勝手に小説のモデルにしちゃった元同僚にそのことを明かしたら溺愛されました
どうしよーーーーう ( ;∀;)
趣味で書いてた胸キュン恋愛小説を
ネットにアップしていたら、
出版社の人の目にとまり、
あれよあれよと、
本が出版。
売れ行き上々の流れで
なんとアニメ化。
アニメもまさかの好調で、
実写ドラマ化が決まった。
もちろん、
飛び上がるほど嬉しくて、
涙しながら
出版社の担当者と抱き合った。
喜びの絶頂から…数日後、
現実と向き合う今。
あーーーー(ノД`)
どーしよぉーーー涙(T ^ T)
悶え悩んでいるのは
原作者の【浅見律子】。
目の前でその様子を冷たく見つめるのは
担当者の【三橋愛】。
「ぁーーー、、、
あーーーーー、、、
あ゛ーーーーーー、、、」
言葉にできない心の声が溢れ出す律子に
「うっるさいなー!
だからいってたじゃん!!
早く言っときなって!!
さすがに実写化となれば、
バレちゃうよぉ〜」
と冷たくもからかう愛。
2人は二人三脚でここまで作品を大きくしてきて、
唯一無二の仲。
今日も律子の部屋で仕事の打ち合わせだったが、
なかなか打ち合わせは始まらない。
2人のコーヒーカップもすでに空だ。
そう、ことの発端は
代表作『ありがたき溺愛 〜隣の席の彼が毎日口説いてくるので恋に落ちざるをえません〜』。
このお話はノンフィクションといえど、
一部はフィクション。
登場する男性キャラにはモデルとなった人がいた。
それは律子の元同僚。
律子は大学卒業後、
不動産賃貸や管理をになう会社に就職。
律子は事務として働いていた。
その時同期で隣の席で働いていた
営業の【高野啓太】。
彼がモデルとなっている。
律子がその会社で5年ほど働いたころ、
父の海外赴任が決まり、
昔から海外生活に憧れていたこともあって、
父や母と海外へ引っ越すことにした。
そのタイミングで、会社はやめた。
啓太とはそれっきり。
啓太とは日々冗談をいいあうほどに仲がよかった。
それでも海外生活を満喫するのに夢中で、
啓太に連絡する発想すら生まれなかった。
海外での生活はとてものんびりしたもので、
自分の時間がたくさん持てた。
その中で、ずっとやってみたかったこと、
小説をかくこと をはじめた。
それが、この作品。
啓太が登場する作品。
啓太がしらない作品。
「やっぱりなーーー、
啓太に連絡してみないとなーーー
なんていうだろ、、、、
こわいーーー
あーーーーー
あ゛ーーーーーーー」
すると愛が律子のケータイを奪い…
「はい!!
今度の日曜日、◯◯カフェで14時にまってる!
・・・って送っといたよ^_^
高野啓太に!!
じゃ、あとは会って話して!!
さ、次の作品の打ち合わせ始めよ!」
と話を先にすすめてきた。
「ちょ、え?まじで?!
えーーー
あ゛ーーーーーーーΣ(゜д゜lll)」
——————
〜 日曜日 14時 約束のカフェ 〜
目の前にいる啓太を懐かしむ余裕のない律子。
カップを持つ右手が震える…
2人きりのカフェ。
誘っておいて話題を振らないのはどうか…
大人としてのマナーが問われる。
覚悟を決めた。
カップを置き、
「久しぶりだね〜
何年ぶりだろ、3年かな?」
啓太の方を見ると、
「いや、5年ぶりだろ!!
こっち帰ってたのな?!
連絡しろよな〜、みんな会いたがってるよ^_^
というか、どうした?
急な連絡にびっくりしたよ!!」
啓太の変わらないノリの良さに
律子はホッとした。
「去年かな、私だけ帰国したの!
5年かー、早いなー、啓太は変わんないね^_^」
「そぉ? オレ、今、副支店長だそ!!
スピード出世!すごいだろ!!
それよか、本題について話そっか。
おまえ、家探してんだろ?
買うの?借りたいの??
それでオレに連絡してきたんだろ?」
カバンからゴソゴソ書類を出し始める啓太。
あーーーー
あ゛ーーーーー
心の声が漏れそうなのを
必死に押さえ込む律子。
2人の会話の方向性の違いが絶妙な空気を作り出し、
打ち明ける勇気を阻害している。
それでも覚悟を決めた律子が
「ちがうの!
家のことじゃなくて!!
