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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第83話 願い

◇◇◇

姉と念話中。


 圧倒されるね!太陽の輪郭が見えない場所にいるのに未だ表面までの距離が分からない。偶に火柱のようなものが見えるけれど、その高さが分からない。全力で転移しても表面まで行ける気がしない。

 星の環境によると思うけれど、私の知る環境では多くの動植物を生かすのに必要な光を届けてくれている。太陽にお願いするのだから全ての命に対して平等にしなければならない。


「姉さん、太陽に念話でお願いできるようにしてほしい。私の分かる言葉で話してくれるはずだよ。姉さんも念話を聞けるようにすればいい。魔法式で日常会話を書くようなお願いになると思う。他には何も書かないで。私たちの命だけ守るような真似はしないで。」

「何を言っているの!お願いで家族が命を失う可能性があるのよ。除外しておくべきだわ。」


【覚悟がないね。後ろ暗いことがあると自白しているよ。】


 姉さんは太陽の力を感じていない。家族を除外すると私たち以外は消されることになる。だから覚悟しているのか確認したのに…。

 除外するという事は最上位の命だと太陽に訴えていることになる。それを許容してくれるのであればいいけれど、怒りを買う可能性が高い。

 そしてお願いする立場に選ばれた私たちに何かすることは許されない。太陽の精神を消すことも太陽が不利益を被る内容を書くことも許されない。

 ここは姉さんを説得する場ではない。全て太陽に見透かされている。


「念話でお願いできるようにして。それ以外は好きにして。」

「そうさせてもらうわ。家族を守らなければならないもの。」


 姉さんが満足しているのであればそれでいいよ。

 私が強制するものではないね…。


◇◇◇

太陽と姉と念話中。


「あなたは太陽と呼ばれています。その呼び名で構いませんか?」

≪太陽で構いません。アンジェリア、あなたの疑問に答えておきます。星の中で起きたことを世界が記録しています。世界に個性はありません。記録を利用することもできません。全てを記録することが世界の役目です。星には個性があり記録を利用することができます。そして人は星に精神を貼り付けていると考えていますが違います。星の核に貼り付けた精神が世界の記録を利用できるだけです。私は星に影響力がありますが指導的なものです。効果の有無は星により違います。しかし今は力を使うことができます。叶える願いも私が決めます。私は何も記録していませんが世界の記録を参照できます。そのため私の知らないことはありません。星の個性はそれに基づく微弱な洗脳を生物に与えます。アンジェリアは記録により星が歪むと考えていますが記録を消すことで影響を受けるのは核に貼り付けた精神のみです≫


 私の予想が簡単に的中するはずがない。これが普通だと考えているので驚きはない。

 人間の行為が星と世界を腐らせていると考えていたけれど、腐っているのは1個の星と人間という事になる。このくらいであれば私の目的に何も支障がない。それに分かりやすくていい。


「星が貼り付けられた精神を剥がさないのは平等を保つためですか?」

≪残念ですがその通りです≫


 核に精神を貼り付けることができる悪意ある人間が1個の星からばら撒かれ多くの種族を滅ぼすことになるとは想定されていなかったに違いない。そのため残念なのだと思う。


【故郷の星と人間は腐っていたけれど、世界は腐っていなかったのね…。】


「太陽の中に光と熱を魔力に換える結界を張りつけてもよいでしょうか。よい場合は中心にいる姉の目的を叶えるために必要な魔力球の個数と魔力の維持を想定した結界の枚数を答えください。」

≪この方の目的は命の平等性に欠けています。そのためアンジェリアの案を採用した場合ですが、魔力を節約するために星から徴収することはできません。結界を張り魔力の維持は私がします。魔力を使う内容ですが、核がない物体を破壊して塵にします。核に貼り付けてある精神を消します。核と隠蔽された魔力線を繋ぎ守るべき内容を送り貼り付け魔力の受け渡しもできるようにします。宇宙を掃除すると考えてください。アンジェリアの願いを叶えることでこの方の目的も達成します。そのためには魔力球を1億個用意してください。余ったときは維持に使わせていただきますが僅かしか余らないでしょう≫


