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第三十九話

岩山は遠くから見るよりも規模が大きかった。

魔物の気配はない。

私たちはテントを張れるちょうどいい場所を探した。

「ここがいいわ!」

ラミラミは岩と岩の間にあるスペースを指差した。

「じゃあそこにしよう。」


私はテントを張り、あかりは夕食の準備に入った。

シロネはカバンから蛇の肉や持ってきていた野菜を出した。

ラミラミは近くにサソリがいないかを見回っている。


「お食事できましたよー!」

「やったー!お腹ペコペコ!」

シロネは大喜びで食事の前に座った。

「あれ?ラミラミは?」

ラミラミの姿が見えなかった。

─サソリにでも遭遇したのだろうか─


私たちが探すとラミラミは蜘蛛の巣のようなものに引っかかっていた。

「ネロー!助けてーー!」

私がラミラミを助けようとしたら奥から大きな蜘蛛が出てきた。

あかりは「イヤーーーー!!!」と言って逃げてしまった。

シロネが『中くらいのやつ』を出して蜘蛛を倒してくれた。


「ありがとう。羽がベトベトにくっついちゃって、動けなくなっちゃったの。」

ラミラミは自分に浄化魔法をかけていた。

あかりがそろりとやってきて叫んだ。

「シロネちゃん!!蜘蛛はダメ!絶対にダメ!!食べるのも持ち帰るのも禁止よ!!!」

「えー。うまいかもよ?」

「ダメったらダメ!!!ネロくん、これの存在を消せる?」

「え?うん。」

私はジナーに使ったキラキラと消える魔法を使った。


あかりはそれを見てやっと正常を取り戻したようだった。

「せっかくのご飯が冷めちゃうわね!早く戻りましょ!」

「ネロ、ここってもしかして…」

ラミラミは蜘蛛が出てきた方向を指差した。

「あれ?ダンジョン?」

そこはどうやら未開のダンジョンのようだった。


ご飯を食べながらダンジョンの話をした。

「明日行ってみようと思うんだ。」

あかりは蜘蛛が出てきたと言うことに拒否反応を示したが、シロネに「そんなこと言ってたら強くなれないよ。」と言われて承諾をした。

ラミラミは「単独行動はもうしないわ。」と言って、こちらにもトラウマが生まれてしまったようだった。


心配する2人のために強めの結界を張ってあげた。

「昨日も結界を張ればよかった。あかりのために魔物の討伐を優先しちゃったから。」

「えっと…眠っちゃってごめんなさい。明日はがんばります!」

私も寝不足だったのでその日は早めに休んだ。

結界の中は思いのほか快適だった。


────


翌朝、私たちは昨日みつけたダンジョンへと向かった。

シロネは枝を取り出して光松明を要求した。

「光る棒!だいすき!」

あかりにも渡して慎重に中に入っていった。


中は暗くて砂漠とは思えないくらい涼しかった。

あかりは先頭を行くと言うので任せた。

大きな魔物の気配はない。

「ここは涼しくて快適ね!」

ラミラミはご機嫌で私のフードの中にいた。


私のダンジョンのイメージ通り、中にはトラップがたくさんあった。

あかりの探知能力もなかなかなものでトラップにも気がついてくれた。

中は迷路のようになっていた。

あかりは『マッピング』と言って歩きながら地図を作るスキルを使った。

真っ白な紙に地図がどんどん描かれていった。

「すごく便利なスキルだね。」

「森で迷子になった話をしたでしょ?あの時にこのスキルを覚えることができたの。」

─勇者は死の危険に面するとスキルを覚えられるのか─


このダンジョンは地下へと階層を進んで行くタイプのようだった。

下へ行く階段をみつけ降りていく。

「ここに隠し部屋があるみたい。」

あかりは地図を見ながら壁を叩いて歩いた。

音の響きの違いで隠し通路をみつけていく。


頼もしくなったあかりを見て、悪魔のことを思い出した。

─今のあかりを見て悪魔はどう思うだろう─

何もできないただの人間だったあかりが、今ではこんなに勇者らしくダンジョンを進んで行っている。

お互いに敵対心はないと思うが、脅威に感じたりもしないのだろうか。


あかりはどんどん先に進んでいき、とうとう宝物庫のような部屋に出た。

明らかに怪しい宝箱が置いてあった。

私が止める前にラミラミは宝箱を開けていた。

すると宝箱の上の天井に魔法陣が出てきてラミラミはどこかへと消えていった。

─学習能力ってものはないのか─


「ネロ!ラミラミが消えた!」

シロネが叫ぶと同時にあかりはラミラミを追って魔法陣に入っていってしまった。

─やれやれ─

私とシロネもそれに続いた。


魔法陣の先はとんでもなく広い空間だった。

「あの宝箱、空っぽだったわ…ひどいわ…」

ラミラミは転移したことよりそっちの方がショックの様子だった。


「それよりもここ、暗くてよく見えないけど…」

「ネロ…」

シロネが珍しく震えていた。

「うん、すごくヤバい気配がするね。」


今までにない強い気配だった。

何も見えないが威圧感で押しつぶされそうな感覚がした。

「何かしら?魔物の気配とは違う気が…」

あかりはそう言うと天に向かって光魔法を放った。

あたりは明るく輝き、その奥にある黒いものをあらわにした。


「ネロくん…これって…」

「ドラゴンみたいだね。」

「わぁ!!でっかい!!!」

シロネは私の後ろに隠れて震えている。

「シロネ、これには勝てない。」

シロネがそんなことを言うのは初めてだった。

「ボクにも勝てるかはわからないや。」


私は大きな真っ黒いドラゴンをみつめた。

ドラゴンは微動だにしない。

今のうちに逃げるべきだろうか。


