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プロローグ 魔力の渦に飲まれて

聖杯戦争

 それは、万能たる願望機を求め、争う、魔術師同士の殺し合いである。

 聖杯戦争では、過去、現在、未来の英雄が、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーのクラスを持ち、七騎、英霊サーヴァントとして召喚される。

 聖杯を求める魔術師は、その七騎のうち一騎を使役し、戦に挑む。人知を超えるサーヴァントを使役する手段として、マスターには三度の命令権である令呪が与えられる。サーヴァントである限り、令呪に逆らうことはできず、マスターは令呪の使いどころを見極めなければならない。

 過去、現在、未来、特異点、異聞帯ロストベルト、別時空、ありとあらゆるところで聖杯戦争は行われた。それらの戦争では、多種多様なサーヴァントが召喚されてきた。中でも特にレアなケースとして、神霊が召喚されることがある。たとえ万能の杯でも、神霊を呼ぶことは基本不可能である。ただし、依り代の使用や、神自身が世界に己の一部を残していたなど、召喚される事例がある。


「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。」

 ここでもまた、一つの聖杯戦争が開始しようとしていた。

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 だが、この聖杯戦争はサーヴァントすべてが召喚され、戦争が開始した時点で勝負が決まっていた。

「―――――Anfangセット――――――告げる、汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

 今回召喚されたのは、聖杯戦争では絶対召喚されないはずの存在だった。

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ 。

    誓いを此処に、我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者

汝三大の言霊を纏う七天

            抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 瞬間、時空に圧倒的な歪みが生じた。


―――1994年 第四次聖杯戦争

「―――告げる、汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

    ―――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

「・・・!?」

 召喚詠唱を終えた切嗣たちセイバー陣営は、冬木の町の中央の空に発生した巨大な魔力に驚きをあらわにした。

 そのほかのアーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの陣営も空に出現した魔力の渦に驚きを隠せなかった。だが、その驚きは一瞬だった。その魔力の渦は冬木全体に広がり、冬木から人間が消滅した。


―――2004年 第五次聖杯戦争

「こんなところで意味もなく、平気で人を殺す、お前みたいな奴にっ!」

 瞬間、大きな魔力が爆発した。

「七人目のサーヴァント!?」

 召喚された大きな魔力に、全身青タイツの男が吹き飛ばされる、、、かに思われた。青タイツの男、ランサーのサーヴァントと召喚されたサーヴァントは同時に空を見上げた。空には巨大な魔力の渦。


冬木教会

「この魔力の渦は、」

「これは聖杯戦争どころではないな。綺礼よ。」

 神父と思われる男と、不敵に笑う金髪の男は、空の魔力の渦を見ながら話す。

「これも、神の導き、か。」

 刹那、世界は魔力に包まれ、人が消滅した。


―――スノーフィールド

「問おう、汝が俺のマスターか?」

 問う、金にところどころ赤いの髪をした男。

「違う。断じて違う。」

 それを拒絶するように、違うと断言する眼鏡をかけた女。

「なに?・・・!?」

 金髪の男、セイバーのサーヴァントは、女の断言に目を丸くしたが、瞬時に空へ意識を移した。


スノーフィールド西部 大森林

 美しい緑の髪をしたサーヴァントは、マスターである銀狼の横で、空を見上げていた。

「この気配は、メソポタミアの神じゃないね。この感じは、」


スノーフィールド市内 カジノホテル『クリスタル・ヒル』

 突如スノーフィールドに出現した魔力の渦をみて、少女は隣に立つ金色の英霊を見た。

「王よ、あれはいったい。サーヴァントの攻撃にしてはあまりにも・・・」

 王と呼ばれた金色の英霊は、閉じていた眼を開き、

「なるほど。ギリシャの神か。これほどの魔力、あいつは大丈夫だろうが・・・」

 一瞬、目を閉じながら悩みを浮かべた英霊は、目を開けた。

「このおれでもすべてを見れないか。ティーネよ、念のため衝撃に備えよ。」

「はい!」

 ティーネと呼ばれた少女は体に魔力を纏い、防御の体制をとった。

 スノーフィールドは魔力に包まれた。魔力の光が晴れるころには、人は消滅していた。


―――カルデア

 カルデアでは施設中で警報が鳴り響いていた。

「ダヴィンチちゃん!いったい何が起こってるの?」

 そう叫ぶ人類最後のマスターに、ダヴィンチと呼ばれた少女のサーヴァントは、

「これまで攻略してきた特異点、異聞帯ロストベルトが復活しているんだ!こんなことはありえない。」

「復活した特異点、異聞帯に、巨大な魔力の渦を確認しました!その渦は特異点全体を飲み込む勢いで広がっています!」

 作業員の一人が叫んだ。

「魔力の渦だって?・・・なんだこれ、サーヴァントのせいではない。たとえ冠位グランドクラスのサーヴァントでもこのレベルの魔力はあり得ない!これはまるで、神霊の域じゃないか!」

