第34話「婚約の正式発表」
いつも読んでくださりありがとうございます。
今回で第二章終了になります。
次回第三章の結婚式編でフェリシアとリオールの物語は終了となります。
どうか最後までお付き合いください。
家名授与の儀式から三日後、王宮では盛大な夜会が開かれることになった。
リオール・ルミナスとフェリシア・ルミナスの婚約を、正式に王国中に発表するための祝賀会だ。
「緊張しますね。」
フェリシアは自室の鏡の前で、ドレスを着ながらエミリアに言った。
「大丈夫ですよ。」
エミリアは励ますように言った。
「フェリシア様は、もう立派な貴族です。堂々としていてください。」
今夜のドレスは特別に仕立てられたものだった。深い青色の絹のドレスに、銀の刺繍が施されている。裾には小さな真珠が縫い付けられ、歩くたびに光を反射する。
そして胸元には、いつもの母レーナの青い石の首飾り。
「完璧です。」
エミリアが満足そうに頷いた。
「リオール様も、きっと息を呑みますよ。」
フェリシアは鏡の中の自分を見た。金色の髪は優雅にまとめられ、控えめな化粧が施されている。もう、あの怯えた少女の面影はない。
「行きましょう。」
部屋を出ると、廊下でリオールが待っていた。
彼も正装していた。深い青の礼服に金の刺繍、胸には新しく授けられたルミナス家の紋章—輝く星を象った銀の徽章が光っている。
リオールはフェリシアを見て、一瞬言葉を失った。
「美しい...。」
彼は囁いた。
フェリシアは頬を染めた。
「ありがとうございます。リオールもとても素敵です。」
リオールは彼女に手を差し伸べた。
「行こう、フェリシア。今夜、私たちは世界に向けて誓いを立てる。」
フェリシアは彼の手を取った。
二人は並んで、大広間へと向かった。
―――
大広間は、既に多くの貴族たちで埋め尽くされていた。
シャンデリアが煌々と輝き、オーケストラが優雅な音楽を奏でている。
テーブルには豪華な料理が並び、ワインのグラスが光を反射している。
二人が入口に現れると、音楽が一瞬止まった。
「リオール・ルミナス卿とフェリシア・ルミナス嬢のご入場です!」
侍従長が高らかに宣言した。
会場全体から、拍手が起こった。
リオールとフェリシアは、レッドカーペットの上を歩いた。
人々の視線が集まる。しかしその視線は、かつてフェリシアが浴びた冷たい視線とは違う。祝福と好意に満ちた、温かい視線だった。
会場の奥には、国王オズワルドとライオスが立っていた。
「ようこそ。」
国王が微笑んだ。
「今夜の主役だ。堂々としているがいい。」
「ありがとうございます、陛下。」
二人は深く礼をした。
国王は杯を掲げた。
「皆の者!今夜、我々はここに集い、新たな門出を祝う!リオール・ルミナス卿とフェリシア・ルミナス嬢の婚約を!」
会場から歓声が上がった。
「リオール卿は、長年王国に仕えてきた優れた魔法使いだ。そして、エルドマールの魔物討伐という功績により、貴族の地位を授けられた!」
拍手。
「フェリシア嬢は、かつて不幸に見舞われた令嬢であった。しかし彼女は不屈の精神で立ち上がり、今や王国随一の治癒魔法使いとしての才能を開花させた!」
さらに大きな拍手。
「二人の婚約は、まさに光と希望の象徴である!ルミナス—光をもたらす者—という名に相応しい二人だ!」
国王は杯を高く掲げた。
「では、乾杯しよう!二人の未来に!」
「乾杯!」
全員が杯を掲げ、一斉に飲み干した。
音楽が再び流れ始め、宴が始まった。
―――
次々と貴族たちが、二人に祝福の言葉を述べに来た。
「ルミナス卿、おめでとうございます!」
「フェリシア様、あなたのドレス、本当にお美しい!」
「お二人はお似合いですね!」
フェリシアは一人一人に丁寧に応対した。
リオールは少し離れた場所から、フェリシアの様子を見守っていた。
「見事なものだな。」
ライオスが隣に立った。
「何がだ?」