…わたし、謝らなきゃいけないことがあって。」
というと、
「え?!おー、どした?」
と、興味深そうに私の方に体を向き直し、
啓太は優しく真っ直ぐ耳を傾けてくれた。
「じつは・・・じつはね、
啓太がモデルの小説を・・・すこーし着色しながら
色々かいてみたの。
そしたらね、本になって、アニメになって、
で、今度ドラマ化することになったの!
啓太にはもっと早く言わなきゃ、とも思ったんだけど、
今になっちゃって・・・(汗)
無断でごめん!!!!!」
「?!え?その物語は、
オレって特定できそうな話なの?」
混乱の中、リスク予測を立てるのが早い。
さすが副支店長!
と感心してしまう律子。
いいたいことを言い切った律子は
冷静を取り戻し始めていた。
「そう…だね。絶対特定できるかっていうと
そこまでじゃないかなー。
見る人が見ればわかるかも。
啓太がそのドラマ見たら、
これ、おれか?!って気づいちゃうレベル」
「そ、そうか…
おっけ。
てか、オレがここで騒いでも
現状は変わんないしな、
ま、教えてくれてありがと。
あと、お前、すごいな!
なかなか実現できることじゃないぞ、
本もアニメもドラマも!」
あたたかく受け入れてくれた啓太にホッとした。
啓太はやっぱり啓太だった。
「で、タイトルは?
ビジネスマンが成り上がるストーリーだと
ドラマは日曜日夜放送とかか?!」
・・・・・・。
「えーーー…あーーー…
あとで、メールおくるわ!
詳しくはそちらを!!
な、なんかここでは恥ずかしいし!!」
啓太の反応を目の当たりにする勇気がなくなったので、
この後早々に解散した。
—————
ドラマがスタートしてすでに7話目が放送された。
火曜深夜10月スタート枠で今は11月も中旬。
視聴率も好調。ありがたい。
10話の構成のため、あと3話の放送で終了。
一方、啓太にカミングアウトしてから、数ヶ月。
ドラマのタイトルを教えろ、とのメールがうるさい。
そう、律子は未だタイトルを言えないでいる。
啓太は流石にドラマの放送が日曜夜の枠ではないと
気づいているようである。
・・・明日が8話目の放送日。
流石にまずいかぁ〜・・・と腹をくくり、
律子が啓太に久々にメールを返す。
送信時間は深夜2時。
啓太が寝ているであろう時間を狙うあたりが
小心者である。
〜〜メール文面〜〜
ドラマのタイトルは
『ありがたき溺愛 〜隣の席の彼が毎日口説いてくるので恋に落ちざるをえません〜』
です。
忙しくて、返信遅くなっちゃったごめんね( ´∀`)
〜〜
すると、即、電話が鳴った。
「おい、ふざけんな!」
啓太だった。
( i _ i )ですよねーーーーーー
・・・ーーー水曜夜、会うことになったーーー・・・。
そして8話目放送日。
自宅ソファーで視聴する律子。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
✴︎8話の一部シーン抜粋✴︎
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい、まだ帰ってないのかよ!
早く帰れよ、仕事遅いんだよ!」
外回りを終えた営業のケイが事務のリコに絡む。
怒っているのではない、早く帰っていいんだよ、
と言いたいが素直になれないケイ。
その気持ちはリコには伝わっていない。
2人のすれ違う思い。
「だって、、、
ケイの顔、見たかったんだもん・・・」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟くリコ。
しっかり聞こえてしまっているケイは顔が赤らむのを隠すため、
リコに背を向けてしまう・・・
その姿はリコには拒絶とうつり、青ざめ、下を向く。
(9話へ続く)
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
8話放送回を見て、
律子は思い出していた。
このシーンのもととなった出来事のことを・・・
☆*:.。. o o .。.:*☆
繁忙期、啓太も律子も毎日忙しく、遅くまで仕事をしていた。
みんな忙しすぎて、支店内もギスギスすることが増えていた。
そんな時、私と啓太の擬似ラブコメは笑いを誘っていた。
啓 「律子、まだ帰っていなかったのかよ、
早く帰って、休めよ!」
律 「啓太の顔、見たくて・・・
残ってたんだよ」
啓 「・・・お前・・・
遅くなってごめんな・・・」
律 「うん・・・ほんと・・・遅かったよ、
あいたかった。。。
帰ってきてくれて、ありがと、」
といった会話が、支店を和ませた。
啓太と律子の仲だからこその小芝居。
お前らほんとなんなのーー笑
仲良すぎーーーーー笑 と
いつも笑いが起きた。
☆*:.。. o o .。.:*☆
この出来事が8話に創作に生きている。
啓太のおかげなんだよなーーー。
向き合わないとなーーー、啓太と。
ーーー
〜 水曜夜 〜
昔よく2人で通った居酒屋。
焼き鳥と鉄板餃子が2人のお気に入り。
律子は出版社との打ち合わせがあり、少し遅れた。
店に入り、店員さんに席を案内されると、
啓太は律子を待ちきれず、先に飲み始めていた。
焼き鳥を前に、餃子を頬張るところだった。
律子が啓太を見るより先に焼き鳥たちに目をやるもんだから、
啓太に舌打ちされた。「チッ」
この舌打ちも懐かしい・・・笑
と思っている場合ではない。
まずは遅れたことを謝らないと・・・
と律子が話だそうすると、
「おい、律子!
