第一編「妄鬼堆(もうきたい)」
シリーズ第一作・・・つーか、最初は読み切り想定の習作原作でした。
■主要人物>
後藤哲男:主人公。転校生。
更科美晴:哲男の隣の席。無気力な美少女。
華村冴子:古文担当の教師。冷たい雰囲気も持つ美女。
老婆:哲男の一家の隣人。
[1]
□
ぐちゃっ…
暗闇の中でうごめいているモノ。
(くらくてよく見えない)
□
ぐちゃっ……ぐちゃっ……
複数。
□
ぐちゃ…ぐちゃ…ぐちゃ…
その中に見え隠れする、人間の手足。
(食われていることだけは分かる。)
□
カッ……
光。
□
光の中で冷たく微笑している少女。(美晴?)
[2]
□ 坂道の先に見える校舎。
T「妄鬼堆」
□
バス停から出ていくバス。
残ってる哲男。
後ろが崖沿いの坂道。
[3]
□
見上げて
哲男「はぁ……この坂の上にあるわけね学校は」
溜息。
セミの鳴き声。
□ (場面転換)教室
休み時間になるところ。
黒板に古文。
キーンコーンカーンコーン……
ザワザワ……
華村「では授業を終ります」
□ 哲男、隣の席の美晴に
哲男「更科さんだっけ? 教科書ありがとうところで学校の案内してくれない?」
[4]
□
冷たく見つめる美晴。
□
カタ……
哲男「あ……」
無視して席を立ち去ってしまう美晴。
□
哲男「なんだい、いったい!」
□
廊下を一人で歩いてる哲男。
□
何かに気が付く。
哲男「華村先生」
[5]
□
華村(古文の教科書を抱いてる)「あら後藤くん、一人?」
哲男「いやあ 隣の娘に案内頼んだんだけど振られちゃいました」(誤魔化し笑い)
□
華村(意外そう)「あらあら……後藤くんてああいう娘が好みだったの」
□
哲男(ごまかすように)「あっ いや……好みから行けば華村先生の方が……」
□
華村「ウフフ……上手ね。前の学校でもそうやって女の子を泣かせてたんだ?」
哲男「と、とんでもない! そんなことしませんよ…」
□
華村(立ち去る)「まあいいわ。早くクラスにとけこんでね」
哲男「は、はい」
□ 見送る哲男
バブルアウト
[6]
□ バブルイン
校庭の隅、大木の影。
小さな石の祠。
哲男「なんだろ、これ?」
□
覗き込むように石を見てる哲男。
哲男「お墓…じゃないよな。なんで学校にこんなものが?」
□
石に触れようとする哲男。
???「……触らないほうがいいわ。」
□
哲男の後ろにいた美晴。
哲男「更科さん?」
美晴「訳の分からないものにやたら触れるのは赤ん坊のすることよ」
□
カチン!(哲男)
[7]
□
哲男「触れてみなきゃわからないことだってあるだろ!?」
美晴「…………忠告はしたわ」
フキダシでつなぐ
□
立ち去る美晴
哲男「なんだい、感じ悪ィ」
□ 夕方
□ バス停
哲男「なんだかよそよそしい奴の多い学校だよなあ」「あの更科って女がとくに!」
バスが来る。
[8]
□ アパート。
鍵を捜す哲男。
□
隣のドアから出てくる老婆。
老婆「あら、おとなりさん?」
□
哲男「あ、こんど越してきました後藤です。父は仕事行ってますけど
どうぞよろしく」
□
老婆「学生さんなのね、どちらに?」
哲男「蒙木台高校です」
□
驚く老婆。
老婆「蒙木台……蒙木台……」
□
哲男「?」「なにか?」
[9]
□
老婆「いえ 別に」「ただあの丘はねえ…」
□
哲男「気になるな。教えてくれませんか、あの丘になにかあるんですか?」
□
老婆「私は結婚してから50年 この町に住んでるんだけどね」
「あの学校が建ったのはまだ15年くらい前だったかねえ」
□
哲男「へえ……新しいんだ」
老婆「たけど、あの丘はねえ…」
□
哲男「あの丘に何か?」
老婆の声「まあ ただの言い伝えなんだけどね」
[10]
□
老婆「ずっと昔にこのあたりに人を食う鬼が出て」
「えらいお坊さんだか巫女さんだかがあの丘に封じたという昔話が伝わって
いるんだよ」
□
哲男「へえ…」「僕 好きなんですよそういう昔話とか伝説とかの類」
□
哲男「もっと詳しく教えてくれませんか?」