「フェリシアさ。彼女は本当に変わった。いや、本来の彼女が現れたというべきか。」
「ああ。」
リオールは微笑んだ。
「彼女は強い。そして優しい。だから人々に愛される。」
「お前も変わったな。」
ライオスは肩を叩いた。
「以前は孤独な魔法使いだったのに、今は幸せそうだ。」
「フェリシアのおかげだ。」
リオールは正直に言った。
「彼女がいてくれるから、私は完全になれる。」
「いい言葉だな。」
ライオスは笑った。
「結婚式、楽しみにしているぞ。」
―――
やがて、ダンスの時間が始まった。
オーケストラがワルツを奏で始める。
国王が手を挙げた。
「さあ、婚約者たちに最初のダンスを!」
会場が静まり返った。
リオールはフェリシアの前に進み出て、手を差し伸べた。
「ダンスを踊ってくれるかな、フェリシア・ルミナス?」
フェリシアは微笑んで、彼の手を取った。
「喜んで、リオール・ルミナス。」
二人は広間の中央に進んだ。
音楽が高まる。
リオールがフェリシアをリードし、二人は優雅に舞い始めた。
フェリシアは初めての社交界で、ライオスと踊った時のことを思い出した。あの時は緊張で足が震えていた。でも今は違う。
リオールの腕の中で、彼女は安心していた。
「上手になったな。」
リオールが囁いた。
「あなたが良いリードをしてくださるから。」
フェリシアは微笑んだ。
「いや、君が素晴らしいフォロワーだからだ。」
二人は見つめ合いながら踊り続けた。
周囲の人々は、二人の姿に見とれていた。
完璧な調和。まるで一つの生き物のように、二人は動く。
音楽がクライマックスに達し、そして優雅に終わった。
リオールがフェリシアを抱き寄せ、優しくディップさせる。
会場から、盛大な拍手が起こった。
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「完璧だった。」
リオールが言った。
「ええ。」
フェリシアは幸せそうに答えた。
「完璧でした。」
やがて他の貴族たちもダンスフロアに出て、次々とカップルが踊り始めた。
ライオスもパートナーを連れて踊り、国王も王妃と踊っている。
広間は歓喜と祝福に包まれていた。
―――
夜会が最高潮に達した頃、リオールはフェリシアをバルコニーに誘った。
「少し休もう。」
二人はバルコニーに出た。
夜空には星が輝き、月が優しく地上を照らしている。涼しい夜風が心地よい。
「綺麗ですね。」
フェリシアが星空を見上げた。
「ああ。」
リオールも同じく空を見上げた。
「でも、君の方がずっと綺麗だ。」
フェリシアは頬を染めた。
「もう、そんなこと言って。」
「本当のことだ。」
リオールは彼女を抱き寄せた。
「今夜、君は誰よりも美しかった。」
フェリシアは彼の胸に顔を埋めた。
「幸せです。」
彼女は囁いた。
「こんなに多くの人に祝福されて。こんなに愛されて。」
「これからもずっと、君を幸せにする。」
リオールは誓った。
「私の生涯をかけて。」
「私もです。」
フェリシアは顔を上げた。
「あなたを幸せにします。あなたと共に、ルミナス家を築きます。」
二人は静かに唇を重ねた。
優しく、深いキス。
遠くから音楽が聞こえてくる。広間では、まだ祝宴が続いている。
しかし今この瞬間、二人だけの世界があった。
月光が二人を包み、星々が祝福しているかのようだった。
「愛している、フェリシア。」
「私も愛しています、リオール。」
二人は抱き合い、互いの温もりを感じた。
四ヶ月後には、正式に夫婦になる。
それまでの間、やるべきことは山積みだ。
結婚式の準備。治癒魔法の修行。
でも、すべてが楽しみだった。
なぜなら、愛する人と共に歩むのだから。
リオール・ルミナスとフェリシア・ルミナス。
光をもたらす者たち。
二人の物語は、これからも輝き続ける。
第三章以降の更新は木・土・日1話更新となります。




