第82話 目的
今は姉さんと姉妹になった日の深夜で3人は同じ布団で眠っている。
仮想体でいる私は小さくなった円卓に置かれた椅子に座り、同じく仮想体の姉さんが帰ってくるのを待っている。大勢の敵が攻めてきたときに対処できる場所を黒死森の地下に作っておくべきだと考えて姉さんに頼んだ。高さ3m、縦横100mの何もない空間。地下10mに作ってもらっているけれど、拠点を移す際には元の状態に戻してもらうので大丈夫。
空間をどのように使うのかは敵を見てから決める。理想は攻められないことだけれど、それを確実にするのは難しい。だから警戒して準備しておくのは無駄ではない。
柱もなく広い空間を維持できるのは姉さんが作る無敵紙のお陰。クロアの記憶では無敵紙とよばれていたけれど、とても紙とはよべない物になっている。
誰でも入ることができるけれど、出られるのは姉さんと私の仮想体のみ。物理、魔力、魔法、電波を反射。折れない、曲がらない、破れない、見えない無敵紙が全面に貼り付けられている。電波は知らないので私たちの部屋にある全ての本を読み終えた後でも知らなければ勉強する。
仮想体は姉さんの魔法で隠蔽されている。姉さんの仮想体には光と熱を魔力に変える結界が張ってある。仮想体の魔力濃度を上げるためと言っていたので意味は分かるけれど、今の私では魔力濃度の違う仮想体を作ることができないのと作れるようになったときには魔力濃度の違う仮想体で魔力操作を練習したときの差を調べて最適な魔力濃度を見つけなければならない。それに今の仮想体の濃度も知らない…。
魔力操作の練習が安定してから魔力濃度の違う仮想体を作る練習する。その過程で仮想体の魔力濃度を正確に把握する力を身につけなければならない。これは後の課題…。
山積みになるであろう課題のことを記憶から探すのは漏れが出てしまう気がする。
魔石で課題を管理するのは手抜きになるのか明日にでもアンジェに聞いてみよう。
魔力濃度が限界になったときには魔力球を作り仮想体と魔力線で繋ぐ。これも後の課題にする。
魔力線は魔力球を仮想体から離れないようにするだけではなく魔力の拡散を防ぎ仮想体への魔力供給にも使われる。これも後の課題にする。
アンジェから反応がないのでとても寂しい。
今は気にする必要がないと言ってほしい…。
そろそろ気を引き締めるべきだ。これから行うことは私の目的のためであり私の責任とする。目的のためだと強く思い込む。何が起きても動揺しない。慌てず焦らず考え続ける。
弱いので姉さんの力を借りるけれど、嫌な予感がするので今晩行動することに決めた。慌てたり焦ったりして決めたのではなく自分自身の感覚を信じている。
何に対して警戒しているのか分からないのが不気味ではある。
姉さんの仮想体がリビングに帰ってきた。
家を出てから5分も経っていない…。
「お待たせ、それでは行こう。」
「仕事が早すぎて驚くよ。少しだけ待って。行く前に聞きたいことがある。おやすみの意味を知りたいのと魔力球も隠蔽するの?」
敵の拠点である星には精神が貼り付けてある可能性が高く魔力の侵入に反応するかもしれない。姉さんの背中から魔力線で繋がれた多くの魔力球が浮かぶことになる気がするので確認しておきたい。
そして日常生活で使う言葉の意味を知りたい。私には常識がない。
「『おやすみ』は眠るときの挨拶で起きたときの挨拶は『おはよう』だよ。アンジェに聞かなかったの?それと仮想体のときに使う隠蔽は必要な魔力を自動で取得して私が触れているものを隠蔽するわ。魔力線で繋がれているので私に触れていることになるの。」
「ありがとう。アンジェは『おやすみ』と言って眠っているので聞けないよ。それではお願い。」
この星でその挨拶を使っている人は他にいるのだろうか。クロアの関わっている人が少なすぎて分からない。私の知識はクロアの記憶から得たものでしかない。
このことについて深く考えると悲しくなるのでやめよう。
そして姉さんの話しで魔力の動きを理解することはできたけれど、魔法技術がないので実現を考えるのは早すぎるとよく分かる。魔方式を気にすると魔力操作の練習に支障が出る。だから後の課題にする。
姉さんが伸ばした右手を握った。一瞬で視界に映る景色が驚くほど変わった…。
