ハラスメント問題
このダルトリー王国の王宮に勤務する侍女たちは、最上級の侍女をのぞき、基本的には王宮内にある使用人たち専用の宿舎に寝泊まりしている。職場内で結婚した場合、その相手が貴族や官僚などではないかぎりは家族で暮らせる宿舎も準備されている。
侍女向けの単身者用と家族向け用の宿舎は、侍女長のライラが官舎長を務めている。執事やその他男性用の単身者用の官舎長は、執事長のオスカーが務めている。
メリッサは、もちろん単身者用の宿舎で寝泊まりしている。
ところで、侍女の中にも上級と下級がある。その身分の差は、激しく厳しい。
虐めやいびりが平気で横行しているし、意地悪や悪意のあるいたずらや冗談もまた日常茶飯事。派閥やグループに別れ、ケンカや諍いが多い。
侍女たちの多くが本来の仕事をしてくれている。が、虐めなどが本来の仕事に差し障ることがある。
身分の違いで起こるだけではない。だれの専属なのか、メインの仕事がなになのかでもそれらは起こる。
なにがいいたいかというと、メリッサは下級侍女である上に王宮内でも評判の悪い「ちんまりの出しゃばり悪女」、つまりわたしの専属を務めている為、標的にされやすい。
が、彼女は強い。わたしに毒されてきたのか、最近ではやられたらやり返している。
まだ侍女になった頃、彼女はそういった虐めやいびりに涙をこらえ、拳を握りしめて耐え忍んでいた。が、いまは違う。口撃し、論破し、相手の心が折れるまで執拗に攻めるのである。
何度も止めなければならなかった。立場上、そうしなければならないから。
相手の侍女たちは、いずれも涙を流したり嗚咽を漏らしたりしているのである。
心ならずもではあるけれど、メリッサを止める以外にない。
というわけで、彼女は強くなった。とてつもなく強くなった。
その彼女の強さを見、他の下級侍女たちもじょじょに強くなってきている気がする。
それはそれでいいことだと思う。
が、残念ながら虐めやいびりは侍女たちの間だけにあるものではない。
王宮内にいる、たとえば王族や執事、王宮に出入りする貴族や官僚やその他もろもろの人たちからも、そういう仕打ちを受けることが多々ある。
はっきり言うと、貴族や官僚たちの侍女たちへの扱いがひどすぎる。
本来は、王族が雇っている侍女たちなのである。王族以外の人たちは、侍女たちにたいして節度ある態度を取る必要がある。
もっとも、王族が雇っていようが自分自身が雇っていようが、節度ある態度は取らなけれはならない。
が、彼らはそんなことはお構いなし。無理難題をふっかけ、理不尽なクレームをつけ、過酷な試練を与える。
上級下級にかぎらず、侍女たちはすっかり困ってしまっている。
その侍女たちを統べる侍女長のライラの心痛は深く大きく、彼女自慢のメガネの下の眉間には、いつも何本もの皺が刻まれている。
遠まわしでわかりにくい表現をしてしまったけれど、それらの最重要にして最難題の問題というのが、セクハラまがい、いいえ、性的虐待まがいのことなのである。
だからこそ、微妙で深刻な問題というわけ。




