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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第87話 新しい体

 お母さんの説教は笑顔で私を見つめ続けた。謝罪だけでは許してもらえず何が悪かったのか、どうすればよかったのかを説明しなければならない。

 恐怖で頭が真っ白になりかけたけれど、アンジェの助言で乗り切ることができた。何もされていないのに体が硬直してしまう。お母さんの説教は危険だと脳裏に刻むことができた。


 恐怖を濃縮して時間まで歪めていると感じた…。


 私の謝罪に満足したお母さんは家族会議を始めると言って一緒にリビングへ転移した後に姉さんとフィーの封印を解きに布団部屋へ歩いていった。

 私はリビングの椅子に座り目を閉じて気持ちを整えることにした。


「リア、目を開けなさい。家族会議を始めるわよ。」


 お母さんの声で目を開けると家族が揃っていた…。

 転移により椅子に座らせたのだと思うけれど、魔法技術の差がありすぎる。普段使う魔法だからこそ差がよく分かる。今の私では転移中に姿勢を変えることさえできない。


【リア、お母さんにしかできないと思う。全ての勉強を終えてから考えた方がいいよ。】


 アンジェの言う通りで暫くは魔力操作の練習と読書で限界だと思う。


「それでは現在の状況とこれからについて説明するわね。」


 お母さんはクリスや人体実験については触れずに話している。

 姉さんはアンジェが私の中にいることに驚いたけれど、それ以外は受け入れていた。私がアンジェの姿になることにも納得していた。

 フィーは話しているのが世界で新しいお母さんになると聞いて呆然としていた。


 この状況で自然体を保てる姉さんが凄いのだと思う。


【リア、恐らく姉さんは全て理解しているよ。新しい環境に喜んでいるからね。】


 お世辞にも勉強が得意とは言えないので姉さんに教えてもらいたい。新しい体になれば生まれ持っていた才能はなくなるけれど、勉強方法や日々の過ごし方で大きな差が出る。だから優秀な姉さんを真似するのは必ず自分のためになる。


【その通りだね。姉さんと比べられるだけの日々は終わったの。】


「家族構成は私が母で名前はないので皆で決めて。長女はクローディア、愛称ディア。次女と三女は双子でアンジェリア、愛称アンジェと愛称リア。末っ子はフィオナ、愛称フィー。馬のリオリナもリアに命を預けているので人型になれるドラゴンに体を換えて自宅で一緒に暮らすけれど、リアの言うことが一番で姉妹に入れられるのは嫌がるので別枠。さて、新しい体について決めましょう。成長を途中で止めたり最初から望みの年齢にすることができるわ。結婚して子供が欲しければ別の体を用意します。生きることに疲れたのであれば記憶を消して新しい命に宿します。姉妹の順番は年齢に関わらず固定よ。ちなみに私は30歳。ディアから順番に教えて。今すぐに決められなくても大丈夫よ。」


 リオリナは私の隣にいたいのであって姉妹に入りたいわけではない。私が頼めば大丈夫だと思うけれど、間違いなく負担になり心労で倒れてしまうかもしれない。私に言われたことは辛くても我慢するので気をつける必要がある。だけど特別な存在になるのだから辛くても努力しなければならない。私がしっかり見ていないと駄目だね。


「新しい体は14歳。25歳で成長を止めてください。それと世界の管理以外に役割はありますか?」

「妹に勉強方法を教えて。特にフィーは満足するまで隣で勉強して難しい所は教えてあげて。それと私が蘇らせた子を教育して。教師になる子が増えたら教育の統括責任者になってほしい。そしてアンジェとリアが世界一楽しい国をつくるために協力してあげてね。だけど幅広く深い知識が必要になり教える内容も考えなければならない。ディアの役割が最も大変で重要になるわ。私は問題を未然に防ぐ助言はするけれど、あなた達が作る世界を見てみたい。挑戦してみる?」