太陽まで索敵できると言っていたけれど、光と熱を魔力に変えて範囲を広げているのかな…。
先程までいた星が小指の爪よりも小さく見える。もしかしたら違う星なのかもしれない。転移した方向は把握できるのでその向きに見える星がそれだけであり見えない距離まで転移していてもおかしくはない。
そして太陽が巨大すぎる。輪郭は見えているけれど、表面までの距離が分からない。見えているのに距離が分からないと感じたのは初めて…。
姉さんは星から星へと移動し実験記録に関連するものを探して破棄し、生物のいる星や生まれる可能性のある星を監視する仕組みを考えた。そのあと太陽の中心で自分自身を封印しているけれど、人が眠る場所ではないと思う。余りの大きさに圧倒されているみたい。
百聞は一見に如かずと言うけれど、自宅から見える太陽も大きいので宇宙に出たら凄い大きな太陽を見ることができると大きさを想像していた。流石にこの大きさを想像できるはずがない。そして宇宙にいる私を表現する言葉が出てこない。絞り出せた言葉は小さい。だけどそれが嬉しくて悲しい…。
太陽に意思があれば隠蔽していなくても私たちは絶対に見えないと思う。それなのに見られている気がする。それは光が届いているからなのかもしれない。
「……!」
宇宙に出たら姉さんが繋いでくれた念話で話す予定だったのを忘れていた。
口をパクパクさせてしまったのがとても恥ずかしい…。
◇◇◇
念話中。
「姉さん、ここから自宅までと太陽の表面まではどちらが遠いの?姉さんの魔力球が凄い早さで増えていくけれど、呼吸が必要なくても本体だと熱さで死ぬの?」
「同じくらいの距離に転移したよ。今の体だと死ぬけれど、新しい体だと熱には耐えられても体が損傷していくわ。太陽光を解析して結界を張った方が安全だよ。目に見える光と見えない光が混ざっているわ。電波も見えないでしょ。必要な知識を得ていなければ宇宙に出るのは危険なの。そして生物のいる星が他の星の生物にも安全だとは限らないわ。星の環境にも差があるの。だけどこれから勉強すれば大丈夫よ。魔力のある人はとても恵まれているわ。自分自身が武器であり盾であり本でもある。だから魔力のある腐った人は魔力のない種族を奴隷として利用しているの。腐っている…。一番近い監視者の拠点に行くよ。」
姉さんさんはここから見える死体を見て『腐っている』と呟いた気がする。大量の黒い点が集まり雨雲のように見える。あれが全て死体だとすると犠牲者の人数が分からない…。
姉さんの拷問を真似るための実験なのか嫌がらせなのか目的も分からない。どちらにしても命を大切にしない行為は不愉快でしかないよ…。
奴隷という言葉も出てきたけれど、故郷のことだと思う。今でも同じことをしているのであれば奴隷を救った後に破壊するべきなのかもしれない。だけど奴隷にされて純粋なままでいられるはずがない。使い物にならなくなれば殺される気がする。悪い予感の形が見えてきた…。
姉さんの転移で星の目の前に移動した。まだ見られている…。
「何をすればいいの?リアの作戦で動くわ。」
「星に精神が貼り付けられていれば内容を教えてほしい。作戦を修正して伝えるよ。」
私の作戦で動いてくれるのは嬉しいよ…。
姉さんは私を残して転移した。一緒に動くのは足手纏いだと分かっているので作戦通り。だけど姉さんが見ることになる光景を私も見るべきだという思いもある…。
この方法が正しいのかは分からないけれど、姉さんが直接敵を殺すことなく作戦を終えるにはこの形が一番だと思っている。
「結界の内容はこの星を拠点としていないクローディアが来たら警報を鳴らすだけよ。」
「新しい精神に貼り換えて。内容は体を作る機械と同機械の中にあるものを消す。魔石に入っている記憶や精神を消す。拷問することや見ることを楽しんだことのある生物の精神を消す。精神を消せなかった生物を炎で攻撃し続ける。貼り付けた精神を1時間隠蔽と保護した後で元の精神に戻すことはできるのかな。それと体を作る機械を消した数だけは知りたい。」
無茶なお願いをしている自覚はあるけれど、姉さんは自動化を使いこなしている。それなので時間制限も使えると考えてみた。そして機械を消した数を知ることでこの星の状況がある程度は把握できる。
「できるわよ。消した数が分かった後で隣に戻るね。」
