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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第94話 専属

◇◇◇

リア視点。


「んっ…、リオリナ、初めて自力で起きられたよ。」


 私の声を聞いたリオリナの抱きしめる力が強くなった。

 どうしたのかな?


「何かあったの?」

「無理しないでください。リア様が倒れてから3日間も経っているのです。ディア様はアンジェ様の知る姉に戻ることができました。今回の問題をこれ以上は悩まないでください。」


 リオリナを心配させてしまった。抱きしめられていたので起きられなかった気もするけれど、私が反省しなければならないのは間違いない。

 割り切るのが下手だと自覚しているけれど、家族と争いたくない。唯一の救いは姉さんを戻すことができたこと。私の力ではないけれどね。

 考え疲れて倒れただけで何もしていないのに心配までかけてしまって本当に情けない。


 リオリナが体を起こしてくれたので時計を見ると14時を過ぎていた。


「心配かけてごめんね。同じことはしないし本気で向き合う相手は慎重に決める。リオリナは私に付きっ切りでしょ。今から着替えて訓練しよう。この体は丈夫だからすぐに動いても大丈夫だよ。」

「止めるための言葉を先に潰さないでください。魔力を動かして維持する練習はしていました。手加減とは真逆ですが仮想体は早く作れるかもしれません。」


 私を抱きしめながら練習していたのは凄い成長だよ。

 これから先が楽しみだね。


 布団部屋を出てリビングを見るとお母さんが椅子に座っていた。

 私が起きたからここにいるのかな?


「お母さん、ありがとう。リオリナと空を飛び回りたい気分なの?」

「違うわ。リア、最後は私に頼ることになると分かっていたのに最初から頼らなかったのは何故?」


 嘘を吐いても仕方ないし正直に言おう。


「お母さんは封印解除する前から知っていたのに解除したのはアンジェに反省させるため?それと最初から頼っていてもアンジェの記憶にいる姉さんに戻してくれたの?お母さんが本気で家族だと思っているのは私たちと娘の可愛い専属だけ。私はお母さんより少し甘いので家族だけ。親子だからよく分かる。普段は平等だけれど、選択するときが来たら迷わない。」

「アンジェを反省させるためではなく本心と向き合ってもらうためよ。そして2人とも気づかなければ戻さなかったわ。命に生と死があるのは当然だもの。それに三馬鹿とディアを母として平等に接するつもりだけれど、完全に平等は厳しいわ。だけどディアなら選択する日は来ないので大丈夫よ。リアはアンジェが自由に生きてほしいのか自分の手伝いだけをしてほしいのかどちらなの?」


 お母さんの考えは思っていた通りなので気にならないけれど、質問が理解できない。アンジェに手伝ってほしいし一緒に楽しみたいけれど、束縛したいと思ったこともないと知っているでしょ。


「アンジェは私のために生きるつもりでいるの?」

「その通りよ。世界と人が嫌いなアンジェはリアと一緒にいないと楽しめない。それでは駄目だとディアがアンジェを教育中よ。真っ先にアンジェが避けていた専属馬を決めさせたわ。そして命と向き合う気持ちが足りないと叱られているのよ。アンジェの楽しみが私とリアに愚痴を言うことになっているのでリアが起きるのを楽しみにしているわ。ディアがアンジェの愚痴を笑顔で聞いて翌日の教育内容を変更していることには気づいていないみたい。幼いアンジェを教育してきた手腕は見事ね。当然秘密にしないと2人とも説教よ。」


 私とリオリナが返事するとお母さんは満足してどこかに転移した。お母さんも専属馬を決めたのかもしれない。それにしてもアンジェの楽しみが愚痴だなんて面白いね。

 そして幼い頃からアンジェを教育してきた姉さんだから専属馬を決めさせることができたのだと思う。お母さんも言っていたけれど、今の姉さんなら大丈夫だね。


「着替えて訓練に行こう。」

「はい。今晩から賑やかになりそうです。」


 リオリナもアンジェのことを好きなので何を言うのか楽しみにしている。

 とりあえず説教に巻き込まれないように気をつけないと…。

 

