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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第81話 弱者と強者

◇◇◇

リビング。


 気がつくとアンジェの視界が映る壁を見ながらソファに座っていた。封印されていたという事を知らなければ、何が起きたのかは絶対に分からない。外が暗くなっているけれど、同日なのかも不明で気にしても仕方ない。私には死と同然だとしか思えない。敵と戦うのであれば絶対に防がなければならない。

 それにも関わらず自分自身を封印するという行為は何が起きても問題ないと確信が持てなければとてもできない。そして封印されている人を記憶操作できる理由も分からない。強くなりたいと思った途端に魔法式を理解せずに使っている魔法を怖く感じる。

 基礎となる魔力操作を身につけると決めたのに優柔不断な性格が嫌になる。


 ところで何故2人は黙っているのかな…。


【リアが1人反省会を始めたので聞いていたよ。とにかく魔力操作が最優先だよ。あとから覚えたい魔法、対策が必要だと思った魔法を理解していけばいいの。分かった?】


 分かったよ。考えるときにも孤独ではないのが嬉しい。


「姉さんが黙っていたらリアの1人反省会がまた始まるよ。早く報告して。」

「思考把握を試していたわ…。かなり手強そうな状態ね。調査結果だけれど、結界内を10000℃以上の炎で10分以上焼き続ける。病原菌などの罠を探すのが時間の無駄だと判断した。皮膚を調べて病原菌が眠っていると言ったけれど、正確には封印されいる。そして敵は私の所持している封印と封印解除が使われると想定している。所持していた封印解除を使っていたら病原菌の封印が解けて発病。自分自身とリアの体を調べ尽くして封印されている病原菌を確認してから私の最も強い封印を重ねた。この場所にクロアが張っていた結界を張り直し、結界外に新たな研究所を用意して必要な機材を作りここよりも強力な結界を張った。そしてクロアを拷問していた黒死森があった場所の付近を確認してきたけれど、病原菌が見つからなかった。一度森を消したみたいだけれど、それでも実験場で病原菌が見つからないのは不自然。だから拷問されている少女とクロアは別人。とりあえずアンジェリアを所持していた封印解除で起こしたところだよ。」


 調査結果よりも私たちの思考把握に専念していた。機密情報を傍受したい諜報員みたい。宇宙最強の矜持が目の前にいる私たちを思考把握できないのが許せないのかもしれない。本音で言えば思考把握されたくないのが普通の人の反応だと思うけれど…。


 拷問により封印されている病原菌が血液と共に外に飛び散る。そして血が乾いた後は風に飛ばされるので実験場で見つからないのはおかしい。それに回復魔法で病原菌まで元に戻るとは思えない。力の中に病原菌を入れて与えることができるのかもしれないけれど、違和感を覚える。


 力を与えるとは何かを知らないのが原因…。

 できないことや知らないことを悔しく感じるのは強くなりたいから。


【焦ることはないよ。敵が強すぎるしこの体は弱すぎるからね。】


「いつまで諜報活動しているの。クロアの力を与える行為とは何か分かる?」

「諜報ではなく技術向上が目的よ。リアが間違った方法で鍛えないように把握しておきたいの。それで力を与える行為だけれど、生来の姿を変えずに寿命を延ばし身体能力を上げるのは無理よ。クロアだけは周りよりも強い体を与えられ弱体化を解いたと考えるべきね。他の人は身体強化だけよ。体にある全ての遺伝子情報を書き換えそれに合わせて全身の細胞を変化させることができるのであれば異常としか言えない。私は体を作るための細胞の遺伝子を組み換えるだけで精一杯。アンジェがリアに遺伝子について簡単に教えてあげて。」


 確かに寿命を延ばす理由がない。そして記憶だけで100歳以上だとは断言できない。

 処刑人のクロアは強い体で他の人は身体強化の使い方で差が出ていた。クロアに力を与えられ寿命が延びて身体能力が上がったと思い込んでいるので身体強化を使っている自覚がない。クロアは身体強化を与え使用するように洗脳していただけなのかもしれない。


【簡単にしか説明できないけれど、遺伝子には体の情報が書かれているの。その情報を元に体は成長する。そして人には新陳代謝といって古い細胞を捨て新しい細胞を生み出す機能がある。だから細胞を変化させても遺伝子情報を書き換えないと元の体に戻っていくの。だけど姉さんは遺伝子組み換えができるみたいなので未知の種族になっていると思う。例えば人間の細胞と馬の遺伝子を組み合わせたら生み出される体が分からない。上半身が人間で下半身が馬になるかもしれないし逆もあり得るでしょ。姉さんは完全に狂っている実験を経験しているよ。研究者の望まない体であれば必要な情報だけ記録して殺す。姉さんの命を使い捨てにしているね…。】


 魔力拡散器で姿を変えていないよね?