私が迷っているとあかりが「ドラゴンを倒すのは勇者よね!」と言って笑顔で剣をドラゴンに向けた。

─え、戦うの??─


剣を持つのがやっとだったあかりは筋トレの効果で振り回せるくらいになっていた。

「剣で倒すつもり?!」

振り回せるだけでうまく扱えるかといえばそうではない。


「アニメとかならこういう時は剣でグサッとやるでしょ?!」

「いや…だからって…」

あかりはなぜか自信満々にドラゴンに向かっていった。

私はそれを見送ることしかできなかった。


ドラゴンはあかりに気がつき、大きな翼を動かした。

強風が起きて、あかりは剣もろとも吹き飛ばされて戻ってきた。

「ネロくん…あいつ…強いわ。」

─そうだろうとも─


あかりはそれでも両手で剣を握りしめて向かっていった。

「あかり、やる気はすごいね。」

私の後ろから覗いていたシロネがそう言った。

─やる気だけはすごい─


あかりは何度も飛ばされては向かっていった。

それはドラゴンに遊ばれているように見えた。

しかし当の本人は汗だくになりながら絶対に剣を離さずに向かっていった。


飛ばされること5回目くらいにやっと、

「ネロくん、剣だけではどうにもならないみたい。」

と、あかりは諦めた。

私は黙って頷いた。

─そうだろうとも─


ドラゴンは威圧はすれど攻撃はしてこなかった。

「ねぇネロ、このドラゴン、やる気なし?」

シロネもどうやら気がついたようだった。

「ボクもそう思うよ。」

あかりは剣をバッグにしまい、ドラゴンに近づいていった。


「私は勇者あかり!はじめましてドラゴンさん!!」

あかりは何度も飛ばされたのに急に自己紹介を始めた。

「あなたは強いわ!降参します!!」

─勇者 敗北を認める─


その瞬間、地震のように地面が揺れた。

黒いドラゴンは一瞬で視界から消えた。

それと同時に大きな笑い声が聞こえた。


「なんだよお前ら!!久しぶりに誰か来たかと思えば…面白すぎるじゃないか!!」


そこには金髪に黒い角を生やした若い男性が腹を抱えて笑っていた。

「ドラゴン、どこいった?!」

シロネはキョロキョロとドラゴンを探した。


「我は黒きドラゴン、ブラドじゃ。勇者あかりよ。」

そう言ってあかりに手を差し出した。

「え?!あの??」

「潔い降参、見事であった。」

あかりはそのままブラドという男と握手をした。


「久しぶりの客人じゃ。ぜひ外の話を聞かせろ。」


そして私たちは奥にある明るい部屋に通された。

ブラドは私たちに椅子に座るように言った。

そこは応接室のようになっていてテーブルとソファが置かれていた。


────


ブラドはここに閉じ込められて数百年経つと話してくれた。

「昔、少しヤンチャをしてな。大いなる力によってここに幽閉されたんじゃ。」

見えない力が働いてこのダンジョンから出られなくなったのだという。


「ブラド、寂しかったね。」

シロネはブラドの頭を優しく撫でた。

ブラドはびっくりして泣きそうな顔になった。

「お前は我が怖くないのか?」

「ドラゴンは怖かったけど、ブラドは怖くない。」


シロネがそう言った瞬間、また大きな地震が起きた。

揺れはしばらく続き、大きな物音とともにおさまった。

「何か崩れたような音がしたわね?」

ラミラミが怯えて私の服の中に入ってきた。


ブラドの首についていた首輪のようなものが突然大きな音とともに砕けた。

私たちは何が起きたのかわからずただブラドをみつめた。


「おぉぉぉぉ!!!呪いが解けたぞ!!!わかる、わかるぞ!!我は自由だ!」


ブラドが言うには、

「大いなる力が我に呪いをかけた。この先、誰かに優しくされるまでここから出ることを許さないと言われた。」

ということだった。

「シロネ、えらい?」

「うん、シロネ、えらかったよ。」

私はシロネの頭を撫でた。


「じゃあそろそろボクたちは行きます。宝箱もみつけてないし。」

ラミラミが宝箱に反応して「そうよ!行かなきゃ!」と言った。


「宝箱とはこれのことか?」

ブラドは天井にあるそれを指差した。

そこには天井にめり込んだ宝箱があった。


ラミラミは反射的に宝箱を開けてしまっていた。

「きゃー!」

宝箱から出てきたものにラミラミは押しつぶされた。

─いや、重力とか考えようよ─


中には金細工に宝石が散りばめられた美しいティアラや短剣などが入っていた。

「すごいわね!お宝ね!」

「シロネ、食べられないから要らない。」

「ボクも興味ないや。」

ラミラミはあかりを見た。

「あ、私もなくて大丈夫です…」

「まぁ!じゃあしかたないから私がもらうわね!」

ラミラミは嬉しそうにお宝を私のリュックに詰め込んだ。


「お宝をみつけたってことはどこかに魔法陣が…」

「ネロくん、あそこに!」

部屋の隅に魔法陣ができていた。


「では失礼します。」

私はブラドに頭を下げて魔法陣へと進んだ。

「バイバーイ!」

シロネは手を振りながら魔法陣に消えていった。

私もあかりと魔法陣に入った。


転移した先はダンジョンの入口だった。

「無事に戻ってこられたね。」

私が安堵していると、

「外に出たのは何年ぶりじゃろうか!!」

と言って嬉しそうにしているブラドがいた。

─ドラゴンが世に放たれた─


私たちが驚いてブラドを見ていると、ブラドは笑顔でこう言った。

「我はお前たちが気に入ったぞ!我がお前たちを守ってやろうではないか!」


「えぇ??」


こうして私たちは5人になった。


────

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