 脱衣所に入り顔を洗ってから箪笥に入っている外出用の服に着替える。

 組手に近い訓練なので長袖のシャツと長ズボンを汚れの目立たない茶系の色で揃える。リオリナは馬だったときの毛の色である淡い黄色が好きで今日も揃えている。靴下を履いて玄関のドア付近まで歩くと10㎝の段差があり横に置いてある棚から綿靴を取って段差の下で履く。段差の下はかなり広く色違いの平らに切断された岩が並べられている。

 以前は靴を履いたままリビングを歩いていたけれど、お母さんが変えた。そして説教部屋と脱衣所以外は毛足の短い絨毯が敷かれている。

 お風呂から出たあとに裸足で部屋を歩けるのは楽でいいと思う。以前はお風呂から出た後も乗馬服を着て靴も履いていたので違いは分からないけれどね。それに私とリオリナ以外はスリッパを履いている。理由を聞いたら履くことになりそうなので気にしない。


 索敵で感情把握すると3人が並んで乗馬しているのが分かった。お母さんが馬に指示を出したのか3頭とも平然としている。アンジェがお母さんと姉さんに挟まれている気がするけれど、愚痴が楽しみだよ。

 奥の草原地帯には動物もいないみたいなので訓練には最適だね。


「リオリナ、移動するよ。」

「はい。リア様。」


≪転移≫

敷地の奥の草原地帯に移動した


小形化(スモール)

リオリナを私と同じ身長にした


「全力攻撃の訓練が中断されたのでやり直そう。いつでもいいよ!」

「分かりました。それではいきます!」


 リオリナの重い攻撃を防御しながら次の訓練について考える。

 全力で拳を突き出すだけで木を貫いてしまう。身体強化など魔力で攻撃力を上げているのであれば手加減するのは難しくないけれど、素の状態で大抵の人は殺せるし結界も割れると思う。

 人を蘇らせて長い年月が経てば私たちを侮辱する馬鹿が現れる。外出時にはお母さんの娘だと分かる服を着ていても関係ないと考える人は必ずいる。それもこの体は耳がいいので陰口を叩かれると聞こえてしまう可能性が高い。その頃には魔力も自由に動かすことができ魔法も使えるようになっているはずなので一瞬で殺してしまう。そのときに関係ない人を巻き込む恐れがある…。


「リオリナ、攻撃しながら考えて。人の国ができて私たちの悪口が聞こえたらどうする?」


 攻撃が重たくなった…。

 全力のつもりでも私に気を遣っていたね。


「手加減を覚えて殴ります。」


 攻撃の重さが無理だと伝えてくれるけれど、年月と共に冷静になれるのだろうか?

 私は無理だからリオリナも無理だと考えよう。


「リオリナ、訓練を変更するよ。手加減ではなく相手の力を把握して殺さずに動けなくする。無関係の人を巻き込まない。敷地内では訓練以外で攻撃を考えない。この3つを守って。私がリオリナのいたお城に行ったとき騎士を動けなくしたけれど、誰も殺していないでしょ。私たちを馬鹿にして瞬殺するなんて優しすぎる。殺さずに動けなくして関係者を全員捕まえないとね。今から強くなる訓練をする。質問はあるかな?」

「リア様が騎士の脚を本気で踏んでいたら確実に千切れていたと今なら分かります。無関係の人を巻き込むのは絶対に避けたいです。聖域は攻撃することを禁止された区域だと考えます。リア様を馬鹿にして痛みなく殺すのは優しさですね。納得しました!」


