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不幸な令嬢は王宮専属魔法使いに救われる  作者: 雪銀華
第二章

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第33話「新しい家名」

翌朝、リオールとフェリシアは正装に身を包んだ。


リオールは王宮専属魔法使いの正式な礼服を着ている。深い青の上着に銀の刺繍が施され、王国の紋章が胸に輝いている。


フェリシアも、エミリアの助けを借りて美しいドレスに着替えた。淡い水色のドレスは、彼女の金色の髪と青い瞳を引き立てている。そして胸元には、母レーナの青い石の首飾り。


「今日は特別な日ですね。」


エミリアが鏡の前のフェリシアの髪を整えながら言った。


「ええ。」


フェリシアは微笑んだ。


「緊張よりも、期待の方が大きいわ。」


フェリシアは何度も国王オズワルド陛下にお会いしていた。呪いの調査の報告、裁判の後、そして王宮での生活の中で。陛下は常に公正で、優しい方だった。だから今日も、きっと温かく迎えてくださるだろう。


「行きましょう。」


フェリシアは立ち上がった。


ーーー


謁見の間は、荘厳な雰囲気に満ちていた。


高い天井、壁に掲げられた歴代国王の肖像画、そして奥の玉座に座る現国王、オズワルド・ヴェルディアント。


五十代半ばの国王は、威厳に満ちた表情でリオールとフェリシアを見つめていた。しかしその目には、温かな光が宿っている。


玉座の横には、王子ライオスが立っている。


謁見の間には、多くの貴族や官僚たちが列席していた。皆、この歴史的瞬間を見届けるために集まっている。


「リオール・魔法使い、フェリシア・令嬢、前へ。」


侍従長が声を上げた。


リオールとフェリシアは、レッドカーペットの上を歩いて玉座に近づいた。適切な距離で止まり、膝をついて頭を下げる。


「面を上げよ。」


国王の声が響いた。深く、落ち着いた声。


二人は顔を上げた。


国王は柔らかく微笑んでいた。


「よくぞ帰還した、リオール。そしてフェリシア。卿らの功績は、早馬の報告で聞き及んでいる。」


「ありがとうございます、陛下。」


フェリシアが答えた。何度も会っているとはいえ、こうした正式な場では緊張する。


「フェリシア、卿とは何度も会っているが、改めて見ると変わったな。」


国王は穏やかに言った。


「初めて会った時は、怯えた小鳥のようだった。しかし今は、堂々としている。」


「陛下のお陰です。」


フェリシアは感謝を込めて言った。


「陛下が私を保護してくださり、呪いを解く許可を下さったからこそ、私は今ここにいられます。」


「いや、それはそなた自身の強さだ。」


国王は首を振った。


「さて、本題に入ろう。」


国王は姿勢を正した。


「エルドマールの魔物討伐、見事であった。容易な相手ではなかったはずだ。」


「はい。」


リオールが答えた。


「しかし、騎士たちの勇敢な戦い、そしてフェリシアの献身的な治癒により、一人の犠牲者も出すことなく討伐できました。」


「それについて聞きたい。」


国王はフェリシアに視線を向けた。


「フェリシア、そなたは戦いの中で治癒魔法の才能を開花させたそうだな。詳しく聞かせてくれ。」


フェリシアは深呼吸をして、戦いの状況を語り始めた。

リオールが重傷を負ったこと。多くの騎士が倒れたこと。そして、必死の想いで治癒魔法を放ったこと。


「そして気づいた時には、皆の傷が癒えていました。範囲治癒という高度な魔法が、無意識に発動していたようです。」


国王は深く頷いた。


「母君の力を受け継いだのだな。レーナも優れた治癒魔法使いだったと聞く。」


「はい。母が最期に残してくれた首飾りが、私を守り、そして力を目覚めさせてくれました。」


フェリシアは胸元の青い石に触れた。


国王は満足そうに微笑んだ。


「よかろう。では、褒賞を与える。」


彼は立ち上がった。謁見の間全体に、緊張が走る。


「リオール。お前は長年、王宮専属魔法使いとして王国に仕えてきた。魔物討伐、災害からの救助、そして王族の守護。お前の功績は数え切れぬ。」


侍従が、赤いクッションの上に置かれた証書を運んできた。


「そして今回の任務により、お前の功績はさらに輝かしいものとなった。よってお前に貴族の地位と家名を授ける。」


リオールは感動で息を呑んだ。


「父上、彼にはルミナスという家名を名乗りたい願望があるようです。」


あらかじめライオスに相談していたためスムーズに希望の家名を伝えることが出来た。


「よかろう。今日より、お前は『ルミナス』の名を名乗るがよい。」


「はい。」


「『光をもたらす者』か。。お前が魔法の光で王国を照らし、人々に希望をもたらしてきたように、この名はまさにお前に相応しい。」


国王は証書を手に取り、リオールに差し出した。


「リオール・ルミナス。お前を男爵として認め、王国の正式な貴族とする。」