「お願いね。」
宇宙最強の姉さんにはできるみたい。自動化と時間制限を後の課題にする。
すぐに姉さんが戻ってきた。話し終えたときには魔法式を書き終えているみたい。
「機械の数が1万台程なら隠れ住んでいる人がいるのかもしれない。10万台以上なら拷問のためにも使っている可能性が高い。クローディアを増やしすぎると内戦になると知っているはずだから。」
「10万台を超えていたよ。何しているのだろうね…。次の星に行こう。」
姉さんは迷いを振り払うように目を強く閉じてから私の手を握り転移した。
気にするのは仕方ないと思うけれど、命は取り戻せないよ…。
目的の邪魔になると判断したら私の責任で姉さんに星を消してもらう。できれば自分の力で消したいけれど、今も苦しんでいる人がいると思うので早く救ってあげたい。
2個目の星を見て分かった。人が住むことのできる星でも大きさに違いがある。そして見える太陽の大きさは余り変わらない。太陽との距離がとても大切な気がする。
「ここでも星に張り付けてある精神を確認してみて。監視者の拠点に挟まれているので警戒しているはずなのでそれを利用させてもらうよ。」
「分かった。行ってくるわ。」
この星は内戦を警戒していても戦力は確保しておきたいに違いない。星に貼り付けてある精神は裏切者の報告か別の星を拠点とするクローディアの把握だと思うけれど…。
「この星はクローディアが女王の国だけしかなく3国あり戦力を等しくしているわ。3国が残りの2国を監視することで裏切りを防止しているみたいね。精神も裏切者を女王に報告すること、他の星からの侵入者を感知して警報を鳴らす。これで情報は足りる?」
「転移して1分も経たずに得られる情報量ではないと思うけれど、とても助かるよ。ありがとう。まずは女王2人に強制命令して『監視者が拠点にしている星で内戦が始まっている。今から星を奪いに行くよ!』と1個目の星の位置も一緒に伝えさせて。残りの女王にも強制命令して『馬鹿な二国は他の星を支配するために国を空ける。総攻撃できるように準備しなさい。裏切者が攻撃を開始したら捕虜になりそうな人以外は消して国も消しなさい』と伝えさせて。それと3国の名前を覚えておいてね。そのあと星の精神を貼り換えて。内容は体を作る機械と同機械の中にあるものを消す。魔石に入っている記憶や精神と2国で拷問が好きな生物、弱い生物を殺すのが好きな生物の精神を消す。精神を消せなかった生物を攻撃し続ける。攻撃は炎。2国は1個目の星を奪いに行く国だよ。貼り付けた精神を1時間隠蔽と保護した後で元の精神に戻してね。」
この星は作戦通りにはならないと思う。だけどそれでもいい。
仮の敵国を想定して国の体制を整えることはあると思う。だけど楽に力を手にしたクローディアが女王ならそれに当てはまらない。どのような形でもいいので同士討ちするはずだから。
「この星は泥沼化するね。終わったら隣に戻るよ。」
もう一つの体の魔力器の大きさでは移動が厳しいと分かる。そして姉さんと同じ魔法技術があるとは思えない。こちら側に攻めてきても対処可能。
但し、もう一つの体が拠点に帰るつもりはなかったのだとすれば姉さんを殺す手段が残されていると考えた方がいい。後手に回らない方がよさそう。
1個目の星よりも少しだけ長く待った後に姉さんが戻ってきた。
姉さんの魔力球は減ったり増えたりを繰り返している。仮想体で魔法を使うのと魔力球を利用して魔法を使うのでは発動時間に差があるのだと思う。その僅かな差が明暗を分けるときがあるので仮想体の濃度を限界まで高めている気がする。そして光と熱で高めるよりも魔力球からの供給の方が早いのだと思う。
場所により違いはあると思うけれどね。
「姉さん、疲れていない?休んでから移動する?」
「リアに隙はないね。慢心もない。形に縛られない。最大の目的は同士討ちでこれで解決するとも思っていない。早く次の星に行こう。」
姉さんの転移で星の目の前に移動した。
「星に張り付けてある精神の確認をお願い。もう一つの体は必ず監視者を利用している。それなのに2個の星にはそのような雰囲気を感じなかった。そのためこの星が一番怪しく罠もあると思う。気をつけて。」
「リアが予想していた人体実験をしていたとすればこの星の可能性が高い。行ってくるわ。」