 本当の姿は色々な魔獣が混ざり合っているのは余りにも悲しいよ。


「姉さん、魔力拡散器で姿を隠していないよね?リアが心配しているよ。」

「その心配はないけれど、2人が想像したような姿になり続けたのは確かだよ。そして私の記憶にも残されるので自分の姿が曖昧になる。気が狂いそうになる実験だったよ。研究者は成功するのに時間がかかると考え自分自身を封印して魔石人形で実験していた。実験終了後に私が殺された回数を記録で確認するだけで結果に満足していたよ。私の復讐は実験過程を故郷の星に還元することだった。関係者の本体は今でも拷問中だよ。私は人型、人獣型、魔獣の3形態に変身できる。他にも寿命を延ばすだけなど色々とできるけれど、どうする?」


 同じでいいよ。それで姉さんの妹だと胸を張って言えるから…。

 アンジェの体になるのだから私が勝手に決めていいことではなかったね。


【勝手に決めていいけれど、確認だけはしておかないと駄目だよ。】


「リアは妹だと胸を張って言えるのでいいみたい。それと私の体になることを気にしているよ。大体の寿命を教えて。それと問題はないよね?」

「世界に2人しかいないので間違いなく姉妹だね…。寿命は1万年程でリオリナと同じ。問題は何もないよ。変身するときも大丈夫。リアがどこにいるのか分からないけれど、そこで鍛えることはできるの?」


 リオリナと同じであれば長く一緒に楽しめる。そのために戦いはなるべく早く勝利で終わらせたい。拷問大好きなクズが人の住む星を監視していたら最悪な状況になっている。


【姉さんは今でも被害者で拷問を生み出した加害者になっているとは思っていないね。何年封印していたのか知らないけれど、被害者は途轍もない数になっているね…。この話はあとで私がするよ。まずはその場所で魔力操作できるのか確認してみて。】


 手から魔力を出そうとしたら手の形が崩れそうになったのでやめた。部屋の中で魔力を得られる気がしない。アンジェの部屋に出入口がないからなのかな。


【出入口がないので魔力も通らないのね。人を憎む私が作った部屋だから駄目なのかもしれない。交代するときは魔力操作を練習しているときの方がいいね。姉さんと十分話せたし一旦戻るよ。】


 外に出たいと思ったら出ればいいよ。仮想体での練習は常にするのでいつでも交代できる。真剣に集中して鍛え続けるだけだよ。本当の目的は自由に楽しむためだからね。


「姉さん、戻るよ。リアは落ち着いているのでこの家族の処理は任せてもいいと思う。優しい案だと思うけれど、本人たちの責任で厳しい罰になるはずだよ。」

「そうだね。リアが許せるのならそれでもいいわ。」


◇◇◇

アンジェの部屋。


 アンジェが部屋に戻ってきた。どこを通って戻ってきたのかが分からない。

 それにこの体と同じ姿だと思っていたけれど、全くの別人だった。金髪で緑色の目は母親と同じだけれど、姉さんの妹だと納得できる程の美少女。服装が黒色の長袖シャツと茶色の柔らかそうな長ズボンなのは動きやすさを重視しているように見える。


 私は何故ここに残っているの?

 この体は気を失っているね。正面の壁には何も映らず音も聞こえてこない。


「私も少し目立つ外見のようだけれど、姉さんの妹だと思われたことはないよ。それに毎日姉さんを至近距離で見ているので美的感性が変わるの。美少女や美女と呼ばれる人は世界で姉さんだけだと思うくらいにね。ところで私が来てから出入口は見えた?」

「思考していたことに返事されると驚くね。残念ながら出入口は見えないよ。」


 アンジェに見えて私に見えないのは何故かな…。

 もしかしたらアンジェに押し出してもらわないと出られないのかな。


「リアを受け入れているのでそれはないよ。リアが作る世界を楽しみにしているの。見えないのはリアが私たちの部屋だと思っていないから。私たちの部屋だと強く思ってみて。」


 自由に出入りできる私たちの部屋、私たちの部屋、ここは私たちの部屋。

 私たちの部屋だと思っているでしょ。出入口を見せてよ!


