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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第96話 お母さん

◇◇◇

リア視点。


 説教が終わったので急いでリビングに戻り笑顔で迎えてくれたリオリナの手を引いて、料理部屋の正面にある応接室に入りソファに座った。リオリナは躊躇うことなく隣に座った。眠ってしまうので膝の上に乗せて抱きしめるつもりはないみたい。

 お母さんとアンジェには話が長くなるかもしれないのでお風呂に入って先に寝ていてもいいと言っておいたけれど、リビングで待っている気がする。


「リオリナ、配慮できなくてごめんなさい。アンジェの覚悟は私たちの覚悟とは違うと説明するべきだった。そしてアンジェの気持ちが固まるまで待つことにしたのも間違っていた。偽物としてディアを瞬殺すればよかった。それにリオリナが我慢していることに気づいたのに、我慢させているのが自分だと気づけなかった。複数人の感情を正確に読み取り最適な言動をすることはできないので努力を続ける。反省するのはこれだけかな?気になっていることはない?」

「リア様が反省することはありません。気になっていることもありません。アンジェ様の覚悟が違うと気づいていたのに拗ねてしまいました。リア様を家族から孤立させるつもりはないのに愚かな専属で申し訳ありません。」


 家族だと思っているのは伝わっているはずなのに専属をやめてくれない。

 だけど私はお互いに家族だと思いたい。


「リオリナ、どうすれば私と家族になってくれるの?家族だと思っているのにリオリナは専属をやめてくれない。家族でも今と同じことをして大丈夫だよ。お母さんとアンジェは何も言わないし家族以外が馬鹿にしたら潰す。それでも駄目なの?」

「私の覚悟は醜い欲を抑えるためです。この欲は馬だから成立していました。人になったことで欲は更に醜くなりそうでした。ですから専属としての気持ちを忘れたくないのです。リア様と家族になったら欲をどのように抑えればよいのか分かりません。ですが馬から人になって不安だった私にリア様が命を重ねてくれました。私を受け入れてくれました。そのときに専属としてリア様を守ると決めたのです。」


 私を独占したいリオリナは専属馬として他の馬から独占することはできると考えていた。だけど人になったときに私を何から独占すればいいのか考えないようにした。

 それでも独占したいという気持ちが溢れてくるので専属馬のときと同じ独占をすると無理に納得するつもりでいた。しかし納得できずに不安を感じているリオリナに私は命を重ねた。それにより安心してくれたので私の気持ちが伝わったのだと思った。思ってしまった…。


 リオリナの話を聞いて勘違いしていると分かった。

 私はいつも詰めが甘く中途半端だね…。


「リオリナは勘違いしているよ。人として私を独占することを受け入れる証として命を重ねたの。馬から私を独占するだけでは満足できないし我慢すれば心が歪んでしまう。だから思うままに独占していいよ。既に家族からは孤立させないようにしているのでしょ。リオリナは独占の仕方を変えることができる証拠だよ。だから心の成長を止めないで。私はリオリナを信じているのでリオリナは私を信じて。これで家族になれるね。」


 リオリナから緊張が伝わってくる。

 気づかれていないと思っていたのかもしれない。


「な、何故それに気づいていて私を専属馬のままにしたのですか?」

「その頃から大切な家族だと思っているからだよ。だから安心して甘えているの。私の居場所はリオリナの背中だったので流石に気づくよ。独占欲がどの程度なのかは分からないけれど、これから心を成長させていけばいいの。但し、独占するために殺すのは禁止。リオリナは優しいので殺したことを後悔し続けて精神が濁るかもしれない。それに我慢したり迷ったときは今みたいに話し合えばいい。私たちは家族だからいつでも話せる。今は満足しているの?」


 リオリナの感情は部屋に入ってから隠せていない。口にするべきか迷っているね。

 すぐにできることならいいのだけれど…。


「目に見える繋がりがほしいです。腕輪でも何でもいいです…。」


 アクセサリーでは問題が起きる気がする。人が増えたときに世界の管理人が身につけているアクセサリーは売れると考えて、似ている物を作る人がいるかもしれない。似ていなくてもリオリナは嫉妬する可能性が高い。


色変更(カラーチェンジ)

目と髪の色をリオリナと同じにした


「これで目に見える繋がりができたよ。本気で独占してね。」

「は、はい!そ、それでは私が満足するまで年齢を上げないでください!」


 私を包み込むように抱きしめたいからだね。

 赤ん坊だし自力で起きられなくても仕方ない、のかな?


