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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第80話 終幕

「…起きなさい。そろそろ夕食の時間よ。2人とも起きなさい!」


 お母さんの声で目を覚ました私は知らぬ間にお母さんに抱きついていた。


 再び閉じそうになる目を開けてお母さんから離れた。布団部屋にいるのでリビングで眠ってしまった私を運んでくれたみたい。お母さんと一緒に寝た記憶がないので少し残念に思う…。

 2人と言っていたのでもう1人はフィーだね。体を起こすとフィーがお母さんにおでこを軽く叩かれていた。安心して眠れたのが初めてだと思うので起きられなくても仕方ない。フィーが目を開けてすぐに目を閉じたのでまたおでこを叩かれている。

 ペチペチと可愛いい音を聞きながら密かに漏らしていないことを安心していた。


「料理を作りに行った方がいい?」

「3人いるので大丈夫。今晩は布団で寝なさい。リオリナにも伝えてあるので明朝に元気な姿を見せてあげて。厩舎に勘違いしている馬はいないので安心しなさい。馬房に入れたときの反応なども確認したよ。少しだけ夕食までに時間があるけれど、席に座って待っていて。」


 返事して布団部屋から出るときもお母さんは幼い自分と格闘していた。叱れば叱るほど自分に跳ね返ってくる。3歳児がいない間だけという条件でお母さんが折れるに違いない。本気で動くつもりのない自分を動かす方法は知っているはずだけれど、痛みしかないのだと思う。

 布団部屋から出るときに襖は開けたままにしてリビングテーブルに向かって歩いた。


 3人は料理部屋にいるみたいでリビングには誰もいない。いつもの席に座って午前中のことを考えてみたけれど、星に貼り付けられた精神に勝てたのは運でしかない。そして私を馬鹿にして楽しんでいたのは確定している。洗脳されていた3人が計画と無関係な言動を私に多くしてきたから…。

 私の使える手札を全て思い浮かべてもお母さんとクロア姉さんを相手に隠し事をするのは不可能。


 諦めずに考えてみよう…。


◇◇◇

20分後。


「リア、リア!食事はいいの?悩み事でもあるの?」


 お母さんの声で思考を中断して目を開けた。無意識に目を閉じていたみたい。

 今の私では何もできないという答えにしかたどり着けない…。


 いつの間にか夕食が用意されていて皆が座っている。


 お母さんの髪と目の色が戻っている。その隣に座っているフィーは緑色の目に変わっている。そしてクロア姉さんは金色の目に変わっている。過去に姿まで変わっているのでお母さんの目の色であれば気にならないと思う。それに当時から同じ姿の姉さんを変えるのはおかしな気がする。


「悩みではなく1人反省会をしていただけだよ。星に貼り付けられた精神に馬鹿にされ遊ばれ運だけで姉さんと連絡が繋がったけれど、私が今より賢ければ死んでいたし馬鹿でも死んでいた。私を監視していたのがお母さんとクロア姉さんでミュリエル姉さんは無関係を装って情報を聞き出していた。そして私を殺すのがクロア姉さん。それに今朝以外で私が気づいたら全滅が確定。姉さんのことだから実験場も確認していると思うけれど、結界で住人を洗脳していた?病原菌を持っていた?それと魔力にも寿命みたいなものがあるのか教えてほしい。自分の魔力を最大限に活用して強くなりたい!」

「よく気づいたね。結界で悪意を持たせるようにしていたけれど、病原菌は持っていない。そして魔力が1万年変化しないのは確認したけれど、それ以上は未確認だよ。」


 魔力の回復量を見ながら練習しなければ危険なので魔力量の5割から始める。記憶と経験を共有して練習しなければ意味がないので繋げるのを忘れない…。

 仮想体を1体作り仮想体が仮想体を作ればどのようなことになるのかな。親と子の関係を作った場合は親だけの記憶と経験が入るのか親と子の記憶と経験が入るのか確認しておいた方がいい。

 日に日に仮想体を増やしていけるけれど、増やしすぎて魔力が枯渇するのは問題なので仮想体の大きさを最小で作れるように練習する。理想は最小の仮想体が最少の魔力消費量で練習し続ける。そして1日の魔力回復量よりも少ない魔力消費量で練習できるようになりたい。だけど今の私が作った仮想体が1日練習したときの魔力消費量が分からないので5割は危険な気がしてきた…。

