63.呪いのアンデットの誕生
ガルドルもそこまでは無謀ではなかったようだ。何が出てくるか見に行き、近づいたには近づいたが、何かあった時には、すぐに逃げられる距離だったと。
しかし突然魔法陣が赤黒く光り始めたかと思うと、魔法陣からこれまた赤黒い煙が一気に広がり、ガウドルは逃げる間もなく、その煙に捕まってしまったらしい。
すぐにその煙から出ようとするガルドル。魔法を使い煙を吹き飛ばしながら、そこら中を飛び回った。
だが、煙は少しは消えた物の。普通の煙の動きはせずに、どんどんガルドルの体に絡みつき、最後には完全に煙に包まれてしまったようだ。
そして煙に包まれた後は、少しの間大声を上げ、物凄く苦しんでいたため。他のドラゴン達はそれを見ていられず、何とかガルドルを助けに行こうとした。
しかしその煙に、かなりの危険性を感じていたウォット様に止められ。逆に離れるよう言われると、皆仕方なくガルドルから離れる事に。
そんな間も、苦しみ続けていたガルドル。変化が起こったのは、ドラゴン全員が後ろへ後退した時だった。
あれだけ物凄く苦しんでいたガルドルが、ピタリと動きを止め、叫ぶとこともなくなり。そのままガルドルは、どんどん地上へと落ちていった。それを見てみんなは、ガルドルはあの煙により殺されたと思ったそうだ。俺もそれを見ていたら、そう思うだろう。
だけど途中まで降下していたガルドルが突然止まり、赤黒い煙が今度は光り始め、最終的には全ての赤黒い煙が禍々しい光に変わり。あまりの禍々しさに、ウォット様以外のドラゴンは、動けなかったと。
そんな動けないみんなをよそに、次の変化が。ボタボタと光から何かが落ち始め。落ちた物を確認すれば、それは血と肉の塊だった。後でしっかり確認をしたらしいが、それはガルドルの物だったと。そう、ガルドルの血と肉の塊が、どんどん落ちていたんだ。
そしてそれは5分ほど続き、ようやく止まったかと思えば、最後の変化が起こった。光が中心に向かって集まり始め、集まった光は翼で目を隠さなければいけない程強く光り。最後その光が、爆発するように飛び散った。
それにはみんな、目を開けていられず、なるべく他のドラゴンと離れないよう、固まってその光に耐えたらしい。
どれくらいの時間が経ったか、そこまで長い時間は経っていなかったはず。だが体感ではかなり長い時間、目を閉じていたように感じたと。ウォット様にもう大丈夫だと声をかけられるまで、じっとしていたようだ。
そうしてウォット様に声をかけられたタイロン達は、目を開け周りを確認する。あれだけの強い光だっだから、どれほどの被害が出たかと、緊張していた。
しかし実際は、森も山も、何も破壊されておらず、いつも通りだった。
ホッとし、タイロンはウォット様を見た。するとウォット様は厳しい顔をし、何かを見つめていて。
タイロンも、他のウォット様の表情に気づいたドラゴン達も、ウォット様が見つめる先に目をやった。するとそこには……。
まだ少しだけ残っている赤黒い光と、骨だけになったガルドルの姿が。そして残っていた赤黒い光は、ガルドルの骨にまとまりつくと、ドンッ!! と衝撃派が皆を襲い。しかしなんとかその衝撃波に耐えながら、ガルドルから目を離さないでいると。
ただの骨だったガルドルは、呪いを振り撒く呪いのアンデットへと変化したんだ。あまりの事に皆、何も言えなかったと。それはそうだ、今まで共にいた仲間が、少しの時間で骨だけになり、挙句呪いのアンデットのまで変化してしまったのだから。
しかし、そのな誰も何も言えない中、喜んで声を上げていたのがラダリウスだった。これで奴らは自分の物だ、あの国の連中は、この呪いのアンデットで手に入れることができる。いやそれだけではない。奴らが手に入れば、世界を手に入れることも。
ハハハハハハッ!! ワシが世界を支配するのだ!! 今まで散々邪魔ばかりされ、何度も自分に無礼を働いてきた者達に、何でも言う事をきかせることができる。
こんな素晴らしいことを、何故最初からやらなかったのか!! これからは全て自分の物だ!! ガハハハハハハッ!!
そんなことを言いながら、ずっと笑っていたと。その姿がとても醜く、そして気持ち悪く見えたタイロン達。
そんなタイロン達を見て、ラダリウスがある行動に移った。それまでずっと笑っていたが、その気持ちの悪い感じのまま、まさかの呪いのアンデットに命令をし、タイロン達を倒すように言ったのだ。
そう、呪いのアンデットには意思はなく、ただただ呪いを振り撒きながら進んでいくだけの存在のはず。誰が何をしようとも、言うことを聞かないはずの呪いのアンデットに、ラダリウスは命令をしたらしい。
おかしいな事をすると思っていたのも束の間、何と意思のないはずの呪いのアンデットが、命令に従いタイロン達を攻撃してきた。そのためタイロン達は、元仲間のガルトルの呪いのアンデットと戦う事に。
その戦っている間に、ラダリウスは適当にドラゴン達を消したら、自分の元へ戻ってくるよう命令すると、転移魔法で転移したと。戻ってこいとは、どうやって自分の場所を分からせるのか、疑問に思いながらも、まずは呪いのアンデットをどうにかしなければならず。
そうして数頭の仲間を失ったところで、呪いのアンデットは命令通り、その場からどこかへ行ってしまったらしい。そしてそんな呪いのアンデットを、ウォット様は追いかける事になったんだ。