見たぞ、あのドラマ!」
お酒が入っているからか、いつもより少し声が大きい。
「あ、ありがとう。
ど、どうだった??」
いきなり本題だったので、
律子はドキッとした。
「あの頃、俺ら、両思いだったんだな〜♪(´ε` )」
!?は???
律子は言葉を失った。
「あんな小説書くなんて、
過去の俺へのラブレターかよ!笑
って思ったじゃんか!
まぁ、いんだけど ^^」
少し照れくさそうなのに、
でも嬉しさが溢れんばかりに顔に出ていた。
律子は、恥ずかしい勘違いをされていることに苛立ったが、
冷静になると、啓太が激怒していない状況をありがたく思った。
これは、啓太の勘違いに便乗するしかない!!
「そうだねーーーーー あ、やっぱ気づいちゃったかーーー汗
ま。昔のことだからね!昔ね!!」
引きつる顔を満面の笑みへ変えるため、
日頃使わない顔の筋肉がピクピクしている律子。
一方、顔を赤らめる啓太。
対照的な2人の空気が居心地を悪くするが、
律子は楽しみにしていた餃子と焼き鳥を追加注文し、
限界まで食に徹した。
胸がいっぱいの啓太。
お腹がいっぱいの律子。
お互いに別の意味で大満足の時間だった。
別れ際、
「律子、また誘ってもいい?」
「もちろん!またね。」
そういって、2人は別々の方向へ歩き出した・・・
人通りが多く、明るく賑わう駅までの道。
ふぅ・・・啓太が怒っていなくてよかったーーー!
お腹いっぱーーい^^
そう思いながら歩いていると、
突然、後ろから右手をつかまれた。
え?!
びっくりして振り向くと、
つかんだ主は啓太だった。
「やっぱ、俺、好きだわ、お前のこと。
忘れたこと一度もないから。」
驚いた・・・
というか、この人通り!!!
道ゆく人々が微笑ましく私たちを見ている Σ(゜д゜lll)
とんでもなく恥ずかしくなり、律子は赤面した。
それを見た啓太は、
何かを確信したように
律子を抱きしめた。
!!!
律子は、人目が気になり、
これまた恥ずかしすぎて、
啓太の胸に顔を埋めた。
この道、もう歩けないよ・・・
恥ずかしすぎる・・・(T ^ T)
律子は、啓太への怒りが一気に湧いて、
抱きしめられたまま、啓太の服をガッチリ握った。
むかつくーーーーーという思いを込めて。
まさか、この行動が啓太の勘違いを加速させるとは・・・。
啓太は小さく、律子に聞こえる声で、
「よろしくな」
と耳元で囁いた。
へ?! Σ(゜д゜lll)
ーーーーーーーーーーー
次の日。
「ぁーーー、、、
あーーーーー、、、
あ゛ーーーーーー、、、」
言葉にできない心の声が溢れ出す律子。
「あーーーーーーって、またぁ?
うっるさい!
なんなのよ、全く打ち合わせ進まないじゃん。
次回作どうする気よ!」
担当編集者の愛は今日も律子に苛立つ。
カクカク・シカジカ・・・
律子は愛に昨夜の出来事を話した。
「ふふふふふふふふふふふ
はっはっはっはっはっっはっはっはーーー!!!!!!」
大爆笑の愛。
「笑い事じゃないよぉぉぉ
昨夜から何度もメッセージくるし!!」
律子は携帯をソファーのクッションの下に押し込んでいた。
「ウケる!!
見せてよ、そのメッセージ!」
愛が悪ノリしてきた。
「いや、それは、、、
それは、だめ。」
真顔で断る律子。
「ふーーーん、、、」
啓太をネタに自分が笑われるのはいいけど、
啓太が笑われるのだけ許せない!と思っているのねぇ・・・、
啓太への想いが全くないわけではないんだ・・・
と勘が働く愛。
さすが、大手出版社の編集者である。
「演じてみたら?彼氏彼女!
