第3話「マガジン」
今日も灰色の世界の中にいる怜は、自分で買った「オートバイ」を広げて独りで昼食を食べていた。
いつものように無神経に茂樹がやってきた。
購買で”揚げジャムパン”が買えたと、ほくそ笑んでやってきた。
「おまえさぁ、今週の『マガジン』読んだ?」
茂樹はそう言うと、ギコギコ自分の椅子を引きずってきて怜の机の上に「少年マガジン」を無神経に広げた。
「一緒に読もうぜ。これおまえの分な」
そう言うと茂樹は怜に揚げジャムパンを手渡した。怜と並んでパンをかじりながら「マガジン」を読んだ。
「きゃろん☆彡」「スパ!」「ギュイーーーン!」「どひゃー!」
見たこともない独特の擬音だった。物語の主人公たちはオートバイに乗って青春を謳歌していた。
高校生のドキドキとワクワクのすべてが詰まっていた。
「俺、ぜったいこのカワサキz400GPに乗るぜ!」
口に入れた揚げジャムを吐き飛ばしながら、茂樹はバイク愛を熱く語った。
茂樹と「マガジン」は凍てついた怜の心をハンマーで叩き割った。
灰色の世界しか感じられなかった怜は、色を感じる心を取り戻した。
怜は毎週水曜日発売の「マガジン」と世界の色どりを手に入れた。
怜は原付免許を取りに行った。