 国をつくることばかり考えていて教育することの大切さが抜けていた。国で暮らす全ての種族に配慮しなければならない。例え誰もが学べる環境を用意して自主的に学ぶとは限らない。だから子供は必ず教育を受ける仕組みを考えて姉さんの負担を軽くしなければならない。

 フィーが満足するまで姉さんが隣で勉強するのは、孤独を感じさせないためとフィーの成長に繋がるからだと思う。


【その仕組みは知っているけれど、教師の数がそれなりに必要で種族ごとに教える内容を変えなければならない。そして教える範囲により国の在り方にまで影響を与える。リア、交代して!】


「姉さん、学校を作るつもりでしょ。種族差別が起きないクラス分けをしなければならないし共通の授業と種族別の授業が必要になるよ。それに教える範囲を間違えたら争いが激しくなり教育が足りなければ治安が悪化する。絶対に挑戦すると分かっているけれど、手伝ってほしいことはないの?」

「アンジェに代わりましたね。初めて遣り甲斐のあることに自分の能力を使えるのです。それにお母さんが蘇らせた子を最初に教育するのは私です。義務教育や種族差別について教えることができます。教師になるための授業をすることもできます。教える範囲についてはお母さんの次に詳しいでしょう。そして私も二度目の人生だと考えています。最高に楽しい挑戦です。私を手伝うよりも失敗しないように努力しなさい。」

「アンジェ、国を改革するのではなく0から作るのよ。衣食住の住だけ用意しても意味がないわ。魔力で食事や服を作る国は以ての外でしょ。職業訓練所を作るの?種族特性に合わせた仕事をしてもらうの?誰も通貨を知らないのよ。本来ならアンジェがディアに教えてほしいことを頼まなければないらないわ。アンジェとリアの2人とも焦って周りが見えなくなってどうするの。冷静に先のことを考えなさい。」


 お母さんと姉さんがいるとアンジェも叱られるみたい。私の考えが相当甘いのは分かったけれど、アンジェは初めて叱られたから辛いでしょ?


【叱られてばかりいたので大丈夫だよ。姉さんの言葉で冷静になれた。初めて楽しいと思えることに挑戦できるのに邪魔したら駄目だね。私たちも失敗しないように頑張ろう。】


 色々と想像できる話だけれど、私が何か言うべきではない。


「話を戻しましょう。アンジェは決まっているの?」

「10歳固定でお母さんの隣で眠りたい。親離れできたら20歳まで成長させてほしい。」


 真面目な話をしていたのによく言えたね。お母さんに抱きつきやすいように年齢まで下げるとは思わなかった。アンジェの冷静さに姉さんとフィーが唖然としているよ。


【いいでしょ。戦うわけでもないのだから年齢で効率は下がらないよ。早く交代して!】


 いつも押し付けてばかりだから交代しないとね。


「アンジェは逃げたよ。私の体は12歳。20歳で成長を止めて。フィー、私はリオリナの隣で眠るので安心してお母さんに抱きつけるよ。フィーは今すぐ抱きしめてもらってもいいと思う。姉さんも抱きしめてもらったら?10歳にしたくなるかもしれない。そのときはフィーが最優先で姉さんとアンジェは日替わりだね。」

「それもそうね。新しい体になる前に抱きしめてあげるわ。まずはディアからね。」


 お母さんが椅子を机から少し離して座り転移で姉さんを太ももの上に座らせて抱きしめた。姉さんの顔は見えないけれど、喜んでいるのかな?姉さんが無言なのはとても気になる…。


 この沈黙はいつまで続くのかな?


 姉さんが満足していたらお母さんは抱きしめるのをやめると思うので喜んでいるのは確定。だけどこの後の展開が全く分からない。


 アンジェ、姉さんは可愛がられていたのではないの?


