勧誘
ありがたいことに、モーガンはわたしの話を真剣にきいてくれた。契約だろうと雇用だろうと、王太子妃であることにかわりはない。というわけだから、モーガンも話をきいてくれたのだろう。
モーガンは、ただきいてくれただけではない。いろいろ質問をし、反論した。
ふたりで真剣に議論を交わした。それこそ、ケンカ腰で舌戦を繰り広げもした。
妥協はなし。ふたりがたがいに納得いくまで話し合った。その上で、つぎはロバートに相談した。
「ふたりで検討した上で話をしてくれたんだろう?」
ロバートの執務室でのこと。
ロバートは、執務机の上の書類から視線を上げてからモーガンとわたしを交互に見た。
その問いに、モーガンと同時に頷いた。
「だったら、その通りにしよう。陣営固めのことも公爵たちのことも、ふたりで散々検討してくれたのだろう? だったら、あとは実行に移すべきだ。しかも、早急にな」
あっという間だった。
「ロバート、ほんとうにいいの? もしかしたら、モーガンとわたしの詰めが甘いかもしれない。それどころか、まったくの考え違いをしているかもしれないのよ。それを、そんなに即答して大丈夫?」
あまりにもあっさりと認められたから、おもわず確認してしまった。
「ああ、もちろん大丈夫だ。恥ずかしながら、おれは政務に疎すぎる。それから、無責任でもある。ユア、きみは祖国で様々な政敵と戦い、立派に治めていた。モーガン、きみには軍務と並行して政治的な駆け引きや手配を任せていた。そのきみたちが検討に検討を重ね、議論や口論を繰り返しておれに話してくれた案だ。ぜったいに間違いはない。おれがだれよりも信頼し、尊敬するふたりの案だからな」
ロバートは、そう言ってモーガンとわたしをおだててくれた。
とらえようによっては、彼は無責任ともいえる。自分でも調べ、確認し、疑問を呈したり詰め直しをしたりをすべきである。が、彼はそれらをいっさいしない。
だけど、いまの彼はそれでも仕方がないのかもしれない。なにせ彼は、いまから学んでいかなければならないのだ。いまは、わたしたちに任せるというスタンスでもいいかもしれない。
それはともかく、正直なところこれだけ信頼してくれているのがうれしすぎる。というか、照れ臭い。
ロバートの承認を得た翌日には、メリッサとザカリーを通じて本人たちに打診をした。
四人とも、まるで降ってわいたような出仕の話に驚いた。それから、信じなかった。が、ほんとうだとわかると拒否した。
「自分にはそういう資格はない」
「経験はもちろん知識がない」
「畏れ多すぎる」
「自信がない」
四人とも、おおよそ似たようなことを言って。
それをモーガンとわたしとで説得した。
そうして、晴れて四人の出仕が決まった。
内務副大臣のホレスと内務大臣のウオーレンとは、別々に会った。
初対面ではない。
わたしがこの王宮にやって来たばかりのとき、国王や王妃と顔合わせと称する見世物があった。その際、彼らも参加していた。
ホレスとウオーレンの見た目は、「渋い二枚目」である。どちらも背が高くてスラッとしている。どことなく、似た感じがする。
まず、「変わり者」のホレスと会った。場所は、ティールームのひとつ。この宮殿には、大きなティールームと小さなティールームがある。公式の大人数用。それから、密談用の少人数用である。
この日、彼は乗馬服姿で現れた。この前のときは、正装だった。さすがの「変わり者」も、国王と王妃の前ではきちんとしているらしい。
ということは、わたしは舐められているということかしら? まぁ、軽んじられていることは確かかもしれない。
適当に挨拶をし、さっそく本題に入った。
公表されている資料について質問や疑問をぶつけ、ときには不信感や疑惑を呈した。攻めたり責めたりしもした。逆に、讃えたり感心したりもする。緩急自在な話術でもってホレスを翻弄する。
同席しているモーガンとドナルドとケニーとテッドは、そのわたしの独自のスタイルに見事についてきている。
陣営に加わってくれた四人は、その直後からずっと学んでいる。すべてを叩きこんでいる。それこそ、寝食を惜しんで資料にかじりつき、モーガンやわたしにまとわりつく。
彼らの姿勢に、モーガンとわたしも負けてはいられない。自然とムリしてしまう。
そんな中でのホレスとの対談である。




