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第2話 邂逅②

 ロイスが森の奥へ消えていき、残された私と二人――。


「あ、あの……あなたたちは?」

「オレはライノで、この子はカノン! 二人ともリベラブレイズのメンバーッスよ!」


 リベラブレイズ。

 先ほどの仮面の連中も、その名を口にしていた。

 どういう組織なのか検討もつかないが、少なくとも私を助けてくれた側――敵ではないはずだ。


 ……とはいえ、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

 ここがどこで、何が起きているのか。

 さっきの氷柱を本当に魔法なのか、それとも巧妙なトリックなのか。

 『マギレンジャー』が大好きな私のために仕掛けられた、壮大なドッキリ――そんな可能性すらよぎる。

 いやいや、大事なタイトルマッチ当日にそんな企画を通すプロモーターは、さすがにいない。

 なら、これはやっぱり現実で――?


「それで、君は誰ッスか? なんであそこに?」


 思考を断ち切るように声をかけられ、心臓がびくっと跳ねた。


「あっ、アカネっていいます! 助けてくれてありがとうございました。それが……自分でもよくわからなくて――」

「アカネちゃん! 可愛い名前ッスね~! さっきのスキル、やばくないッスか? 三人をドカーンって!」

「ライノさん、とりあえず拘束を……」

「あ、そうッスね」


 カノンの一言で、ライノのテンションがぴたりと止まった。


「アカネさん、いきなりで申し訳ありませんが、拘束させていただきます」

「えっ、こ、拘束……?」


 カノンが一歩近づき、私の両手をそっと取る。


「――『光縛鎖バインドチェイン』」


 目の前に魔法陣が浮かび上がり、淡い光が瞬いた。

 空気がねじれるように手首へと何かがまとわりつき、妙な感覚が走る。

 気付けば、半透明の細長い鎖がきつく巻き付いていた。


「えっ!? ちょっと……なにこれ! 重っ……!」


 頼りない見た目に反し、鎖は信じられないほど重く、肩がぐっと引き下ろされる。

 鎖の先はカノンの右手へと伸びているが、カノンは引っ張ることなく優しく口を開いた。


「危害は加えません。あくまで保護のためですので、ご安心ください」

「これって……魔法……ってやつですか!? 保護って、私どうなるんですか!?」

「そうですね、魔法……いわゆるスペルですね。ひとまず仲間の元へ向かうので、付いてきてください」

「試合は……?」

「試合? なんのことですか?」


 『試合』という言葉を出して反応を見たが、期待は打ち砕かれた。

 嫌な可能性が頭をよぎり、背筋に冷たいものが走る。

 ――とにかく今は従うしかないか。


 カノンとライノに挟まれ、森を進む。

 やがて、木々の切れ間から開けた場所に出た。

 数頭の馬が繋がれており、横には腕を組んだ男が立っている。

 その男がこちらに気付き、大げさに手を振った。


「よう、遅かったじゃねえか!」

「ラギさーん! お待たせッス!」

「ん? ロイスはどうした?」

「グラシエル兵のとこッス!」

「……どういうことだ?」


 森での交戦、私を保護した経緯、逃げたグラシエル兵をロイスが追ったこと――。

 ライノに代わり、カノンが今起きたことを的確にまとめて、短い言葉でわかりやすく伝えた。


「そういうことッス!」


 何も説明していないライノが得意げに締めた。


「なるほどな! アカネか、大変だったな!」


 ラギは話の六割くらいしか聞いていないような顔で頷き、事もなげに私に声を掛けた。

 私はというと、状況が整理されたところで理解できるはずもなかったが、ラギの快活さに気持ちが少しほぐれた。


 そのとき、遠くで爆発音が轟いた。

 白い煙が木々の向こうに立ち上る。


「お、終わったか」


 三人は驚くわけでもなく、当然のように反応した。


「あの、今のは……?」

「ロイスさんのスペルです。じきにここに来るでしょう」


 スペル――。

 敵の氷柱も、この手の鎖も、今の爆発も、その一言で全部説明がつく。

 そう言われてしまうと、もう否定できなかった。

 その現実を受け入れられず戸惑っている私の元へ、ラギが近づいてくる。


「おいおいおい! アンタの脚、傷ンなってんじゃねえか!」


 見てみると、確かに右脚に細い切り傷があった。

 ヘッドシザース・ホイップを決めた時に出来たものだろう。

 血が滲んでいるが、アドレナリンが出ていて全然気が付かなかった。


「あ、ほんとだ! まあ、これくらい大丈夫ですよ――」

「いやいや、こういうのはよ、とっとと治しちまおうぜ! なあ、カノン!」

「そうですね。アカネさん、失礼します」


 カノンが私の傷に手をかざすと、手を拘束した時のような魔法陣が浮かび上がった。

 思わず身構える。


「『治癒霧ヒーリングミスト』」


 柔らかな光が広がり、温かい霧のようなものが肌を撫でる。

 すると、脚の傷がみるみるうちに塞がり始めたではないか。

 気付くと、傷は跡形もなく消えていた。


「えっ……ウソ……」


 考えないようにしていたことが明確に現実味を帯びてしまった。


 だって、傷が消えるなんて、本当にありえない――。

 そんなことが出来るのって、やっぱり――。


 今起きたことは紛れもない現実で、私の知っている世界とは全く別の世界。


 つまり、ここは――異世界。


 私はあの時、事故に遭って……ここへ転生したのだ。


【プロレス余談】

だいたいの選手は『ユニット』というものに所属しています。

これは所属団体とは別です。

例えると、所属団体が会社、ユニットが部署といったところでしょうか。

ユニット同士の仲が良いところもあれば、バッチバチのところもあり。

裏切りで他のユニットに移ったり、新たなユニットを設立…もしくは共闘など、様々なドラマがあります。

ユニットの歴史はプロレスの歴史というくらい大切な要素で、個人的には一番面白いところだと思っています。


プロレスでは他選手の必殺技を使わないのが暗黙の了解なんですが、、、

初代リーダーが抜けたのちに、二代目リーダーが初代リーダーの技を使う…みたいな、熱い展開がたくさんあります。

少年マンガが好きな人には本当にオススメのコンテンツです。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

作品はもちろんですが、プロレスに少しでも興味を持っていただけたら最高です。


また、ブックマークや評価、誤字報告、なんでも反応をいただけたら嬉しいです…!

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