次回作の案も出てないんでしょ?
ネタ探しと思ってさ!」
愛がそれとなく背中を押す。
「それは啓太に悪いよ・・・」
気が引ける律子の背中をさらに押す。
「勘違いさせてる律子にも問題あるよ!
今更、全部啓太の勘違いだよ!なんて言えるの?」
「それはそうだけど・・・」
「じゃあ決まり、ほれ!
メッセージ、返信しな」
律子はしっくりきていないようだが、
クッションしたから携帯を取り出した。
啓太へのメッセージの文面を考える律子の表情は、
小説を推敲する時とは違って、
表情がコロコロと変わる。
真剣な顔、ニヤついた顔、困った顔、嬉しそうな顔・・・
まるで恋してる乙女のよう。
その様子を微笑ましく眺める愛。
来週の水曜日夜、
あの居酒屋でまた約束をした。
ーーーーー
約束の日。
なんの服を着ていくべき??と
あれでもない、これでもないと
家中の服をベッドに並べる律子。
これは・・・気合い入れすぎか?
んーーーこっちは、ラフすぎ?
色々悩んだが、
キャラメル色のニットワンピに決めた。
シンプルで、大人感でてるはず・・・
鏡の前で何度もポージングを決める。
リップもいつもより多めに塗ってしまっている自分に
ハッと気づいた。
あれ?私、めっちゃ楽しみにしてるじゃん。
啓太、今日仕事帰りかな?
久々に啓太のスーツ姿・・・見たいかも。
楽しみどころか啓太に期待もしている律子は、
ウキウキと準備に夢中で、
愛からのメールに気づかないでいた。
律子は珍しく待ち合わせ時間ピッタリついた。
いつも時間にルーズな律子が。
なかなか来ないなーーー
15分ほど経っても啓太は現れなかった。
すると、携帯が鳴った。
「ごめん、律子。
仕事でトラブってて・・・
かならず行くから先に食べてて!
絶対行くから!ごめんな」
一方的にそう言って電話が切れた。
何よ!初デートでしょ?!
とイライラしてしまったが、
・・・ふむ。
先に食べていいのかぁぁぁぁぁ♪
お腹が減っていた律子。
早速手当たり次第料理を注文。
もちろんビールも忘れない。
ニヤニヤしながらお気に入りの餃子を頬張る。
あーーーーーー幸せぇ〜!
1時間ほど経ってお腹がいっぱいになる頃、
啓太のことはコロっと忘れかけていた。
あ、そういえば啓太、大丈夫かなあ?
お腹がいっぱいになると、イライラも吹き飛び、
ポジティブが溢れる。
携帯を見ても連絡はない。
その時、スーツ姿の啓太が現れた!
油断していたせいか、
身構える余裕がなかったからか、
久々にみるスーツ姿の啓太に見惚れてしまった。
律子は無言で啓太を見つめていた。
長身に細身のスーツ。
似合う。
格好いい・・・
「ごめん、律子。ほんとごめん。
待っててくれてありがとう。
帰ってしまったんじゃないかと思って・・・俺・・・」
啓太を目の前に、ぼーっとしていた律子だったが、
その言葉で我に帰った。
啓太は雨に降られたようで、スーツの肩が濡れている。
「え?濡れてんじゃん?」
カバンからハンカチを取り出し、啓太の濡れた髪やスーツに押し当てる。
すると啓太が律子の手首をグッと掴んで、
ジッと目を見て、少し目を細めて
「本当に、ありがとう」
と、力強く言った。
律子は、胸がギュッとなるのを感じた。
その後、啓太は手に持っていた紙袋から
少し水滴のついた花束を律子に差し出した。
ピンクのバラにカスミソウ。
「え」
驚いた律子を前に、啓太が
「ありがとう。
俺の彼女になってくれて。」
そう言って、律子の腕の中に花束をたくした。
雨の中、傘も刺さずに走ってきてくれたのは、
啓太の様子を見ればわかる。
忙しくも自分と一緒にいない時間も
自分のことを想ってくれている・・・
律子は胸がいっぱいになった。
言葉にならない気持ちがあることを初めて知った。
そして、花束に目を向けた。
これでも恋愛小説家の端くれ。
花言葉には精通している。
ピンクのバラもカスミソウも愛を伝える花だ。
啓太からのバラは9本。
この本数の意味は いつもあなたを想っています。
まっすぐな気持ちが温かかった。
「ありがとう」
一言が精一杯。
嬉しさを言葉に表すって難しいな。
啓太は席につくと早速ビールを頼んだ。
そして、再び謝りだした。
「最近すごく忙しくて、
昨日のお前のドラマも見れなかった・・・ごめんな。
来週最終回だよな?絶対見るから!!」
「そんなのどうでもいいよ!
