第三十一話
私たちは宿屋でもう1泊することを決め、朝一番に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは朝から賑わっていた。
私たちは依頼書を出して報告をしたいと言った。
「これ全部ですか?」
「あ、はい。ここで出していいですか?」
「えーっと、そうですね…」
私がリュックから魔物を出そうとすると、
「ちょっと待ってください!まるごとですか?!」
「あれ?ダメでした?」
「いえ、普通は持ち帰られないので一部分だけ持ってきたりしますね。少しお待ちいただけますか?」
そう言うと受付の女性は奥に走っていった。
「まるごとじゃダメなのか。」
「解体したら食べられるのにね。」
すぐに受付の人は戻ってきた。
「こちらでお願いしまーす!」
進んだ先は解体場のようだった。
「俺はカイト、ここで解体の仕事をしている。お前が魔物をまるごと持ってきたって?」
「はい。ここに出していいですか?」
「おう!どんと来い!」
私はリュックから魔物をどんどん出して積み上げた。
大きな解体用のテーブルは魔物でいっぱいになった。
「これで全部かい?」
カイトは驚きながらそう聞いてきた。
「あの、一番でかいやつがまだいるんですが…出して大丈夫かな…」
「なんてやつだい?」
「えっと…ダッチハンブラー?でっかい猿みたいな牛みたいなやつです。」
私がそう言うと受付の女性が悲鳴を上げた。
「ギルドマスターを呼んできます!!」
「お兄さん、ダッチハンブラーはAクラスの魔物だよ。何かと間違ってないかい?」
「ちゃんと図鑑で確かめたんですけどね…」
「どのくらいの大きさだい?」
「どうだろ、シロネ覚えてるか?」
「えっとね、ここからーーーここまでくらい!」
シロネは部屋の端から端までを示した。
「だいたいそれくらいかと。」
私がそう言うとカイトは信じられないという顔をして、「じゃあ裏に行こうか」と言った。
建物を出ると裏庭になっていてそこには広いスペースがあった。
ここなら大丈夫だろうと、その魔物を取り出した。
「ひゃーーーたまげた!!!」
カイトはそう言うと笑いだした。
「確かにダッチハンブラーだ!」
牛のような体に猿のような胴体と頭がついている。
「こ、これは…」
受付の女性と小太りの中年の男性が後ろで驚いていた。
「マスター、こいつの肉は極上ですぜ!買い取ってくれ!」
「素晴らしい!ぜひ買い取ろう!」
受付の女性はギルドマスターの部屋に私たちを案内してくれた。
「どうぞおかけください。」
「リリーくん、目録を作ってくれるかね?依頼書の金額と買取額を足して、そこから解体費用を引かなくては。」
「はい、すぐに!」
受付の女性は『リリー』と言うらしい。
このギルドマスターは『ボック』という名札がついていた。
ボックは私とシロネのギルドカードを受け取り、調べていた。
「本当にレベル3なのかね?」
「あ、はい。多分そうです。」
「Aクラスの魔物はレベル7でも数人がかりなのが普通なのだがね…君たち見かけによらずすごいんだねぇ。」
ボックはどこでどのように討伐したのかを聞いてきた。
「首に目がけて弱いやつをこうシュッと出してね、ちゃんと血抜きしたよ!シロネ、えらいよ!」
私はシロネの頭を撫でた。
「えらいえらい。」
カイトとリリーが興奮気味に部屋に入ってきた。
「状態もいいし、素材もフルに使えそうですぜ!」
リリーは書き出した紙をボックに見せた。
「こんなに!お金足りるかな…」
ボックは金庫からお金を取り出した。
「すぐに回収できるとは思うが…君たちのせいで今このギルドは一文無しだよ!」
そう言ってボックは大声で笑った。
そして私たちは袋にいっぱいの金貨をもらった。
「次はいっぺんにじゃなくて少しずつ頼むよー!」
ボックはそう言って私たちを見送った。
ギルドのカウンターに行くと依頼をこなしたので冒険者レベルが3から5に上がっていた。
「また来てくださいね!」
リリーは私たちにギルドカードを返しながらそう言った。
私はペコリと頭を下げて外に出た。
「すごいわね!美味しいものをたくさん食べても使い切れないわね!」
ラミラミは大興奮だった。
シロネも嬉しそうだった。
「昼に食べれそうなものを買ってダンジョンに行ってみようか!」
私がそう言うとシロネは喜んだ。
ラミラミは不服そうだった。
「お宝がみつかるかもしれないよ。」
と言うと、ラミラミの目が輝いた。
「早く行きましょう!」
────
人の流れについていくとダンジョンについた。
新しいダンジョンはいろいろとお金になるのだそうだ。
そのダンジョンは岩山の麓にあり、山の中に入っていくような感じで入口がある。
私たちはたくさんの冒険者たちについていくように中へ入っていった。
