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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第86話 不平等

 封印が解かれたみたいでアンジェの声がよく聞こえる。肩を軽く叩かれているので目を覚ませという事だと思うけれど、私の記憶では何が起きているのかが分からない。状況を把握するために残しておいた仮想体が私の指示を無視して本を読み続けているのもおかしい。


 アンジェは大丈夫なのかな…。


「リア、寝た振りをやめて目を開けてよ!」

「アンジェ、仮想体が私の指示を無視している理由を知っている?」


 怒りで現実から逃げ出した私が言うべきことではないと思う。だけど世界がアンジェを洗脳しているのだとしたら絶対に許さない。アンジェと別れるのは寂しいけれど、今の私には全てを終わらせることしかできない。いつまでこの状態が続くのか分からないので甘い期待はしない。


「えっ!?うーん…、会話は聞こえないようにしたけれど、リアは仮想体の記憶で想像するでしょ。お母さんが私と向き合うために指示を変えてくれた気がする。私たちの本当のお母さんは娘をとても大切にしてくれるよ。リアを封印から解いたのは母さんと早く話してほしいから。物騒なことを考えていないで目を開けて!」


 目を開けてアンジェを強く見つめた。


「私に見られたくないことがあったの?それはアンジェも隠したいことなの?」

「本当のお母さんよりそれが気になるの?もぉー!絶対に秘密だからね…。お母さんと話していたら涙が出てきたの。それで下を向いていたらお母さんが会いに来てくれて抱きしめてくれたんだよ。私のことはいいから早くお母さんと話してきて!」


 世界を憎むアンジェが世界と話して泣くのはおかしい。本当のお母さんはアンジェにそれ程の影響力があるという事になる。何もされていなければいいのだけれど…。


「早く行きなさい!」

「分かったよ。アンジェの邪魔になると思ったら母とは認めないからね。」


 珍しくアンジェが感情的になっている。私たちの母になるみたいなので警戒するべきだね。あの不愉快な存在と同じ考え方をしているのかもしれない…。

 何も分からないのは私が怒りを言い訳にして逃げたから。アンジェと楽しく暮らすために精神を濁らせたくないと考えてしまった。アンジェに何かあれば精神が綺麗なままでも意味がないことに気づけなかった。全てをアンジェに押し付けてしまった。本当に最低だよ…。


 正面の壁を見ても暗くて何も分からない。

 急かすアンジェを気にしつつ天井を突き抜けた。


 柔らかくて温かい。

 布団で横になり抱きしめられている。


「アンジェが何で泣いたの?本当の母だと聞いたけれど、アンジェを巻き込まないで!」

「母に抱きしめられているのに姉のことしか考えていないわね。アンジェは私の中に100万年以上いたのよ。だからアンジェの故郷の世界と母は私になっているわ。私はこの世界で生まれた全ての命の母であり、一緒に暮らす家族としてあなた達の母にもなるけれど、アンジェとリアだけは実の娘なの。勿論クローディアとフィオナも私の娘として平等に愛するわ。それとアンジェが恥ずかしがると思って私が隠したの。全てを知ることが常に正しいとは限らない。覚えておきなさい。」


 声を聞いただけなのに母だと分かる。そして気になる内容が色々とあったのに注意されたことが気になっている。有り触れた言葉なのに怒らせたらまずいと感じた…。

 お母さんは世界なのだから隠し事は不可能。今すぐに緊急避難しなければならない。


「アンジェが洗脳されている気がして心配だったの。それと抱きしめるのをやめて。このままだと眠るから。本当に眠るからね。」

「母に抱きしめられながら眠りたくないの?会話したいのならリビングに移動するよ。」


 アンジェはお母さんに抱きしめられながら眠ったのかな。

 空腹感がそれ程ないのでまだ午前中だと思うけれど。


【リアの封印を解こうと思ったら気にせずに眠りなさいと言われたからね。頑張って眠らずに話していたけれど、いつの間にか眠っていたよ。それでも1時間で起こしてもらったよ。】


 アンジェもお母さんの声を聞いただけで分かったのだと思う。涙の理由は分からないけれど、嬉しかったのかもしれない。だから私を急かして話をさせたかった。それだけで分かると知っていたから。

 実の娘が同じ体にいるのは不思議だけれど、気にしなくても別にいい。アンジェは姉さんを救うことができたのに私が心配で外に出なかったかもしれない。だけどお母さんがいればその心配はなくなる。


【お母さんが目の前に座っているのに私のことばかり考えすぎだよ…。】


 もしかして照れているのかな?