老婆(避けるように)「さあねえ私も詳しくは知らないねえ」
□ 隣の部屋に戻って行く
老婆(後ろ姿)「市立図書館にでも行って調べたら何かわかるかねえ…」
見送る哲男。
□
哲男「…………」
[11]
□ 市立図書館
□
看板「市立図書館」
□
哲男、調べもの中
哲男「げげっ、これ古文書じゃねえか……」
□
古文書の一ページ(草書体)
哲男「『夫れ当村は…あと読めねえ(汗)」
□
古文書をめくる哲男
哲男「なんとか 読める字がひとつでもないかなあ……」「ん?」
[12]
□
本の文章の中に「妄鬼堆」の文字
哲男「妄鬼堆……もうきたい?」
□ 本を持ち上げて見てる哲男
哲男「当て字かなあ? それにしてもやな文字……(汗)」
□
哲男「なんとか ここに書かれてることを読んでみたいもんだけど……」「!!」
□ バブル・イン
教員室、華村の机。
華村「え? 郷土史料の古文書?」
[13]
□
哲男(4つ切り大の写真の束を手に)「そうなんです。崩し字がどうしても
読めなくて」
華村「後藤くんてかわったものに興味あるのね、若いのに」
□
哲男「へんですか?」
□
華村「ううん。そういう子、好きよ」
□
照れて上向いてる哲男
華村(写真を見ながら)「しかもごていねいに写真までとってくるなんて」
哲男「古文書は光を当てると痛むからって、コピーもストロボ写真もなかなか
許可されないんですけどね。今回はラッキーでした」
[14]
□
写真を熱心に見ている華村
華村「ふぅん…」
哲男「何かわかりました?」
□
華村「そうね……これはこの地方独特の書体で書かれているから私も
完全には……」「でも 資料があれば読めないこともないわ」
□
哲男「やったっ♪」
華村「そうね……一人では無理だけど二人で徹夜で調べればなんとか
意味が分かると思うわ」
□
哲男(意味に気がついて赤くなる)「二人で徹夜?」
□
華村「今夜宿直なの。夜に宿直室まで来てくれる?」「あ、でも泊りは
無理か……」
[15]
□
哲男(赤い顔)「あ、行きます 行きます!」
「親には先生に勉強を見てもらうって言う。ウソはついてません!」
□
華村、くすっ
華村(色っぽく)「そう」「じゃ、待ってるわ」
□ 廊下。
上機嫌で廊下を歩いてる哲男。
哲男「♪」
□
角でいきなりと呼び止められる
美晴「後藤」
哲男「!」
□
美晴「…………」「華村先生には近づきすぎない方がいいわよ」
[16]
□
哲男「…………」「なんで?」
□
美晴「忠告したでしょう」「訳の分からないものにやたら触れるのは
赤ん坊のすること」
□
哲男「華村先生は訳の分からないものじゃねえだろ」
美晴「…………」
□
哲男「ははあ わかったぞ更科。お前 妬いてんだろ」
「華村先生と更科じゃ月とすっぽんだもんな」
□
美晴「……」「忠告はしたわ」
向こうへ振り返る。
□
去って行く美晴。
見送る哲男。
[17]
□ 夜の校舎。
□
校庭を一人で歩いている哲男。
□
哲男「さすがに夜の学校は不気味だなあ」
□
哲男(上機嫌)「でも、美人教師と美少年(?)が夜の宿直室で二人きりっ!」
「何も起こるなって言う方が無理だよね」
□ 昇降口
哲男「えっと、宿直室、宿直室」
[18]
□ 宿直室。
電気は点いてる。
テーブルには電気ポット。
哲男の声「こんばんは華村先生」
□
哲男「……」「いないんですか?」
□
勝手に上がる哲男。
哲男「校内の見回りにでも行ってるのかな?」
□
テーブルのところに座ってポットに
哲男「お湯 湧いてるのかな?」
[19]
□
ポットに手を置く。
ベトッ…
哲男「!?」
□
哲男「なんだ、これ?」
触った手ににべたべたするもの。
□
ザワザワ……ザワザワ……
周囲に何かうごめくような気配。
□
ザワザワ……ザワザワ……
気配に気づいてびびる哲男。
[20]
□
驚愕する哲男
□
周囲を取り囲んでる、わけのわからないスライム状の物体。
□
哲男「な、なんだこれ!!」
□
じわじわと近づいてくる物体。
□
哲男「う……」
□
うわああああっ!!