 更に攻撃が重くなった。今のままだと間違いなく相手の脚が千切れるけれど、100年以上は先の話になると思うので焦らず確実に強くなることが大切。お互いにだけれどね。


「リオリナ、隙だらけの攻撃には5割の力で反撃してもいい?少し痛いけれど、我慢できる?」

「強くなるためです。お願いします!」


 とても真剣な目だね。

 脚が潰されるのを我慢することしかできなかった過去を思い出しているのかもしれない。

 過去を克服し攻撃を覚えてもらう。そして戦いの怖さも知ってもらう。大切なことだから。


 防御された拳を引くのが遅いので伸びたままの腕を叩く。

 バチッ。


「いっ!」


 何も言わず何度も腕を叩くと拳を早く引けばいいと気づいた。

 実戦はないと思いたいけれど、絶対はないので体で覚えた方がいい。極度の緊張や恐怖で頭が空になってしまったとき頼りになるのは体が覚えていることだけだと思う。そしてリオリナには攻撃する恐怖を覚えてもらいたい。慢心や油断は致命傷に繋がるから。

 下段の横蹴りを防御したときに拳を早く引くことだけを意識してしまっているのか脚を戻すのが遅いので脹脛を少しだけ強く叩いた。

 バンッ。


「ぐっ!」


 リオリナの攻撃を何度も叩き続けたことで重心が後ろに下がっている。

 攻撃は続けているけれど、重さがない。突き出された軽い拳を手で払いながら一歩前進して両肩を少しだけ強く押した。リオリナは耐えることができず仰向けに倒れた。

 私はリオリナの顔の横にしゃがんだ。


高位回復(ハイヒール)


「リオリナ、戦いは痛くて怖い。殺し合いであれば更にね。だけど痛くても怖くても全力を出せなければ負けるか殺される。強くなる事と戦えることは別なんだよ。お城にいた騎士は戦えない。自分より弱く反撃できない相手だけを攻撃するのは腐っていると思う。それに性格での向き不向きもある。努力で克服できるけれど、問題は訓練以外で相手にするのは弱者が多い。だから戦えなければ攻撃させない。お城の騎士と同じように精神が濁るから。私がリオリナに戦いを求めていないのは知っているでしょ。戦うのか戦わないのか改めて決めて。どちらを選んでも手伝うし私たちの関係は変わらない。ゆっくりと考えてみる?」

「私がリア様を守ります。絶対に戦います!」


 戦いはやめてほしいのに折れてはくれないね。


「決意は固いね。まずは怖い相手に立ち向かえる心を鍛えよう。リオリナが慣れるまで訓練の時間は怖いよ。それでもいいの?」

「勿論です。お願いします!」


 魔力を使わずに威圧してリオリナが立てない強さで固定した。

 そして殺気を当てる。リオリナが震えた強さで固定した。


 殺気に敏感すぎるのは騎士の影響なのかな…。


「リオリナが震えずに立ち上がり全力攻撃できたら次の訓練だよ。無理するのは心によくない。訓練は続けることが大切だから…。」


 嫌な予感がしたので威圧と殺気を止めた。リオリナは体の震えが収まると立ち上がった。不安を感じているように見えるので私の確認不足だと早く伝えよう…。


「私の確認不足だからリオリナに落ち度はないよ。突然だけれど、アンジェと私はどちらが強いと思う?どのくらいの差があると思う?答えは曖昧な表現でもいいよ。分からなければ分からないと答えて。」

「アンジェ様の方が強いと思います。ですが差は余りないように感じます。」


 魔力を使用しなければ余り差はないけれど、魔法技術の差がそれなりにはあるので身体強化を使う戦いなら確実に負ける。何でもありの実戦なら今の私では勝ち目がない。

 リオリナは魔力を使った戦いを見たことがないので分からないだけなのかもしれない。魔力を使っていない相手との魔法技術の差は私も分からないので、今後のことを考えるとリオリナの方が相手の力を正確に把握できるようになる気がする。


「正解だよ。魔力を使わなければ余り差はない。先程リオリナを立てなくして震えさせたけれど、殺されると思って震えたのか私に殺されると思って震えたのかどちらか分かる?私がリオリナを殺さないと知っていても私の殺気は特別に感じている気がしたから…。リオリナが思ったことを正直に話して。」

「リア様に捨てられたと思いました。そのときが来るかもしれないと覚悟していたつもりでしたが余りにも悲しくて…、寂しくて…、震えてしまいました。」


 リオリナは私に命を捧げているのに他人と割り切って殺気に耐える訓練だと思えるはずがなかった。すぐにやめてよかったけれど、苦しむリオリナを見てからしか気づけない頭の悪さが嫌になるよ…。


