表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸な令嬢は王宮専属魔法使いに救われる  作者: 雪銀華
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/38

第16話「呪術の全貌」

グレゴールの襲撃から一夜明け、リオールは禁書庫に籠もっていた。


「グレゴール。」


その名前を、古い魔術師の記録から探す。


数時間後、ついに一つの記述を見つけた。


「グレゴール・ヴァンヘルシング。五十年前、禁術使用により魔術師協会から追放された。」


リオールは記録を読み進める。


「人体実験、魔力の強奪、そして大量殺人。すべての罪で、死刑判決を受けたが、逃亡。」


その後の記録は途絶えていた。


「五十年前。ということは、今は九十歳を超えているはずだが。」


昨夜見たグレゴールは、七十代くらいに見えた。


「まさか、他人の魔力を奪って若さを保っている?」


リオールは背筋が寒くなった。


「クロスに教えたのではない。グレゴール自身が、生贄の呪術の開発者だったのか。」


急いで、ライオスの執務室に向かった。


―――


「グレゴールが、呪術の開発者だと?」


ライオスは記録を見て、顔色を変えた。


「ああ。そして、彼は五十年以上前から、魔力を集め続けている。」


リオールは地図を広げた。


「ここに、過去五十年間の不審な貴族の死亡記録をまとめた。」


地図には、無数の印がつけられている。


「すべて、魔力を持つ家系だ。そして、その死は不自然だった。」


「これほど多くの。」


「ああ。グレゴールは、計画的に魔力を持つ者たちを殺してきた。」


リオールは拳を握りしめた。


「ルシェール家も、その一つだった。」


ライオスは立ち上がった。


「父上に報告する。これは、国家レベルの危機だ。」


「ああ。そして、フェリシアを守らなければ。」


「フェリシアは今、どこに?」


「自室にいるはずだ。エミリアと一緒に。」


「警備を三倍にする。誰も、フェリシアに近づけるな。」


ライオスは騎士たちに命令を飛ばした。


その頃、フェリシアは自室で編み物をしていた。


エミリアが紅茶を淹れながら、心配そうに見ている。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫よ。」


フェリシアは微笑んだが、その笑顔は少し強張っていた。


「昨夜、何かあったと聞きました。」


「ええ。でも、リオール様とライオス様が守ってくださった。」


フェリシアは窓の外を見た。


「エミリア、私、怖いの。」


「お嬢様。」


「呪いを解く儀式も怖い。でも、それ以上に。」


フェリシアは手を見つめた。


「あのグレゴールという人が、また誰かを傷つけるのが怖い。」


―――


午後、リオールはフェリシアの部屋を訪れた。


「フェリシア、少し話がある。」


「はい。」


二人は向かい合って座った。


「グレゴールについて、わかったことを話す。」


リオールは、調べた内容を説明した。


グレゴールが五十年以上前から魔力を集めていること。無数の犠牲者がいること。そして、フェリシアが次の標的であること。


フェリシアは黙って聞いていた。


「フェリシア、お前は今、大きな危険にさらされている。」


「はい。」


「だから、儀式を早める。」


リオールの言葉に、フェリシアは驚いた。


「早める?」


「ああ。本来なら来月中旬の予定だったが、来週に変更する。」


「来週。」


フェリシアの顔が青ざめた。


「準備は、間に合うのですか?」


「完璧ではない。だが、グレゴールに狙われたまま待つよりはましだ。」


リオールは、フェリシアの手を取った。


「俺は、お前を守る。必ず、呪いを解いて見せる。」


その手は、温かかった。


「リオール様。」


「怖いか。」


「はい、とても。」


フェリシアは正直に答えた。


「でも、あなたがいてくれるなら、乗り越えられる気がします。」


リオールは優しく微笑んだ。


「ああ、俺がいる。ライオスもいる。セラフィナも、他の魔法使いたちも。」


「はい。」


「お前は、一人じゃない。」


フェリシアは涙を拭った。


「ありがとうございます。」


―――


その夜、王宮の会議室に魔法使いたちが集められた。


リオール、セラフィナ、ユリウス、ルナ、ステラ、そしてオズボーン。


「儀式を一週間後に早める。」


リオールが告げると、皆驚いた表情を浮かべた。


「一週間?」


ユリウスが反対する。


「準備が間に合わない。魔法陣の構築だけで、あと二週間は必要だ。」


「わかっている。だが、グレゴールが動いている。」


リオールは事情を説明した。


「このまま待てば、フェリシアが襲われる可能性がある。」


「ならば、警備を強化すれば?」


「それでは不十分だ。」


セラフィナが口を挟んだ。


「グレゴールは、五十年以上も魔力を集め続けておる。その力は、計り知れん。」


「だからこそ、早く呪いを解く必要がある。」


リオールは地図を広げた。


「儀式の準備を、全員で分担する。」


「わしは、治癒魔法の準備を。」


セラフィナが言った。


「私たちは、結界の構築を。」


ルナとステラも頷いた。


「俺は、魔力の供給システムを作る。」


ユリウスも観念した様子で同意する。


「私は、魔法陣の最終調整を。」


オズボーンも協力を申し出た。


「では、決まりだ。」


リオールは皆を見回した。


「一週間後、フェリシア・アイテールを救う。」


全員が頷いた。


―――


翌日、リオールはアイテール家の地下牢を訪れた。


そこには、クロスが囚われていた。


以前とは見違えるほど老け込んでいる。白髪が増え、皺が深く刻まれ、背中も丸まっていた。


「クロス・アイテール。」


リオールの声に、クロスは顔を上げた。


「お前は、魔法使いの…?」


「話がある。」


リオールは牢の前に立った。


「グレゴールについて、知っていることを話せ。」


クロスの顔が歪んだ。


「あの男か。」


「ああ。奴が、すべての黒幕だ。」


クロスは壁にもたれた。


「私は、利用されていただけだ。」


「どういうことだ?」


「二十年前、私は行き詰まっていた。」


クロスは遠い目をした。


「アイテール家は没落しかけていた。金もなく、地位も失いつつあった。」


「それで?」


「ある日、グレゴールが現れた。『力が欲しいか』と。」


クロスは自嘲的に笑った。


「私は、愚かにも飛びついた。」


―――


「グレゴールは、私にレーナとの結婚を勧めた。」


クロスは続けた。


「ルシェール家の財産を奪う方法、レーナを孤立させる方法、すべて彼が教えた。」


「そして、生贄の呪術も…。」


「ああ。彼は言った。『レーナの魔力を奪え。そうすれば、永遠の若さと富が手に入る』と。」


クロスは顔を覆った。


「私は、その甘言に騙された。」


「レーナを愛していなかったのか?」


「愛していた。」


クロスは涙を流した。


「だが、力の方が欲しかった。そして、気づいた時にはもう遅かった。」


「遅かった?」


「レーナは死に、フェリシアが生まれた。そして、私は呪いに取り憑かれていた。」


クロスは震える声で続けた。


「呪いは、私の心も蝕んでいた。フェリシアを憎む感情、若さへの執着、すべて呪いが増幅させていた。」


リオールは眉をひそめた。


「つまり、お前も呪いの被害者だと?」


「言い訳ではない。」


クロスは頭を振った。


「私が選んだ道だ。だが、グレゴールは私を操っていた。」


「グレゴールの目的は何だ?」


「わからない。ただ、彼は魔力を集めていた。」


クロスは顔を上げた。


「そして、彼は言った。『ルシェール家の魔力は、究極の魔術に必要だ』と。」


「究極の魔術?」


「それ以上は、知らない。」


リオールは考え込んだ。


究極の魔術。グレゴールが五十年かけて目指しているもの。


「クロス、最後に聞く。」


「何だ。」


「お前は、フェリシアを娘として愛したことはあるのか?」


クロスは長い沈黙の後、答えた。


「ない。」


「そうか。」


リオールは背を向けた。


「お前は、父親失格だ。」


「わかっている。」


クロスの声が背後から聞こえた。


「頼む。フェリシアを、グレゴールから守ってくれ。」


リオールは振り返らずに答えた。


「言われなくても、守る。」


―――


地下牢を出たリオールは、ライオスと合流した。


「クロスから、何か聞けたか?」


「ああ。グレゴールは『究極の魔術』を目指している。」


「究極の魔術?」


「詳細は不明だ。だが、それにはルシェール家の魔力が必要らしい。」


二人は廊下を歩いた。


「つまり、フェリシアの魔力が?」


「ああ。彼女は、グレゴールの最終目標かもしれない。」


ライオスは拳を握りしめた。


「絶対に、渡すものか。」


「ああ。だから、一週間後の儀式を成功させる。」


リオールは決意に満ちた目をしていた。


「俺は、フェリシアを守る。たとえ、自分の命と引き換えになっても。」


「リオール。」


「彼女は、幸せになるべきだ。誰よりも。」


その言葉に、ライオスは友の想いを感じ取った。


「わかった。俺も、全力で協力する。」


夕方、フェリシアは庭園で花を見ていた。


一週間後に儀式がある。


それが成功すれば、自由になれる。


失敗すれば、死ぬかもしれない。


「母上。」


首飾りを握りしめる。


「私、頑張ります。」


首飾りが、温かく光った。


まるで母が、応援してくれているように。


「お嬢様。」


リオールが近づいてきた。


「散歩ですか?」


「ああ。少し、頭を整理していた。」


リオールはフェリシアの隣に立った。


「一週間後、すべてが変わる。」


「はい。」


「怖いか?」


「怖いです。でも…。」


フェリシアはリオールを見上げた。


「あなたがいてくれるなら、大丈夫です。」


リオールは、フェリシアの頭に手を置いた。


「ああ。俺は、必ずお前を守る。」


二人は、夕日に照らされていた。


一週間後。


運命の儀式が待っている。


成功すれば、フェリシアは自由になる。


失敗すれば、すべてが終わる。


でも、彼らは諦めない。


仲間と共に、最後まで戦う。


それが、彼らの決意だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