 考えていると、もう一人の作業員が叫んだ。

「カルデア上空にこれらと同様の魔力の渦が発生しました!特異点と同様にどんどん広がっています!カルデアが飲み込まれるまで猶予はありません!」

「なに!」

 瞬間、カルデア中が魔力の光に包まれた。

「先輩!」

「マシュ!」

 手を伸ばすピンクの髪の少女の手をつかんだマスター。

「?!」

 手をつかんだマスターに、もう一人の、オレンジの髪をした誰かが重なるのを少女、マシュは見逃さなかった。だが、確認する前に魔力に飲まれた。

 魔力が晴れたとき、カルデア内はもぬけの殻となっていた。


ーーー???

「ここは」

 人類最後のマスター、藤丸立香は、目が覚めると見知らぬ街にいた。

「ここはどこだ?どこかで見覚えが、」

「ーー輩」

 遠くから声が響いた。それは藤丸立香にとって聞き馴染んだ声だった。

「先輩!」

「マシュ!無事だったんだ。他のみんなは」

藤丸はカルデアのデミ・サーヴァントであるマシュ・キリエライトの無事を安堵しながら聞いた。

「ここら辺には私たち以外誰も。ただ、ここが冬木市であることはほぼ確定です。ですが、元の冬木には存在しない建物がいくつか・・・!」

 突然マシュの表情が強張った。

「警戒を、マスター。生命反応です。」

「うん。」

 藤丸は臨戦態勢に入り、マシュは己が借り受けた理想郷の騎士の盾を構えた。

 そして、生命反応を感知した方向をにらみつける二人の前に現れたのは、二人の少女だった。

「「・・・!?わ、わたし!?」」

 二人の声が被った。一人はマシュのもの。もう一つは、現れた二人のうちの一人、マシュと同じ盾を構え、ピンクの髪をしたデミ・サーヴァントだった。

「マ、マシュが二人?いったいどうなってるんだ?」

「私にもわかりませんが、あの盾はまさしく私と同じものです!マスター、警戒を解かないでください。」

 自分と同じ見た目、同じ宝具を持った存在に警戒を強めた。その前にいる二人も、警戒を強めつつ言葉を紡ぐ。

「マスター、目の前の人は私と同じ、デミ・サーヴァントで間違いなさそうです。もう一人の黒髪の男性は・・・!?」

 その会話を聞いていたマシュも同じ見た目のデミ・サーヴァントの隣にいるオレンジの髪の少女を眺めて驚きをあらわにした。

「マスター、あちらの女性の手の甲を見てください。あの令呪、それに服装は」

「うん。俺の礼装と同じだ!」

 相手も同じことに気付いたのか、お互い見つめあい、同時に臨戦態勢を解いた。

「あの、そちらのデミ・サーヴァントさん、一応聞きますが名前は」

「私はマシュです。あなたも、そうなんですね。では、そちらの男性は」

 話題を振られ、藤丸立香は一歩前に出て、名乗った。

「俺は藤丸立香。この流れで行くと、そっちの女の子は」

「私も藤丸立香。」

 お互い名乗り終えると、現在の状況や、カルデアの話を始めるのだった。


冬木 衛宮邸

 衛宮士郎は、自分の家で目が覚めた。

「ここは、家か。確か俺は槍を持った男に襲われて、蔵のなかでなんかが光って、それで・・・」

 衛宮士郎は立ち上がり、家の中を散策した。

「襲われたときに割れたはずの窓がすべて治ってる?いったいどうなってるんだ。あれが夢だったのか?」

 衛宮士郎は、考えすぎで頭を抱えようとしたが、そこで手の甲にある痣に目を引かれた。それは紛れもなく令呪であった。だが、衛宮士郎自身は魔術を使うものであっても、聖杯戦争については全く知識がなく、もちろん令呪も知らない。

「なんだこの痣。火傷、にしては形がしっかりしてるし、タトゥーなんてした覚えはない。いったい何なんだ、これ。」

「それは令呪と言ってな。サーヴァントを律するための三つの命令権だ。」

 突然の声に衛宮士郎は体をこわばらせた。後ろを振り向くと、そこには見覚えのある男が立っていた。

「じいさん?ほんとにじいさんなのか?でも、じいさんはもう死んでるはずで、ていうかちょっと若く見えるというか、元気そうというか・・・」

 目の前に現れたのは、自分を育ててくれて、自分の前で息を引き取ったはずの衛宮切嗣だった。

「僕のことは本当に知っているみたいだな。イリヤの言っていたことは本当だったわけだ。こいつが僕の養子、か。」

 衛宮切嗣は、自分の養子である衛宮士郎をまるで初めて見るかのような反応を見せた。その反応に衛宮士郎は違和感を覚えた。

「どうしたんだ、じいさん。それにイリヤって・・・」

「イリヤを知らない?なるほど。未来の僕はイリヤをと再開できなかったんだな。つまり、聖杯戦争も負けたわけ、か。」

 衛宮切嗣は士郎の言葉から一人で何かに納得したように首を振った。だが、士郎は何の話なのか分からなく、混乱した。イリヤとはだれなのか。この切嗣は、自分が知る切嗣なのか。令呪とは、聖杯戦争とはなんなのか。