 天井とドアから出られそうになっている…。

 だけど私の言葉に応えたわけではないと分かる。


「ドアも見えるし天井からも出入りできそう。私には部屋を変える力がないみたい…。」

「それは違うよ。私が消えると思って遠慮しているでしょ。体と精神は私たちが共有で使うと思ってくれるだけで消えないよ。新しい体ではもっと強く自分も意識して。体の所有権が私だとリアが鍛えても強くなれないかもしれない。」


 アンジェから体を借りているとアンジェの強さで成長が止まりそう…。

 それは絶対に駄目だよ!気持ちが弱いとアンジェに全て押し付けてしまう。鍛えて強くなると決めたのは私だよ。戦うのも私でなければならない。だからそれだけは許容できない。

 代わりたい、外に出たいと思ったときに何もできなければ後悔するかもしれないのだから。


 絶対に体と精神を共有で使えるようにする!


「今までリアに欲がなさすぎたの。そのくらい強く思わなければ駄目だよ。私はこの世界から逃げないと決めたからね。ドアは精神の中に出るよ。天井は体を動かす人格の交代。さあ、行ってきて!」

「ありがとう。行ってくるね!」


◇◇◇

リビング。


 天井に向かって飛んだ。光を突き抜けた先は一瞬の闇。

 気づくとリビングテーブルの椅子に座っていた。


「姉さんは思考把握していたの?それとも気を失っていて何も聞こえなかったのかな。」

「気を失っていたのよ。声をかけても反応なく思考把握しても分からない。今後は必ず交代するようにしなさい。気を失っている時間が長くなると後遺症が残るかもしれない。気をつけて。」


 姉さんの表情には焦りが見えた…。

 心配させてしまったので、今の状態を伝えておいた方がいい。


【そうだね。怒らせると怖いから…。】


「姉さんに現状を伝えておくね。この体と精神の所有者はアンジェだよ。体を得るときに心を借りていた私をアンジェが表に押し出してくれたけれど、体と精神をアンジェから借りている状態なの。アンジェと代わった後はアンジェが精神の中に作った部屋にいたけれど、出入口がなかった。アンジェが部屋に戻ってきても私には出入口が見えなかった。だけどアンジェが私にも見える出入口にしてくれたので戻ってこれたけれど、欲がなさすぎるのは駄目みたい。だから新しい体では私たちの体と精神だと強く意識するよ。」

「完全に勘違いしていたわ。奇跡的に残れたのはリアなのね。アンジェはリアに全て渡して消えたかったけれど、体を乗っ取る形になってしまった。それでクロアたちの罰は決めたの?」


 命は大切にしないとね。


【とても厳しい罰になりそうだね。】


「今の細胞から病原菌を除去した状態で8人の体を作り、体を換えてから動物にどちらと一緒に過ごしたいのか確認する。姉さんとアンジェとフィーと私についての記憶は消すので8人で幸せに暮らせばいい。そのあと実験場の結界を消して監視用の機械も消して、生物の精神が作り変えられたらその生物が嫌悪している生物を消す精神を星に貼り付けて二度と関与しない。星に貼り付ける精神から時間の感覚を消せば個性ができることもないはずだよ。敵に利用されたら敵として対応する。これでどうかな?」

「罰の内容と長さはクロア次第ね。私とリア以外の生物は全て新しい研究所に転移させるよ。そして自宅だけ封印解除して食材が尽きたら買いに行きましょう。人の畑で自給自足する気にはなれないわ。そのときに実験場の結界と監視用の機械を消すわ。それと仮想体で隠れ家にしていた星を徹底的に調査してくる。土地を焼くのは新しい体に記憶と精神を移してから古い体と一緒の方がいいね。」


 アンジェ、フィーは起こさない方がいいと思う?望む体だけでも聞いてあげたいと思うのは我儘になると思う?幼いので体をもう一度作り直せばいいとか小さなことの積み重ねが歪みを生む気がする。1万年を生きるのであれば猶更だと思う。


