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第二十七話

スプランは静かだった。

いつもなら見回りをしている兵士たちの姿はそこになかった。

サマルナの王都へと進軍したのだろう。


私は門番の兵士を倒し、城の中へと入っていった。

私は出てくる兵士を倒しながらあの地下へと向かった。

地下にはロージがいて、あかりは縛られて倒れていた。


「あかり!!!」

叫んだがあかりは起きない。

ロージはこちらに気がついて何か魔法を出そうとした。

シロネはロージに向かって『強いやつ』を出していた。

ロージは一瞬で消えてしまった。

私たちはあかりの元に駆け寄り、ロープを解いた。

ヤミの気配はない。


「あかり、大丈夫?」

「ん…」

ラミラミはあかりに治癒魔法をかけた。

「ネロ…ごめん…」

「あかり!」

「あいつは?」

「王のところへ行くって…」

「あかりはシロネが守る。ネロ行っていいよ!」

「私もここに残るわ!」

悩んだがここは2人に任せるしかなさそうだ。


私は王の部屋に転移した。

そこにはヤミとすでに息絶えた王がいた。


「やぁ、お久しぶりだね、ネロくん。」

ヤミは手についた血をハンカチで拭きながらこちらをニヤリとした顔で見た。

「なぜあかりを連れて行った!あかりは勇者なんかじゃない。ただの人間だ!」

「そうだね、本当に何もできないここの人間以下の人間だね。」

「お前はいったい何がしたいんだよ、ヤミ。」

ヤミは首を傾げた。

「さて、私は何がしたいのか…強いて言うならば君に会いたかったよ、ネロくん。」

「ボクに?何の用だよ!」

手を拭き終わったヤミはハンカチを捨ててソファに座った。


「私と君は似ていると思ったことはないかい?」

「髪の色と目の色だろ?それ以外はどこも似てないよ。」

「やはり気がついていたんだね。なぜ似ているのかわかるかい?」


私はその先を聞きたくないと思った。

こいつが言ってることは全部嘘だと思いたかった。


「私は君の父親だよ。」


聞きたくなかった。

こんなひどいやつが自分の父親だなんて。


「ボクは王家の子だ!お前なんて知らない!」

「わかっているくせに。サマルナの王が自分の父親なんかじゃないと。」

私はヤミから目をそらしてしまった。


「かわいそうに、生まれてすぐに母親に棄てられて、実の父には呪いをかけられて。あぁ、かわいそうなネロや。」

ヤミはクスクスと笑っていた。

何が楽しいのか私にはわからなかった。


「あなたはボクの大事な人たちを傷つけるの?」

「君の家族もどきたちかい?家族ごっこはさぞかし楽しかったんだろうねぇ。」

私はヤミの向かい側のソファに座った。

そしてヤミの目をまっすぐ見た。


「お前は私が怖くないのか?」

ヤミは急に真顔になってそう聞いてきた。

「怖くないよ。」

ヤミは明らかに不快な顔をした。

ヤミからニヤニヤ笑いが消えた。


「褒めてほしいのかな?でもお父さんはそんなこと望んでいないのだよ。だってお父さんは恐怖に怯える人間の顔を見るのが大好きだからね。」

─この男は狂ってる─


「そんなこと言われても恐くないよ。」

私がそう言うとヤミは指をくるくる回した。


ヤミの隣にあかりとシロネが現れた。

2人は突然のことにびっくりしている。

「2人を殺すと言っても?」

私は顔色を変えずにこう答えた。

「2人を殺させはしないよ。」

私はそう言うと2人を転移させた。


ヤミは少し驚いているようだった。

「そんな魔法まで使えるようになっていたとは…さすがは私の息子だよ。」

ヤミの顔が引きつるのがわかった。


「でももう家族ごっこは飽きたよ。それに息子がほしいだなんて思ったこともないのでね。」

ヤミは立ち上がろうとした。

しかし立ち上がることができないでいた。


「お前!何をした!!!」

ヤミは動けないとわかり激怒した。

私はこの部屋に入ってからずっとヤミに向けて結界を張っていた。

何重にも何重にもかけて動けなくなるまでかけた。

ヤミの意識は散漫でそんなことにも気がつかなかったようだ。


「お前を生かしておいたらきっとボクの家族が傷つけられる。そうでしょ?ヤミ。」

「お前の家族なんてどうでもいい!!」

「おやおや、震えているのかい?息子を目の前にして、格好悪いとは思わないのかい?お父さん。」

私はジリジリとヤミに近づいた。


「やめろ!父親を殺したら罰が当たるぞ!!!」

「へぇ、神様がいるなんて信じていたんだ。」

私はヤミの耳元で囁いた。

「さようなら、お父さん。」

ヤミはその瞬間破裂した。

ブラックホールを応用した逆の発想の新しい魔法だった。

「この魔法、試してみたかったんだよね。ありがとう、お父さん。」


私は水魔法と火魔法と風魔法を駆使して汚れた服や体をきれいにした。

窓の外からラミラミがこちらを見て泣いていた。

「ラミラミ、どうしたの?」

私は窓を開けた。


「ネロが…ネロが壊れちゃった。」

何を言ってるのかわからなかった。

私は私だ。

壊れてなんかいない。

最初からずっと私のままだよ。


「シロネたちを迎えに行こう。」

私がそう言うとラミラミは震えながら私のフードに入った。

私はシロネたちのいる場所へ転移した。


────


そこはシロネと出会った大きな木のある森だった。

「ネロ!!ラミラミ!!」

シロネとあかりは私をみつけると飛びついてきたり

「2人とも、怪我はない?」

「うん!」

「よかった。じゃあ、家に帰ろうか。」

「あいつは?倒したの?」

「うん。」

2人の顔に笑顔が戻った。


ラミラミはまだ震えていた。

そんなにヤミが怖かったのだろうか。

私は2人の手を取り森の家へと転移した。


────


帰るとみんなはあかりを抱きしめた。

「無事なのね、よかったわ!!」

みんなはホッとしたようだった。


私はすぐに結界を張り直した。

ヤミクラスになるとこれくらいの結界は一瞬で解かれてしまう。

「ラミラミ、結界をお願いしてもいい?」

「あ、うん。」

ラミラミの様子がおかしかったが私にはどうしてかはわからなかった。


その日は「あかりと寝る」と言ってラミラミはシロネたちの部屋に行ってしまった。

私は久しぶりに一人の夜を過ごした。

それは静かでいつもより真っ暗だった。


────


街の復興は進んでいた。

騎士団も兵士も王都へと引き返してしまったが街の人たちは負けなかったようだ。

みんなで力を合わせて元の街を取り戻そうとしている。

フラルとガルも積極的に復興の手伝いをしている。


王を失ったスプランはもう攻めてくることはなかった。

サマルナは報復を考えていたが先遣隊が見てきたものはスプランの荒れ果てた王都だった。

指導者を失った城はまったく機能していなかった。

王と王妃を殺され、子供のいなかったのもあり、指導者が全くいなくなった。

独裁政権の成れの果てである。


サマルナの王は報復をやめた。

そんな状態のスプランを相手にしてもなんのメリットもない。

そして王都も少しずつ復興していった。


森の家も日常を取り戻しつつあった。

街での惨状を忘れたわけではなかったが、いつまでも怯えているわけにも行かないと頑張っているのだろう。


私は暇をみつけては魔法の鍛錬に励んだ。

あかりを狙っていた人たちは全員倒したが油断はできなかった。


そんなある日、久しぶりの感覚があった。


悪魔からの呼び出しである。


────


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