 誰かが拠点にしていても邪魔だし消した方が後々のことを考えると魔力の節約になる。そして守るべき内容は太陽にあるので剥がせない。

 核に精神を貼り付けることを許さず全ての星に対して平等な願いを叶えてもらう。


「それでは不公平ではありませんか?誰かが暮らしているかもしれません。誰かの財産が隠してあるかもしれません。それを破壊することが平等なのですか?」


【文句を言うと思っていたけれど、思考停止しているのかな…。】


≪その場所で暮らすのに私の光と熱を利用していないのですか?財産を隠した場所に私の光と熱を利用せずに行けるのですか?私の光と熱を利用せずに結界を張っているのですか?魔力の有無に関係なく同じことができるのであればあなたの意見を認めましょう。歴史の話をしなければなりませんか?≫


 注意したのに伝わっていない。太陽の意見を変えることは不可能。太陽はどのような人が暮らしていて財産を隠しているのかまで把握している。

 太陽が精神を持ち力を自由に使える状況で人の言葉を聞いてくれていることが奇跡だと思う。私の願いを叶えてくれるという体裁にしてくれているだけで十分。


「私にはお願いがたくさんあるけれど、姉さんは目的を諦めて救いに行くといいよ。太陽が魔力を作ってくれるのであれば私はまだここに残る理由があるの。」

「私を殺すつもりでしょ。そのくらい分かるわよ。」


【焦りすぎだね。何かしたのかもしれないよ。】


「私の注意を無視して太陽を怒らせたの?」

≪中に入っていただければすぐに分かります。こちらに呼びますね≫


念話終了。

◇◇◇


 一瞬で視界に映る光景が変わった。


 全面が黒い壁に囲まれていて天井に付いている魔石が空間を照らしている。ベッド2台に挟まれる形で正方形机が1台置いてある。机の高さでベッドを椅子として使うことにしているのが分かる。

 ここは太陽の中心だと思うけれど、全て木製にしているのはこだわりなのかもしれない。

 左のベッドで横になっているのは偽の補佐。魔力拡散器を使って姿を変えられた人なのか確認する必要がある。封印されているので身動き一つしない。私の予想では…。

 右のベッドに座っているのは姉。実体でいるという事は力を完全に封じられ仮想体も魔力にされていると考えてよさそう。何故か私を睨んでいるけれど、睨みたいのは私の方だよ。

 机の上には太陽の精神だと思われる魔法と3個の極小の魔石が置かれている。私たちとフィーとリオリナをいつでも殺せるように仕掛けていたみたいだね。


【宇宙に出るまでこの流れは予想できなかったので完全に油断していたよ…。】


 気にする必要はないよ。

 魔法を覗き込むと魔法式が見える。アンジェ、魔法式が見えるので交代して!


◇◇◇

アンジェとリアの部屋。


 本棚が消えているのを寂しく感じる…。


【分かっているよ。私が太陽の支配者。太陽は支配者の命令に従う。太陽に私以外が声をかけた場合は殺す。リアに注意されても格上だという思いは変わらなかったみたいだね。念話で話せる以外は消すよ。要望はある?】


 太陽の精神を剥がすことはできない。

 太陽が認めた存在以外は閲覧、追記、変更、消去を不可とする。

 

 アンジェリアと記名するのも忘れないでね。太陽に名を刻んだね!


 姉と話す?


【終わったので代わってね。本物なら消される前に話すよ。それにリアの予想だと違うのでしょ。】


◇◇◇


 左側のベッドの端に座り姉だと思っていた人と向き合う。

 ベッドに座ったときに音がしたのでここには空気があると分かった。


「私を洗脳すれば気づかれないと思ったの?演技が下手すぎるよ。3個の星はあなたの計画通りでしょ。精神力を試されるとは思わなかった。研究結果で自分だけを強化し同僚や関係者の記憶を消して拷問した。人体実験の記録も破棄した。クロアを見て最終調整。これであなたが支配する宇宙が完成する予定だった。あなたは初代の偽物であり屑で下衆だよ。恐らくアンジェを人質にしてクローディアと入れ替わった。あなたの性格なら殺さない。どこにいるの?」

「私が初代でアンジェの姉よ。残念だったわね。」


 太陽が全てを知っていると理解していないの?この状況で開き直れる理由が何かあるの?