 お母さんの言葉を聞き終えたのと同時にリビングの椅子に座っている。成長した姉さんよりもお母さんの方が綺麗に見える。中身がクリスではなければ姉さんはもっと綺麗に成長するかもしれないけれど。

 姉さんが男女を虜にする美人だとすればお母さんは畏敬される美人。とても優しい笑顔なのに厳かな雰囲気があるので初対面の人は話しかけられないと思う。世界なのだから当然ではあるけれど、アンジェと私は娘だから平気なのかもしれない。


「姉さんとフィーはお母さんと話せるの?リオリナは厳しいような気がするけれど…。」

「あなた達とリオリナの新しい体は私が用意するので平気よ。アンジェにも話したけれど、あなた達には世界を管理してもらうわ。特別扱いするのだからそのくらいはしてもらわないとね。」


 お母さんが説明してくれたけれど、新しい体が人体実験と関係なく不老不死に近いのには驚いた。だけど私たちに何も損がない。楽しい世界を作ることについても注意を受けたけれど、納得できることだった。

 簡単に言えば全ての命を大切にするという事なのだから。私たちが住む土地だけは例外にしてくれるみたいなので十分に楽しめる。


「誰でも平等に勉強できて楽しめる世界一の国をつくればいいね。お母さんを女王にすれば欲のある人は出て行くから放置すればいいという事でしょ?そして魔力のない動物を保護する。」

「よく分かっているわね。人には欲があるので必ず自分の国を欲しがる。外に出た人は基本的に守らないけれど、世界の管理人として仕事することがあると思う。汚染を浄化したり他種族との争いを止めて制裁する。同種族で争うのは好きにすればいいけれど、他種族を奴隷にしたり滅ぼそうとするのは許さない。同種族でも醜悪なことをしていると判断すれば制裁を与える。そして魔力のない動物を放置すれば魔力のある動物に滅ぼされてしまう。だから魔力のない動物を保護してあげる必要があるの。但し、その中での食物連鎖には手出ししない。それが自然なのよ。」


 世界の管理人の仕事も納得できる。人の欲に果てがないのはクリスと人体実験した研究者で知っている。そういう馬鹿なことをする国や種族差別は許せない。

 食物連鎖も自然なことだから人が手出ししなければ安定するに違いない。


【本来は魔力の有無で棲息する星が違うからね。一番は新しく星を作って移住させてあげることだよ。別の世界は信用できないのでこの世界の核を複製して魔力で繋げばいい。この星の周りを回るように作ることができれば管理しやすいよ。】


 動物を保護する話が星を作る話し変わっている。

 話が具体的だから似たような星を知っているのかもしれない。


「星を作る話はいいと思うわ。勉強して実現してみせなさい。それに姉妹で協力するのも大切なことよ。アンジェだけに頼らずディアとフィーも頼りなさい。それで新しい体のことだけれど、アンジェは二度目の人生を私の娘としての姿で生きたいと考えているわ。リアはどうしたいの?」

「アンジェがくれた名前と体を捨てるはずがないでしょ。」


 姉妹で協力して星を作るのは格好いい。楽しみが増えた。

 そしてアンジェには二度目の人生を好きな姿で楽しんでほしい。姉さんが戸惑うかもしれないけれど、慣れてもらうしかない。あの時のアンジェの言葉が私の一番大切な宝物だよ。


【そこまで言われると流石に恥ずかしいよ…。】


「本当に仲が良いわね。2人の名前は愛称が違うでアンジェリアのままででいいかしら?アンジェは了承しているわ。リアもそれでいい?」

「削らなくてもいいのであればその方がいいよ。」


 姿も違うし愛称で呼ばれることが多いので問題はほとんどない。それにとても大切な名前だから削らなくてもいいのであればその方が嬉しいに決まっている。


【私の精神に攻撃しているの?攻撃力が高すぎるよ!】


「それなら決定ね。疑問がなければ厩舎に行くわよ。」

「絹のノースリーブのワンピースで行くの?それは寝間着でしょ。恥じらいとかないの?」


 新しい研究所から厩舎に移動させているみたい。

 病原菌は全て消されていて新しく体を作る必要がないのだと思う。


 頭をパシッと叩かれた。

 私の意見は正しいと思うけれど、世界は全裸みたいなものだから平気なのかもしれない。


 頭をバシッと叩かれた。

 アンジェ、思考把握して娘の頭を叩くのは酷いと思わない?


