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第十六話

ラミラミはよく喋る天使だった。

私のまわりをチョロチョロと飛び回り邪魔だった。


「ラミラミ、ボクね、悪魔に召喚されてこの世界に来たんだ。」

本当の事を言えばいなくなるんじゃないかと私は思った。

「へぇー!だから人間にしては強いのね!」

効果はなかったようだ。


「天使と悪魔って仲が悪いんじゃないの?」

「本当に何も知らないのね!天使と悪魔は住む場所が違うの!仲が良いも悪いもないわよ。お互い干渉することなんてないわ。」

意外な答えだった。

この調子だと悪魔に聞いても同じようなことを言いそうだった。


私は天使を追い払うことに失敗した。

諦めて今日は寝ることにした。

寝ようとしたらフラルがやってきた。

「これ、サイカが小さいときのものなんだけど。」

フラルはお人形用の小さな家具を持ってきた。

ベッドに布団、椅子にテーブル。

どれも木製でとても良くできていた。


「まぁ!人間のくせにいい仕事するわね!仕方ないから使ってあげるわ!」

ラミラミは嬉しそうにベッドを私の枕元に置いた。

そして布団を整えて嬉しそうにその中に入った。

フラルはその様子を見てとても嬉しそうだった。

「二人ともおやすみなさい。」

フラルは笑顔で明かりを消すと静かにドアを閉めた。


私はラミラミがいない方に顔を向けて眠った。

ラミラミはすでに寝息を立てていた。

天使は図太い精神力を持っているに違いない。


────


翌朝、フラルはテーブルの上にラミラミ用のテーブルと椅子を置いた。

食器は相変わらず小皿だったが今日は料理を小さく刻んで盛りつけてあげていた。

ラミラミは大喜びでおかわりまでしていた。


「じゃあいってくるね。」

私はフラルに挨拶して昨日の森へと転移魔法を使った。


昨日の森は相変わらず薄暗くて人間の気配はまったくなかった。

私は街道に戻り、東に向けて歩いた。

ラミラミは道中ずっと何かを喋っていた。

主に天界での暮らしぶりの話をしている。


「ラミラミはどうして地上に来たの?」

「それは…そんなこと、どうでもいいじゃない!ネロは私に会えて幸運だと思いなさいよ!」

「あ、はい。」

ラミラミは何かを隠しているような素振りをしたが深く追求しなかった。

特にそんなに興味もなかったからである。


街道沿いにもときどき魔物が現れた。

ラミラミはどうやら戦闘向きではないようだった。

魔物が現れるたびに私のフードに隠れた。

くすぐったいのでできればやめてほしかったが、また長々と何か言われそうなので言うのはやめた。


天使仲間の悪口と自慢話を交互に聞きながら、止まることなく進むと川が見えてきた。

想像よりも大きくて流れの早い川だった。

落ちると流されてしまうだろう。


橋は一つしかないはずだ。

今の場所からは橋の姿が見えない。


─北に行くか、南に行くか─


「どうしたの?ネロは飛べるでしょ?」

─確かに─


私は風魔法をうまく使って川を飛び越えた。

いつもより楽に飛べた気がした。

もしかしたらラミラミの効果があるのかもしれない。

川を越えた先に道はなかった。

ショートカットしたのだから仕方ない。

この世界の地図には道などの細かい記載がない。

街の場所がなんとなく記されているだけだった。


私はとりあえず1番近い街に行ってみることにした。

歩いていれば誰かに会えるかもしれないし。

しかし12歳の少年が一人で旅をするのはこの世界で普通のことなのだろうか。

怪しまれて補導されたりしないだろうか。

しかも実在しないと言われている天使を連れている。


私はラミラミを見つめた。

「な、なによ突然!いくら私が美しいからってそんな急に見られると恥ずかしいわ!」

ラミラミは顔を赤らめてそう言った。

「地上には何人くらいの天使がいるの?」

「えっ?そんなこと?どうかしらね…基本的に天使は天界から出ないものだから…ほとんどいないと思うわ。」

─それはまずい─


「あのさ、ボク目立ちたくないんだよね。ラミラミ、どっか行ってくれないかな?」

「はぁ?天使様にどっか行けってあんたバカなの?!守護天使は近くで守るから守護天使なのよ?!

それをどっか行けですって?!失礼にもほどがあるわよ!!!」

ラミラミは怒ってしまったようだ。

「でも子供がすごく珍しい天使を連れて歩いていたらみんなびっくりするだろうし、研究機関なんかに目をつけられたらラミラミが捕まっちゃうかもよ?