 最悪を想定していたけれど、それでも甘すぎた。


 アンジェ、私の怒りを抑えて!


【分かったよ…。】


「お前は独占することしか考えない。それなのに妹のために本を作るはずがない。お前の目的は自分よりも強い存在が生まれない宇宙にしたかっただけ。本物を下衆の補佐にして笑っていたことくらい考えなくても分かる。私が殺すように頼むのを期待していたのか?太陽、個人的なお願いなのですが構いませんか?こいつの知識をアンジェと姉さんに渡してほしいです。姉さんの仕掛けを消してこいつと入れ替わる直前の記憶と精神に戻してあげたいです。そのあと封印を解いて自宅の布団に入れていただけませんか?」

≪構いませんよ。クローディアの記憶と精神は魔石に保存されていましたので戻すことができます。人体実験され続けていたクローディアと妹のアンジェリアにその知識を渡すことも問題ありません。それでは布団にできた隙間に彼女を入れましょう。クリスティーナも本来の体と精神を保管してありますので戻します。あなたには悠久の時を痛みと死で過ごしてもらいます。最後の機会ですので言いたいことがあればどうぞ≫


 机にある魔法から念話で聞いていた太陽の声がする。

 太陽が話し終えた後に向き合っていた人は本来の姿に戻された。


 宇宙での言動に既視感はあったけれど、クリスだとは思っていなかった。

 外と内から命を支配する。異常だと思える程の独占欲と支配欲。腐った星の願いを受け継いでいる存在なのかもしれない。星と波長が合って欲望が増幅したとすれば不思議には思えない。


 とにかく姉さんを救えてよかった。


【うん…。ありがとう…。】


「私は自分の力のみでここまで来たのよ。それなのにこの不自然な存在は何?遠い星で自殺したアンジェリアが記憶を保持したまま分身と接触して体を共有している。この存在を解明しておかなければ危険だと判断した。太陽が糸を引いているのでしょ。平等とはかけ離れているじゃない。」


 他力本願の窃盗が得意な研究者もどきは言うことが違うね。


≪亡くなった命は新しい命の源になります。亡くなる直前の想いを考慮して命を振り分けていくとクロアを乗っ取ったクリスティーナの分身が求める命に該当するのはアンジェリアだけでした。アンジェリアは分身に命を渡して消えるつもりでしたが、分身は命の中にある人を救うために必要な心を借りました。その理由は全てを人任せにして何もしない主が許せなかったからです。そして心を使うことができるアグリは主を否定しました。そのアグリが体を得ることに同意したのはあなたです。フィオナを母だと考えていたときにあなたは姉となりましたがアンジェリアは何故か姉が気になりました。そのためすぐに宇宙で見極めようとしたのです。クリスティーナはアンジェリアの消したい生物に含まれています。アンジェリアは宇宙であなたの行動を見て消したいと思っていましたが、あなただけを消すつもりはありませんでした。アンジェリアに注意されているのに無視したのはあなたです。どこが不平等なのですか?≫


 人体実験で殺された命は人を避けるか復讐を考える。クローディアに惨殺された命はクローディアへの復讐を考える。命が激減した世界でクローディアばかり増えていく状況にしたのはクリスであり太陽が何かできたのであれば即クリスを消したはずなのに何を言っているのだろう…。

 分身や貼り付けられた精神が個性を持つ理由を考えるべきだった。本来あり得ないことが起きているのだから何か意味が隠されている可能性が高い。答えにたどり着ける気がしないけれど。


