(無表情)「華村先生……食りましたね?」
□ 体育倉庫。
拓則、マットの上に倒れていたが、はっと気づいて目覚める。
□
入り口に立つ美晴。
拓則「さ、更科!?」
美晴「田鎖君、あなたはもう魅入られてる」
[21]
□
美晴「ここには一体だけ、できたての荒御霊がいた」「だけど、坪井さんが
半端な結界を作ったから外からどんどん余計な霊が入ってきて…
融合してしまった」
美晴、なぜか冷たく微笑している。
□
拓則「な、何の話だ?」
美晴「霊の話をする人のところに霊は集まってくる……あなた、ちょっと
お喋りがすぎたようね」
□
美晴「荒御霊を和御霊にするには日数がかかるわ……」
お札を持った美晴。
美晴「田鎖君にも手伝ってもらうわよ?」
美晴の後ろに渦巻くオーラ。
□
ゴゴゴゴゴ……
霊体が床からせり出してくる。
拓則「!!」
美晴「神ながら霊ち……」
[22]
□
ビシャァァァッ!
美晴「!!?」
美晴の後ろから、いきなり飛び散ったゲル状の物体。
□
グワワワワッ!
床からせり出した霊体を、ゲル状の物体が取り囲んでいく。
[23]
□
拓則「なんだっ!?」
□
グギャァァァァッ!
霊体をゲルがどんどん取り込んでしまう。
□
拓則「こ、これは一体……!?」
美晴も驚いている。
[24]
□
ビチャッ ズルッ…
体育倉庫に溢れたゲル。
□
その中から現れる華村の顔。
華村の顔「何日もかけるなんてまどろっこしい…ノラ御霊はこうやって
取り込んでしまえば数分で終るのよ」
[25]
□
拓則「は、華村先生!?」
美晴「中途半端に人を食べて荒御霊を残した後始末ですか?」
□
華村の顔「うふふ…でもこの荒御霊、かなり餓えてたみたいとりこんだら
私も……」「また生贄が欲しくなったわ。あなたがくれないなら勝手に
探すけど……」
□
美晴、驚いてる拓則を見る。
□
美晴、悲しそうな顔。
美晴「田鎖君……あなた、やっぱり魅入られてしまったようね」「助けて
あげられなくてごめんなさい」
□
拓則(焦)「え? それ、どういう…」
美晴、拓則の襟首を掴む。
[26]
□
ドンッ!
拓則「うわっ」
突き飛ばされた拓則。
□
拓則「うわぁぁぁぁっ!」
拓則、ゲルの中へ飲み込まれて行く。
□
悲鳴のフキダシで繋ぐ。目を逸らす美晴。
[27]
□
ずるっ・・・びちゃっ
美晴、ゲルに相対し
美晴「……贄が要る時は私が差し出しますからもう勝手につまみ食い
しないでくださいね、……華村先生。」
□ 路上。
ザーーー
雨の中、浄雲が路端の地蔵に合唱してる。
浄雲「おん。かかか。さんまい。えい。そわか…」
その後ろから近づく足。(美晴)
□
浄雲「!」「美晴さん?」
美晴、傘も差さずに。
美晴「浄雲……お斎飯を差し上げたいけど…うちに来てくれる?」
□
浄雲「美晴さんが私と食事を……珍しいですね?」
[28]
□
びしょ濡れになりつつ泣きそうな顔で視線を逸らしてる美晴。
美晴「・・・・・。」
□
浄雲、笠に手をやってにっこり。
浄雲「南無観世音菩薩」「いいですよ。何も尋かないでありがたく同席させて
いただきましょう」
□
ザァァァ…
去って行く二人の後ろ姿を、見もしない石地蔵だけが雨の中に残される。
<終>
「ライバルは坊主ではなニセく霊能少女であるべき」「もっと身近な題材を」という要望に従ってみたエピソードでした。
しかしこのころ、要望や批評にいちいち対応するのが苦痛で耐えられなくなり、この次のエピソードを書いてる途中でちゃぶ台ひっくりかえしてしまったため、新シリーズ(第二シリーズ)は全二話で挫折したのでした。
僕の単独名義で発表してた第二シリーズより以降、改稿版などいくつかありましたけれど、商業ベースが前提だったり、僕に権利がない形だったりしたため、ここには掲載できません。(けっきょく、誰が書き直しても結末がネックで商業化は無理でした。だから「この作品は、課題を設定しての習作にすぎませんよ」って何度も言ったのに。(笑))
なお最新のリメーク版は完全アマ作品として、亀のような速度で少しずつ書いていますから、もしかするといつの日かお目にかけることもあるかもしれません。またもや非公開作品とならなければ、ですけども。(^^;
ではでは~☆