「ごめんね…。訓練方法を間違えたよ。今のは威圧と殺気で魔力を使わずにリオリナが耐えられる強さで当てたの。威圧は私の方が強いという気持ちをリオリナにぶつけていたけれど、これは立てるようになれそう?何か思ったことがあれば教えて。」

「リア様の方が遥かに強いと感じています。それでも立てますか?」


 強いと感じているだけなら大丈夫だね。

 本当によかった…。


「リオリナが立てる強さに弱めているよ。私を守るために戦うのなら本気とまでは言わないけれど、9割程の威圧には耐えてほしい。今のは1割程だよ。身体強化した状態で威圧すると素の状態の全力の威圧が1割程に感じると思う。それと殺気については魔獣を利用する。リオリナが自分自身で体を守れるようになってからだね。これから私たちは勉強して強くなっていくので訓練の終わりについては考えていないよ。気分転換の運動だと思えるくらいにはお互いに成長したいね。だけどそれは何十年後でも何百年後でもいいの。だから無理せず焦らず強くなる。続けることが大切だから焦ったら駄目だよ。今からどうする?空を飛んでのんびりしてもいいよ。」

「訓練を続けます。お願いします!」


 本当に真っ直ぐだね。

 殺人は経験してほしくないので私も全力だよ。


「戦いは相手の動きを見ることも大切だよ。リオリナが防御を覚えたら私が攻撃する側になるので動きを見て。質問があればいつでも聞いて。今から威圧するよ。」


 威圧するとリオリナが両手と両膝を地につけた。このままリオリナが立つのを待っていてはお互いの時間を無駄にしてしまう。私も戦った経験があるとは言えないので訓練しなければならない。


≪分身≫


「リオリナが動けるようになるまでは分身と5割の力を使い組手しているので見ていて。攻撃できるようになったら声をかけてね。」

「んっ…。わ、分かりました。」


 下を向いていたリオリナが少し苦しそうに顔を上げて私を見た。私と分身がそれを合図に組手を始める。魔力を使わずに5割の力を使いリオリナがよく見える位置で攻防している。リオリナに対する威圧は固定しているので大丈夫。

 技術を向上させたいと思って分身を作ったのが原因なのかもしれないけれど、絶対に痛みを与えたいという意思を感じる。これなら遠慮なく分身をボコボコにできるよ。

 

 攻防を繰り返していたとき中段の横蹴りに嫌な予感がしたので10割の力で防御した。下げた右肘と上げた右膝を付けて防御したけれどドンッと重たい衝撃と共に右腕の骨が軋む。結構痛い…。


 ふーん、そういうことをするんだ。


 魔力も使っていないし5割の力でリオリナがよく見える攻撃速度なので約束を守っていることにした。攻撃が当たる5㎝前に10割の力に変わっているのでリオリナがそれに気づいていたら嬉しい。


 とりあえず分身は潰すけれどね。


◇◇◇

リオリナ視点。


 威圧は序列に近い気がします。戦い力の差を教えるのではなく雰囲気だけで力の差を教える。私が立てないのはリア様に勝てないと思っているからなのでしょうか…。

 この威圧をリア様は1割だと言いました。そして組手をしているリア様を見ていると5割の力だと言っていましたが私とは全く違います。攻撃した手や足を叩くこともありません。速さと攻撃力を使い分けているのは目と耳で分かります。全ての攻撃が囮に見えてしまいます。

 痛みが怖くて攻撃するのも怖くなった私とは全然違いますね。戦えば痛いのは当然なのに…。

 耐えられる痛みに抑えて耐えられない痛みを相手に与える。見ている私でもそのように感じるのですから戦っているリア様は分かっているのでしょう。痛みを覚悟している相手に隙を見せるのは危険だと感じます。私に最も足りないものは心の強さですね。

 私の攻撃は単調でリア様なら楽に対処できると思います。ですから難なく私の伸ばした腕と脚に攻撃することができたのだと分かりました。

 それにしても本当に5割の力だけで組手しているのでしょうか?