 家族から殺意を向けられるのはもう嫌だよ。


【私が姉さんに話すよ。代わってね。】


◇◇◇

アンジェとリアの部屋。


 私たちの部屋に戻ってきた。

 姉妹で会話した方が伝わると思う。妹のアンジェリアを特別扱いしてしまうのは仕方のないことかもしれないけれど、平等に接してほしい。

 甘い考えなのかもしれないけれど、誰かを選んで誰かを切り捨てるようなことはしたくない。家族以外であれば気にならないのかもしれないけれど、フィーは私たちを選んでくれているのだから。


「姉さん、フィーを私たちと同じように調べて封印を解いて意見を聞いてあげて。体の精神だけを封印することもできるでしょ。姉さんが贔屓するようなことはやめて。リアは甘い考えかもしれないと思っているけれど、今日できたばかりの家族に甘くて不都合なことがあるとは思えない。フィーは最初から私たちと一緒に出て行くと決めていたよ。全員が新しい体を得るまでに3週間はかかると思うけれど、一緒に過ごすのか封印されたままでいたいのか、同じ体にするのか別の体にするのか長女の姉さんが聞いて。姉さんが孤独になったのは故郷の星に住む人間の責任だけれど、妹に何も聞かず家を出なければ違った未来もあり得たよ。それと拷問を終わらせて。リアの作る新しい世界には必要ない。」

「その通りでしょうね。この状況が奇跡的なのだから大切にしないと駄目だわ。贔屓している自覚はないけれど、それを判断するのはフィーよね。そして新しい世界に拷問は必要ない。リアが代わってと言ったの?」


 あとで話すと言っていた内容だね。姉さんは間違いなく現状の認識が甘い。敵に監視されている世界がどのような状況になっているのかを気にしていない。

 被害者側として過酷な日々を長い歳月過ごしてきたのが原因だと思うけれど…。

 アンジェ、全てを人に任せて自分自身を封印した姉さんも悪いけれど、敵がクズなのも人が腐っているのも姉さんの責任ではないよ。間違いなく誰かが似たようなことをした。それが姉さんの生み出した監視者に代わっただけだよ。星を破壊するつもりでいる私が最も悪いよ。


【リア、意識を変えさせるためには強く言わないと駄目なの。それに星を破壊するつもりでも生命を全て巻き込むとは言っていないでしょ。】


「私が強引に代わったよ。リアが星を破壊した方が早いと考えている現状なのに姉さんは気にしていない。宇宙一拷問されたのがクローディアでも宇宙一憎まれているのもクローディアだよ。憎む人がいない星になっているかもしれないけれど、何が起きてそのような星になるのか言わなくても分かるでしょ。姉さんは世界を憎み宇宙に憎しみを撒き散らした。星に人が残っていて監視者を全て消しても拷問が当たり前になっている星では誰かが拷問する。宇宙一の犯罪者はこの現状をどのように思うの?相談せず1人で攻め込めば太陽が消えるまで拷問されるかもしれないよ。」

「アンジェに代わった理由が分かったよ。拷問している状況ではないね。もう一つの体を消して3人の監視者も消す。そのあと善人を救い悪人を殺すのか星を破壊して終わらせるのか決める必要がある。どちらでも宇宙一の犯罪者が大量殺人することになる。この星に貼り付けられていた精神からその程度のことは想定しなければならなかった。全てを解決するまでは死ねないわ。どちらにするのか考えておくよ。フィーを調べるわ。」


 アンジェに相談しろと言われたようなものなのにまだ1人で考えている。そして最悪を考えていない。弱くても考えることはできるのに…。

 自分自身を封印してから何年経っているのかが分からず洗脳までされていた。姉さんが何を仕掛けていたのかは分からないけれど、全て解除されていると考えるべき。

 敵は姉さんに力では敵わないと考え病原菌を使ったけれど、追い詰めたら何をするのかが分からない。

 それに敵を倒すために私たちを利用するのは家族だと言えない。


 全然伝わっていないね。


「リアが怒っているよ。自分だけで決めて行動して失敗したのにまた自分だけで決めるの?敵を倒すために利用するのが家族なの?星を見てから一緒に考えるつもりもないの?自分の責任だからとか馬鹿なことを言わないでよ。宇宙全土が巻き込まれているのだから。リアに手伝ってと言えないの?リアは姉さんも守るつもりでいるよ。それなのに姉さんは考えが甘すぎる。敵の記憶を見て落ち込まないでよ。」