 最初は5体から始める。焦らず自分の成長を見ながら仮想体を増やしていく…。

 今から始めようとしてしまった。不器用なのだから焦ったら何もできなくなる。仮想体を作って練習を始めるのは就寝前の方がいい。感情制御が全くできていないけれど、これは後の課題として覚えておく。魔力操作を練習すると決めたのだからそれに集中する。

 今は食事の時間なのだから食べることが大切だね。昼食を食べていないけれど、お腹が思ったよりも空いていないのは胃に直接入れてくれたのかもしれない…。


 結界の効果で精神が悪意を持つのは分かったけれど、私には該当していない。


 実験場の中で個性を得た分身なのに悪意に染まっていない。他に悪意に染まっていない個性を得た分身を知らない。これが偶然ではないのだとしたら…。

 個性を得たのではなく誰かが私に心を使わせてくれている可能性がある。今でも私の中にいて協力してくれているとすれば全て運だとは言えない。私の行動を止めてくれたり感情を抑えてくれたり違和感に気づかないようにしてくれた。そして今朝予想を話すように促してくれたとすれば2人の力になる。

 誰かいる気がする。何故私を消さないの?姉さんに会うのが目的だったのでしょ?

 君は私より世界が嫌いなの?残されていることが不満だったりするの?私の性格が君から生まれたものだとすれば姉さんが私に妹を見ているような気がするのも納得だよ。私が出鱈目なことを言う前に何か言って。思考把握されているので語りかけている状況はかなり恥ずかしいからね!


【姉さんに会えたのは偶然だよ。今は不満だと思っていないけれど、本当は全て渡して消えたかった。私のことはアンジェと呼んで。リアの中から見ている世界はそれほど嫌いではないよ。だけど家族を大切にしすぎているので心配になる。リアの頭の中には爆発する魔石が入っていた。今は目を覚ます魔石に変わっている。それを見つけた姉さんがクロアとミュリエルを沈黙させているよ。そしてリアがお母さんと呼んでいる人は当時私を裏切った人。私は捕まっていないけれど、両親は姉さんを売ったの。それなのに母の残した言葉は消えないとまで言って嘘を吐いたのは驚いた。当時から何年経つのか知らないけれど、怖いね…。それを聞いてリアからお母さんへの想いを消すこともできたけれど、残したままだよ。当時と今は違うかもしれないから。リア、私を疑う?】


 疑っても仕方ないよ。嫌がらせで嘘を吐くより死んだ方が楽な世界だから…。

 姉さんは私を消したくなるだろうね。生まれたばかりの私はクロア姉さんの記憶で見た世界だけしか知らないけれど、本当にうんざりだよ…。

 お母さんが私を殺そうとした2人を選ぶ可能性があるのでしょ。姉さんが2人を黙らせているのは共謀していた証拠を掴んでいるという事だからね。


【当時と変わらなければね。だけど救ってもらって感謝や謝罪がないのは異常だと思う。それと姉さんはリアを消そうとはしないよ。家族を見捨てることもできない姉だからね。】


 優しい姉さんだと私でも分かる。当時の世界が狂っていて姉さんは何一つ悪くない。理由は全く知らないけれど、姉さんが世界を背負う必要はないのだから。


「リア!聞いているの!?」

「お母さんに聞いてほしいことがあるの。クロアとミュリエルが私の頭に爆発する魔石を仕掛けて殺そうとした。洗脳中だから魔石を入れられただけで済んでいるけれど、洗脳されていなければ殺されていたよ。お母さん、私の敵をどのようにすればいいの?」


 姉さんが驚いている。私に伝えていないのだから知るはずのない情報。それを突然言い出したので無理もないと思う。だけど何故知ることができたの?


