第1話「不登校の少年」
高校受験に失敗した少年、怜は無気力に学校に通う高校一年生。
この春から通っている神奈川県立K高校に同中の友達はいなかった。
中学最後の一年は受験勉強の日々だった。友達はみんな第一志望のA高校のある隣町に行ってしまった。
来るつもりがなかった学校に通う毎日はつまらなかった。つまらない顔をしていると集まってくるのもつまらない奴らだ。
入学三日目にトイレに呼び出されてつまらないことになった。
来たい学校じゃなかった。怜は学校に行くのをやめた。
親と担任の若い教師、周りの大人は不登校の少年が面倒だ。
怜を学校に行かせないと気がすまない。
担任に頼まれて毎朝家まで迎えに来るイジメっ子たち。
両親は彼らに怜をお願いすれば安心した。
怜の言葉は誰にも届かない。
虐める奴らは感謝されて怜を虐める。
大人に褒められながら今日も怜をトイレに連れ込む。
友達にも大人にも、失望した怜の心は何も感じなくなった。
怜の視界は灰色になった。
なんだかもう生きていても仕方なくなった。
怜はつまらない人生を終わりにしようと考えた。
明日の朝、学校に行く途中の踏切で全部終わりにする事に決めたら、なんだか清々しい気持ちになった。
久しぶりに家族が揃った朝食で、怜は笑顔で学校に行くと両親に言った。
父親が泣いた。母親も泣いた。
怜の心はピクリとも動かなかった。
怜は、死ぬことをやめる事にした。なんだかすべてがバカバカしくなった。
その日も迎えに来たイジメっ子たちと学校に行った。
トイレでそいつらを殴った。泣いて謝るそいつらを無表情でただ殴った。
自分には何もないことに気づいてしまった怜に、怖いものはなくなってしまった。
いつ死んでも良い。
怜は死ぬまで生きる事にした。
怜は自由を手に入れた。