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第二十四話

私はフラルの笑い声で目を覚ました。

私はなぜかシロネの部屋の床で寝ていた。

─そうだ、あかりに部屋を譲ったんだ─


ベッドが足りなくて私は元サイカの部屋の床で寝ることにしたんだった。

背中が痛い。

早急に対処すべきは寝床問題かもしれない。


私が居間に行くともうみんな揃っていた。

あかりはすでにこの家族に馴染んだようで朝食の支度を手伝っていた。

「おはよう、ネロ!」

みんなとりあえず複雑な状況は忘れることにしたようだ。

「おはよう。」

いつの間にか椅子が増えていた。

こういう時のガルは仕事が早い。


「人数が増えて楽しいわね!」

フラルは本当に楽しそうだった。

人数が増えれば仕事も増えるしお金もかかる。

それなのに嬉しいとは私には理解ができない。


「念のためダイたちに見られる前にあかりの見た目をどうにかした方がいいと思うんだ。」

私がそう言うと「確かに」と言ってラミラミがあかりに魔法をかけた。

あかりの髪色はみんなより少し淡い緑色にしかならなかった。

「どうして同じ色にならないんだろうねぇ。」

瞳の色も変わらない。

「パッと見ただけじゃわからないだろう。とりあえずいいことにしよう。」

フラルはそう言うとサイカの昔の服を出してきた。

「その服は素敵だけどこのへんじゃ目立つからね。」

「ありがとうございます。」

あかりは嬉しそうに着替えた。

髪色と服装だけでかなり目立たなくなった。


「とりあえず昨日急いでこの家にだけ結界を張ったんだ。でもそれじゃ窮屈だよね。」

「私ならこの辺一体に結界を張れるわよ!」

ラミラミは自慢げにそう言った。

「じゃあお願い、ラミラミ。」

「おまかせあれ!」

「あまり遠くには行かないでね、あかり。」

「はい!ありがとうございます!」


シロネはあかりの手を引いて外へ出ていった。

「ダイに紹介してくる!」

─なんて紹介するんだろうか─


私は急いでシロネのあとを追った。

「新しい家族だよ!この人はあかり。こーこーにねんせーだよ。」

「おはようございます。ダイです。よろしくお願いします。こーこーにねんせーってなに?」

「しらない。」

「あかりです。よろしくね、ダイくん。」

ダイはペコリとして両親の方へ走って行った。


「お母さん、こーこーにねんせーだって!」

「なにそれ?」

サリーは首を傾げていた。

「はじめまして、ダイの母親のサリーです。」

「あかりです。よろしくお願いします!」

サリーはあの水槽を見ていたはずだが、あかりに気がついていない。

ケンたちもあの水槽の少女がここにいるとは考えもしていないようだった。

─大丈夫そうだな─


シロネとダイはあかりの手を引いて畑を案内している。

「シロネ!遠くに行っちゃだめだよ!」

「はーい!」


少し心配ではあったが敵が現れてもシロネがやっつけてくれるだろう。

私はとりあえずシロネに任せることにした。

ラミラミは人数が増えたことを気にして「お金を稼がなきゃ!」と言っていた。

天使のくせにお金のことを気にする。

そっちの方は私に才能がないのでラミラミに任せることにした。


私がすべきことは決まっている。

『誰が何のために召喚したのか』を調べることだ。

あかりにはそこら辺の記憶がまったくないらしい。

ロージが「早く目を覚ましてください」と言っていたのと、あかりのことを『勇者様』と呼んでいたことは話してくれた。


私は気が向かなかったがスプランの城に行くことにした。

もう少し王を探る必要がありそうだ。

「ちょっと出かけてくるね。」

一生懸命ペンダントを作っているラミラミに声をかけて私はスプランに向かった。


────


いつものように透明化して城の中に潜り込んだ。

今日はこの前と違って兵士たちがバタバタとしていた。

