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第三十話

今回の旅は毎日帰ることはせず、野宿したり宿屋に泊まろうと考えている。

それをガルに話すと簡易的なテントや寝袋のようなものを作ってくれた。

私はありがたくそれらをもらい、アイテムボックスになっているリュックに入れた。

旅の資金がなかったが、シロネが狩ってカバンに入れっぱなしの魔物たちがギルドの依頼になっていてそれを出すとお金をもらえた。

そしていつの間にか冒険者のレベルも1から3になっていた。


立ち寄った街はあの時の襲撃の爪痕を残していた。

しかし人々はたくましく、見事に復興を遂げた。

今では前にも増して賑わっているように見える。


私たちは資金も手に入れ、必要なものを買い、北へと進んでいった。


────


途中で王都に寄ることにした。

これはわざとで、いろんな店に寄り「北へ行く」と言いまくった。

王家の誰かがもし私の動向を見ているとしたら、これだけ言っておけば耳に入るかもしれない。

私を探そうとするなら北へ行くだろう。

─残してきた森の家には行ってほしくない─


途中で学校が見えた。

結界が張ってあるので戦争になったときでも攻撃を受けることはなかったと聞いている。

きっと先生方が死ぬ気で子供たちを守ったのだろう。


城の横を抜けるとき、人だかりができているのが見えた。

「ジナー王子様!!」

少女たちがキャーキャー言っている。

白い馬に乗ったその少年はまさしく『王子様』という格好をしていた。

とても美しい顔立ちをしていて女の子たちが騒ぐのもわかる気がした。


─あ、弟か─


私はもう一度振り返り王子を見た。

─ぜんぜん似てないや─


よく考えれば父親が違うのだった。

兄弟と言っても半分だけだ。

「ネロ、知り合い?」

「いや、知らない人。」

私は立ち止まることなく王都をあとにした。


────


王都から北へ行くのは初めてだった。

地図によればこの先に見える山脈が国境になっている。

かなり遠くなのだろうが今の場所からも山が見えた。

山の頂上には雪が積もっているようにも見える。

「ねぇ、ネロ。あの山を越えるなんて言わないわよね?」

「えっ?行けないかな?」

私はまっすぐこのまま突き進むつもりでいた。

「無理よ!道もないし、シロネは飛べないのよ?それになによりも…寒そうだわ…雪が積もってるじゃない…」

ラミラミは寒いのが苦手なようだった。

「確かに防寒具の用意はしてきてないね。困ったなぁ。」

地図には山脈を迂回するルート上に街があった。

「1度西に向かってここの街に行こうか。」

「そうしましょ!シロネもきっとその方がいいわよ!」

ラミラミはシロネのせいにしたいようだった。

「シロネ、雪見たかったなぁ。」

「北の国に行けば雪が降ってるかもしれないよ?」

私の感覚でいくと北は寒いイメージが強い。

「えっ??そうなの??陸地にも雪があるの?!」

─ラミラミは混乱した─

「楽しみだね!」

「そうだね。」

私も一面の銀世界は見たことがない。

ラミラミはしょんぼりして私のフードに入ってきた。

本当に寒いのが苦手なようだった。


魔物を狩りながら進んだ。

薬草や山菜も採った。

ラミラミはフラルやあかりの料理を恋しがったが私にはあれほどの料理は作れない。

アイテムボックスの中は時が止まるようで魔物や野菜を入れても腐ったりしなかった。

フラルにもらったトマトは大事に食べている。

─そういえば前に人間を入れたがなんともなかったな─

人間の時間も止まるのだろう。

あの中ではもしかしたら死んでいるようなものだったのかもしれない。

─生きてるものは入れないようにしよう─


テントでの生活は新鮮だった。

反対に家での生活がどれほど快適だったということにも気がついた。

普段の当たり前は当たり前じゃなかった。

もっと感謝すべきことなのかもしれない。


数日歩いてやっと目的の街が見えてきた。

「やっと宿屋に泊まれるわね!!何か美味しいものでも食べに行きましょう!」

「やったー!」