もう一つの体が監視する星はない。だけど必ず監視者の近くに拠点を構える。他にも隠れ家はあると思うけれど、潰しておかなければ面倒なことになる。本当に面倒だよ…。
敵が弱く感じるのは姉さんが強すぎるだけで私だと瞬殺される。そして姉さんでも病原菌を持った大勢の敵は対処しきれないかもしれない。数は武器になるのだから減らしておかなければ手に負えなくなり泥沼化して人の住める星が消えてしまうことになる。
それにこの星で人体実験をしていた…、まだ私を見ているみたい。
確認させてもらうね。
「この星にはもう一つの体が精神を貼り付けたみたい。星に合言葉を覚えさせそれを消している。記憶領域まで持っていて強制命令で動く人まで決められているわ。星が記憶した言葉を翻訳するのには少し時間がかかるよ。」
「精神を貼り換えたり今の内容を変更するのは問題ないの?記憶領域も変更できるの?」
やはり用心深い。この星を利用するために精神を貼り付けたけれど、他の星は遠いので拠点にしていると思われる4個目の星からは指示が届かない可能性がある。
思い込みがあるのは駄目だね。
私の価値観を基準に敵の行動を考えるべきではない。
もう一つの体が命を使い捨てのゴミだと考えていた場合は治癒できない病原菌に克服させて新しい病原菌まで生み出し克服させているかもしれない。その場合は地上を見れば分かる…。
そして姉さんを殺すことが一番であり自分が弱くなることを気にしなければ計画はまだ終わっていない。自分を殺させることで油断させ病原菌で殺す。更に自分の姿も気にしなければ普通の人間として暮らしているかもしれない。誰かと入れ代わることは造作もないことだから。
「貼り換える以外であれば何でも大丈夫よ。貼り換えようとするとそれを感知してどこかに何かを飛ばすみたい。それも星に記憶させているわ。どうする?」
「内容を白紙にして。そのあと記憶領域も消して。そして星を索敵した状態で強制命令をお願い。内容は『その場で何も考えず動かない。落ち着いて』でお願い。それでも感情が動いた人がいたら封印して星の外に出して。魔力を動かした人、魔法を使おうとした人も封印して星の外に出して。そして既に封印されている人がいたら星の外に出して。その人たちを3つの固まりにして分かるようにしてほしい。最後に地上を解析して未知の病原菌が見つかったら戻ってきて。5分経っても見つからなければ戻ってきて。お願いね。」
強制命令を出してほしいみたい。
自動で解除される人がいる。自動で解除される人を見たら自動で解除して何かする人もいる。その人の中の1人が本命の行動をする。だからそこで止めれば何も起きない。もしかしたら混乱させるために複雑にしているのかもしれないけれど、姉さんの魔法の方が早いので大丈夫。それに封印されている子がいるのであれば星の外に出せば何もできない。
固まりにしなくても分かるのが腹立たしい。
大体で100人、50人、20人の固まりがある。人数が減ると年齢も下がる。恐らく20人の3歳程の子が封印されていた子だと思う。下衆で屑だとしか言えない。
姉さんが隣に戻ってきた。5分経っていない。
「未知の病原菌があったみたいだね。封印されている子を1人だけ解析してみて。体内に病原菌が満ちていると思う。克服しているのか封印解除と同時に病気になるのかは分からないけれど、地上で暮らしている人は病原菌を克服した細胞で体を作っている。だけどこの子たちは病気になると思う。」
「簡単な作戦だと思ったけれど、固まりを見ると醜悪すぎる。20歳前後、10歳前後、5歳前後で固まっているわね。」
適当な子を選んで姉さんが解析を始めた。そして強く目を閉じた。
少ししてこちらを向いた。
「私が自殺した病原菌を全種類と未知の病原菌も2種類入っているわ。この子は皮膚に埋め込まれていないから取り除くことは可能だけれど、そういう子もいる気がするね…。」
「姉さん、知らないことばかりの私だけれど、確かめたいことがあるの。星に貼り付けた精神に姉さんの指定した場所で指定した病原菌を消してと張り付けてある精神に魔法式を書けば消してくれると思う。あとで全て消すので1種類でいいよ。」
姉さんは普段より少し目を開いて私を見ている。
嘘だと思われてしまったのかな…。