 攻撃と防御はよく見えますが攻撃が防御されたときの音が私の全力攻撃よりも攻撃力が上だと教えてくれます。集中して攻撃を見ましょう…。

 よく見えていた攻撃が防御される直前に霞んで見えます。一瞬で速さと攻撃力を変えることができるのですね。あれをされてしまうと常に全力で防御しなければ危険だと思います。

 リア様の表情が真剣なのはそのためなのでしょう。リア様の分身が相手なので猶更ですね。


 このまま見ていたいという気持ちはあります。

 それよりも羨ましいです…。


 リア様を守ると決めているのに心が弱すぎます。戦うのが怖いので立てない。痛みが怖くて立てない。このままではお城にいた騎士と同類です。強者に媚び諂い弱者を甚振る。あのような醜態をリア様の隣で晒すのは絶対に嫌です!

 私は本当に馬鹿ですね。怖いことは1つしかありませんが気づくのが遅すぎです。それを防ぐために強くなるのです。どのような状況が訪れようとリア様を守るのです。守るために戦わなければならないのは当然です。私より強くても怖くても立てない理由になりません。私が痛くてもリア様が痛くなければいいのです。


 覚悟は疾うにできているのです。

 威圧で膝を折るのは私の覚悟が偽りだと証明しています。絶対に許されません!


 立ちなさい。今すぐに立ちなさい!

 体が重たいのは気のせいです。強者だからと膝を折る理由はありません。


「リア様、お待たせしました。威圧とは強者が弱者に力の差を教える技だと思われますが、私が膝を折る理由はありません。私の覚悟には戦いや痛みが含まれていたことに気づきました。」


 リア様は分身を消して私を見ました。その真剣な目も優しい温もりも私が独占しました。他の馬はリア様のことを何も知らなくていいと思っていました。それは今も変わりません。これ程までに強い独占欲があるとは知りませんでした。だからこそ私が守ります。私が先に死にます。


「今の威圧は平気みたいだし本気だね。威圧を強めるので苦しいと思ったら必ず言ってね。」

「はい。お願いします!」


 体が重たく感じたら受け流せばいいのです。私より強者でも関係ありません。これほど濃密な強者の雰囲気があれば動物も近寄れないでしょう。

 威圧はとても優しい技ですね。痛みを与えずに力の差を教えてあげるのですから。殺気も大丈夫だと思います。リア様を殺そうとする相手から守るのです。何もせずに命よりも大切な人を失うわけにはいきません。先に死ぬのは私だと決めているのです。


「問題なさそうだね…。無理していないよね?威圧されて何も感じていないの?」

「無理していません。威圧は体が一瞬重くなりますが私には関係ないので受け流しています。受け流した後は何も感じません。」


 リア様が考えています。

 私のことを考えてくれているとても嬉しい時間です。


「確かにリオリナは相手の強さに関係なく動けそうだね。組手を見て何か思った?」

「リア様は直前で攻撃力を変えることができるので常に全力で防御しないと危険だと思いました。そして私の知らない攻撃動作や防御動作が多く見られてとても勉強になりました。」


 私の攻撃は棒で想像力が足りないのだとよく分かりました。考えながら攻撃するのは隙になると思うので自然に多彩な攻撃ができるようになりたいです。


「凄いね!どのように気づいたの?今からの訓練は何を覚えたい?」

「目と耳で分かりました。攻撃が当たる直前に拳が霞んで見えましたし音も私の全力攻撃より重く聞こえました。それにリア様が真剣な目をしていましたので分身の攻撃を一切油断していないと分かりました。覚えたいことですが私の攻撃は棒を突き出すか振り回しているだけです。考えながらではなく無意識に多様な攻撃ができるようになりたいです。」