「他にないのならリビングに戻ってお母さんとアンジェに説明するよ。リオリナと家族になれたし綺麗に解決できて本当によかった。」

「あ、あの…。2人の秘密ではないのですか?」


 秘密に独占するのは不可能だね。

 頬を染めて恥ずかしがっているのもおかしいよ。


「秘密にして私に近寄ろうとした人をリオリナが妨害するのは駄目だと思う。だからリオリナが認めた人しか私と話せないようにするのはどうかな?」

「それではリア様の自由を奪ってしまいます!」


 このような我慢が心を歪める原因になる…。

 独占とは自由を奪うことだと気づいていないのかもしれない。


「独占が強いほど私に自由はないよ。自由を奪いすぎていると思うのであれば我慢するのではなく心を成長させてほしい。本気で私を独占するの?」

「独占します!可能な限り本気で独占します!」


 まだ遠慮しているけれど、独占される私が追い詰めるのは変だね。


「それではリビングに戻るよ。最初は大切だから私を抱っこして。私が話している間は抱っこしていて。椅子に座らなくてもいいし、椅子に座って私を膝の上に乗せてもいいよ。好きな方を選んで。」

「分かりました。リビングの雰囲気で判断します。」


 リオリナに抱っこされて部屋から出てリビングの椅子に座っているお母さんを見ると微笑んでいる。独占されている私が指示しているし、これからリオリナが何をするのか楽しみにしていると思いたいけれど、 説教中の微笑みにしか見えない。何か間違えているのかな…。

 アンジェは何が起きているのか理解できていないみたい。


 リオリナは椅子に座り私を膝の上に乗せた。

 とにかく説明するしかない…。


「リオリナは専属をやめたよ。私とも同じ家族になった。そして私を独占するので間違っていると思ったら注意して。何度も失敗すると思うけれど、付き合って。それとリオリナが満足するまで私の年齢は固定して。繋がりが分かるように目と髪の色を変えたよ。」

「リアの言いたいことは分かったわ。リオリナはどうしたいの?自分で話しなさい。」


 お母さんが真剣な顔をしている。

 リオリナの独占欲の程を把握したのかもしれない。


「わ、わた、私は、リア様を抱きしめて布団で眠り続けたいです…。」


 リオリナは世界から私を独占するつもりだね。予想していたよりも強い独占欲だけれど、リオリナは成長してくれると信じている。それにリオリナが満足するまで布団で眠り続けてもいい。


 家族を失うのはもう嫌だ…。


「リアの考えは不採用。封印されているのと同じよ。それにリオリナは今の言葉で自分の独占欲を理解できていないわね。それでは駄目なのよ。リアを抱きしめて布団で眠り続けるためにリオリナはリアに何を求めるのか答えなさい。」


 リオリナに自分の心を理解させて向き合わせる。お母さんは私が普通に活動できる程度までリオリナの独占欲を抑えるつもりでいると思う。だけどリオリナの苦しみは相当なものになる。だから徐々に心を成長させてほしいと思っているのに…。


「お母さんの考えは分かるけれど、リオリナの負担が大きすぎる。私の考えでは駄目なの?」

「リアが独占を受け入れているのにリオリナの間違いや失敗は何かしら?そして注意するのは誰だと思う?それにリアがリオリナを壁にして他者との接触を避けているようにしか見えないわ。だから駄目なのよ。今だけではなく先のことまで考えて発言しなさい。理解したら本気で反省しなさい。リオリナは気にせず答えなさい。」