仕事忙しいなら、身体気をつけてよね!」
彼女らしい言葉をかけた。
はにかみ、嬉しそうにする啓太。
そして、乾いた喉にお酒が染み渡ったのか、
酔いが回るのも早くなり、
啓太は昔話を話し始めた。
「俺さー、初めてお前と会話した日のこと覚えてるよ。
あの頃からずっと好きだったんだ。
俺が、入社式の後の打ち上げで、
あの頃の俺はお酒が全然飲めなくてさー、
先輩たちにて酒勧められて断れなくて・・・
その時、お前が俺の目の前のグラスのお酒を全部飲み干してくれてさー、
俺、その時、ジョッキを一気飲みするお前の横顔を見た時、
完全に恋に落ちたね。
ほんっと男前だった・・・」
そう言って、啓太はグラスに口をつけた。
「男前って・・・なんだそれ」
その時の記憶がないが、自分が覚えていない自分を
心に刻んでくれていることがくすぐったく感じた。
「その後、配属先が同じ部署で、
隣の席になって、
俺がミスするたびにいつも励ましてくれた。
俺のミスでピリつく空気も、
お前の明るさで支店全体の緊張がほぐれるというか・・・
とりあえず、お前の存在は俺だけじゃなくて、
みんなの要になっていたと思う。
そういうところが・・・
なんというか、好きだった、
ずっと。」
そう言って、啓太はグラスに残っていたお酒を飲み干した。
「だから、俺は、今本当に幸せ。
ありがとうな。」
その言葉を受けて、なんて言葉を返せばいいのか、
小説家だから言葉を紡ぎ出すのは得意なはずなのに、
気の利いた言葉が浮かばない。
そして律子は言葉の代わりに
深く頷き、まっすぐ啓太を見た。
ーーーーーーーーーーー
その夜、
律子はベッドの中で啓太のことを考えた。
いつもよりたくさん。
啓太との楽しい思い出は同期として、友人としてのものが多かった。
でも、少し、心の はしっこの方が
キュっとなる思い出もたくさんあった。
真剣にパソコンに向かう啓太の横顔が、とても綺麗で見惚たときのこと。
資料がたくさん入った重いダンボールを持っていたら、
啓太が自分のカバンを放り投げてまで私のところに走ってきてくれたときのこと。
私が退職すると聞いた時、わんわんと声をあげて泣いてくれたときのこと。
・・・これ以外にもたくさん。
でも、思い出していく中で、
一番、胸がギュッとなったのは
【クリスマス】のときのこと。
啓太と遅くまで残業をして、
お互いクリスマスの予定がなくて・・・。
帰り道、2人で並んで歩いて帰った。
目の前の信号が赤になり、2人は立ち止まった。
その時啓太が、
「今日、ものすごく寒いな。
お前、俺のコートのポケットに手を入れてもいいよ、
俺のコートめっちゃあったかいから、ほれ!」
といってポケットを私の方へ向けた。
「今日、手袋を家に忘れたから助かるわー」
恋や恋愛とは無縁だった律子は、単純に寒さを逃れようと
啓太のポケットに片手を入れた。
「あれ?何か入ってるよ?」
律子はポケットの中で、手に何かが当たるのを感じた。
「え?なんだろ?」
啓太も首をかしげた。
律子が手に当たるそれを握って、
ポケットから出した。
そして、2人で律子の手をのぞきこんだ。
手にヒラに乗るサイズの
赤いリボンのかかった小さなプレゼントだった。
驚いて啓太の顔を見ると
嬉しそうに、そしてどこか照れくさそうに啓太は言った。
「メリークリスマス!」
律子は驚いて、嬉しくて、
子供のように、小さく飛び跳ねた。
「やったっっっ!」
中には、雪の結晶をかき集めたようにキラキラ光るピアスが^^
「明日、これつけて会社に行く!見てね!!絶対よ!
ほんっとに可愛い!!
ありがとーーー啓太!!」
満面の笑みを浮かべて喜ぶ律子に
啓太は顔を真っ赤にして、
「そんな喜ぶなよ、照れるわ!!」
そう言って顔をそらせた。
ピアスを自分の耳に近づけて、啓太をからかうように
「ねぇ、似合う??」
と近づくと、
チラッと律子の方を見て、
「あーーはいはい、似合う似合う」
そういって啓太はまた顔をそらせた。
その時の啓太の真っ赤な耳を
今なら鮮明に思い出せる。
啓太への想いが強くなってくる。
会いたいなー。
次いつ会えるかな。。。
律子はそう考えながら眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ついに最終回。
テレビの前にスタンバイ。
無事にここまで来れたことに律子は感無量。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
✴︎最終回10話の一部シーン抜粋✴︎
ーーーーーーーーーーーーーーーー
リコは思った。
ケイのことで悩んだり、涙したり
そんな時、いつもそばにいてくれたマサキが、
リコの中でとても大きな存在になっていることを・・・
リコはついに走り出した。
「マサキ!」
振り向くマサキに勢いよく抱きついた。
「大好き!