「とても運命的な出会いで私の自業自得に聞こえるけれど、それは建前でしょ。」

「そうだね…。アンジェ、太陽が他の星に守ってもらう内容を魔法式にして。最後は同じで私たちの名前を忘れないでね。代わる?」


【ここの魔力をもらって中で書くよ。この体の魔力を残すべきではないからね。】


 アンジェの仮想体が頭から出てきて魔力を掴んですぐに戻った。

 人間を支配するために改悪された魔力を残すべきではないね。


≪無駄な時間でした。同僚と関係者も来週には集まります。それではご案内しますね≫


 計画が失敗したときに道連れにするために細胞を保管していたのかもしれない。

 太陽の声を聞いたクリスは理解できない笑みを浮かべていた…。


 そのあとアンジェが机に魔力を貼り付けて隣にある精神と同じ大きさまで拡大した。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 ※太陽から各星への指示


1.力を使うことを許可する。

2.他の星に害となる全てを許可しない。

3.星の核に精神を貼り付けることを許可しない。

4.命に対して目に余る行為を防止する。

5.太陽が監視していることを忘れてはならない。


 ※星の個性を尊重し自由度の高い内容にしている

  但し、太陽に制裁されないように管理すること


 太陽が認めた存在以外は閲覧、追記、変更、消去を不可とする

 アンジェリア


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「星に指示する内容ですが問題があれば太陽が好きなように変更してください。そしてこの空間と星の隠蔽に利用している転移門を消してください。邪魔な結界も消してください。それと絶滅種の生きた細胞が保管されていて再度繁殖できるのであれば太陽の元で体を作り命を与えて故郷の星か最適な星に送ってあげてください。」

≪指示する内容はこのままで構いませんが星の状況により内容を変更することがあるかもしれません。絶滅種の細胞が残っていればその通りにしましょう。孤独に生きて孤独に死ぬのは悲しいと考えているみたいですね。私の中にある邪魔なものは全て消します。アンジェリアの願いは全て把握しております。全て叶えましょう。あなたの目的は宇宙一楽しい世界を作ることでしたが1万年の寿命でも無理です。それにも関わらずあなたの願いは変わりませんでした。言葉が話せる種族を全て自宅のある星に集めれば似たことは可能になりますが望みませんでした。それは何故ですか?≫


 太陽が邪魔なものを全て消したとき私たちは白く光り輝く場所に立っていた。机が残されており魔法と魔力が並べて貼り付けてある状況がとても不思議に見える。


「人間は各星に存在しましたか?私の願いで生き残る人間はいますか?」

≪消す予定の星にしか存在しない種族でした。そして拷問するのを楽しまない、拷問を見て楽しまない、解けない洗脳をされていないという最低限の条件で少しでも生き残れるようにして後は星に任せるつもりでいたみたいですが人間は滅びます。アンジェリア、クローディア、幼いフィオナは新しい種族になるので3人以外ですね≫


 クリスの故郷の星に住む人は遺伝子に刻まれるくらいの長い歳月を洗脳され続けている。恐らく拷問が娯楽になっているのだと思う。星が手伝っているので質が悪い。

 その狂った遺伝子とクローディアの遺伝子を組み合わせて拷問好きのクローディアを生み出し他の星を滅ぼしていった。人種は拷問で殺され絶滅している。

 索敵を使って獲物を探すクローディアから逃げることはできない。フィーは拷問される側だったので当てはまらないけれど、クロアとミュリエルとフィオナは洗脳されていなければ平常心でいられないようにされている。実験場の結界も別の理由があるに違いない。


【リアが怒っている理由が分かったよ。クリスが開き直っていたのは詰んでいたからなのね。太陽が『言葉が話せる種族』と言った意味が分かったよ…。】


「人間については遺伝子組み換えで善良にする必要があるので太陽と星で協議して受け入れてくれる星があれば新しく生み出してください。質問の答えですが命は星の財産だと考えています。星に個性があると知った以上はクリスティーナと同じ真似はできません。移住希望や観光で宇宙中から多種族が集まる世界を作りたかったのですが現実は残酷でした。実験場にいる魔力器のない動物を本来の星に帰してあげてください。一緒に暮らしている動物も帰りたいのか確認します。星はどのようなことを考えていますか?内容次第では私たちも出て行くべきでしょう。」

≪星の個性を優先したのですか…。実験場にいる魔力器のない動物は本来の星に帰します。結界と機械も消しましょう。一緒に住んでいる動物は残ると思いますよ。星は賑やかにしてほしいそうです。2週間後に絶滅していた妖精という言葉を話せる種族を送ります。話すこともできますし長命種です。とても温和な種族ですので安全に住める環境を用意してあげてください≫


 アンジェ、妖精を知っている?