「姉さん、騙されたと思って魔法式を書いてみて。そのときに何が起きたのか解析してほしい。それと魔力が使われたのかも確認してほしい。」
「リアが何に気づいたのかは後で聞かせて。試してくるわ。」
姉さんはすぐに転移した。
姉さんの目的は拷問により自分と同じ精神に作り変えられないようにすること。魔力があれば人が住めない場所でも暮らすことができるので目的を叶えるためには必要な魔力が膨大になる。そしてその魔力量を維持しなければならない。
そういえば星の精神を貼り付ける場所を気にしていなかったし精神が魔力のままなのか魔法なのかも知らない。姉さんに魔力なのか魔法なのかだけは聞く。それ以外は後の課題にしておく…。
姉さんが戻ってきた。5分経っていない。早く正確に難易度の高いことができなければ宇宙最強にはなれないみたい。知識量も凄いし一度の人生で追い越せるのかな。真剣に集中して頑張るけれどね。
「リアは計画や作戦が思い通りに行くことの方が珍しいと考えている。外れても大きな問題が起きないような内容にしているのもあると思うけれど、この星に貼り付けてある精神の内容だけで一切迷わずに地上の状況を全て当てた。それについてはもう一つの体の性格を把握しつつあるからだと思うけれど、流石に今見てきた現象だけは理解できない。消す病原菌を指定し消す場所を指定した。それだけで病原菌がその場所に集まり結界が張られ100万℃の熱で消されたわ。結界が解除され熱風が出てくると思ったけれど、それもなかった。一連の行為には星に存在する魔力が使われているはずよ。魔力が集められていたからね。さて、私の話せることは話したよ。教えてくれるわね?」
「勿論話すよ。私が話している間に仮想体を作り太陽の周りに浮いているものを消して。中心にいる仮想体を消して。偽のもう一つの体とは話してみたい。そして太陽の中に不審なものがないか調査しておいて。星と世界は全ての情報を記録しているよ。だから異常な拷問が長期間行われたと思われる星に精神を貼り付けると濁る。それに記録されている情報を好む。そのため今住んでいる星では拷問大好きな精神が生まれた。元々持っている個性があると思うけれど、記録で歪むのは記憶で歪む人と同じだと思う。最初から歪んた個性を持つ星もあるはずだよ。姉さんの転移で宇宙に出た場所で見られていると感じた。3個目の星で見られていると確信した。何か意味があって見られているとすれば合図をくれると思ったので病原菌を消すお願いを姉さんに書いてもらった。姉さん、広大な宇宙で星に影響を与えることができて100万℃の熱を生み出すことができる太陽が呼んでいるよ。」
もしかしたらこの星も100万℃の熱を持っているのかもしれないけれど、私は太陽からのお誘いだと感じた。だけど太陽には魔力がないので姉さんが生み出し続けながらお願いする必要がある。
私の目的と太陽の目的が合致している可能性が高い。間違いなく私の目的は把握されているので遠慮なくお願いすることができる。
「私は太陽の光が届く範囲にいる拷問大好きなクズを全員消したいの。他にも色々お願いするつもりでいるけれどね。そこで聞いておきたいことが2つあるの。1つ目は星に貼り付けている精神は魔力なのか魔法なのかがとても重要になる。そして2つ目だけれど、もう一つの体のことを姉さんは何て呼んでいたの?」
「え、ええ。リアの胆力は異常だわ。太陽から感じる視線の理由を知りたくて病原菌を消すと指示を書くことにしたのね。太陽に何を手伝ってもらうのかは参謀のリアに任せるよ。質問の1つ目だけれど、精神は書き換えることができる魔法で記憶領域は精神に魔力を繋げたもの。2つ目だけれど、補佐と呼んでいたわ。」
補佐だけだと該当する人が多くて使うのが難しい。それに姉さんと会話した記憶は必要な情報だけを紙にでも書き出しておけばいい。
そういえば封印されたら魔法が切れるのかも分からない。結界を姉さんが張り換えたのは病原菌が外に出ないようにするためだしお風呂などは魔石に入っている魔法なので特別扱いなのかもしれない。これも姉さんにあとで聞こう。早くこの星に貼り付けた精神の内容を変えてもらいたい。