 リオリナがどのように見られるのかを考えていなかった。間違いなく私の従者にしか見えない。それに独占を受け入れている私がリオリナを注意することはできない…。

 私が注意すれば口当たりのよい言葉でリオリナを騙したことになる。そしてリオリナに注意できるのはお母さんとアンジェしかいない。だけど私が受け入れているのに注意されたらリオリナは不満に思う。そのような簡単なことにすら気づけなかった。

 私はリオリナに甘えるだけの他力本願で今のことしか考えていない。だからお母さんは怒っていた。それだけ最低なことをしてしまった…。


 リオリナに嫌われるかもしれないと思うと怖い。

 だけど成長してほしいから…。


「リア様を抱きしめ続けたい。一緒に眠り続けたい。布団から出てほしくない。誰とも話してほしくない。家族以外には見せたくない。余りにも醜い欲ですね…。リア様の自由を奪いたくないと言ったのに…。やはり私はせ…。」

「それは違うよ!自分の心を知ることが大切なの。私と話していたときは遠慮していたけれど、それでは成長しない。心と向き合えていない。リオリナは初めて自分の心と向き合うことができたのだから過去に逃げないで。リオリナの成長のために注意する。間違っていると思ったら注意する。私もリオリナの心と向き合うので一緒に頑張ろうよ。自宅では好きなだけ私を独占して。だけど外で私を独占したら従者になってしまう。だから外では家族として注意する。深く考えず安易に独占を受け入れてしまいごめんなさい…。自分勝手にリオリナの心を振り回してごめんなさい…。」


 リオリナの言葉を遮るように私の思いをぶつけた。成長から逃げてほしくない。

 だけど私の言葉は軽すぎて心に響かないよね…。


「リア様はいつも本気で私のことを考えてくれています。謝らないでください。ですが醜い私にできるのでしょうか?」

「過ちを認めて謝罪したので許してあげましょう。リアは命と本気で向き合っているわ。リオリナはその姿に惹かれたのでしょ。リアの隣に立つのなら自分の心と本気で向き合いなさい。自信がなくリアが離れてしまいそうで怖いのよ。それが独占したいという気持ちに繋がっているわ。だから成長しなさい。リアが歩み寄ってくれるのを待つのではなく自分から歩み寄りなさい。だけどリアの話を聞いたらできる気がしないのも仕方ないわね。」


 私を利用してリオリナのやる気が出るのなら好きなだけ使って。


「できます!リア様が協力してくれるので絶対にできます!」

「それでは協力できないと言われたらどうするの?」


 絶対にないと否定する資格はないね…。


「リア様は本気で私のためを思ってくれています。協力できないと言われても大丈夫です。リア様が私を見捨てることは絶対にありません。リア様が見ていてくれるだけでも私はできます。掛かる時間が違うだけでリア様がいれば結果は変わりません。絶対にできます!」

「リオリナがリアを信じているのは命を重ねているからでしょ?」


 少し騒がしいけれど、母娘の会話に聞こえてきた…。

 お母さんは娘が命を懸けているのもやめさせるつもりでいる。


「それは違います!リア様は不安になった私に命を重ねて支えてくれました。ですがもう大丈夫です。成長してリア様を守るのです。それにリア様を疑ったことは一度もありません!」


 本気のお母さんは凄いね…。

 私たちのお母さんを本気でしているからだと思う。


 リオリナは家族に全てを打ち明けた。これからは心と向き合って努力できる。私だけではなく家族がリオリナを気に掛けてくれる。相談相手にもなってくれる。

 だけどリオリナは私が本気で支える。絶対に心を歪ませないし精神を濁らせない。


「家族が家族を助けるのは命を懸けて覚悟することではないわ。当然のことなのよ。そして死んで守るのではなく生きて守りなさい。自分が先に死ぬつもりでいるのも駄目よ。死んだ後に何が起きるのかは生きている人にしか分からない。それに救えなくても殺してあげることが救いになることもある。人の残虐な行為に際限はない。守りたいのであれば自分の命を大切にしなさい。あなた達、分かったわね?」