【仮想体で監視しているからだよ。爆発しないようにもしていた。そしてリアも何となく分かっているでしょ。姉さんを殺す準備ができたときに冒険者になり元の姿になり女王になる。台本のある劇だよ。】


 その通りだと思う。封印されていたと考えるのが自然だから。いつから劇が始まったのかも分からないし劇が繋がっているのかも分からない。全て別人の記憶なのかもしれないし全て自分の記憶なのかもしれない。この世界は拷問の記憶で溢れているので好きなものを選びたい放題だから…。

 年齢に合わせて記憶を繋ぐだけで拷問されたクロアという少女が完成する。


「姉を敵と呼ぶからには証拠があるのよね?」

「私の言葉を疑うの?姉さんが爆発しないようにしてくれたので証拠の魔石が残っているのかは不明だよ。だけど姉さんが証人になってくれる。」

「1人反省会をいつまで続けるのかと思ったけれど、そこまで含まれていたのね。2人は話せないようにしてあるよ。煩そうだからね。リアが冗談で姉に殺されそうになったと言うと思っているの?」


【リアを疑ったね。嫌な予想が当たりそうだよ…。】


 姉さんの言葉は十分な証拠だよ。そして怒らせれば確実に殺される。それなのに私を責めてくる気がするのは何故だろう。理解できないことを言い出しそうな気配がするよ…。


「リアは私たちを敵だとするの?本当にそれでいいの?フィーはどうするの?」

「私はリア姉と一緒に行動するよ。お母さんは疑われていないのに被害者のリア姉を敵にするんだね。娘の言葉を疑い敵を庇っている自覚はないの?」

「その通りだね。リアはあなたに対処してもらおうとした。殺されるところだった娘を敵にするのが母親のすることなの?」


 フィーも大きくなったら同じようになるのかな…。


【大丈夫だと思う。今の状況を冷静に見ることができているからね。】


「お母さんの解決方法は何なの?クロアとミュリエルの場合は私が死ぬべきなの?」

「これまで2人がどれほど辛い日々を過ごしてきたのか知らないの?」

「その日々が本当なのか証明できるの?家族により命の価値が変わると自白しているね。私を殺す準備ができた敵が16年も待つと思う?3人は封印されていたと考えるのが自然だし拷問の記憶も実際に経験しているのかは分からない。クロアと私の精神は違うのよ。精神を入れ換えたばかりで馴染んでいないと思っていたけれど、濁り始めている。3歳児は無意識で見下していたけれど、洗脳が解けた2人は意識してリアを見下している。精神の色だけで人を判断するのは好きではないけれど、妹を殺そうとして精神が濁っているのだから悪人だよ。」


 姉さんの言う通りだと私も思う。そして精神の濁りが止まっていない。3歳児と同じで私に対して憎しみを募らせているのだと思う。

 お昼には家族が増えたと喜んでいたのに数時間でここまで変わってしまったことに胸が痛い。私が気づいていなかっただけで歪んでいた家族なのかもしれない。もしくは私が歪めたのかもしれない。だけど私を家族に誘ったのはお母さんだよ…。


 目的の一つが音を立てて崩れ落ちた。


【リアは何も悪くないよ!自分を責める必要は全くない。私も一緒にいるから大丈夫。】


 ありがとう。それだけで私には十分すぎるよ。


「リア、私を変える大切な目的があるでしょ。私を庇わないでどうするの!」


 崩れ落ちた瓦礫が跡形もなく消えた気がする。

 姉さんから庇ってほしいのだと思うけれど、私の求めていることや殺されかけたことが置き去りにされている。お母さんが私にこのようなことを言う理由を考えたくない…。


【予想より酷い言葉が出てきたね…。私の言葉を言ってあげて。】


「4人から敵として殺すと言われたときよりも2人が私を殺そうとしていたと知った今の方が辛い。そして姉さんに色々と言っていたけれど、あの言葉が本当に真実だと思っているの?妹は母に裏切られたけれど、捕まっていない。両親が姉を売ったんだよ。お母さんを本気で変えたいと思っていたけれど、その気持ちは欠片も残っていない…。」

「あなたには4人を殺す権利があるだけよ。そして私の言葉ではないので真偽は知らないわ。だけど当時を知っているクローディアが何も言わないのに何故あなたが当時を知っているの。私のお陰で人になれた分身だと忘れてしまったの?あなたは家族のため、私のために頑張ればいいの。それが嫌になったのであれば体を捨てて消えなさい。」

「お母さんではないね…。何故そこまで酷いことが言えるのか分からない。リア姉の気持ちを全く考えていない。リア姉は優しい私の姉だよ。」


 フィーは優しい妹だよ。


 短い日々だけれど、今日のお昼までは本気だった。命懸けでお母さんを変えて生涯を一緒に楽しく過ごしたいと思い家族も守るつもりでいた。だけど何も伝わっていない。それどころか私の存在を否定されるとは思わなかった…。

 私を利用するために家族に誘ったの?役に立てないのなら死ねという事だね。この体でいることが気持ち悪い。奴隷にされた証みたいに感じる…。


【この人は洗脳が解けて本性を隠せていない。余りにも酷いけれど、負けたら駄目だよ。リアは分身のときから人の心を持っていた。この人たちが生きているのは私たちが頑張ったから。リアがこの人に感謝する理由も元分身であることに負い目を感じる必要もない。】


 大丈夫だよ。この人のために死ぬつもりはない。この家族のために死ぬつもりはない。私は2つの命を背負っている。その命に恥じるような死に方は絶対にしない!


