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「花束みたいな恋をした」みたいな恋をした

作者: コニー


「元気でね」


私は君の肩を強く押して駅のホームへと歩き出した。


あの日から1ヶ月が経ち、あんなに君から離れたかった気持ちはどこへ行ってしまったのか。

彼のことを想っては、怒り泣いたたった3ヶ月の恋。

たった3ヶ月と言うけれど、されど3ヶ月。

私の人生の貴重な3ヶ月を彼に費やし、間違いなくそれは私の人生経験値を上げた。いやこれから上げるのだ。



「僕と付き合ってください」



満天の星空の下、2人の線香花火が落ち、海の砂浜での唯一のあかりが消えた。3回目のデート終わり、誰がどう見ても最高なシチュエーションで君は告白をしてくれた。


わかっていた。私のことを好きだから誘っているのも。それでもわかりたくなかったのは、きっと今までに、デートに誘われたからといって自分のことを好きとは限らない人に出会っていたからで。自惚れでもう傷つきたくなかったから。


そんな気持ちから、

「えー、気づかなかったよ。返事はちょっと待って。」


なんて逃げてしまったのだ。



私は5年間彼氏がいなかった21歳の大学生、彼氏がいなかったはなんだか違う、つくらなかったが正しい。 別に男遊びに全振りしていた5年間では無い。


前に付き合っていた人を引きずっていた期間と、次の人を見つけようと色んな男の人とデートを重ねていた期間。そこにちょっと遊んでた期間を足した5年だった。


さすがに自分の理想が上がっているのにも気づき、周囲からも彼と付き合ってみれば?なんて助言が飛び出す。



その2週間後、


「付き合ってあげる」


なんて上から目線な女なんだ。今思うと本当に最低で、その時から何か違ったのだろう。


「もー、素直じゃないな。これからよろしくね」


嬉しそうに笑う君と、久しぶりのこの感覚と恥ずかしさに耐えられず上を向く私。この日もまた、雲一つない星空の下にいたらしい。



それから、

私の21歳の誕生日を祝ってもらい、

お台場の海に行った帰りには月島のもんじゃを食べた、

今年初めての打ち上げ花火は多摩川で、

気持ちが先走り緑混じりの紅葉を見て、

私がずっと行きたかったクリスマスマーケットが最後のデートだった。


何がいけなかったのかと言われれば難しいが、強いて言うなら価値観が合わなかった。

よく聞く言葉だが、私はこれを理由に別れるカップルがよく分からなかった。でも、今ならわかる。価値観が合わないのは当たり前で、それをぶつけ合ってもなお一緒にいたいという気持ちが弱かった。


好きじゃなかったんでしょ?そう言われるとそうかもしれないが、付き合ってる時は彼を想っていたし好きだった。

好きだから相手のために尽くす、その一方で求めてしまったことで喧嘩が絶えなかった。


そんな喧嘩ばっかりの日々に疲れ果てて別れた。自分が相手のために変わることを諦めたのだ。一緒にいても喧嘩して自分が疲れる。


きっと、自分のことが1番好きだったんだろう。君も。私も。





別れ際、部屋にあった荷物と一緒に手紙を入れた紙袋を手渡した。君は手紙が嫌いだった。


付き合った当初から、


「手紙って自己満で、もらっても困るんだよな、LINEでいいし」


何気ない一言が私の心に残り続けていた。けど、最後くらいは自分の好きなことをしようと思ったが、書きながら涙が出た、


「手紙嫌いって言ってたもんね、読んだら捨ててもいいよ」


最後まで思ってもない言葉を並べた。





ポケットに入っている携帯が震え、それが一通のLINEの通知を知らせる。


「手紙が嫌いな理由言ってなかったね。気持ちがすごく伝わって涙が出ちゃうから。泣いたらかっこ悪いでしょ、泣きたくないってだけ。」



電車で人目もはばからず泣いた。きっと、手紙を読んでLINEを送ってきたんだろう。君の気持ちに気づくのが遅かった。そのLINEは、まるで今までの答え合わせをしているようだった。


それから、今まで寂しかったことや悲しかったことを打ち明ければ、私の気持ちに気づけなかったことと、空回りして何も伝わっていなかった事に悔やむ君。あの時のあの言葉や行動には、君の強がりと不器用さでいっぱいだった。


クリスマスなんか興味無いと言っていながら、私にはこっそりクリスマスプレゼントを用意してくれていた。


放任主義と言っていながら私が男女で遊びに行くことに口出しをした時は、一緒にいる男の子が私に好意があることに気づいていたから。


君が本当に想っていたことや素直な気持ちは、そうやって別れた後に答え合わせされたのだ。もし、もっとはやく付き合っている時に答え合わせが出来ていれば何か違ったのかな?なんて、、、

家系ラーメン屋にて、カウンター席から追加注文した大盛りライスを待ちながら1人そんなことを思っている。





涙と麺がすすり終わった頃に、左手に握っていた携帯がまた震えた。


「手紙捨てていいよって書いてあったから捨てた」


絶対にそれは言ってこなくていい。あぁ、そうだ、私はこんな君と付き合っていたのだったと頭を抱えた。


「この手紙でたくさん泣いた、この手紙があるといつまでも忘れられなくなっちゃうから」


なるほど。やはり、私にはそこまで自分の気持ちを素直に言ってくれないと伝わらなくて、今までも同じように傷ついてきたはず。きっとこれからも。


それから、私は自分の気持ちを素直に伝えてくれて包み込んでくれるような人と一緒になって、君は君のように淡白で隣にいてくれれば良い人と一緒になれば幸せだろうという話で落ち着いた。




別れ際にありがちな言葉、


「幸せになってね」


なんて余計なお世話だ。なるに決まってるし、幸せになりたくて君と一緒にいたのだ。 私も君の幸せは願っているが、私という女を手放してさっさと幸せになられたら、こちらもたまったもんじゃない。


「元気でね」


これが強がりな私の限界だ。


好きだけじゃ一緒にいられない、そんなセリフはSaucy Dogの「煙」だけかと。

まさか自分がその立場になるとは思ってもいなかったが、少なくともこの恋愛は私を強くしてくれたことには変わりない。君という存在と恋愛を通して気づかされたのだ。幸せになるために一緒になる手段もあるが、幸せになるために離れる手段もあるみたいで。


私は君じゃダメだろうし、君も私じゃダメでしょ?


「幸せになってね」


なんて、最後まで良い彼女になろうと思ってもないことを言いたくない。



「幸せになろうね」




今まで自分の経験を映画に出来たらな良いな、と思いながら日々過ごしているただの女子大生です。たまたまこのサイトに出会って、自分の経験を誰かに伝える手段として使わせてもらいました。


自分の気持ちを1人で閉じ込めて置くのもいいけど、誰かと共有できたら良いなと思い星空の下で書いています。 どうか、君のもとにだけは届きませんように。コニー。

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