【お母さんなら転移中に着替えられるよ。それに世界は全裸どころか星の中心に核があるからね。普通は姿を見ることさえできないの。】


「アンジェの言葉を脳裏に刻み込みなさい。それでは行くわよ。」


 お母さんが転移したのはフィディーの馬房の前だった。黒の清楚なドレスに着替えているけれど、相変わらずノースリーブ。そして背中には生地がないけれど、髪の毛でほとんど隠れているので問題ないのかもしれないけれど…。

 アンジェ、お母さんは肌を見せたいのかな?


 頭をバシッバシッと二度叩かれた。

 結構痛い…。


【リアの挑戦心には驚かされるね。世界一怖いお母さんを煽り続ける蛮勇はいつの間に身につけたの?何を着ても似合うし今は人気だったドレスを着ているだけだと思うよ。】


 世界によって衣装にも違いがあるみたい。お母さんが寝間着で玉座に座っていても文句を言えるのは家族だけだと思うので別にいいと思うけれど。


 頭をバシッバシッバシッと三度叩かれた。

 アンジェ、お母さんは体罰容認派だよ。気をつけてね。


【お母さん、リアは赤ちゃんだからお母さんに甘えているんだよ。許してあげて。】


「妹を庇うアンジェの爪の垢を煎じて飲みなさい。とにかく私がフィディーに説明するわ。大好きだったフィオナがいない現実をどのように受け止めるのか確認しなければならないもの。それとリアは説教した後に許してあげるわ。」


 教育熱心なお母さんで感激だよ。娘の言葉を聞いてくれたら更に感激するのに。


【娘の言葉を聞いてくれているから叩かれているの。静かにしていなさい!】


 はい。黙っています!


◇◇◇

念話中。


 お母さんが封印を解くとフィディーは何か感じたのか顎が地面に付くまで下げている。脚を見ると震えている。そのままお母さんの説明が始まったけれど、フィディーには信じたくない内容しかないと思う。それなのに一言も挟まない。お母さんが怖いのは分かるけれど、何も言わないのはフィディーらしくない。


【リア、この世界で生まれた生物はお母さんの言葉を疑えないの。リアが感じた姉さんとお母さんの一番の違いはそこだと思う。世界と生物にはこのくらいの差があって当然なんだよ。】


 お母さんは事実を話しているけれど、聞いているフィディーはとても辛そう。このまま話を聞いて終わりだとフィディーが心配。お母さんの言葉に何も言い返せないのであれば私に話した方がいい。お母さんは人の姿で私たち以外に話すのは初めてのような気がするから加減ができていないように見える。私の頭を叩いたときも痛みを感じたので普通の人なら死んでいる。

 相手に合わせることができればいいのだけれど、お母さんが人を殺すのは見たくない。


「フィディー、言いたいことがあれば私に言って。お母さんは世界だから本能が恐れているのだと思う。それでも私には言えるでしょ。お母さんは嘘を何一つ言っていないけれど、このままだとフィディーの心が壊れてしまう気がしたの。お母さんは少し黙っていて。フィディー、頭を上げて私に言ってよ。」

「フィディー、ごめんなさい。あなたを追い詰めるつもりはなかったのよ。私も努力しなければならないことが多いみたいね。リアに言いたいことを言いなさい。何を言っても怒らないと誓うわ。」


 フィディーは頭を上げてお母さんに軽く下げてから私を見た。


「この問題は対処できないことだったのでしょうか?」

「フィオナ、クロア、ミュリエルは洗脳されていなければ本性が出るように体を作られていたの。洗脳し続けることで対処できた可能性はあったけれど、実験場の外に出た初日で精神が酷く濁ってしまった。私は頭に爆発物を仕掛けられて、更に体を捨てて消えろと言われたよ。フィディーはフィオナしか背に乗せないと言っていたのでお母さんが話しに来たの。記憶を消してなかったことにはしたくないでしょ。私の記憶に残っているフィオナを見てみたい?」