─勇者が消えたからか─


地下へ行くとロージが水槽の前でうなだれていた。

「勇者様、どこへ行ってしまったのですか…」

どうやら勇者が目を覚ましてどこかへ行ったと思っているようだ。

近づいてきた兵士に命令していた。

「勇者様は完全には回復されていないはずだ!遠くへはいけないだろう。城の中をくまなく探せ!」

「はい!」


────


王の部屋を見に行くと王は怒っているようだった。

「ロージのやつ!何をしておるんじゃ!!早く勇者を探せ!!」

王はテーブルをバンバン叩いていた。

─頭悪そうな男─


私は隣の部屋にいた側近らしい男たちの話に聞き耳を立てた。

『本当に勇者なんていたのか?』

『ロージに騙されていただけなんじゃないか?』

『あの水槽の女だろう?あんな状態で逃げられるなんて思えないよ。』

『死んでしまったのをロージが隠してるに違いない。』


城の中には様々な噂が流れているようだった。

ロージという男はどうやら嫌われ者で彼を庇うような人はいなかった。

兵士たちも「いるわけない」と思いながら探すふりをしていた。

忠誠心もなければ勤勉性もなかった。

真面目に探しているのはロージだけのようだった。


ロージが王のところへ向かっていたのでまたついて行った。

「ロージめ!勇者はまだみつからんのか?!」

「申し訳ございません。奇跡的な回復でもう遠くへ行ってしまったのかもしれません。」

「なぜじゃ?!召喚した者の言うことをきくと言っておっただろう!なぜお主の言うことをきかないんじゃ!!」

「王様…申し訳ございません。しかし召喚したのは私ではございません…」

「なに?!わしに嘘をついたのか!この役立たずが!!誰が召喚したと言うんじゃ!」

「ヤミでございます。私では召喚しきれず、彼に手伝いを頼みました。申し訳ございませんでした!!」

「もうよい!お主はもういらん!」

王は指をロージに向けた。

「王…様…」

ロージはその場に倒れた。

口から泡を出して目は充血していた。

「目障りじゃ!はよ片づけよ!」

メイドたちは倒れたロージを運んでいった。

─殺したのか?─


しかしわかったことがある。

召喚したのは『ヤミ』という人物だ。

「ヤミをつれてまいれ!!」

王は顔を真っ赤にして怒っている。

待っていればヤミという人物がここに連れて来られるだろう。

私はおとなしく待つことにした。


程なくして髪の毛がボサボサのヒョロっとした背の高い男がやって来た。

彼は少しみんなと違った。

髪の毛の色がみんなより濃くて瞳の色が黒い。


─私と同じだ─


「ヤミよ!勇者はどこに行った?!」

「さぁ?」

「なんじゃその態度は!殺されたいのか!!」

「うるさいなぁ…」

ヤミは王に向かって指をくるくる回した。

王は口だけパクパクさせていた。

王に声を出せない魔法を使ったというのか。


「あれは勇者なんかじゃないぜ。何の力もないただの女だった。戦争させようだなんて考えたみたいだけど人間の一人すら殺せるか疑問だぜ。」

ヤミは王にそう言うとくるりと出口の方へ歩いた。


その途中でピタリと止まりこちらを向いた。


目が合った。


私は急いで転移した。


────


ヤミは私と目が合ってニヤリと笑った。

心臓がバクバクしている。

透明化を見破られたのは初めてだった。

─もう城にも行けないな─


しかしヤミの話しぶりからすると、『勇者は戦争のために召喚された』で間違いないだろう。

その相手が誰なのかまではわからなかった。


ラミラミが私を見て心配そうな顔をした。

「ネロどうしたの?!そんな顔して…なにがあったの?!」


私はいったいどんな顔をしているのだろう。

心臓が破裂しそうだった。

こんな気持ちは初めてだった。


─これが恐怖というものなのかもしれない─


────

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