【常に姉さんと比較されるので可愛がられていたと思っていたけれど、姉さんは両親が私と比較すことに怒っていたの。この様子だと姉さんと私は道具でしかなかったみたいだね…。】


 お母さんが魔法を使った気がした。姉さん…。


「ディア、新しい体は先程のままでいいの?」

「わ…、わたしも10歳で固定してください。」


 姉さんは泣き止んだ直後のような声で10歳を望んだ。

 お母さんは姉さんの背中を優しく摩っている。


「分かったわ。席に戻しても大丈夫?」

「はい。大丈夫です。」


 姉さんが席に戻ったときには抱きしめられる前と同じ表情をしていた。そしてフィーがソワソワしているのが可愛い。お母さんは何も言わずに転移でフィーを太ももの上に座らせて抱きしめた。フィーは突然で驚いたみたいだけれど、お母さんに体を預けるのに時間はかからなかった。


「フィーは決まっているの?」

「今のままでいいよ。気が向いたときに16歳まで成長したい。私は何をすればいいの?」


 いつまで私が最年長でいるのか予想できない状況になっている。3人とも今まで母親に甘えたことがないからだと思うけれど、私はリオリナに抱きつけるので平気なのかもしれない。


「4人とも午前は勉強して午後は遊びなさい。乗馬するのならディアは専属馬を決めて。アンジェは仔馬と遊ぶかリオリナに乗せてもらいなさい。人を楽しませるためには自分が楽しまなければ駄目よ。まずは馬と牛を楽しませてみなさい。3年間を準備期間とします。私は妖精を蘇らせて畑や果物の採取を手伝ってもらうので一緒に遊んであげて。リア、私が手伝わなくても国はつくれるの?」

「単一種族の国ならつくれるかもしれないけれど、多種族が楽しく暮らす国は無理だね。」


 ここまでの話しで無理だと判断した。お母さんが蘇らせる種族は知らないけれど、必ず種族特性を持っている。そして本能が拒絶するものを教育で矯正することはできない。


「教養があっても仕事がない。仕事を教える人がいないし道具もない。道具を作る人もいない。魔法で解決する国をつくってしまえばディアとアンジェの故郷の国と同じ道を辿るわ。どうするの?」

「温和な種族から蘇らせて。国内に単一種族の街を作ることにする。馴染んだら新しい種族の街を作る。それをゆっくりと進めていく。国の中心には私たちの自宅とお城と勉強する場所と資料館を作る。勉強している子の食事や住居は私たちが作るけれど、転移門で街に帰ることもできるようにする。職業訓練所は人が増えてからの方がいい。勉強する場所の周りに各種族が自由に利用していい土地を用意する。そこでは各種族の特産品や余った食材を売る商売をしてほしい。1000年後でもいいから多種族が楽しく暮らせる国にする。教育しても粗暴な種族は国に必要ない。お母さんは偽造不可の硬貨を作って各種族の特産品や余った食材を適正価格で買う。そして願いを硬貨で叶えてあげる。常識的な範囲内でだよ。種族の多さに関係なくこれは続ける。お母さんが間に入れば皆が安心する。自分たちで商売するのが理想だけれど、最初は難しいと思う。これでいいでしょ?」


【お母さんを極力頼らないと言っていた気がするけれど、リアは自分の力だけで解決したいとか思わないの?柔軟な思考でいいと思うけれど、根底にあるものは何なの?】


 家族が楽しく暮らせる国をつくり遊べる世界にすることだよ。自分の力だけで何かするという達成感は必要ないと思っている。私の考えが正しいとは思っていないから。

 根底にあるものは笑顔だよ。私の考えなんて些事。だから自分の方針でも簡単に変える。


 多種族国家を想像してみたら皆が笑顔で暮らせるとは思えなかった。


 まずは単一種族が笑顔で暮らせる街を作る。その種族の笑顔を守りつつ新しい種族の街を作る。だけど種族には本能があるはずだから教育だけではどうしようもない部分もあると思う。一緒に勉強して遊べば差別はなくなると思ったけれど、草食動物は肉食動物の目の前で安心して草を食べられない。そういう不満が出ないようにお母さんが種族の街の位置を決めて中心で暮らす。雑食、肉食、草食で固めて空気を浄化する。もしくは3ヵ国をつくり中心に私たちの国をつくる。