 私がフィディーと話しても救ってあげられないことに気づいたよ。

 アンジェ、何とかしてあげられないのかな…。


【この子はとても純粋だから私の専属馬にしてもいいよ。フィディーが納得してくれたらね。】


「記憶を見せてください。実験場から出たフィオナを知りたいのです。」

「分かった。それとフィディーの気持ちが変わるのであればアンジェが専属馬にしてもいいと言っているよ。今は私の中にいるけれど、もうすぐ外に出られるからね。話すことなら今すぐにできるよ。アンジェもフィディーと同じ気持ちを知っているの。まずは記憶を見せるね。」


記憶追加(メモリアッド)

フィオナに消えろと言われた前後の記憶をフィディーに入れた


「あぁ…、これ程までに醜いのですね…。優しかったフィオナの面影がどこにもありません。アンジェさんが私と同じ気持ちを知っているとはどういうことでしょうか?」


 アンジェ、フィディーに伝えてあげてほしい。私はリオリナが大切だからこれ以上は何も言うべきではないと思う。フィディーを受け入れることができない私の言葉は無責任だと思う…。


【分かったよ。これからの私はリアの優しさを守る。交代するね。】


「初めまして、リアと同じ姿だけれど、私がアンジェだよ。そしてフィオナは私の母親だった人。だけど私を裏切って人体実験する研究所に売られそうになった。捕まっていたら研究という名目で死ぬまで拷問され続けていたよ。だから世界と人間を憎んで自殺した。この世界ではなくて別の世界でのことだよ。そうしたら世界にも捨てられてここに来た。今はリアの中にいるけれど、もうすぐ外に出るよ。二度目の人生はお母さんの娘だから。勿論今すぐ答えを出さなくてもいいしフィディーが好きに決めていい。但し、自殺だけは絶対にしないで。ここは腐った世界ではないからね。」

「あ、あの…、同じ気持ちとはフィオナに裏切られたという事でしょうか?私はまだ直接裏切られていませんし自殺もしていません。何故そのような辛い過去を話せるのですか?」


 アンジェ、ごめんなさい。甘えているね…。

 この話を知っているのはお母さんと私だけしかいない。それに私は人の過去を見ない、聞かない、話さないと決めていたのにお願いしてしまった。アンジェに私の過去を話してもらうだけで十分だったのに…。


「リアに頼まれたからね。妹に頼まれたら断れないよ。」


 はい。その通りです…。

 自然と甘えてしまうし大変なことを押し付けている。そのことに違和感も覚えないし気が緩んでいるのかもしれない。何度も助けてもらっているのに何も返せていない。本当に情けないよ…。


【姉に甘えるのは妹の特権だよ。姉妹なのだから気が緩んでもいいじゃない。問題があると思ったら注意するから心配しないで。それにリアの優しさに救われているの。この優しさを守りたいと思ったので話しているだけだよ。】


 ありがとう…。


「他にも理由がありませんか?」

「フィディーの気持ちが一番分かるのはリアだと知っているでしょ。だけどリアはリオリナとの契約を絶対に破らない。だから私に頼んだんだよ。自分ではフィディーを救ってあげられないとね。」


≪優しい姉がいて幸せね。だけど私が説教するのは決定なので安心しなさい≫


 説教されても仕方ないと思えるけれど、全く安心はできない。

 お母さんは世界一怖いから…。


「そうですね…。誘われて全てを否定される辛さに比べたら私の辛さは軽いものです。リアさんはリオリナをとても大切にしていますね。それは契約と関係しているのでしょうか?」


 アンジェ、契約について話してあげて。だけど他言無用にしてほしい。フィディーならリオリナの覚悟の重さが分かるけれど、他の馬は分からないと思う。長生きして遊びたいからと安易に望まれるのは嫌なんだだよ。我儘でごめんね。


【リアが正しいよ。他の馬が軽く考えて真似しようとしたら腹が立つからね。】


「絶対に他言無用だよ。リアと同じ寿命になってリアの専属馬として生き続けたい。リアが他の馬の背に乗りたいと思うのであれば死ぬ。リアが死んだときには一緒に死ぬ。覚悟が本物だからリオリナはドラゴンになってリアと共に生きることに決まったの。ドラゴンになるのもリアのためだよ。リオリナは自分の命をリアに預けた。リアを自分の命で脅しているのであれば私が弾いたけれど、リオリナにそのような気持ちはない。自分の命はリアのためにあり少しでも長くリアを背に乗せたいだけなの。リアがいない世界に興味なく、リアを乗せられない日々にも興味ない。リアがリオリナに優しいのは契約と関係ないよ。」