「姉さん、補佐は本体が殺されてもいいと考えて複製した誰かの体で生きている可能性が高い。だから姉さんを殺すための計画と一緒に焼き尽くしてもらう。だからこの星に貼り付けた精神に星から出るものを消すと書いて。現状が4個目の星に伝わるような仕掛けがあると思う。放置してもいいけれど、それで誰かが死ぬのは嫌だからお願い。とりあえず封印されている子はこのまま放置しておくよ。」
「分かった。行ってくるわ。」
転移して30秒も経たずに姉さんが戻ってきた。
仕事が早すぎるよ…。
「姉さん、戻ってきて早々に質問があるの。魔法は封印されたら消える?亡くなれば消える?星に貼り付けた精神は姉さんが亡くなれば消える?魔力のない星に貼り付けても消えない?それと太陽に精神を貼り付ける所があるの?」
「クロアの記憶を見ると勘違いしてしまうけれど、魔力がなくならない限り魔法は消えないよ。太陽の光が届き魔力のない星とは呼べない場所でも、精神を貼り付けておかなければ魔力のある人は暮らすことができない…。太陽は燃える気体の集まりだけれど、リアを呼んだのだから貼り付けることはできなくても同じ所で浮かせ続けてくれると思う。」
これについては太陽に質問するしかない。
思い込みでお願いしていい存在ではないから。
「何とかする方法は思いついたよ。それと姉さんは間違えている。太陽と星には指示するのではなくお願いするの。姉さんは宇宙最強で太陽の中心まで行って結界を張って眠っていたけれど、太陽が姉さんを消すつもりになったら一瞬だよ。太陽は星に影響を与えることはできてもそれを守るのかどうかは相手側に権利があるのだと思う。だけど精神を浮かせたら変わるのかもしれない。だけど私は遠慮しない。太陽が私に何を願ってほしいのか分かった。そして姉さんの願いを叶えることもできる。覚悟できた?」
「その通りね。人の手ではできないことをしてもらうのだからお願いだわ。覚悟はできているよ。」
叶えたいことによっては覚悟が必要になる。
計算を間違えると魔力として消されてしまう可能性が高い。
「姉さん、仮想体を分身させて故郷の星を索敵して人口を把握して。それと人がどのように暮らしているのかも知りたい。未知の病原菌が溢れる宇宙一最低な星になっているはずだよ。」
「元々最低な星だったわ。今でも残っているのか分からないと思う程にね。だけどリアに言われると説得力がある。何より繋がりが見える。偶然なのか必然なのか…、どちらでもいいわね。ところで強くなる前に進みすぎていない?」
アンジェと私が出会ったことを言っているみたい。
魔力球が減っているので故郷の星に新たな仮想体が転移しているはず。
「一歩も前に進めないよ。私の目的の邪魔になる敵を同士討ちにさせるために宇宙に来たけれど、まだ殺し終えていない。太陽にお願いして更に殺していく。なるべく生き残りがいるような方法を考えるつもりではいるけれど、宇宙一の大量殺人だよ。ところで今の自宅から太陽の中心に転移するのに必要な魔力球の数は分かる?」
「浮かれていたわ。ごめんなさい…。仮想体から魔力を使わないのであれば2個は必要よ。」
太陽は必要な情報を全て知っている。だから無駄な魔力を使うことはないけれど、できないことがあるのは人と変わらないはず。全ての問題を処理できるのであれば私を呼ぶ理由はないのだから。
「姉さん、精神を貼り付けて魔力球が1000個できたら教えてね。それと私も太陽に近づけて。」
「1000個!?わ、分かった。それでは行ってくるわ。」
姉さんと一緒に太陽の輪郭が見えない位置まで転移した。そのあと姉さんは太陽の中に転移した。
気体が燃えているはずなのに炎の液体が煮えたぎっているようにしか見えない。仮想体でも溶けてしまいそうな気がする。
無心で視界に映るように右手の親指と人差し指を交差させた。
◆◆◆
アンジェとリアの部屋。
この部屋は落ち着くね…。
ソファに座り壁に映る太陽を見ながら静かに呟いた。
話しかけられたら私に内容を言ってから代わってね。
アンジェは絶対にいると思っていた。
あの人にアンジェと代わりたいと考えていることを気づかれるわけにはいかない。
家を出る前にアンジェが仮想体にいるのか探られているのだから…。
思考把握すると自白している。
失敗してもアンジェも共犯だと思われたくなかった。
単刀直入に聞くよ。私は洗脳されているの?それとも嘘を吐かれているだけなの?
