第2話「オートバイ」
死ぬまで生きる事にした怜は二年生に進級した。先生は喜んだ。両親は怜に何も言わなくなった。
怜の新しいクラスメイトたちは学校の問題児ばかり。怜の灰色の視界ではそいつらも灰色に霞んで見えた。
怜はいつも独りぼっち。休み時間ぼんやり窓の外を見ていると、茶髪のチャラい奴が話しかけてきた。
チャラ男は周りに茂樹と呼ばれていた。茂樹はバイトばかりしていて授業もサボってばかりだ。いつも手に分厚い雑誌を持っている。
月刊「オートバイ」
雑誌の表紙には大型のオートバイに颯爽と股がるライダーが載っていた。赤やブルーにペイントされたピカピカのオートバイに怜の視線は釘付けになった。
怜の灰色の世界に「オートバイ」だけが鮮やかな色を纏った。
「おまえ、オートバイ好きだよな?」
茂樹が怜の机の上に月刊「オートバイ」を無神経に広げた。
何決めつけてんだよと言いたかったが、怜は「オートバイ」から目が離せなくなった。
茂樹は自分の椅子をガタガタ持ってくると、カワサキz400GPを特集したページを開いた。
これを買うためにバイトしているのだと怜に熱く語った。
怜の灰色の世界に茂樹が鮮やかな色を纏った。
その日、怜の灰色の世界に、「オートバイ」と「茂樹」だけが鮮やかな色を手に入れた。