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不幸な令嬢は王宮専属魔法使いに救われる  作者: 雪銀華
第一章

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第20話「魔術師の影」

儀式まで残り一日。


王宮は、緊迫した空気に包まれていた。


騎士たちが巡回を強化し、魔法使いたちは最終準備に追われている。


リオールは、地下の儀式場で魔法陣の最終確認をしていた。


「完璧だ。」


複雑な魔法陣が、床一面に描かれている。中心には、レーナの首飾りを置くための台座。


「セラフィナ様、治癒魔法の準備は?」


「万全じゃ。」


老魔女が頷く。


「フェリシア嬢の生命力を守る結界も、準備できておる。」


「私たちも、外部からの侵入を防ぐ結界を張ったわ。」


ルナとステラが報告する。


「魔力供給システムも完成した。」


ユリウスも親指を立てた。


「よし。」


リオールは、皆を見回した。


「明日の夜、午前零時に儀式を開始する。」


「了解じゃ。」


その時、オズボーンが駆け込んできた。


「大変だ!グレゴールが、王宮近くで目撃された!」


―――


会議室に、全員が集まった。


ライオス、リオール、魔法使いたち、そして騎士団長のレオナルド。


「グレゴールが、王宮の周辺を探っている。」


レオナルドが報告する。


「おそらく、儀式のことを察知している。」


「当然だろうな。」


リオールが腕を組む。


「奴は、フェリシアの魔力を狙っている。」


「儀式を中止すべきでは?」


一人の騎士が提案した。


「いや、中止はできない。」


ライオスが首を横に振る。


「グレゴールは、いずれ襲ってくる。ならば、こちらが準備万端の今の方がいい。」


「殿下の言う通りです。」


レオナルドも同意した。


「警備を最大限に強化します。グレゴールを、絶対に儀式場には近づけません。」


「頼む。」


リオールは立ち上がった。


「俺は、フェリシアのところに行く。」


「ああ、彼女も不安だろう。」


ライオスが頷いた。


「俺も後で顔を出す。」


リオールは、会議室を出た。


―――


フェリシアの部屋をノックすると、エミリアが出てきた。


「リオール様。」


「部屋にいるか?」


「はい。でも、今日は少し元気がなくて…。」


エミリアは心配そうだった。


「わかった。少し、話してくる。」


部屋に入ると、フェリシアは窓辺に座っていた。


「フェリシア。」


「リオール様。」


フェリシアは振り返った。その目は、不安に満ちていた。


「明日、ですね。」


「ああ。」


リオールは、フェリシアの隣に座った。


「怖いか?」


「はい。」


フェリシアは正直に答えた。


「とても怖いです。」


「当然だ。怖くない方がおかしい。」


リオールは、外を見た。


「でも、俺たちがいる。」


「はい。」


「お前を、必ず守る。」


リオールは、フェリシアの手を取った。


「信じてくれ。」


フェリシアは、リオールの手の温かさを感じた。


「信じています。」


「ありがとう。」


二人は、しばらく黙って外を見ていた。


―――


その夜、王宮の屋上に一つの影があった。


黒いローブを纏った老人。グレゴールだ。


「明日の夜か。」


グレゴールは、地下の儀式場を見下ろしていた。


魔法使いとしての感覚で、そこに強大な魔力が集まっているのがわかる。


「フェリシア・アイテール。ルシェール家の最後の血。」


グレゴールの目が、狂気に光った。


「お前の魔力を手に入れれば、私の計画は完成する。」


彼は、懐から小さな人形を取り出した。


レーナの髪で作られた人形。


「レーナの魔力は、すべて娘に受け継がれた。」


グレゴールは、人形に呪文を唱える。


「だから、この人形を使えば、娘の居場所がわかる。」


人形が、微かに光った。


「儀式の最中、娘は無防備になる。」


グレゴールは冷笑した。


「その時が、チャンスだ。」


しかし、その背後に気配があった。


「そうはさせない。」


リオールが立っていた。


―――


「リオール、王宮専属魔法使いか。」


グレゴールは振り返った。


「よく気づいたな。」


「お前の魔力は、異質だ。すぐにわかった。」


リオールは魔力を解放する。


「今夜、お前を捕らえる。」


「ふん、若造が。」


グレゴールも魔力を解放した。


二人の魔力がぶつかり合い、空気が震える。


「お前は、何人殺した?」