「はい!」


 3人の返事が綺麗に重なったのは初めてかもしれない。

 子を思う母の言葉は重い。


 今まで当たり前のように命を懸けて覚悟していたのを全て否定した。そして普通の家族を知らないけれど、お母さんが近づけてくれている気がする。

 お母さんよりも強くなるつもりでいるけれど、お母さんを超えることはできそうにない。母を超えるためには母になるのが絶対条件だと思う。赤ん坊が気にすることではないけれどね。


◇◇◇

アンジェ視点。


 お母さんの声でお風呂に入ると案の定だけれど、リアはリオリナに抱きしめられて眠ってしまった。私もお母さんに抱きしめられていたけれど、お風呂上りに話したいことがあるので眠たいのを我慢した。

 お母さんに教えてもらうまではリアが命を重ねている理由を知らなかった。リオリナの不安を消すために命を重ねているとは思わなかった。褒められた行為ではないと分かっているけれど、リアの本気に憧れてしまう。私には何が足りないのかな…。


 お風呂から出るとリアに寝間着を着せたリオリナはリアを抱いて布団部屋に入った。お母さんと私はリビングの椅子に座っている。


「アンジェ、今日は辛い決断をしたばかりよ。悩むのは落ち着いてからの方がいいわ。」

「リアの方が辛い思いをしているよ。救ったのに殺されそうになり、救ったのに見下されて、それでも私のことを考えてくれていたのに私は動かなかった。それを気にせずに私のことを考えてくれていた気がする。リアは何を考えていたの?」


 私を信じて話してくれたのに何もしないのは裏切りだね…。

 あそこまで酷い状況になるまでリアが動かなかったのは私に配慮してくれていたのだと思う。だけど私はリアに配慮していない。リアの気持ちが分からないのに配慮できるはずがない…。

 リアの精神から出るまではリアのことなら何でも分かるつもりでいた。それなのに魔法を使わなければ何も分からない。自分を過剰評価して何もできないのは余りにも情けない…。


「リアがディアを殺すと決断したのは見下されていると感じたときよ。すぐに動かなかったのはアンジェの気持ちが固まるのを待つことにしたから。アンジェに見下されていると伝えたときにアンジェが動かなかったことについては何も思っていないわ。アンジェが区切りをつけたと言ったときに、そのために時間が掛かったと思っただけ。区切りをつけることについては何も考えていないわ。一度目の人生の記憶がないのにアンジェの気持ちを正しく理解できるはずがないとね。だからアンジェの話で納得しようと思っているだけなの。アンジェが話さなければ空白だけれど、気にしていないのでそのままでいいわ。」

「私が考えていた以上に私のことばかり考えているね。リオリナが嫉妬する気持ちがよく分かるよ。私は何故こんなにも人の気持ちが分からないのかな?」


 リアが私のことを考えてくれていたのが嬉しい。だけど私はそのことに気づけずリアが命を重ねている理由を考えていた。リアの気持ちを考えるべきなのに見当違いのことを考えてしまっている。


「過去の家庭環境が答えよ。両親の気持ちを考えたくなかったし感じたくもなかった。優秀な姉を尊敬していたけれど、姉の気持ちは考えても分からないと思っていた。つまりアンジェは今まで人の気持ちを考えたことがないのよ。そして人の気持ちを感じないようにしていた。それに自分の気持ちは伝わらないようにしていた。過去と区切りをつけても当時の経験が消えるわけではないの。リアはそのことを考えていないけれど、専属馬を愛情で満たすのはいいことだと思うわよ。お互いの気持ちが通じ合わないと愛情で満たすことはできないから。過去に足を引っ張られていると考えては駄目よ。アンジェはそのお陰で腐らずに済んだ。あとは努力するだけと言いたいけれど、マイナスから努力しなければならない。だから結果がすぐに出なくても焦らないでね。」

「無意識にそのようなことをしているのだから気持ちの強弱なんて関係ないね。理由が分かってよかったよ。マイナスでも腐っているよりは全然いい。努力すれば取り戻せるし焦る必要もないからね。他にも努力できることはある?勉強と乗馬に集中した方がいい?」


 明確な理由があるのに分からないのは当時の記憶を思い出したくないから。姉のことは優しくて尊敬できると思っていただけで、何を考えているのかは気にしていない。結果的に当時の記憶は負の塊になったので遠慮なく無視することができる。