思考に違和感を覚えた。確認しておくべきことなのに勉強すると考えた。そしてあの人の言葉だけだと作戦通りにうまく行きすぎている。だけど敵が動いたのか確認していない。精神を貼り換えているのかも分からない。何も問題が起きていないように思わせたいみたい。
クロアにしていたことをあの人が私にしている。
本当にうんざりだよ…。
思考把握されている可能性を考えて姉を信じている妹を維持していた。身を包む魔法が隠蔽なのか分からない。繋がれているので仮想体の記憶なら見ることできると思う。
あの人の敵を殺すことは全て自分の責任にするつもりでいた。だけどあの人の願いまで叶える理由はない。あの人の失態や中途半端な行動でどれ程の人が人体実験され拷問され殺されているのか気にしないし興味ない。故郷の星で奴隷にされている人がいると知っているのに遊び場として放置した。他人に興味ないので平気で私に死を押し付けた。
私だけ消すかもしれないと話したときもアンジェは見た目と行動と周囲の評価しか言わない。あの人が捕まった理由が家族のためだとは限らない。本を使った洗脳なのか直接洗脳されているのか言わなかっただけなのかは分からないけれどね。
アンジェの想いを聞かせてよ。
【リアは軽く洗脳されているように感じたよ。太陽が解いてくれたのだと思う。私は強く洗脳されていたけれど、死ぬことで解けた。だけどリアが消されない理由を伝えたときは当時の記憶を思い出して話した。そのときは違和感を覚えなかったけれど、宇宙に出てからの2人の言動に違和感を覚えて当時を思い出そうとしても姉に抱いていた感情が分からない。一緒に暮らしていた私が姉の行動から内面を推察するのは余りにも異常だよ。他人の行動を見て内面を推察するのと何も変わらない。それなのに姉が捕まったと知って自殺した。私は姉に全てを押し付けたと考えていたけれど、故郷の人間が姉だけを人体実験するのはあり得ない。拷問により姉と同じ精神力の人を用意できるのであれば姉だけを人体実験する理由はない。それに不治の病で自殺したのであれば復讐の後に病気を治す魔法を開発する。懸賞金が出された理由も思い込みなのかもしれない。危険な感じがするので本は破棄するよ。当時も今も姉が理解できない。だけど姉を最初から加害者側にすれば理解できてしまう。3個目の星で補佐が精神を貼り付けたと言っていたけれど、魔力で人を判別するのは不可能なの。自宅のある星の実験場にいる人であればできる。最低な結論になるけれどね。私はリアと一緒ならいいよ。魔力球が1000個できたみたい。私も考えてみる。代わるね。」
◆◆◆
アンジェ、リオリナ、本当にごめんね…。
「姉さん、太陽にお願いできるのは私とアンジェだけしかいない気がする。だけど消える可能性の方が高い。私が消えてもアンジェが混乱しないように本体に記憶を送ってほしい。本来からも私は消えると思うから。」
「分かった。だけど自分が消えることを前提にしないで。」
【魔力が動いていない。減ってもいない。失敗したら私たちは本体ごと魔力になる。太陽が私に気づいていないはずがないよ。】
成功したら一緒に楽しく過ごし、失敗したら一緒に死ぬ。
私の思考を把握しているでしょ。消すときはリオリナも一緒にお願い。
リアの捨て身は全てを巻き込みます。