 お母さんは間違いなく草食の種族から蘇らせるので確認できるし国の形を変えることができる。失敗しても殺し合いにならないように争いを止められる。だから難しく考えなくてもいいよ。私たちは国づくりを楽しむけれど、国を発展させるのはそこで暮らす人だからね。


【その通りね。肉の臭いで嘔吐したり震えてしまうのを責めることはできないよ。】


「私に押し付けてから全く違う方向性の国づくりを思考するのはおかしくないかしら?新しい方針に変えて最低でも5ヵ国は作った方がいいわ。森、平野、鉱山、淡水、海水よ。だけど私たちの国を中心にすると国民が増えない。それなのに中心でいいの?」

「いいよ。それにどの種族にも特殊な子が生まれると思う。そういう子は中心の国で暮らしたいと考えるかもしれない。細かいことはお母さんに抱きつきたい寂しがり屋の甘えん坊が考えてよ。私はリオリナと自由に空を飛べる世界であればいいの。」


 これでいいね。甘えん坊の3人は何も言えない。お母さんに抱きついて眠れるだけでいいと思っているので中心の国で暮らす人のことを気にしていない。


「全くもう…。中心の国で暮らす種族は私が考えておくわ。次は私の名前を決めてね。」

「クロニクル・ワールドでいいでしょ。女帝クロニクルとして玉座に座って。」


【絶対に興味ないでしょ。安直すぎない?】


 私たちが人前でクロニクル陛下と呼ぶことはないよ。百歩譲っても陛下だけ。そして当分の間は世界で陛下と呼ばれるのはお母さんしかいないのだから大丈夫。皇帝を名乗る人が新たに現れてもお母さんには頭を下げるしかないのだから気にする必要はない。

 それに性をワールドにできるのはお母さんと娘だけ。完璧でしょ。


「他に意見がないのなら決定だね。私たちが暮らす国名を考えてみたけれど、聖地にした方がいい。名も必要ない。聖地は他にないのだから。魔力のない動物も聖地で保護するけれど、出入り自由の結界だけでいい。結界の外で棲むのも自由にしてあげないとね。」

「聖地に玉座があるのは不自然だけれど、0から始めるのだから問題ないわね。そして魔力のない動物には結界が見えないので飛び越えられる高さの壁で囲めばいい。魔力のない動物だけが棲む大陸にしてしまうと狩りの対象になってしまうので避けたいけれど、保護という名目で自由を奪いたくない。それに魔力のない動物を狩ることに慣れてしまうと魔獣に殺される。この世界は魔力のある生命が主なのだから狩りをするのなら魔力のある動物にするべきだという事ね。3年で聖地の下地を作るのであなた達は勉強して遊びなさい。新しい体になれば食事は必要ないけれど、味覚は変わらない。体内で全て魔力に変換されるのでトイレも必要ない。食事がなくても夜に簡単な家族会議してお風呂に入って就寝する流れは変えない。食事するのか決めたら体を交換して遊びに行きなさい。」


【リアは深いことまで考えていたんだね。魔力のない動物を完全に保護すると思っていたよ。】


 あの世界の人間は全ての生物のいる世界に魔獣を連れていったはず。だから現存する魔力のない動物は少ないと考えているよ。それに命懸けで生きている動物は馬鹿ではないので魔獣を見たら壁を越えなくなる。本音としては魔力のある人が魔力のない動物を一方的に狩るのが気に入らないだけ。


【確かに魔力のない動物は非常に少ないね…。研究対象ではないので蘇らせるのも無理だと思う。リアの予想通りで魔力を自由に使いたいので魔獣を連れていった。肉食の動物でも草食の魔獣に殺される。生き残っている魔力のない動物は魔獣を知っているので壁を越えないと思う。自宅の裏に広大な庭を用意すればいいね。星を作る程の種がいないし数も少ない。私たちはお母さんが蘇らせて国民にするつもりの種族と交流しよう。私は食事しなくてもいいと思う。】