 リア様が悩んでしまいました。

 難しいことを要求してしまったのかもしれません。


「棒に感じるのは私が防御だけをしていたからだよ。私がリオリナとの距離を変えながら防御するか痛みを覚悟して組手する。大切なのは多様な攻撃を覚えることではなく倒すことだよ。相手の攻撃に合わせていたら多様な攻撃を覚えることができるけれど、戦う時間は短い方がいい。相手の隙を見つけたらその瞬間に倒すのが最善だよ。どちらを選ぶの?」

「組手をお願いします!」


 リア様と分身を見て羨ましく思ってしまいましたが大切なのは倒すことですね。

 攻防を繰り返すのは実力が拮抗しているのか運動です。


「リオリナは私を倒すために攻撃する。私はリオリナの背中か膝が地面につくように攻撃する。私が倒れてもリオリナが背中か膝を地面につけても反省会。怖いからお互いの頭に私が結界を張る。それでも頭に攻撃するのは禁止。質問はあるかな?」

「ありません。お願いします!」


 リア様は本当に優しいです。私の予期せぬ動きで顔が潰れるのを避けてくださるのですね。そして本気ではなくてもそれなりに痛い攻撃をするのでしょう。戦いに痛みがあるのは当然です。少し認めてもらえた気がして嬉しいです。

 私は全力でリア様を倒すことだけを考えましょう。それが礼儀であり弱い私が遠慮することは失礼だと感じました。訓練で組手を望んだのに全力も出せずリア様に攻撃したくないと思うのは非常識です。


 組手が始まり防御した腕に少し痺れを感じて思わず見たときに転ばされてしまいました。夕暮れまで何度も反省会が行われました。組手は一度か二度攻撃されただけで終わってしまいます。手加減していただいているのに差が余りにもあり申し訳ない気持ちになりますが絶対にやめたくありません。

 組手と反省会がとても幸せで組手を選んでよかったです。リア様が本気で私のことだけを考えてくれているのです。


 集中しなければならないのに過去の記憶が蘇ります…。


 リア様がお城に来て私を救っていただいたとき何が起きたのか分かりませんでした。ですがリア様を背中に乗せて散歩する時間はとても幸せで、リア様の優しさと温もりが伝わってくるのです。潰された足で歩くのが怖くて3本の足で散歩していましたが全く苦ではありませんでした。お城の騎士を乗せていたときの不快感に比べたら足が痛くても気になりませんでした。

 3本の足で散歩し続けたことも潰された足を使って歩くのが怖いと伝えなかったのも私の我儘です。それなのにフィオナに叱られて今にも泣きそうな顔で反省しているリア様を見ると胸が張り裂けそうでした。

 リア様はお母さんと呼んでいましたが私はフィオナが不快でした。私の考えていることを口にするだけで馬の気持ちが分かるようには見えませんでした。薄っぺらい人だと感じました。

 フィオナに叱られた日からリア様は私のために真剣に考えて行動してくれるようになりました。とても幸せな日々でしたが不愉快でもありました。家族と呼ばせながらリア様に愛情を持って接する人がいないのです。毎晩私の背中で眠るリア様は愛情を求めているように感じました。

 私は覚悟しました。リア様に救っていただけなければ殺されていたのです。命懸けでリア様を独占し私の愛情で包み込み孤独にはしないと決めたのです。自宅で何が起きてもリア様を絶対に裏切らない私がいれば少しは安心していただけると思いました。


 それが今では一緒にお風呂に入り同じ布団でリア様を抱きしめて眠っているのです。

 馬だった私が人になり家族にまでなれました。


 それでも私の覚悟は変わりません。お母さんとアンジェ様は私の考えを理解していても家族にしてくれました。リア様は本気で家族だと思ってくれています。私が馬でも家族だと思ってくれていました…。

 私はリア様を抱きしめることも背中に乗せて空を飛ぶこともできる今の姿が好きですが、リア様はどちらも好きだと言ってくれるでしょう…。


 だからこそ私はリア様の専属でいいのです。

 リア様を孤独から守るためにならあらゆる努力をします。リア様が私の全てなのです。

リアはどちらも好きだと言います。

家族だという思いも変わりません。

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