「初日から厳しいわね…。相談しながら行動するわ。それでいいのでしょ?」


 アンジェ、私に代わって。


【いいよ。敵を潰すのはリアが考えた方がいいからね。それにしても姉さんはまだ予想だと考えているように見える。敵の記憶を見るのが一番でしょうね。】


◇◇◇

リビング。


 姉さんの力を知らなければ作戦も考えられない。


【そうだね。私も分からないよ。】


「姉さんの策敵はどの程度のことが分かるの?そして策敵と隠蔽は敵に気づかれるの?それと戦うことを前提とした索敵範囲を教えて。」

「作戦を考えるのはリアなのね。私の索敵と隠蔽に気づくのは同格以上でないと無理よ。索敵だと感情の強さと向き、魔力器の大きさ、魔力の動き、魔法の発動、結界の有無くらいしか分からないわね。戦いながらでも索敵範囲は星全域と太陽までなら余裕だよ。」


 それでも全力ではなさそうだね。


【宇宙最強だからね。そのくらいの力がないと星を移動するのも大変だよ。】


「姉さんの策敵と敵の索敵が重なったときの状態は分かるかな?結界は敵の索敵を防げるの?未知の病原菌も防げるの?あらゆる侵入方法も防げるの?何故クロアの結界を割らずに侵入できたのかな?」

「重なった場合は私だけ気づける。だけど敵の索敵も有効だよ。そして結界で敵の索敵は止まる。全ての病原菌を防ぐためには空気の出入りを完全に遮断する必要があるけれど、今は結界内で封印されている既知の病原菌を出さないようにしているだけだよ。それに結界を割らずに侵入するのは無理。但し、クロアの結界は隙間が大きすぎる。魔力を簡単に通すことができるし、転移するときの魔力も最小にしているからね。」


 転移は体を魔力にして移動しているの?魔法式が読めれば分かるものなの?


【転移は体を魔力にして移動しているよ。魔法式が読めても魔力の大きさを設定する必要があるので別の知識も必要になるね。】


「それでは本題だよ。この星に私たち以上の魔力器を持つ人はいる?いるのであればどのような状況かな?勿論ここにいる人以外でね。」

「1人いるよ。そして1人でいる。魔力器は普通の大きさだけれど、リアたちよりも大きいね。」


 これが姉さんの弱点だね。やはり想像力が足りていない。この星は実験の失敗を集めた場所だと理解していても、私たちより大きい魔力器を普通だと考えてしまう。当時の世界と自分が基準なので私たちを殺せる敵を簡単に見落としてしまう。


 弱者の視点がない。だから弱者を救えない。


【厳しい言葉だけれど、その通りだね。】


「ここから封印することができる?敵はもう一つの体を想定して。」

「私のことを言いたい放題しているね。反論できないけれど…。敵はこちらを警戒しておらず結界も張っていないので問題ないよ。」


 この星にいるのは今日限りなのかもしれないし私たちが出て行くのを待っているのかもしれない。どちらにしても潰しておくべきだね。


【ここにもう一つの体がいたら監視者の見ている星は最悪だね。姉さんも現実を知ることになる。】


「姉さんは呼吸が必要ないはず。自分自身を最強の結界で守って敵を封印と同時に魔力を通さない結界で包んで。その直後に敵のいる場所も広めに封印して。機械は封印で止まらないのであれば結界を張って。そして自宅前まで移動させて何も通さない結界を張ってその中で確認してみて。未知の病原菌が付着していたら安全に保管してね。敵を消したあとは隠蔽してフィーを調べながら待機だよ。」

「実験を想像して私が組み込むのは想定内かな。魔力と機械で仲間を呼ぶ可能性がありこちら側に来る可能性が高いと考えているのね。動かなければ何も分からない。それでは始めるよ。」


 敵の目的が分からない。クズ精神を貼り換えたことで姉さんが正常だと気づいているはず。星の外に出るのは危険だと考えているのか囮なのかが分からない。だから両方に来る可能性を考えているよ。

 アンジェ、当時はどのように個人特定していたの?魔力に番号や名前が入っていた?