そこでいろいろ調べられて最後には解剖とかされちゃうかもよ。」

ラミラミは明らかに恐怖を感じた表情になった。


「そうね、私の美しさは隠しきれないものね。ネロやフラルたち以外には見えない魔法をかけるわ。」

─そんなことできたんなら、さっさとしてください─


「ありがとう。あとは人が近くにいるときは黙ってくれたら助かります。」

ラミラミは不服そうだったけど無視した。


私は未開の地をまっすぐ街の方へと進んだ。

丈の高い植物が生えていてジャングルのようだった。

小さな魔物がいたが敵対してこないものに関してはスルーした。

ラミラミは相変わらず魔物が苦手のようだった。


ジャングルのような草地を越えると開けた草原に出た。

「お腹がすいたわ。」

ラミラミは食いしん坊のようだ。

私はもう少し進みたかったがお昼ご飯にすることにした。

フラルがサンドイッチを持たせてくれたのだ。

草原でこうやってサンドイッチを食べていると昔のことを思い出す。

小学生の時にあった学校行事の遠足だ。

無駄に集団で歩かされ、たいして広くもない公園に子供たちが溢れ、お昼ご飯を食べてまた歩かされ帰るという、目的不明の行事である。

私はいつも黙って淡々と歩き、一人でお弁当を食べ、また黙って歩いて帰るというのが遠足だった。

しかし今日は違う。

ラミラミはずっと一人で何か喋っている。


話ができる対象が隣にいても私には何も変わらない。

やはり私には遠足の目的がわからなかった。


────


食事を終えた私たちは広い草原を進んだ。

歩きながらラミラミは花を摘んだり蝶をみつけて追いかけたりと楽しそうにしていた。

しかしそれにも飽きたようで今は私のフードの中で眠っている。


悪魔のところで真っ黒だった私の髪の毛はいつもの緑色に戻っていた。

服装もいつものフラルが用意してくれたものになっていた。

どういう仕組みでいつ変わったのか私にはわからなかった。

いつか悪魔がどれくらいすごいのかを調べてみたいと思っている。


数時間歩くとやっと道らしい道をみつけることができた。

道があるということはきっと街もあるだろう。

私は街のあるだろう方角へ道を進むことにした。


少し進むと畑が出てきた。

人が住んでいるということだ。

小麦のような植物がゆらゆら揺れている。

いつの間にか起きたラミラミはゆらゆら揺れる植物の中を飛び回っていた。

何がそんなに楽しいのか私にはわからない。


畑の向こうに建物が見えてきた。

街と言うには少し寂しいかもしれない。

小さな家が数件建ち並んでいた。

ここで情報を得るのは難しいかもしれない。


私は地図を見て次の行き先を考えた。

この国の王都は領地内の真ん中に位置しているようだ。

さらに東へ進めばつくだろう。

私はそのまま東へ進むことにした。


その小さな集落の中に入らないように畑の外側を歩いた。

「おや、旅の人かね?」

畑から中年の女の人がこちらに話しかけてきた。

「あ、はい。」

「なんだい、一人なのかい?この先は魔物が出るよ!」

集落の先に見える森のことだろう。

暗くなったら転移して帰るとも言えず、私がどうしようか困っていると畑の向こうからきれいな女の人が走ってきた。


「ネロ!お待たせ!」

どうやらこの女の人は私のことを知っているらしい。

「あぁ、お母さんと一緒なら大丈夫だね。気をつけてね。」

中年の女の人は畑作業に戻った。

私は走ってきた女の人に引っ張られてそのまま集落を抜けた。


「あの、あなたは?」

「ラミラミよ!気配でわからないの?!」

確かにそこにはラミラミの気配がある。

「変身できるの?」

「当たり前でしょ!私を誰だと思ってるのよ!!」

「へぇ。」

「これで子供の一人旅にはならないでしょ!」

「助かったよ。」

私がそう言うとラミラミは恥ずかしそうな顔をして黙った。

ラミラミはしばらく人間の姿でいてもらおう。


森の途中で夜になる気がする。

しかし少しでも進みたい気持ちもある。

私は行けるところまで行ってみようと思い、先に進んだ。

森の中はいつもより静かで空気が重く感じる。


─何かいる─


隣を歩いていたラミラミは天使の姿に戻り私のフードの中に隠れた。

ラミラミも何かの気配を察知したようだ。


────

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