「アンジェと私は食事しなくてもいい。3年を待たずにお母さんが蘇らせた種族と交流する。だけど後々のことを考えると多くの植物を育てた方がいいと思う。」

「私も食事は必要ありません。ですが料理を教えるために作りたいです。」

「それなら私はディア姉の料理を試食するだけでいいよ。」

「決定ね。交換した体は魔力に変換するわ。ディアから私の目の前に来て。」


 研究室で体を作っていない。機械で作ることのできる体ではないと思うので当然ではあるけれど、既に用意できているのが不思議に思えてしまう。機械で体を作ることも不自然なことなのに短時間でそれに慣れてしまっている。他にもあると思うけれど、慣れと思い込みは怖い…。


 お母さんはフィーを席に戻して席を立った。姉さんがお母さんの目の前まで行くと姉さんの額にお母さんが手を当てた。その直後に姉さんの体が魔力になって拡散していく。そして残ったのは黒髪の美少女だった。私は姉さんを見て気になった。

 アンジェ、姉さんが皆と一緒に勉強していたとは思えない。今回の教育を遣り甲斐があると言っていたので当時は不本意なことを国に命令されていた気がする。国が家族を人質にしていた可能性が高い。


【そうだね…。クリスに洗脳されていたとはいえ妹が気づけないのは情けない…。】


 姉さんが席に戻った後に私がお母さんの目の前に行った。


「アンジェと交代した方がいい?」

「そのままで大丈夫よ。リアは全ての仮想体を消しなさい。経験が無駄になるわよ。」


 1日の努力でも無駄にしたくないので仮想体に念話で解放を伝えた。お母さんの声は聞こえているはずなので問題ないと思うけれど、確認するべきだね。


【リア、仮想体は残っていないよ。】


 アンジェが私の中にいると安心できるけれど、これからは外で一緒に頑張る。 


 お母さんが私の額に手を当てると幼いお母さんが生み出された。アンジェが外に出て自由に行動できるのを嬉しく思うのは間違いない。だけど胸に穴が空いたような気がする…。

 お母さんはそのまま私を幼いアンジェの姿に変えた。大好きな姿になれたのだからこれで満足しなければならない。寂しさはリオリナに癒してもらう。


「姉さん、私がアンジェだよ。リアは私の姿を望んでくれたの。私は自分が大嫌いだった。それでもリアが入っていると可愛く見えるのが不思議だね。」

「分かっています。本来の姿は逆だと思いますがリアの望みを叶えた形なのですね。それにしてもアンジェは鈍いです。当時を知らないリアの方が私の事情を理解してくれています。そして漸く私も過去と決別することができました。これからは全てが未知でとても楽しみです。命を守るための教育ができます。最高ですね。」


 今の話だけで本物は別格だとよく分かった。そして姉さんとアンジェが話している間にフィーも体の交換が終わった。あとはリオリナだけだね!


「お母さん、姉さんが馬を決めていいと言っていたけれど、ワーディーとユニティーの記憶を消したの?序列も変更してあるの?」

「特別だと思い込ませるための演出よ。リオリナとフィディー以外の記憶は消したわ。馬と牛の序列は私が新しく決める。精神が濁っても個体が増えすぎても庭で放し飼いにするわよ。最後にリオリナの体を交換しましょう。」


 今でもクロアが特別な存在だったと思い込んでいる。フィオナは無自覚で思考把握していただけなのかもしれない。お母さんの力を利用すれば簡単に同じことができる。

 核から精神を剥がした後に動物と触れ合っていないので事実が分からない。姉さんを見ていると動物に愛されるとは思うけれど。

 クロア、フィオナ、ミュリエル、クリスについての記憶は終わったものとして扱う。今の出来事と繋げない方がいい。元々常識を知らないのだから新しく覚えるのが一番。


 思考している間に封印されたリオリナがリビングにいた。お母さんが封印を解くとリオリナは真っ直ぐに私を見ている。リオリナは姿に関係なく私が分かるみたい。そして世界であるお母さんよりも私を重視している。目の前にいるお母さんを全く気にしていないのは強いね。