【それはないよ。魔力で個人特定しようとした実験が番号と名前だと思う。目や指や声などで個人特定はできたけれど、魔法で必ず悪用される。だから魔法に使う魔力で個人特定できるようにしたかったのだと思う。】


 姉さんは太陽に張った結界の構成を曖昧にしか覚えていない。だけど太陽の中心には誰かがいると思う。罠の可能性が高いから結界解除して仮想体を消すだけでいいと思うけれど、本体ともう一つの体だけしか実体で出入りできないと言っていた。その中には2人の魔力も含まれていると思うけれど、詳しくは姉さんに聞いた方がいいかな。絶対に解消するべき疑問があるから…。


【問題が起きる可能性を感じているのであれば聞いた方がいいよ。】


「疑問には後で答えるよ。とりあえず確認してくるね。」

「索敵も確認を忘れないでね。あちら側に敵が現れても絶対に転移しないで。ここから封印すればいいから。姉さんが倒れたら負けだから魔力量と病原菌にも注意してね。」


 姉さんは分かっているといった感じで手をひらひらさせてから外に出た。

 3週間もここで体を作っていることが最も危険。姉さんの細胞を奪われたら面倒なことになる。負けることはないけれど、今よりも苦戦するのは確定なのだから。

 私たちの体も弱点になる。捕まる前に自殺するつもりだけれど、私たちが死んだら姉さんは太陽を破壊すると思う。


【この奇跡で孤独ではない人生が過ごせるからね。それにしても姉さんを手足のように使うリアも凄いね。姉さんの参謀みたいだよ。】


 姉さんは強すぎる。1人で解決できる程に強いけれど、大量に人を殺すことになる。だけど敵でも姉さんが殺す必要はない。敵同士を殺し合わせるか病死させる。

 そして残った敵だけを処理するだけで十分。


【監視する星の違いで派閥がありそうだし派閥内でも序列がありそうだね。リアの疑問は何なの?】


 軽く思い浮かべた内容は伝わらないみたいだね。もう一つの体だけを起こす方法が知りたい。先に仮想体を作っておいて姉さんが封印してから全ての記憶を仮想体が受け取るように設定していたのであれば記憶の共有も分かるけれど、その仮想体が封印解除するのは不可能。

 姉さんは自分自身を結界で守っているので仮想体が洗脳されたとしても魔法を一切使えないようにしていると思うし仮想体を使っていた場合は特定の場所から出さないようにする。姉さんは独自で得た情報を共有しないと言っていたから。

 体の外に出して鍛えさせていた仮想体も時間の感覚を消すことができるのだから魔法の知識も消している。んー、これは違うね。仮想体で情報共有していても姉さんは洗脳できない。


【さらっと流されると記憶に残らないみたいだね。もう一つの体だけを起こす権限を監視者に与えるとは思えない。姉さんが人に封印されることを選択するはずがない。姉さんの所持している魔法を見ることができたのは間違いないけれど、それは鍛えている仮想体の可能性が高い。だけど所持している魔法を見たまま伝えることしかできない。魔法式を変えることもできない。魔法を使えたとしても姉さんの所持していたものだけ。これは厳しいね。】


 姉さんが転移で戻ってきて椅子に座った。

 疲れているように見える…。


「姉さんが得た情報を話してくれないと前に進めないよ。もう一つの体が監視者の体を作ってあげたのでしょ。もしくは監視者を殺して乗っ取っている。その程度のことでは疲れないでしょ。何を見つけたの?」

「2人の言葉がようやく身に染みたの…。リアにとってはその程度のことで想定内なのね。それならもう一つの体が私を洗脳したと知っても驚かないわよね。」


 姉さんが身に沁みるのは…。

 自分以外を信じていない姉さんは他者に興味が無い。監視するとも思えないし体を作る機械を複製するくらいの力は与えている。だけど魔力拡散器に騙されていると思う。

 姉さんが最初から間違えているので答えが出ない。それが現状に繋がっている。だから2つの意味で落ち込んでいる。もう一つの体が裏切る理由は体に何か仕掛けられていると知ったことだけで十分。姉さんは他者の気持ちを考えずに裏切らないように伝えた。そして別人を太陽の中心まで連れていって情報共有していた。