私はマサキじゃなきゃダメなの!」
マサキは強くリコを抱きしめる。
「本当に俺でいいのか?
絶対に、絶対に幸せにするから!」
リコは強く頷いた・・・
(Fin)
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー
無事最終回の放送を終えて
ホッとした時・・・
携帯が鳴った。
愛からだった。
「愛ーーーーー、お疲れーーー
無事終わってよかったねーーー
今度、打ち上げしよーよ、2人で^^」
愛と喜びを分かち合おうとした時、
「あんた!何言ってんのよ!!
メール見てないっしょ?!私が送ったメール!!」
電話越しに怒り狂う愛に怯える律子。
急いでPCを取り出し、メールチェック。
あぁ、これか!汗
メールを開くと・・・
『大人の都合で、年末放送を予定してたドラマがお蔵入りになったらしい。
だから、今回好評だった律子のドラマの続編を用意してほしいと依頼がきたよ。
おめでとう!!!
先方はリコとマサキのその後の甘々エピソードをご希望のようです^^
まずは今度の水曜日打ち合わせしよ!
1話30分枠。1話だけでいいらしいから、間に合うっしょ。
素案考えておいてね。ではまた!』
Σ(゜д゜lll)
「ごめん、今見た。。。
今からやる。」
そう言って電話を切った。
はぁ・・・大きめのため息が出る。
その時また電話が鳴った。
携帯の画面を見ると、啓太からだった。
「もしもしー、啓太?どした??
私の声、聞きたかった??」
今の自分の置かれた状況を忘れるほど、
啓太の電話が嬉しくて、ウキウキと電話に出た。
すると
「・・・」
少し間をおいて、
「そりゃそーだろ、彼女の声聞きたくて仕方なかったよ!
そーいやーさー、最終回見たよ・・・
明日会えない?」
「夜なら大丈夫!いつものところでいいかな?」
「おう!・・・じゃ、明日。」
さてーーー、続編どうすっかなー・・・
徹夜は避けられない。。。
事件は現場で起きている・・・そんな言葉が頭を駆け巡る。
リコとマサキのプロボーズのエピソードからの
新婚生活でFin これが王道だろーなぁ。
ストーリーをあらかたPCに打ち込む。
ーーーーーーーーーー
翌日。
愛との打ち合わせ。
昨夜徹夜で考えたエピソードにOK &GOが出たので、
年末ドラマ枠はギリギリ軌道に乗った。
ふぅ・・・
ホッとしたら余計に啓太に会いたくなった。
年末ドラマ枠が決まったことを褒めて欲しいなー、
欲を出すと、あわよくば、
頭をポンポンと撫でてもらいたいな・・・
と思ってみたりもしていた。
想像と妄想が頭の中をいっぱいにして
顔がニヤけてくる。
さて、準備を始めよっかな。
気合いを入れすぎか?と少し抵抗のあった
お気に入りのワンピースを選んだ。
いつもより濃いめにマスカラを塗って、
最後に、思い出のピアスを耳につけた。
鏡に映る自分の姿に、二度頷いて律子は家を出た。
いつもの居酒屋に着くと、
啓太はすでに席についていた。
「よっ!」
啓太が片手をあげた。
「よっ!!今日も、お疲れさまっ!!」
〜啓太、気づいてくれるかなぁ、今日のピアス^^
と胸を弾ませながら律子は席に着いた。
「あのね、今日、啓太に話したいことあったの!!」
乾杯をすると同時くらいに律子が嬉々と話し始めた。
「俺も」
啓太の顔は暗かった。
???
律子は啓太の見たことのない表情に困惑した。
「え?どうした?」
律子は手に持ったグラスをおいて、
啓太の表情の変化を見落とさないよう注意深く見つめながら言った。
「最終回・・・見たよ、
俺、てっきりお前がずっと俺のこと好きなのかと勘違いしてたけど、
お前、マサのことが・・・その、好きだったてこと・・・だよな・・・?
俺、空回りじゃん。恥ずかしすぎるよ・・・。
なんか、ごめんな、はやとちりして・・・」
???
