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Birth die Present.  作者: 間宮しろ
1/8

◆◇◇◇◇◇◇

「カイルー仕事入ったぞー」


「はぁ?俺、昨日休暇に入ったばっかなんだけど」


「まぁまぁ、そんな怖い顔すんなよ。今、現世は冬だろ?冬は死ぬやつが増えるんだって」


「んなこと知ってるけどよ……」




天使の仕事では珍しい休暇の2日目。


気持ちよく眠っているのを仕事仲間に起こされた挙げ句、仕事に行けと言われた。


ざっけんな。


……と、言いたくても、なんとかなるものでもなく。


仕方なく着飽きた仕事着に着替えて、現世とこの世界の境目に向かう。


……今回のやつ、面倒じゃないといいけど。





・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・





「こんにちはー!!」


「……こんにちは」




面倒な部類のやつだった。


俺なんかしたか?


仕事だるいって悪態ついたの、見られたとか?


それにしても、この仕打ちはひどすぎるだろ。




速攻のフラグ回収に心底うんざりしつつも、仕事は終わらせないとなので、見飽きた書類を睨みながら手続きを進めていく。


ていうか……




「15歳で死んだの?」


「そうそう!しかもさ、誕生日に死んだんだよ?びっくりだよねー!」




そう言って、カラカラと笑う目の前のやつ。


書類を見て、こいつは 葉月あや だということを確認する。


子どもの魂を担当するのは初めてではないけど


大人になってないのに、死んだことにあっけらかんとしてるやつ、初めて見るな……


不思議に思うも平然を保ち、目の前のイスをすすめて、書類の空欄を埋めるための質問を始める。




「死因は?」


「交通事故かな……たぶん」


「生きてたころの生きがいは?」


「推しと友達!」


「……生きてみてやり残したこと」


「うーん……」




ここであやの口が止まった。


腕を組み、うーんとうなって考えこんでいる。


まぁ、この質問は即答するやつと考え込むやつ、2つのタイプに分かれる。


きっとこいつは後者なのだろう。


気長に待つか。


そうみなして待つ体勢に入ると、あっとあやは口を開いた。




「遺書を残すの忘れた」


「あーね」




うなずき、納得する仕草を見せる。


遺書を残し忘れたという人はけっこういる。


けど、それは大抵年寄りで、子どもの魂は「もっと生きたかった」だとか、そういう類のことを言うことが多い。


まぁ、俺も子どもの魂を担当するのは久々だし……


今の現世では子どもでも遺書を残すのか?


頭にクエスチョンマークを浮かべつつも、書類にあやの言ったことを書き込んでいく。




「よし。とりあえず書類はほとんど埋まったし、あとは何に生まれ変わるか決めるだけだな」


「え、わたし生まれ変わるの?」




言うと、あやは目を丸くしてきょとんとする。


あれ、言ってなかったけな




「まぁ、そうだな。また現世に生まれ変わることになるけど、何に生まれ変わる?」





試すようにあやをまっすぐ見つめて聞く。


大体の人は、ここで1番迷う。


でも、結局はまた同じ生物に生まれ変わることを望むのがほとんどだ。


虫でも、植物でも、もちろん人間も。




けれど、




「ダンゴムシで!」




あやはそう答えた。




「……え?」




思わず、口から感嘆詞がこぼれる。




「だから、ダンゴムシだってば!だ!ん!ご!む!し!」




あやは自分の声が俺に聞こえなかったと勘違いしたのか、さっきより大きな声で言う。




「……そうか」




なぜか少し寂しいような気持ちになりつつも


書類の 甲殻類 という欄を探し、そこに ダンゴムシ と書き込んだ。

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