「なあ、じいさん。まず、あんたはほんとうにじいさんなのか?」

「・・・ああ。おそらく君の知る衛宮切嗣よりも過去の衛宮切嗣だ。」

「過去?じゃあなんでじいさんは俺のことを知ってるんだ?さっきのイリヤって人が関係してるのか?」

 士郎は、疑問の中から質問をこれらの二つに絞った。その問いについて切嗣は一瞬考えるが、すぐに質問の回答をした。

「ああ。イリヤは、ーーー僕の、娘なんだ。君からしたら、姉になるのかな。」

 切嗣は、イリヤの存在を簡潔に話すと、聖杯戦争と現状の話をし始めた。

「君は聖杯戦争について知らないんだよな。聖杯戦争とは・・・」

「ーーーという感じだ。理解したか?」

 聖杯戦争について話し終えた切嗣は、士郎の反応を確かめる。衛宮士郎は聖杯戦争なんかよりもイリヤという自分の姉にあたるらしい人についてもっと知りたかったが、雰囲気的にあまり聞いてほしく無いんだろうと察した。

「なるほど。となるとあの青タイツはランサーのサーヴァントってことか。じゃああの魔力の渦もサーヴァントによるものってことか?」

 自分の記憶の最後にこびりついた巨大な魔力の渦。切嗣の話からあれはサーヴァントのせいであると考えたが、それを切嗣が否定した。

「君が見たのが僕のと同じなら、違う可能性が高い。あれはまさしく聖杯にも匹敵するほどの魔力だった。あんな魔力はサーヴァントには発揮できないだろう。」

「じゃああの魔力はその聖杯ってやつのせいなのか?でも、聖杯は戦争の勝者に与えられるんだろ。まだ始まったばかりなのに、なんでもう聖杯が出てきてるんだ?」

 士郎の疑問は正しかった。聖杯とは戦争の勝者に与えられる願望機。勝者がいないときは顕現することは不可能なはずなのだ。

「だが、今の状況、いろいろな時代が入り混じっているというのは、聖杯でもない限り不可能だ。神霊の域にいる存在ならできるかもしれないが、そんな力を持った奴は出てくるのは不可能だろう。それに複数の時代に同時にだ。やはり聖杯のせいと考えるのが自然だろう。」

 切嗣は、自分の考えを話しながら、お互いの時代の情報を交換し、これからの方針を立てるのだった。


冬木 『クリスタル・ヒル?』

 目が覚めると、そこはさっきまでと変わらないカジノホテルの最上階だった。しかし、見晴らしのいいこの場所から見る光景は、これまでのスノーフィールドの光景とはまるで違うものだった。

「この場所はいったい、スノーフィールドじゃない?王は、ギルガメッシュ王はどこですか。さっきまで横にいたのに」

 そこで気づいた。この部屋の中にいたはずの部下の姿も消えていた。

「いったいどうなっているんだ?部下も、王も、消えている。ここはどこなのですか。知らない場所、ここはスノーフィールドではないはず。なのになぜ私は魔術が使えるんだ?ここには霊脈がある?そして令呪もある。王は生きている。気配を感じる。」

 感じるのは気配のみで、どこにいるかが全く分からないことに戸惑う少女、ティーネ・チェルクは、令呪での瞬間移動を試そうとしたが、思いとどまった。この状況、何が起こるかわからない。もしものことがあるまで令呪は取っておくべきと判断したのだ。

「まずは状況を把握し、その過程で王も探し、緊急時に備えましょうか。」

 幸い、ここには霊脈があるらしい。魔術が使えるならばある程度の身の安全を確保できる。そう考え、ティーネは魔術を行使し始めた。


冬木 ???

「準備は整った。」

 黒いフードで顔を隠した何かは、手にした聖杯を眺めながら言った。

「これから始まるのはただの聖杯戦争ではない。あらゆる時代から大勢のマスターを呼び、それらすべてにサーヴァントを召喚させる。」

 黒いフードの何かは、口元に笑みをこぼしながら戦争の開始を宣言するのだった。

「冬木は本物の魔境と化す。これまでの聖杯戦争と思ったらすぐに死ぬぞ。さあ、せいぜい面白く踊ってくれよ。これより、大聖杯戦争の開始を宣言する!」

 この宣言を合図に、この冬木で神話を超える大戦争が始まるのだった。

 









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