アレはやはり密会?
それにしても、なぜロバートとキャロルは温室にいたのだろう?
あの日、吹雪いていた。天候は最悪。ふつう宮殿内で会うのではないかしら?
違和感しかない。
たとえば、偶然会うとすれば廊下や大広間や居間で。キャロルが一方的に押しかけたのなら、ロバートの執務室で。どちらかで会うはず。
それなのに、ふたりは温室で会っていた。
温室は、いまはまだ開放していない。そもそも、その存在じたいかぎられた者しか知らない。もちろん、ロバートは知っている。温室を思いついた時点で彼に相談し、許可をもらったのだから。
ということは、逆に温室は密会をするにはもってこいの場所ということになる。
くどいようだけど、あの日は悪天候で温室も含め野外での作業は行われていない。
つまり、温室を管理している庭師と栽培業者などが訪れる可能性は少なかった。
わたしは、たまたま時間が空いたから様子を見に行ったにすぎない。
では、やはりロバートとキャロルは密会していたというわけ?
その推測にいたったとき、胸の辺りがチリチリ痛み始めた。
そうよね。いくら気に入らない相手だとしても、頻繁に迫られれば情がわくかもしれない。
というか、ロバートにとっては、マット同様キャロルも幼馴染。なにせマットとキャロルは、双子の姉弟なのだ。
(ロバートは、表面上は嫌がるふりをしていてもじつはキャロルのことを想っている?)
もしかしたら、ロバートもキャロルもおたがいに相手を嫉妬させたいのかしら。
ロバートはわたしと、キャロルはジャクソンと、それぞれ表向きの結婚や婚約をすることで、相手を嫉妬させたい。
(ちょっと待って。別にいいじゃない? ロバートとキャロルがほんとうは愛し合っているのだとしても。わたしにはどうでもいいことよ。いえ、待って。どうでもよくないわね。ロバートとキャロルが晴れて結ばれることになったら、わたしは用済みになる。ということは、すべての計画が頓挫してしまう。とはいえ、ふたりの恋路を邪魔をするわけにはいかない。それどころか、応援しなくては。だけど、やはりムリ。すべてを諦めることは出来ない。ロバートとダルトリー王国の人たちには恩返しを、祖国の人たちには罪の償いをしたい)
自室内を行ったり来たりしながら、あれやこれやと思案を巡らせる。
胸の辺りのチリチリとした痛みは、どんどんひどくなっている。
「とにかく、ロバートが戻ってきたらまずは謝罪ね。それから、契約期間がいつくらいまでかの確認をする。契約期間が終わったら、わたしを雇ってもらうようお願いするの。いいえ、違うわね。着手している計画、いまから着手する計画。まだ構想段階の計画。これらの継続をお願いする。わたしがいなくても、ロバートが引き継いでくれるよう頼むの。実際は、モーガンとケニーとテッドたちがやってくれるはずだから」
わたしがいなくても大丈夫。みんなが協力してやり遂げてくれる。
そう結論付けると、ほんのわずかだけど光明が見えてきた。
「って、わたし? ここから放り出されたら、とりあえずはどこか住み込みで働けばいい」
わたし自身のことはどうにでもなる、と思う。
「いけない。約束のことを忘れていたわ」
モンモンと考え込んでいたものだから、約束のことをすっかり忘れていた。
姿見で恰好だけ確認した。
紺色のジャケットに同色のズボンを着用している。
わたしのマナーの講師でもあるライラには、わたしの恰好は「男性みたい」と不評である。しかし、個人的には男性とやり合うにはこの恰好がやりやすい。皇妃時代も同じような恰好でやり合っていた。
やり合うというのは、当然のことながら政治的なやり取りである。
けっしてロマンチックでもほんわかなやり取りでもない。
「恰好、これでよし」
自分の恰好に自分で承認し、部屋を飛び出した。




