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サクナ姉の社を掃除し終えて家に戻ると、夕霧が夕飯を作っておいてくれた。俺はエルフの正装をやめ、服をしっかり着る。家の中でくらいはゆっくり服を着たいものだ。そして、クルーシャと夕霧が両隣に陣取った。


「はい、あ~ん」


「いや、自分で食べられるよ」


「遠慮なんてする必要はないわ」


そういって夕霧は無理やり俺の口の中にご飯を突っ込んでくる。普通にめっちゃうまい。毎日食べているけど、味に飽きることはない。


「どう…?」


「美味い」


「いえ、そうじゃなくて、なんかムラムラしてきたりしない?具体的に言うと下半身が」


「いや、そんなことは全くないな」


「そう…」


夕霧が少しだけ残念そうにしていた。


その表情を見て俺は馬鹿だと思った。毎日、美味しいご飯を作ってくれる夕霧に対して感謝の気持ちが薄れていた。今のような淡白な反応では、夕霧だって自信を無くすに違いない。せっかく美味しい料理を作れるようになったのに、これではノブさんに追い詰められていたあの頃に戻ってしまう。


「ごめん夕霧、今の発言は嘘だよ」


「え?」


「めっちゃムラムラする」


「!そ、そうなのね。ちなみに誰にムラムラするのかしら?」


「え?誰に?」


夕霧が食いついてきたということは俺の答え方は間違っていなかったということだろう。ただ、誰にムラムラと言われると困る。


「センパイを困らせちゃダメだよぉ。それより、私の作った味噌汁を飲んでほしいですぅ」


「ぐは!?」


クルーシャが反対側に顔を向けて、俺の口の中に味噌汁を突っ込んできた。猫舌だから、一気に味噌汁を突っ込まれると色々大変だ。


「むぅ」


片目で夕霧を見ると、少し頬を膨らませてリスのようになっていた。


「どうですかぁ?」


「美味しかったよ」


普段は夕霧が作ったご飯しか食べていなかったので、新鮮だった。


「千年以上の年季が入ってそうな素晴らしい味噌汁だった」


「…そうですねぇ~」


熟練された技術の積み重ね、とてもじゃないが、そんじょそこらの人たちに作れるような代物ではないと思った。ただ、クルーシャの顔が引きつっているのはなぜだ?褒めたつもりなのに、何か気に障るようなことを言ってしまったのだろうか?


「それでムラムラしましたかぁ?」


「まぁうん」


そして、夕霧と同じ質問を受ける。そろそろムラムラってなんなのかを教えて欲しい。ホイホイの亜種かね?


コンコン


肩を何かが叩く。振り返ると、弟分のドローンがいた。


「どこに行ってたんだよ~」


俺は飛びついてきたドローンを抱きしめた。社から音沙汰がなかったが、すぐに戻ってくると思っていたから、心配してきた。


『すまぬ。転移に乗り遅れてもうた』

『それより、新ちゃんが服を着てるだと…?』

『普通のことやけどな』

『音声だけ聞こえてきたけど、夕霧さんとクルーシャ様が新ちゃんに媚薬を持ってるの草』

『そして、案の定効かないのね』


銀髪美女:『ワイが食べさせたいねん!むしろワイを食べて!』


『落ち着け』


「妾を置いて、好き放題しておるようだな」


「あれ?どうしたの?」


障子をバッと開けて現れたのはサクナ姉だった。両隣から「ゲッ」という声が聞こえてきた。胸の下で腕を組み、キセルを吹かしているその様は絵になるが、それよりもなぜうちにいるのかが謎だった。うち禁煙なんだけどな~


「ドローンとやらが、夕霧とクルーシャを感知してな。心配になって尋ねただけだ」


『自分の鏡魔法で新ちゃんの家に夕霧さんとクルーシャ様がいるのを知ったんやで?』

『そうや。ドローンには何も罪はないで』


銀髪美女:『なぜ兄さんの周りには女が集まるねん…そろそろ本気でブチ殺すぞ?』


『義妹ちゃんもその一人やけどな』


銀髪美女:『ワイが一番兄さんの隣に相応しいはずなんやけどな』


『それ、新ちゃんを狙う奴ら全員がそう思ってるはずやで?』


俺を置いて、夕霧とクルーシャがサクナ姉とにらみ合っていた。とてもじゃないが、俺が介入していい雰囲気ではない。そして、第一番に口を開けたのは、


「それで~サクナさんは何をしに来たんですかぁ?」


クルーシャだった。いつもの脳にこびりつくような話し方だったが、圧が凄まじかった。しかし、


「相変わらず猫を被っておるようだな、クルーシャ」


「な、なんのことですかね~」


大汗を流しながら、痙攣しているクルーシャを見て、サクナ姉が大仰なため息をついた。


「いい加減嘘をつくのはやめておけ。取り返しがつかなくなるぞ?」


『新ちゃんを好きな人全員に当てはまるなwww』

『嘘付しかいねぇしなwww』


クルーシャ相手にサクナ姉が追い詰めていた。流石の言い分に俺も少しだけイラっとする。


「サクナ姉、クルーシャは嘘付きじゃないよ。むしろ正直者過ぎて悪い大人に騙されるんじゃないかと心配なんだ。あんまり酷いことを言うと俺も怒るよ?」


「新也センパイ…」


『アカン、惚れそう』

『クルーシャ様も雌顔やな』

『でも、嘘ついてるのは事実やろ?』

『自業自得でもある』

『分かってないなぁ。女ってのは嘘を含めて守ってくれる男に惚れるんやで?』


「…初恋の妾を放って他の女を庇いおって」


「言うなよ!?」


俺の秘密を簡単にばらしてきた。夕霧とクルーシャを見ると、二人ともきょとんとしていた。良かった。何が何だか分かっていないらしい。


『他の女とイチャついてる新ちゃんを見て拗ねてるなwww』

『可愛い』

『ゴールラインを自分でスタートラインにしちまったのが悔やまれるな』

『それな。逆行しないといけない恋愛って初めて聞いたわ』

『二人の顔は何なの?』

『『その程度のこと知ってますけど』って顔じゃないの?』

『あ~納得』


「それより何か用事ですか?」


夕霧がサクナ姉に問い詰めた。圧のかかり方が半端ない。


「そう、むくれるな。夕霧よ。妾は新也に用があってきただけだ」


「用事?社の片付けならしたろ?」


「ついでにもう一つ用事ができただけだ」


「え~」


サクナ姉の用事って聞くと身が引き締まる。何を言われても碌なことではない。今までの俺の経験がそう警告している。


「な~に、簡単なことよ。妾もここで寝かせろ」


「「え?」」


なんだ、そんなことか。


「全然いいよ。部屋なら余ってるしね」


泊まるぐらいの要求なら大したことはない。サクナ姉の気まぐれだと思えば安い要求だ。


「そうか。それなら新也の部屋で寝かさせてもらおうか」


「なぜ、俺の部屋?」


部屋なら一杯余ってるって言ったのに…


「…気分だ」


サクナ姉は顔を逸らした。そして、障子を閉めて、さっさと俺の部屋に行ってしまった。四人で寝るには狭いが、ギリギリなんとかなる。どうせ断っても秘密を使って脅されるのだから、受け入れるに限る。


『新ちゃんズルいよ!』

『美女三人との同棲…』

『マジで代わってくれ…』

『義妹ちゃん、感想どうぞ?』


銀髪美女:『これからスレ立てるからそこに集合や、愚民共。議題は兄さんとクソ共をどうやって引きはがすかや』


『ええで』

『付き合ったるわ』

『ワイも暇やしな』

『重要なお願い』

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