リオールが問う。


「覚えていない。」


グレゴールは平然と答えた。


「数えるのをやめた。」


「最低だな。」


「最低?」


グレゴールは笑った。


「私は、ただ目的のために生きているだけだ。」


「不老不死のために、何人も犠牲にした。」


「そうだ。それが何だ。」


グレゴールの目は、狂気に満ちていた。


「人の命など、塵芥に等しい。私の永遠の命に比べれば。」


リオールは、怒りで震えた。


「お前のような奴は、許さない。」


リオールは、攻撃魔法を放った。


―――


炎の槍がグレゴールに向かう。


しかしグレゴールは、軽々と避けた。


「遅い!」


彼は反撃の魔法を放つ。黒い雷が、リオールを襲う。


リオールは防御結界を張り、かろうじて防いだ。


「くっ!」


「お前は若く、才能もある。」


グレゴールは言った。


「だが、私は五十年以上も魔法を極めてきた。」


彼の魔力が、さらに膨れ上がる。


「経験の差を、思い知れ。」


グレゴールは、複数の魔法を同時に放った。


炎、氷、雷。すべてがリオールに襲いかかる。


リオールは、必死で防いだ。


しかし、グレゴールの魔法は強力だ。


「このままでは…!」


その時、別の魔力が介入した。


「リオール、一人で戦うな!」


ユリウスが現れた。


「お前たち。」


ルナとステラも、そしてセラフィナも現れた。


「我々を忘れてもらっては困るのう。」


セラフィナが杖をつく。


「お前たち。」


「一人で抱え込むな、リオール。」


ユリウスが肩を並べた。


「俺たちは、仲間だ。」


―――


「仲間、か。」


グレゴールは鼻で笑った。


「所詮、数が増えたところで。」


「黙れ。」


セラフィナが杖を掲げた。


「お前のような外道に、負けるわしらではない。」


五人の魔法使いが、魔力を合わせる。


「複合魔法、いくぞ!」


ユリウスが叫んだ。


五人の魔力が一つになり、巨大な魔法の渦を作り出す。


「なるほど、やるな。」


グレゴールも本気を出した。


彼の体から、おぞましいほどの魔力が溢れ出る。


「だが、私の五十年の蓄積を超えられるか!」


二つの魔力が激突した。


屋上が揺れ、建物全体が震動する。


「くっ!」


リオールたちは、必死で魔力を注ぎ込む。


しかし、グレゴールは強い。


「まだまだ!」


ユリウスが叫ぶ。


「諦めるな!」


ルナとステラも限界まで魔力を使う。


そして、セラフィナが。


「リオールよ。」


「セラフィナ様。」


「お前の想いを、魔法に込めるのじゃ。」


「想い?」


「そうじゃ。フェリシア嬢を守りたいという、お前の想いを。」


リオールは、フェリシアの顔を思い浮かべた。


彼女の笑顔。彼女の涙。彼女の強さ。


「フェリシア。」


リオールの魔力が、突然跳ね上がった。


―――


「これは!」


グレゴールが驚いた。


リオールの魔力が、光を帯びている。


「愛の魔力か?!」


グレゴールは舌打ちした。


「厄介な。」


五人の魔力が、グレゴールを圧倒し始めた。


「くそ!」


グレゴールは、煙玉を地面に叩きつけた。


紫の煙が、屋上を覆う。


「逃がすか!」


リオールが追おうとしたが、煙が晴れた時、グレゴールの姿は消えていた。


「逃げられた。」


「だが、奴も無傷ではないはずじゃ。」


セラフィナが言った。


「ああ、少なくとも今夜は襲ってこない。」


リオールは、仲間たちを見た。


「ありがとう、皆。」


「礼には及ばん。」


ユリウスが笑った。


「俺たちは、仲間だからな。」


その夜、リオールはフェリシアの部屋を訪れた。


「グレゴールと、戦ったのですか?!」


フェリシアは心配そうに尋ねた。


「ああ。でも、追い払った。」


リオールは微笑んだ。


「明日の儀式、大丈夫だ。」


「はい。」


フェリシアは、首飾りを握りしめた。


「私、頑張ります。」


「ああ、俺も全力を尽くす。」


リオールは、フェリシアの頭に手を置いた。


「必ず、救う。」


その言葉に、フェリシアは涙が出そうになった。


「ありがとうございます。」


夜が明ければ、運命の日。


すべてが決まる日。


しかし、二人には恐れはなかった。


なぜなら、共に戦う仲間がいるから。


そして、互いへの想いがあるから。


それが、奇跡を起こす。


明日、すべてが変わる。


フェリシア・アイテールの、新しい人生が始まる。

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