◇◇◇

念話中。


「感心するほど私に無関心ね。今から体を交換するわよ。今日からは服を着て生活しなさい。ドラゴンに変身するときは服を脱がなくても大丈夫。ドラゴンの体内に服を着た自分が入っていると思えばいいわ。リオリナはどのくらいの大きさになりたいの?」

「人型のときは大人にして。一緒に勉強して私を手伝ってね。」

「お任せください!リア様の望み通りでお願いします。」


 ドラゴンについては全く分からないのでお母さんに任せるしかない。だけどリオリナが望むドラゴンの大きさは私だけが乗れる大きさで十分だと考えていると思う。


「4足歩行のドラゴンでリアが大人になっても大丈夫な大きさにするわ。年齢なし。大人で小さなドラゴンは自然界に存在しないのよ。それでは交換するわね。」


 馬より少し大きなドラゴンにするのだと思う。だけど一緒に勉強すれば世界最強のドラゴンになれるので大丈夫。だけどリオリナは争いを好まないので敵を実際に潰すのは私の役目。


念話終了。

◇◇◇


 人型のリオリナは黄色みを帯びた白色の髪の毛で目は黒色。とても優しい顔をしたお母さんと同じ歳に見える女性になった。私以外を拒否するので真面目で頑固そうな顔になると予想していたのに大外れ。


「リオリナ、体を交換してくれたのはお母さんだよ。アンジェも一緒にリオリナに乗る?」

「リオリナがいいなら乗りたい。」

「上手に飛べるのか分かりませんがいいですよ。アンジェ様の雰囲気をリア様から感じたことがあります。初対面だと思いますが私の背中に乗っていた気がしますので気になりません。」


 鋭い感性を持っているね。私が眠っているときにアンジェが色々としていたことに気づいているのだと思う。勉強を頑張らないと軽く抜かれそう。

 お母さんを全く気にしないのはリオリナらしいけれど、ここまで優先順位を徹底して守れる馬は他にいない気がする。お母さんが怒っていたら流石に気にすると思うけれどね。


「ディア、フィー、これが本物の覚悟よ。純粋な想いでリアのためだけに生きると決めたのでドラゴンにしたの。リオリナの覚悟は想像以上ね。私を無視して娘とだけ話すのは悲しくなるわ。」

「お母さん、ありがとうございます。これでリア様の専属を続けられます。」

「リオリナ、早速飛んでみよう!アンジェも行こう!」

「勿論行くよ!リアの指示以外を無視するリオリナは違ったね。世界の理に気づいていて気にしないのは真似できない。強がりや誤魔化しが通用しないからね。お母さんはリオリナを基準にすればいいよ。」


 自分の意思で格上の存在に望まなければならない。だけど厩舎にいるのは人間に殺されそうになった馬ばかり。それなのに人の気持ち次第で殺される条件を受け入れるのは厳しい。


「特例ですから私よりも主を選ぶのが当然ね。ディアとフィーは厩舎に行きましょう。普通の馬の反応を見ておくのも大切よ。」


 姉さんとフィーを連れてお母さんが転移した。厩舎では封印を解かれた馬が全頭お母さんに頭を下げている気がする。お母さんも乗馬するのかは分からないけれど、馬の心が心配になる。

 私たちは歩いて自宅を出た。10m離れれば大丈夫だと思う。


「リオリナ、変身できそう?」

「はい。初めてなのに分かるという不思議な感じです。それでは変身します。」

「楽しみだね。」


 突然リオリナが白い光りに包まれ、光が収まったときにはドラゴンに変身していた。馬のときよりも2倍ほど大きい。鱗は淡い黄色で光り輝いている。頭に2本の黒い角があり鬣と飛膜と尻尾は黄色みを帯びた白色で艶がある。4足歩行のドラゴンで馬のときと同じ色だからリオリナだとすぐに分かる。