ダンジョンの中は薄暗い。
冒険者たちは松明を持ってきていた。
「ネロ、あの火のやつある?」
「ない。」
シロネはカバンから枝を出してくれた。
先っちょに布でも巻けば松明のようになると思ったがちょうどいいものがなかった。
「まぁいいか、火をつけてみるよ。」
枝の先は細々と燃えた。
私は松明を諦めて光魔法を枝の先にかけた。
格段に明るくなり、松明に見えないこともない。
「ネロすごい!いいね!」
シロネは喜んで枝を持った。
火じゃないし、危なくないからいいだろう。
ラミラミはフードの中でおとなしくしていた。
少し進んだが冒険者が多くて魔物どころではない。
「ネロ、こっちからいいにおいがする。」
シロネはクンクンしながら行き止まりの壁の方へと歩いていった。
「シロネ、そっちは行き止まり…」
前を歩いていたシロネが急に消えた。
私は急いでシロネの後を追った。
「ひゃっ」
急に落下する感覚がした。
─落ちた─
私は風魔法でスピードを調節した。
─シロネは大丈夫だろうか─
どれくらい落ちたのだろうか。
真っ暗で何も見えなかった。
かなり深いところまで落ちた気がする。
やっと下で光の松明をブンブン振っているシロネが見えた。
「ネロ!落っこちたね!」
どうやらシロネは無事のようだ。
「シロネ、怪我しなかった?」
「うん、下がボヨヨンになってて面白かった!」
確かに足元は柔らかい気がする。
それになんだかもふもふしている。
なんだか嫌な予感がした。
フードではラミラミが震えていた。
真下から強い気配がする。
急に大きな地震のように揺れた。
そして地面は大きく動いて私たちは飛ばされてしまった。
目の前には灰色の大きな獣がいた。
丸っこいタヌキのような顔をしていた。
「こんにちは!」
シロネはそれに話しかけた。
「私が怖くないの?」
獣はいつかのシロネのようにそう聞いてきた。
─話をする魔物?─
「怖くないよ!シロネだよ!踏んづけてごめんね!!」
「大丈夫だよ。私はフルル。このダンジョンを守る精霊だよ。」
─精霊?!この大きなタヌキが?!─
私がイメージする精霊は虫のように小さい火の玉のようなものだった。
「いつも魔物と間違われて攻撃されちゃうんだ。ひどいよね。」
「そうなんだ、大変だね、精霊。」
「だから誰も来ない一番奥に隠れてたんだ。よくここまで来れたねぇ。」
「えっとね、ビューンって落ちたらついたよ。」
シロネは穴を指差した。
「空気穴から来たんだね。また人間が落ちてきたら困るから落ちないくらい小さくするね。」
フルルはキラキラと何かを出した。
私たちが落ちてきた穴はみるみる小さくなり、ラミラミがやっと通れるくらいになった。
「困ったな、どこから戻ろうか。」
私が穴を見つめているとフルルが答えた。
「隣の部屋が宝物庫だよ。宝箱を取ったらクリアだから入口にすぐ帰れるよ。」
宝箱と聞いてラミラミが出てきた。
「宝物庫!早く行きましょう!!」
「わぁ!天使だ!初めて見た!」
フルルはラミラミと目が合ったように見える。
「ラミラミ、見えない魔法かかってるよね?」
「もちろんよ。どうして見えるのかしら?精霊だからかしら?はじめまして、ラミラミよ!」
「ラミラミ!よろしくね!わぁ、かわいいなぁ〜!」
ラミラミは照れて赤くなった。
「かわいいだなんて、精霊のくせにわかる子なのね!」
「お友達の印にこれをあげるよ。」
フルルはラミラミにきれいに光る石を渡した。
「これって…まさか…」
「復活の石だよ。きれいでしょう!」
「すごいね!ラミラミ!よかったね!」
「こんな貴重なものもらっていいの?」
「いっぱいあるから大丈夫だよ。」
フルルはそう言って手の上にたくさんの石を出して見せた。
「確かにたくさんあるわね。じゃあ遠慮なくいただくわ。ありがとう、フルル。」
フルルは笑顔で見送ってくれた。
私たちは隣の部屋に向かった。
行き止まりになったが壁をすり抜けることができた。
「こんな見えないところに通路があるんだ。」
「だんじょん、おもしろいね!」
ラミラミはさっそく宝箱をみつけていた。
ラミラミが開けようとしたので「待って!」と言って止めた。
ゲームならここで人食い箱になる。
私は気配探知をして鑑定もした。
「大丈夫そうだね、開けていいよ、ラミラミ。」
ラミラミは嬉しそうに宝箱を開けた。
中には地図のようなものと鍵が入っていた。
「なにこれ、お宝じゃないわね。」
地図には宝箱の絵がついている。
「もしかしたら宝の地図かもしれないよ?」
「そうなの?!」
ラミラミの目がまた輝いた。
宝を取ると部屋の中に魔法陣が現れた。
─これで入口に戻るのか─
私たちはゆっくりと魔法陣の中に入った。
────