 フィディーはアンジェの話を聞いて黙ってしまった。驚いているのか困惑しているのか、フィディーは感情を隠すのがうまいから私の感性では分からない。

 リオリナと比べているのであればそれは必要ないことだと思う。ここでは好きなように生きられるのだからフィディーの生き方を見つけることが大切。


「フィディー、どのように生きるのかゆっくり考えてみて。漠然とした内容でもいいから考えたことを私に教えて。それまでは専属馬を決めない。私の専属馬になるのも候補に入れておいてね。」

「私にリオリナのような覚悟はありません。私は被害者なのかもしれませんが優遇されすぎています。これでは平等ではなくなってしまいます。」


 フィディーは意外と頑固だね。平等はお母さんに任せておけばいい。決められた範囲ではあるけれど、自由で安全に暮らせるという野生の動物から考えたらこれ以上ない恵まれた環境なのだから私たちが可愛がる動物は不平等に決めていいと思う。


≪外に出たいのかここに残りたいのか聞けばその通り。だけど私に丸投げする他力本願な考え方が気に入らないので説教の時間を長くしないといけないわね≫


【リアは言葉選びが悪いのが欠点だね。勉強して常識も身につけないと駄目だよ。】


 お母さんに分からないことはないのだから思考内容を理由に説教するのはやりすぎだよ。家族の母になるのだから思考内容は黙認して。人が増えたら姉さんに対する思考内容だけで処刑する独裁者になる。規律は必要だと思うけれど、厳しくしすぎると楽しくないし人が離れていく。

 生きていれば精神が多少濁るのが人でしょ。それでも決して悪人ではないのだから力の使い方を考えるべきだよ。


≪確かにリアの言う通りだわ。世界に影響を与えることができるようになったので過剰になっているみたい。リアの許容範囲を教えて≫


 悪人ではないのが前提で、本人に言わない、嫌な噂を広めない、行動に移さない限りは黙認するよ。こちらを侮辱するような思考をしているのなら追い出すだけでいい。お母さんは極力手出ししないようにして制裁する理由などを教えて。それを聞いて私たちが行動する。


 そのために世界の管理人にするのでしょ。


≪昔のことを考えれば国をつくっても人が残らないわね。私は問題を未然に防ぐための助言を娘にすることにしましょう。命に関わることになると急に真面目な意見を言うわね。細かい内容は家族会議で決めるわよ。だけど説教されることは決定だと分かっているわね?≫


 説教は覚悟しているよ。私が泣かない程度に抑えてくれたら尚いいよ。


【リアには意思を曲げない強さがある。それは命に対する優しさからだと思うのでリアを悲しませるようなクズは私が排除するよ。】


「フィディー、ここは平等な環境だと言えるでしょ。外敵はいないし自由に過ごすことができる。お腹を減らすこともない。この環境を否定するのであれば出て行けばいいの。望めばいつでも外に出してあげる。それ以上は不平等でいいんだよ。リアがリオリナを大切にするように私はフィディーを気に入っているので自由に生きてほしいと考えている。ここで暮らす全ての動物が私たちに感謝していなくてもその動物を貶めたりはしない。私たちの専属馬に選ばれたら自由時間が減ると考えている馬もいる。それでも私たちは受け入れているでしょ。フィディーが望む平等は多くの動物を追い出すことになる。だから不平等でいいの。納得してくれた?」

「はい。とても贅沢になっていたようです。この恵まれた環境が当然のように思っていたことが恥ずかしいです。なるべく早くアンジェさんにお伝えします。」


 アンジェの言葉には説得力がある。ここで暮らす動物が私たちのことを平等に見ていないのに私たちだけが平等に見る必要はないという事だね。この言葉選びも勉強しないと世界の管理人になれない。

 お母さん、資料館をあらゆる勉強ができる建物にして。人体実験については私たちが必要だと思う知識だけを本にしてよ。


≪勉強する環境は勿論用意するわ。家族は全員勉強する必要があるもの≫


「フィディー、疑問はもうないわね?」

「はい。大丈夫です。」


念話終了。

◇◇◇


 お母さんはフィディーの返事を聞くと再び封印した。

 そのあと資料館にある説教部屋に転移した。


 お母さんは椅子に座り机に頬杖を突いている。笑顔がとても怖い。

 私は正座させられている。


【リア、泣いても秘密にしてあげるよ。全てを知ることが常に正しいとは限らないからね。】

秘密は守られそうです。

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