 とても神秘的で自然界にいるとは思えない。


「全身が光り輝いているね。とても綺麗で優しい顔をしているよ。」

「余りにも幻想的なので勘違いした馬鹿が絶対に襲ってくる。殺すのは今でも簡単だと思うけれど、力の差を見せつけるのは難しいでしょ。」

「分かりました。私がリア様を守ります。」


 人が素材目当て等の欲で襲ってきたら私が殺してしまいそう。

 私の専属だと知っていて襲ってきたら…。


「リオリナには強くなってもらうけれど、私が潰すよ。乗っても大丈夫?」

「大丈夫ですよ。お2人とも早く乗ってください。」

「ドキドキするね。リア、早く乗りなよ。リアのためにドラゴンになったんだよ。」


 アンジェの言葉を聞いて私が最初に乗るべきだと思った。飛行して折り重ねている翼を飛び越えて背中の中心より少し前に座った。冷たいと思っていたけれど、温かい。アンジェは上空で私が座るのを見てから下りてきて私の後ろに座った。


「リオリナ、今なら上空に結界が見えるでしょ。結界を越えたら全力で飛んでみて。」


 リオリナが翼を広げて羽ばたくと突風が芝生を揺らす。

 バサァン、バサァン、バサァンと翼の羽ばたく音と共にグングン上昇していく。


「アンジェ、普通の家なら吹き飛びそうな風だね。」

「間違いなくバラバラだね。ドラゴンは魔法で飛行すると思っていたので驚いたよ。ドキドキしたりワクワクするのが初めてな気がする。」


 リオリナが結界を越えた辺りでどこに向かって飛ぶのか迷っている気がした。


「リオリナ、今向いている方向に全力でお願い。疲れたと思ったら言ってね。」

「分かりました。全力で飛びます。」

「あー!ワクワクするよ!」


 アンジェは目を輝かせている。私はドキドキしすぎて胸が痛い。魔力を一切使わないドラゴンの身体能力が楽しみで仕方ない。お母さんが用意した体だから普通のドラゴンとは違うと思うけれど…。


 どんどん速くなると喜んでいたけれど、既に私の飛行より速いしまだ速さが増している。

 私たちは体勢を低くして結界でリオリナから離れないようにしている。


 風の音が激しすぎて会話は無理だね。


≪多重念話≫


「リオリナ、あとどのくらい速さが増すの?」

「すぐに最高速で飛べなくてすみません。飛ぶ練習をしなければなりませんね。今で6割くらいです。」

「まだ6割なの?私の全力飛行より速いよ。」


 リオリナ、これは違う。のんびりと楽しみながら飛ぶ速さではない。だけど向上心があるのはとてもいいことなので全力を経験しておくべきだと思う。


「リオリナが疲れるか世界一周を初日でしてしまうのか楽しみだね。」

「開き直ったね。自宅の裏側の世界は夜だからね。それと陽が落ちる前に自宅に帰らないと説教だよ。目安は6時間。つまり説教決定です。1秒で2㎞飛ぶことができれば間に合うかもしれないね。」

「リア様、私には分かりません。」


 絶対に無理です。


「リオリナ、全力で自宅に帰るよ。世界一周は私が大人になってからにしよう。子供は暗くなる前に自宅に帰らないと説教されるからね。自宅の場所は分かる?」

「感覚で何となく分かります。それでは全力が出せるように頑張ります。」

「それでこそリアだよ。暗くなる前に帰らないと世界のどこにいても連れ戻されるからね。」


 アンジェに甘えているだけではなく私が甘く考えている部分も多い。なるべく早く直さなければ手痛い失敗をすることになる。私には常にリオリナが隣にいるのだからもっと注意深くなる必要がある。

 先程は勢いだけで世界一周しようとしてしまった。それでは話にならない。できること、できないこと、どちらか分からないことを都度考える癖をつける。その上でどうするべきなのか判断しなければならない。


 焦らずに様々なことを自分の成長の糧にする。

 絶対に家族を失いたくない!


≪多重念話終了≫

力があるからこそ自分を正しく管理できなければクリスと同じです。

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