【残念な姉だよ…。】


「姉さん、監視者が見ている星では生き残りがいるのか分からない。拷問するためだけに実験に無関係の一般人を生み出している。それ以外の情報があれば教えて。何もなければ拷問中の研究者から実験の記憶を消してあるのかと本人確認の方法を教えて。同じ失敗はできないので全力で本人確認したと思うからね。」

「甘さを痛感しているよ。リアの想定通りで魔力拡散器で騙された。拷問中の研究者から実験の記憶は必ず消しているよ。そして実験していた星を探して実験についての記録を消してきた。本人確認の方法は記憶と経験を見比べる。記憶操作系の魔法で経験を操作することはできない。記憶と精神を入れただけの人では経験に想像しか入らない。だけど実際に経験してきた人が新しい体に記憶と精神を移すと経験に全てが入るはずだけれど、死という情報が必須になる。そのため本体の全てを継承できるのは1人しか許されない。一度しか経験に影響を与えない情報なので精神に入っていると思う。封印や睡眠中に体を換えたら弱体化するけれど、それを実感できる程の経験がなければ気づかないし大して変わらない。家族とリオリナは封印を解いて体を換えるけれど、それ以外は封印した状態で体を換える。という事でもう一つの体で間違いなしだよ。」


 経験には記憶のように誰でも見れば分かる情報が入っているとは思えない。魔法式と似たような理解できない何かが入っている気がする。実験には経験を魔法で操作するものがあったのかもしれない。

 失敗は誰にでもあるので気にしても仕方ないね。


【とても同じ人が話しているとは思えないね。流石に感心するよ。】


「姉さん、100万年封印していたとしても拠点は見つかっていないと思う?」

「拠点は見つからないはずよ。そこまで大きな星ではないけれど、ぶつからない限り私の魔法で隠蔽されている星を見ることはできない。他にも質問があれば答えるわよ。」


 太陽の中に光と熱を魔力に変える結界を張って転移門で星に送り続けていればできそう。

 姉さんの魔法技術があってのものだけれどね。


「質問ではなく明日は姉さんに3つの仕事をお願いしたいの。本体はこの星に残ることが前提で可能なのか教えてほしい。もう一つの体がいた場所を調査、太陽の中心にいる人を封印して痛みなく殺して結界と仮想体も消し拷問中の人も殺す、拠点の調査。仕事の際に見つけた未知の病原菌は封印して保管する。予想だけれど、姉さんの終わらない拷問を真似した死体が大量にあると思う。できそうかな?」

「できるわよ。太陽の光で魔力回復が楽に行えるので仮想体で動き続けることができる。それに私に見たくないものを避けるつもりはないよ。」


 敵の行いに対して真面目に対応する必要はないと思う。見たくないものを見なければならない立場ではないし姉さんが敵を必ず倒さなければ駄目だとも思わない。腐った人間が世界を腐らせ星まで腐ってしまい周りの星を次々と腐らせただけなのだから。


【そのように考えることもできるね。故郷の世界の腐敗は本当に酷かったよ…。】


「それでは仮想体と傍受できない念話を繋いで隠蔽して行動してね。そして姉さんも含めて私たちの体は拠点で作りたい。姉さんの細胞を奪われると問題が悪化する。体を作っている時間を使ってクズを減らす。そして新しい体で星を移動しながら状況を確認し星に精神を貼り付けてある程度整えてから移動する。不要な星や岩などは破壊していくよ。一周したら私の世界作りが始められる。計画通りにいかないので何が起きるのか分からないけれど、そこも含めて宇宙旅行だね。姉さんは警戒だけ忘れなければ大丈夫。1人になるとつまらないよ。」

「計画は既にあるのね。私たちは死なないようにするよ。あとは状況次第だね。」


 姉さんには辛い現実が待っていると思うし私たちも醜い世界を見ることになると思うけれど、全て楽しい世界を作るための糧にする。アンジェもそれでいい?


