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「はい終わり〜〜!友達からの反応楽しみだな〜」
「趣味悪いなお前」
「君の口も充分悪いけどね」
「うっせ」
あれから1時間がたったころ、ようやく訃報の投稿できたらしい。
その証拠に、あやは両手を頭の上で組んで背伸びをしていた。
「……そんで、この後はどうすんの?」
帰りたいという思いを込めて言うと、
「そりゃー、自分の葬式行くほかないっしょ!」
あやは俺の願いを無視して、家を飛び出した。
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「おぉ〜みんな服真っ黒じゃん」
「そりゃ日本の葬式だからな」
変なことで感心するあやと、なんとかあやに追いついた俺。
葬式では全員下の方を向いていて、重苦しい空気が充満していた。
それなのに……
「あ、いとこの兄ちゃんだ!久々だねぇ」
「へぇー、私にひいおばあちゃんなんていたんだ」
「お花綺麗だなぁ」
なんて様子で超楽観的。
「あのさ、きみ日本生まれなんだし、空気を読むってことしたら?」
もはや不快にさえ思えて、睨みをきかせながら言うと、
「えー、死んでるしそんなん関係ないじゃん!!」
(名前)は、俺の気持ちには1ミリも気づいてない様子で答えた。
「……そうだけどさ」
けどやっぱ、
ここまで楽観的だと、少し心配になる。
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長い間色々な生き物を見てきた。
そんな俺の経験上、1つの感情の振り幅だけ大きい人はいない。
喜びの感情の振り幅が大きいやつは、その分悲しみの感情の振り幅だって同じくらい大きい。
ひどいくらいに明るい性格をしているあやは、葬式のときには大泣きすると、勝手に思っていた。
でも、予想は大はずれ。
あやは、母親が大泣きしながら生前のエピソードだとか語っても、涙の一粒も見せない。
むしろ、私はここにいるのにーとか言ってけらけらと笑っていた。
「……あやさ、本当に心残りとかないの?」
不思議すぎて、思わず聞く。
あやは小さく首をかしげて
「ないよ?」
と言う。
「……そうか」
俺は違和感を抱きつつも、納得してしまった。
だからこそ気づかなかった。
あやの、空気に溶けこんでしまうような、
でも、飽和するような、濃度の高い声を。
「ましろがいない……」