絶叫して逃げ出す哲男。
[21]
□
ダダダダダッ
ザワザワザワザワ
廊下を走る哲男。
だが、廊下にも物体があふれてくる。
□
哲男、走り続ける。
哲男「なんだ一体!」「先生! 華村先生ーっ!!」
□
ダダダダダ
廊下を疾走するイメージ。
混乱するコマ割
あふれ出てくる物体
□
□
□
□
□
カッ!
突然の閃光。目が眩む哲男。
[22]
□
階段の踊り場に立つ美晴。手にお札を持っている。
美晴「…………だから言ったのに」
哲男「さっ、更科!?」
□
ザワザワ……
動きが遠慮がちになる物体。
□
カッ!
閃光。
美晴がお札を突き出すと物体が後じさる。
□
哲男「さ…更科! 助けてくれ、そのお札があれば大丈夫なんだな!?」
[23]
□
美晴「ごめんなさい」「御先祖様ほどの力は私には無いの」
□
哲男「御先祖様?」
□
美晴「あれがこの丘から出ないようにするだけで私には精一杯」
「それも三ヶ月に一度生け贄を与えることでやっと抑えてられるの」
□
哲男「い、生け贄!?」
□
美晴「あれを蘇らせたのは、こんなところに学校を建てた人たち」
「でも とっくに人柱になって貰ったわ」
□
哲男「なんなんだよ、人柱って!!」
[24]
□
ぐちゃ… ぐちゃ…
再び動き出す物体。
□
美晴「華村先生は後藤くんのことを気に入ったみたい」
「だから あれを抑えるためにあなたも往って」
□
哲男「ちょっと待って! 華村先生!? いったいそれ どういう…」
どんっ
突き飛ばされる。
[25]
□
うわあああああああ!!
悲鳴で繋ぐ。
物体の方へ階段を落ちていく哲男。
あああああ
□
悲鳴で繋ぐ
ぐちゃ…ぐちゃ…
食われていく哲男
[26]
□
美晴「だから忠告したのに……」「訳の分からないものにやたら触れるのは
赤ん坊のすることよって」「男ってみんなこれだから」
□
ぐちゃ…ぐちゃ…
食われている哲男の体。
□
美晴(冷たい微笑)「でも 華村先生は満足したみたいね」
[27]
□
ザワザワザワ…
□
ザワザワザワ…
□
ザワザワザワ…
次第にひいていく物体。
[28]
□
美晴「さて…これでまた三ヶ月は大丈夫」
「そのうち美人が好きで生きのいい男の子がまた来るでしょう」
振りかえって去っていく。
□
暗い夜の廊下。
遠く、美晴が去っていく。
小さく「ザワザワザワ…くちゃっ」と
音が響く。
<終>
■か・い・せ・つ
もともとシリーズ化するつもりはなく、読みきり漫画の原作として2003年の10月ごろに書いたのが『妄鬼堆』でした。ホラーの書き方がよくわからず(今でも苦手ですが)、試行錯誤してたのが文面からもわかりますね。
ところが、この「人を助けない霊能ヒロイン」の話を「もっと読みたい」と何人もに言われて続編『河童沼』を書き、さらに「美晴の心情に踏み込んだ続編を」と言われて『祟り祠』を……というように、毎回、掲載後3日間くらいに寄せられた批評をできるだけ全部反映させて1週間後までに次回を書くという、作者がめちゃくちゃに苦しいチャレンジ習作シリーズとなったのでした。(^^;
のちに何度も書き直すことになりいろんなバージョンができましたが、今回再発表させていただくのは、最初のバージョンに少し加筆修正したものです。
なお『霊能少女 更科美晴シリーズ』を最初に書いてから5年くらい後、何人めかの作画立候補さん(プロ)の抽象的な要求や掲載予定誌のコンセプトに合わせて書き直しを繰り返すうちに、いつのまにか『Dragon Dawdle ~竜の住む森』になっていたという事実は、作者の僕にもワケワカです。まぁあれはあれで楽しい話じゃないかとは思うけど。(笑)
なおこの物語は、現在、『御霊ヶ丘』という題名で何度目かのリメーク途中にありますが、これも習作であり、公開するかどうかは未定です……たぶん未完に終わるでしょう。
「小説家になろう」には初回バージョンを、完結編までの正シリーズ7本と、リクエストに応じて書いた外伝シリーズ2本を載せる予定でおります。(このシリーズに関するリクエストにはもう対応できません(汗))
では、漫画原作にまだ慣れてなかったころの、さらに無茶な制約で書いた完成度最低(笑)という評価まで受けた習作シリーズですけれど、しばしお付き合いを給われたら嬉しっす!