あ。
律子の頭の中で、点と点がつながった。
頭脳は大人、見た目は子供、のあの名探偵のごとく
ピッと真相が見えた。
あの律子の代表作
『ありがたき溺愛 〜隣の席の彼が毎日口説いてくるので恋に落ちざるをえません〜』での
ヒロインはもちろんリコ。
あくまでケイは8話までリコが恋する相手。
9話以降はマサキに心が揺らぎ、最後はマサキとハッピーエンド。
・・・ざっくりあらすじはこんな感じ。
啓太はこう考えたのだ。
・リコ=律子
・ケイ=啓太
・マサキ=雅
→律子は当初啓太が好きだったが、本命は雅 と。
ちなみに、雅は律子たちと同期。
そして律子の記憶からは雅は消えていた。
ほとんど接点がなかったからだ。
そして、この物語はノンフィクションではないので、
名前に何の意味も隠されていない。
啓太をモデルにした話だと言ったのは嘘ではない。
啓太とのやりとりをそのまま使っている場面が多かったから。
そこの食い違いが起きていることを瞬時に悟った律子は
啓太に説明をしようとした、
「いや、それは・・・」
言いかけたところで、
啓太は席を立った。
追いかけようとしたところで、
熱々の餃子と焼き鳥が届き、
店員さんと律子があたふたしている間に
啓太は店を出てしまった。
はぁ・・・
いっちゃったぁぁ・・・
ま、あとで説明すればいっか!
そう安易に考え
律子は熱々の料理を口いっぱいにほうばることを優先した。
何でも楽観的に考える律子。
啓太ならわかってくれるという安心感がそうさせたとも言える。
ーーーそれから一週間ーーー
「ぁーーー、、、
あーーーーー、、、
あ゛ーーーーーー、、、」
言葉にできない心の声が溢れ出す律子に
「もーーーーーぉ!
何度も何度も!
ほんっとうるさい!」
とここ最近のため息の多さに苛立ち MAXの愛。
そんなに後悔するならあの時追いかければよかったじゃん!
と何度も何度も愛に叱られる。
そう、あれから、啓太と連絡が取れない。
啓太は私と連絡を取る気がもうないと見える。
「あのさ、もう仕事の話してもいい??
年末ドラマの件、順調らしいよ!
ぎっりぎりだけど間に合いそうらしい。
あと一週間でクランクアップ!
これで今年は仕事おさめかな!
2人で温泉でも行っちゃう??♪(´ε` )」
・・・
律子の目の色が急に変わった。
「ちょっと待ったーーーーー!!
愛ちゃん!!一生のお願い!!!」
直後、愛の悲鳴が聞こえたのは言うまでも無い。
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啓太の携帯がならなくなって一週間以上がたつ。
あの居酒屋を飛び出してから、
直後の一週間は携帯が鳴りっぱなしだった。
律子からのメッセージや電話(留守電含む)
「会いたい」「話したい」が毎日大量に。
仕事も忙しかったし、
しばらく律子のことから離れたいという気持ちから
一切返事を返してなかった・・・
・・・にしてもよ!
にしても、一週間で鳴り止まなくなるものかね!?
もっとしつこく連絡してこいよ!!
あのピアスつけてたから期待するじゃんかよ!(怒)
はぁ・・・(涙)
と、ならない携帯を握りしめる啓太。
そんな時
ピロリンっと携帯がなった。
はっ!としてソッコーでメッセージを読む。
《 今日23:00〜テレビで続編一夜限定でやるから見て(T ^ T) 》
短いそのメッセージの送り主は律子だった。
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23:00になった。
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✴︎特別編 一部抜粋✴︎
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マサキとリコが付き合いだして数ヶ月。
リコはマサキとの待ち合わせ場所に早めについた。
腕時計に目をやるリコ。
その時、ケイが現れた。
ケイを前にリコは驚いたが、
まっすぐ見つめることができず、目をそらす。
ケイはリコの手をそっと握った。
リコとの待ち合わせ場所に向かうマサキが
その様子を偶然見る。
マサキは心のどこかではリコの気持ちに
もう気づいていた。
でも気づかないように、必死に目を背けていた。
マサキは携帯を取り出し、
「リコの好きなようにしていいよ。ありがとう。」
そうメッセージを送り、2人に背を向けて歩きだした。
リコは握られた手を振り解くことはなく、
ただじっとケイの目を見つめる。
「ずっと素直になれなくてごめん。
もう遅いかもしれないけれど・・・
ずっと、好きだった。・・・これ・・・。」
とケイはポケットからダークブルーの小さな箱を取り出した。
リコが受け取り、その箱を開けてみると、
中にはダイヤのついた指輪が入っていた。
夜の街とリコの心が輝いた。
リコは目に涙を浮かべながら左手を差し出し、
ケイは自分の手が喜びで震えるのを自覚しながら、
そっとリコの薬指に指輪をはめた。
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放送終了後、すぐに律子から啓太に電話した。
でもやっぱり繋がらず。電話に出てもらえなかった。
ここまでやってもダメか・・・
自分の気持ちに気づくのが遅すぎた・・・
もっと、啓太からの気持ちに感謝をして、
啓太の気持ちに甘えなければ、
こんなことにならなかったのに。
後悔しても遅い。
落ち込んでいると愛から連絡が入った。
「啓太から連絡あった??