リオールは証書を受け取り、深く頭を下げた。


「陛下のご恩、生涯忘れません。」


「励むがよい、ルミナス卿。」


国王は優しく言った。


そして、フェリシアに視線を向けた。


「さて、フェリシア。」


フェリシアは背筋を伸ばした。


「そなたもまた、この度の任務で多大な功績を上げた。そしてそなたがリオール・ルミナス卿の婚約者であることを承知している。」


「はい、陛下。」


「ならば話は早い。」


国王は微笑んだ。


「フェリシア。そなたもルミナスの名を名乗り、正式にルミナス家の一員となることを許可する。」


フェリシアは嬉しさで胸が一杯になった。


「婚約が余によって正式に認められた時点で、卿はルミナス家の者だ。」


国王は続けた。


「卿の旧姓、アイテールは不名誉な形で失われた。ならば、新しい名で新しい人生を始めるがよい。」


侍従がもう一つの証書を運んできた。


「フェリシア・ルミナス。卿を正式な貴族として認める。そして、王宮付き治癒魔法使いの地位を授ける。」


「王宮付き治癒魔法使い...。」


フェリシアは感激で声を震わせた。


「そうだ。」


国王は頷いた。


「卿の治癒魔法の才能は、王国にとって貴重な財産だ。これからは王宮の医療棟で働き、人々を癒すがよい。もちろん、セラフィナの下で、適切な訓練も受けてもらう。」


「セラフィナ様。」


フェリシアは驚いた。このような展開になることは知らされていなかったからだ。


「光栄です、陛下。」


フェリシアは証書を受け取った。


国王は立ち上がり、謁見の間全体に向かって宣言した。


「本日をもって、新たな貴族家が誕生した!ルミナス家である!」


貴族たちから、拍手が起こった。


「リオール・ルミナス卿とフェリシア・ルミナス嬢の婚約を、余は正式に承認する!二人の結婚式は、四ヶ月後の春、この王宮で執り行われる!」


拍手がさらに大きくなった。


リオールとフェリシアは顔を見合わせた。二人とも、目に涙を浮かべている。


「やったな、フェリシア。」


リオールが小声で言った。


「はい、リオール。」


フェリシアは微笑んだ。


「私たち、本当に...。」


「ああ。これから、私たちは共にルミナス家を築いていく。」


―――


謁見が終わり、二人は控えの間に案内された。


そこで待っていたのは、ライオスだった。


「おめでとう!」


ライオスは満面の笑みで二人を抱擁した。


「ついにやったな、リオール!お前に家名が与えられた!」


「ライオス...お前が父上に進言してくれたんだろう?」


リオールが尋ねると、ライオスは肩をすくめた。


「名前の希望はな。でも、お前たちの功績があってこそだ。」


彼はフェリシアに向き直った。


「フェリシア、これからは治癒魔法使いとして頑張れよ。」


「頑張ります。」


フェリシアは決意を込めて言った。


その時、ドアが開いて何人もの貴族たちが入ってきた。


「ルミナス卿!おめでとうございます!」


「フェリシア様、王宮付き治癒魔法使いとは素晴らしい!」


「結婚式が楽しみですね!」


次々と祝福の言葉が寄せられた。


かつて社交界で「不幸な令嬢」として避けられていたフェリシアが、今はこんなにも多くの人々に祝福されている。


祝福の渦が一段落すると、リオールがフェリシアの手を取った。


「少し外に出よう。」


二人は庭園に出た。春の花々が咲き誇り、美しい光景が広がっている。


「フェリシア・ルミナス。」


リオールが彼女の名を呼んだ。


「それが君の新しい名前だ。」


「素敵な名前です。」


フェリシアは微笑んだ。


「光をもたらす者...私にそんな資格があるかしら。」


「ある。」


リオールは断言した。


「君はエルドマールの人々に光をもたらした。そしてこれから、もっと多くの人々に光をもたらすだろう。」


フェリシアは彼の胸に顔を埋めた。


「ありがとう、リオール。あなたがいてくれるから、私は強くなれる。」


「私もだ。」


リオールは彼女を抱きしめた。


「君がいてくれるから、私は幸せだ。」


二人は庭園のベンチに座った。


「四ヶ月後には、私はあなたの妻になるのですね。」


「ああ。楽しみだな。」


「私も。」


フェリシアは幸せそうに微笑んだ。


「それまでに、たくさん準備することがありますね。結婚式のこと、そして治癒魔法の修行。」


「忙しくなるが、一緒に乗り越えていこう。」


「はい!」


二人は静かに手を握り合った。


空は青く晴れ渡り、温かい春の日差しが二人を包んでいた。


フェリシア・ルミナス。


新しい名前。新しい人生。新しい未来。


かつて不幸な令嬢と呼ばれた少女は、今や光をもたらす者となった。


そして、愛する人と共に、新しい家族を築こうとしている。


物語は、まだ始まったばかりだった。

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