「そうだね、お金もあるし。冒険者ギルドにも寄ってみよう。」


その街は『ワンダ』という街でそこそこ大きな街だった。

国境に面しており、商人や冒険者の格好をしている人がたくさんいた。

「まずは宿屋を探そうか。」


宿屋は冒険者でいっぱいだった。

「すごいね、満室だったらどうしよう。」


「1部屋お借りしたいのですが空いてますか?」

「お客さんラッキーですね!最後の一部屋ですよ!」

宿屋の受付の女性はとても元気な人だった。

「大繁盛ですね。お祭りでもあるんですか?」

「あら、お客さん知らないの?この近くでダンジョンがみつかったんだよ!」

「へぇ。」

私は鍵を受け取り、2階の部屋に向かった。


「だんじょんてなに?」

「多分、モンスターを倒して攻略して宝箱をゲットするみたいなところ。」

私はRPGに出てくるそれを思い出した。

「もんすた?」

「あぁ、魔物のことだよ。」

「へぇ〜、シロネもだんじょん行きたい!」

私も少し興味があった。

「明日行ってみようか?」

「やったー!」


部屋は広くはないがきれいで居心地がよさそうだった。

ラミラミはフードの中でまだ寝ていた。

「ラミラミ、ついたよ。お風呂に入りたいんじゃないの?」

フードの中からラミラミは飛び起きた。

「そうよ!私はお風呂に入りたいの!!」

そう言ってラミラミは飛んでいってしまった。

「せっかくだからボクたちも入ってこようか。」

「シロネ、お風呂あんまり好きじゃない。」

「でも臭いとレストランに入れないかもよ?」

「レストランってご飯のところ?」

「そうだよ。美味しいもの食べたいでしょ?」

「うん!シロネもお風呂行ってくる!」

私はシロネにタオルと着替えを渡した。


この世界の宿屋はたいていが大浴場のようになっていて男女別の少し大きめのお風呂がついている。

時間が早いからか誰もいなかった。

私は久しぶりのお風呂にゆっくり浸かった。


────


サッパリした私たちは街を探索することにした。

国境に位置しているからか見たことのないものもたくさん売っていた。

「シロネ、これほしい。」

シロネが珍しくアクセサリー屋の前で立ち止まった。

それは白い何かの毛でできた尻尾のような形のキーホルダーのようなものだった。

─白いもふもふ─

無意識に何か感じることがあるのかもしれない。

私はシロネにそれを買ってあげた。

ラミラミも察したようで「よかったわね」と2人でもふもふしていた。


「冒険者ギルドも混雑してるなぁ。」

ダンジョン関係の依頼でもたくさん出ているのだろうか。

私たちは人だかりをすり抜けて中に入った。

依頼書を見ると知らない魔物や薬草の名前ばかりだった。

シロネのストックでどうにかなるようなものはない。

私たちは依頼を受けずに出てきてしまった。

「お金はまだあるし、大丈夫かな。」

「どうかしらね、次の街までどれくらいあるかにもよるかしら。でも今は何か食べましょうよ!」

確かにお腹が空いている。


私たちは賑わっている食堂をみつけて入った。

メニューには見たことのない料理名が書かれている。

「どれがいいかわからないね。」

「シロネ、あれがいい。」

私は他の人たちが食べている料理を指差して注文をした。


2人とも喜んでいたが私はフラルたちが作ってくれる料理の方が美味しいと思った。

─みんな元気かな─


好きなだけ食べた私たちの懐は一気に寂しくなった。

「お金足りなくなるかも。」

「魔物狩りに行く?」

「うん、行かないとダメそうだ。」

私たちはギルドに戻り適当に魔物を狩る依頼を数件受けた。

「そんなに受けて大丈夫ですか?!」

「アイテムボックスがあるので大丈夫です。」

「あ、はい、そうなんですね…お気をつけて。」

受付の人が変な顔をしていた。

─言い方がおかしかったのかな─


私たちは寝る前に依頼の魔物を捕まえた。

ギルドは閉まっていたので明日の朝持っていくことにしよう。

久しぶりのベッドはやはり寝心地がよかった。


────

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