「今のアンジェが専属馬を愛情で満たそうとしても馬はアンジェの感情が分からずに混乱するだけよ。まずは自分の気持ちを伝える努力をして相手の気持ちを感じる努力をする。そして自分の気持ちがどの程度相手に伝わっているのか確認する。乗馬を本気でしたら他のことをする余力は残らないはずよ。本気で行動できる人になりたいのでしょ。リアは一つのことを本気でするのが精一杯。だから失敗して反省する。余裕を持って周りに配慮できるようになるのは当分先ね。アンジェはそれでもリアに惹かれるのでしょ。それなら本気になりなさい。それでも絶対に焦らない。本気になってもできなければ焦りが出てくる。それは当然のことよ。だけど本気になってもできない自分を受け入れて努力を続ける。できないのは馬の責任ではなくアンジェの責任よ。できるのかしら?」

「そうだね。本気で努力するのが楽なはずがない。結果が出なければ苦しく感じるに決まっている。それでも本気で努力を続けるよ。私も本気になりたいの。」


 本気で努力したことがないのに他のことを考えてしまう。3日間もあったのに本気で乗馬していない。気持ちを伝えることばかりを考えていて馬の気持ちは気にしていない。


 命を勉強道具のように考えていた最低な主だね。


 それなのに翌日から愛情で満たそうなんて烏滸がましい。私は自分の駄目なところをもっと知らなければならない。だから正直に話して専属馬のジェリアに教えてもらおう。そして必ず愛情で満たす。私に選ばれたことを後悔させたくない。


「明日から努力することは決まったわね。寝るときは愛情で包んであげるので頑張りなさい。」

「寝るときくらいはお母さんを独占してもいいよね。」


 お母さんが席を立ったので私も席を立ってついていく。

 お母さんが布団部屋の襖を開けて私が入った後に閉めてくれる。お母さんと私が同じ布団に入ると横向きに寝てくれたので正面に抱きつく。

 お母さんは私の背中に手を回して抱きしめてくれる。私もお母さんの背中に手を回してしっかりと抱きつく。このようにお母さんに抱きしめてもらうのは久しぶりに感じるけれど、1週間も経っていない。

 これから寝るときはお母さんに抱きしめてもらえる。新しい妹ができるまでは私の独占。


 お母さんが大好き。

 温かくて柔らかくて甘い匂いがして幸せだよ。


 それなのに何で涙が出るの…。


「本当に泣き虫ね。愛情で満たされたら涙が出なくなるのかな?」


 小声で話したお母さんが背中を優しく摩ってくれる。

 お母さんに優しくされると涙が溢れてくる…。


「お母さんが大好きなの…。涙が出なくなっても抱きつき続けるからね。」

「甘えん坊ね。こうすれば手が楽でしょ。ふふっ、赤ちゃんを抱っこしている気分だわ。」


 お母さんが私を抱きしめたまま仰向けになる。

 私は手を解いて楽にする。お母さんを先程よりも強く感じて涙が止まらない。


「重たくないの?年齢を下げてもいいよ。」

「娘を重たく感じるはずがないでしょ。たくさん泣いて好きなだけ私に甘えなさい。アンジェが1人で寝たいと言うまでは抱きしめるわよ。」


 幸せが怖い。絶対に失いたくない。この温もりが消えてしまったら正気ではいられない。

 寒くて体が震える。お母さんは温かいのに私の体は冷えていく…。


 背中を軽く叩かれたので顔を上げるとお母さんと目が合った。


「何が起きるのか分からないので怖いの。それを知っているあなた達は努力できるわ。まずは自分自身を取り戻しなさい。そして3人で世界を守ってね。」

「何が起きても絶対に守る。」


 お母さんが強く抱きしめてくれる。それに負けじと強く抱きつく。

 たわい無い、それでも絶対に手放したくない幸せ…。


 怖さの理由が分かって体の震えは止まった。

 お母さんの娘がいるこの世界が宇宙最強になるのだから。

娘が本気ですから母も本気です。

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