【子供が読む絵本に出てくる20㎝程の大きさで羽を持つ種族だよ。旅人を助けたりする話が多いけれど…。人間を洗脳して支配するのが楽だという理由だけで絶滅させた気がする。故郷の星は宇宙を支配したかったのかもしれない…。】


「分かりました。妖精が安全に暮らし魔獣が自由に暮らせる星になるように努力します。」

≪全ての願いが叶いました。クリスティーナは黒死森の地下に何も作っていませんのでご安心ください。仮想体は本体まで送ります。それと余りにも無欲ですので何か私にできることがあれば叶えますよ≫


 アンジェは何かある?私の願いを叶えてもらっているので特に何も思いつかないよ。星により異なる生態系があるみたいなのでそれを壊すようなことはできないからね。


【姉さんと暮らせるだけで十分だよ。それに1万年もあれば大概のことができると思う。】


「クリスティーナが何か仕掛けていると面倒ですので新しい体を作ってください。それと力を使えることになった星が過剰なことをしないか注意してください。星が落ち着いたら遊びに来ます。気が向いたら遊びに来てください。」

≪分かりました。妖精と一緒に新しい体を送ります。クリスティーナの仕掛けは残っていないはずですが再度調べてみます。また話せる日を楽しみにしていますね。アンジェリアのお陰で星は再度やり直すことができます。ありがとうございました。絶滅した命を蘇らせることができるのか研究したいと思います。それではまた会いましょう、世界の子≫


◇◇◇

アンジェとリアの部屋。


 今までのことが夢だったかのようにアンジェと私はソファに座っていた。正面の暗い壁を見ながらお互いに沈黙している。周りを見ると本棚に本が並んでいるのがとても嬉しい。


 嫌な予感は当たっていたけれど、ここまで大事になるとは思っていなかった。


 クリスが人体実験を主動していたとは思えない。クロアの記憶で見たクリスは多少頭がいいだけの怠惰な女性という印象しかない。人体実験していた研究者が腐っていたのは当然だけれど、クリスは余りにも歪みすぎている。人間に近い種族を徹底的に滅ぼし人間を支配することだけを考えていたのだと思う。


 全ての人間が言いなりになる世界のどこが楽しいのだろう…。


 研究者として馬鹿にされていたのであれば馬鹿にした人に復讐するだけで十分だったはず。星からの影響があったとは思うけれど、クリスがこのような行動をした理由が全く分からない。

 計画が失敗したときのことまで考えており人間が滅びるようにしていた。クリスは命に痛みと苦痛と死を与えるのみで存在が病原菌のように思えてしまう。


「リア、クリスについて考えるのはやめよう。理解することも共感することも同情することもない。それよりも何故私にも知識を渡すように言ったの?」

「弱ければ奪われるだけだよ。1人だけが最強で特別なのはよくないけれど、2人いれば大丈夫でしょ。力があれば星の発展に役立てることができる。だけど絶対はないの。今のアンジェならよく分かっているでしょ。同じことを繰り返したくないのであれば強くなるしかない。既に死んでいると言い訳もできない。何が起きても後悔しない努力をしておくべきだよ。目覚ましの魔石を入れて私と交代して。早朝に今の姿を説明しておく必要があるでしょ。クリスの結界を消せるのなら魔獣が入らない程度のものに換えておいてね。」


 アンジェが漏らしたことにするからね。


「分かったよ。私が宇宙最強になって後悔させてあげるからね。」


 アンジェが勢いよく天井に飛び込むのと同時に私の本体がベッドで眠っている。不思議な仕組みだと思いながら読みかけの本を手に取り再び読み始める。


 世界の子、アンジェリア。

 その名は世界に収まらず太陽にまで名を刻んだ!


【その台詞は恥ずかしいのでやめて!】

「10歳でお漏らしするより恥ずかしいことはないよ。」

人体実験が目的の人と研究者として否定された人の目的は違います。

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