【確かに姉さんには辛い現実だと思うけれど、それは仕方のないことだよ。それよりもリアが作る世界が楽しみ。一周したあとに世界が腐っていたら新しい星を姉さんに作ってもらえばいいよ。多分だけけれど、何とかすると思う。】


「ところでリアに考える癖をつける必要があるの?誰よりも考えているじゃない。」

「短い期間だけれど、否定されたから…。間違っている、家族が犠牲になるとね。少しでも役に立ちたくて思考力を上げたかった。そして私は不器用で1つのことしかできない。だから考える癖をつけて目の前のことに集中しようと思ったの。それでも否定された…。状況を見ろ、自分がするべきことを間違えるなとね。それに問題が解決したから…。それで足を引っ張ったという思いが残り続けていた。だけど本当に大切だったんだよ。今は空っぽだけれどね。ここにある姉さんとアンジェの細胞は回収して拠点が間違いなく安全であればそこで体を作り始めてほしい。拠点の星に精神を貼り付けて姉さんの認識していない体を作る機械がないか、クローディアの細胞はないか、精神はないか確認してみて。」


【リアは誰よりも考えていたけれど、中断させられ解決を見せつけられて否定された。この家族の幸せを考える必要はないよ。信じないし実行しない。】


 何も言わないよ。人を見下し精神が濁った理由は簡単に解決できる。解決しても問題が起きればまた濁ると思うから意味ないね。そして家族にも色々な形があると学べてよかった。世界には知らない家族の形ばかりだと思うけれど、話を聞いて考えることができる。


「この短い期間で多すぎるわね…。気を取り直してフィーを起こすよ。索敵に反応があれば睡眠中でも起きられるように設定しておいたので誰か来てもすぐに対処できる。フィー、気がついた?私とリアは1万年寿命があり呼吸が必要ない体に換えるよ。人型、人獣型、魔獣の3形態に変身できる。フィーはどうする?同じ体でもいいし寿命を同じにすることもできる。希望を教えて。それと体ができるまでの3週間を一緒に過ごす?封印された状態で待つ?」

「クロ姉、私も同じ体にして。あと封印されて待つのは嫌だ。」

「これで3姉妹だね。姉さん、新しい研究所に人と動物を移動させて自宅だけ封印解除しよう。」


 アンジェ、楽しい世界ができたら私から出たい?


【この生活が好きだからそれはないよ。リアと一緒にいるので楽しめる。】


 アンジェが代わりたいときに代わればいいね。リオリナはアンジェに気づいている可能性があるので何を言うのか楽しみだよ。


 姉さんは元家族を新しい研究所に移動させて無駄な食事を消しテーブルを小さくした。3人が手を繋げる大きさの円卓で姉さんと私はフィーに質問攻めにされた。日付が変わっていたら絶対に怒っていたと分かる勢い。それに封印されていたときに何が起きたのか詳しく知りたがる。

 そして強くなりたいと言い出した。更に姉さんが指導することになった。心地よい緊張感を覚えながら食事を楽しんだ。絶対に負けない!


 お風呂から出てフィーに明日の計画を簡単に話した。

 拷問という言葉は使わなかった。フィーが嫌いな言葉に違いないから。


 そして布団部屋で一番大きな布団が左端にあるので3人同じ布団に入った。相談したわけではなく凄く自然だった。姉さんが真ん中で私は左手側、フィーは右手側。姉さんが「おやすみ」と言ったので私とフィーも合わせて「おやすみ」と言った。意味は明日聞こう。


◇◇◇

アンジェとリアの部屋。


 眠る前に自分で仮想体を2体作り片方は仮想体を2体作りもう片方は私たちの部屋のドアをノックしてから返事を聞いて入った。壁に並ぶ本棚の本は姉さんの手作りみたい。5段の本棚が正面の壁とドアとベッドの邪魔にならないように21台並んでいる。本棚には最低でも50冊の本があるみたい。


 姉さんは当時も世界征服できた気がする。


 実に姉さんらしいと思う。自分が読んだ本では満足できず妹のために新しく本を作る。幼い頃から家出することを前提に行動していたのかもしれない。

 アンジェに魔力操作の練習を説明したら修正が入ったので2体の仮想体を作り直した。記憶と精神を共有するのであれば入れると魔力の無駄になると教えてもらった。


 私の当たり前は必要ない。これから学ぶのだから。


 本棚は時計回りで難易度が上がる。そして棚の最下段の左端から右に向かって、読み終わったら上の棚の左端から右にという順番で読み進めるみたい。知りたい魔法から読みたいけれど…。


「私はこの本から読むよ。妹だからね!」

「間違いないね!」

現段階ではリアが計画を考えるよりもアンジェの方が安全です。

ですがアンジェがリアの人生だと考えているので控えています。


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