この怒涛の一週間が報われたか気になって・・・」
そう、今日の放送に向けて順調だったところを、
急にストーリーを変更したいと律子から申し出たのだ。
そこから律子と愛、ドラマ撮影班含めて大混乱!
それでも、今日の放送までこぎつけたのは
愛のサポートのおかげ。
律子はどうしても、リコとケイをくっつけたかった。
みんなに迷惑かけて、私、何やってんだろ・・・
ラストチャンスと思い、
啓太にメッセージを送った。
《 明日、19時、いつもの居酒屋で待ってる 》
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翌日19時
居酒屋にて。
啓太が来てくれるかもわからないのに、
30分も前からスタンバイしている律子。
19時になった。
ーーー啓太は来ないーーーー
はぁ・・・
律子は諦めて、ジョッキビールを一気飲みして、
すぐに店を出た。
しょんぼり駅に向かって歩く律子。
すると、後ろから
「りつーー!律子ーーーーーー!!」
と叫び声に近い声が聞こえてきた。
え??!あたし???
と振り向くと、
啓太が青春真っ只中のサッカー部か!? というくらいの全速力で
こちらへ走ってくるのが見えた。
びっくりして立ちすくむ律子に、
「お前、少しは俺を信じて待てよ!
5分くらい遅れたからって、先に帰るなよ!!」
と両膝に両手を乗せ、ゼーゼー言いながらも
必死に怒っていた。
その様子を見て、なんだかおかしくなってきて、
律子は爆笑した。手を叩いて笑った!
「何だよお前。」
愛おしそうに律子を見つめる啓太に
律子はうっとり見つめ返した。
そして、2人で横並びに歩きだした。
目の前の信号が赤に変わり、
2人は立ち止まった。
「ねぇ、啓太!
今日は冷えるねぇ。
ねぇ、ねぇ、私のコートのポケットに手、入れていいよ!」
いたずらっぽく笑う律子に啓太は
「あ、そぉ? では、お邪魔しますーーーぅ」
と片手を律子のコートのポケットに突っ込んだ。
「ん??なんか入ってる?」
事前に予測できていたかように啓太が首を傾げる演技をすると、
「何だろ??取り出してみてよ!」
とまたニヤニヤいたずらっ子のように笑う律子。
啓太が律子の期待通りポケットからソレを取り出した。
ハートのキーホルダーがついた鍵が出てきた。
「あげる。うちの鍵ぃぃぃぃぃ ♪(´ε` )」
部屋の合鍵だった。
「ははっ!サンキュ。じゃ、遠慮なくもらっとくわ!」
何ともないように見せてはいるが、
啓太の耳は真っ赤だ。
その様子を見て律子は満足そうに笑った。
信号が青に変わった。
歩き始めた2人。
次の信号も目の前でまた赤に変わった。
「またかーー今日は赤信号に引っかかるねーーぇ」
律子がほっぺを膨らます。
「そーいや、お前のポケットの中、もう一つ何か入ってたぞ」
啓太の言葉に
そんなわけないじゃん!と言わんばかりの顔をして、
律子は自分のコートのポケットに手を突っ込んだ。
・・・?
取り出すとそれは、
ダークブルーの小さな箱だった。
「・・・え?」
開けてみると中には、
ドラマと同じダイヤモンドの指輪が入っていた。
・・・。
驚きと嬉しさで言葉も出なければ体も動かない。
ただ、涙だけはポロポロと流れていた。
「ドラマでは、黙って左手を差し出してたけど?」
啓太が揶揄うように言った。
スンスンと鼻水を啜りながら、
律子は黙って左手を差し出した。
ドラマのように少し震える啓太の手が、小さな箱から指輪を取り出した。
そして、そっと律子の薬指へ・・・。
2人は見つめあって、
そしてすぐに照れくさそうに目を逸らした。
握った手は離すことなく。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
初めて短編に挑戦しました。
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