「リアは妹にそっくりよ。今の話が本当であれば体が見つからない理由も分かったわ…。それにしても自分で家族に誘って名前を付けて年齢と体まで決めたのに…、体を捨てて消えろとまで言うのね。私は二度も騙されたみたい。本当に嫌になるわ…。」


【リア…。今から魔法式を書いて姉さんに渡すよ。16歳、アンジェリアになって。私も両親の正体を知らなかったみたい。試すように促して本当にごめんなさい。】


 気にしないで。知る必要があったことだよ。私も洗脳されていたようなものだね。この体で宇宙最強になろうとしていたのだから。

 新しい名前と体をありがとう。宇宙最強になって誰にも邪魔されず楽しむために頑張るよ!


「リア、これは何かな?」

「それが私の新しい体だよ。16歳で作って。そして名前も変える。アンジェとリアでアンジェリア。本来の体と名前に戻すべき理由ができたよ。」


 姉さんが驚愕しているのか停止しているように見える。私の言葉に不満があるのか喚いている人がいるけれど、姉さんの反応を気にしているようには見えない。

 私を見て喚いているので私のことを言っていると思うけれど、何を言っているのかは分からない。アンジェが何かしてくれているのか私が拒絶しているのだと思う。


【私は何もしていないよ。何を言っているのか誰も分からないと思う。】


「リア、私がアンジェと話すことはできるのかしら?」


 予想通りの反応だね。精神が2つある状態ではないので代わり方が私には分からない。代われるのであれば話してあげて。それに交代することができれば色々と楽しめるよ。


【代われるのか試してみるのでリアがどのような場所にいるのか教えて。】


 突然どこかの部屋に飛ばされたように感じた。


 目の前の壁にアンジェが見ている視界が映されているみたい。煩く喚いている人の声も目の前の壁から聞こえてくる。それ以外の壁には本棚が並んでいて隙間なく本が並んでいる。ベッドまであり座ってみると弾力を感じる。見たことのない不思議な物が色々とある。部屋にドアはなく天井は明るいけれど、飛べば出られるような感じではない。


 私の思考をアンジェは分かる?


【リアの思考は分かるよ。私が好き勝手に作った部屋にいるみたいだけれど、出入口のない箱になっているみたいだね。声を出してみて。】


「私はソファに座って壁を見ていればいい?」


【声も聞こえたよ。思考しているのか声を出しているのか違いがよく分からないので気になったことがあれば心の中で語りかけて。楽な姿勢で壁を見ていてね。】


「代わったよ。とりあえず質問に答えて。リアと私の思考が読める?」

「リアが楽しめると思考した後からは何も分からない。思考どころか感情も動いていない。理解できない状態で2人がいるのは分かったよ。」


 宇宙最強になる下地は既にできていたみたいだね。この形で強さも手に入れれば最強だよ!


【私の望んでいた形ではないの。リアは私の心を少し使い体を得るときもその状態だったので私が表に押し出したけれど、体の所有権は私になっていてリアに貸しているみたい。形は気にしないことにするけれど、リアの人生だという事を忘れないで。】


 勿論だよ。私が努力してアンジェも楽しめるように頑張るからね!


【全く…、今ので私は残り続けると確信したよ。私たちとリオリナのために頑張ろう!】


 そうだね。あと姉さんとフィーを守れるようになりたい。これまでは強さを求める意欲が足りなかった。この世界では強くなければ奪われるだけだと身に染みた…。

 誰にも頼れない状況がいつ訪れるのか分からないのだから私が強くなるしかない。


「リアが優しすぎて困るよ。それで何か聞きたいことがあったの?」

「その優しさでアンジェは残ってしまったのね。何故この魔法式があるの?」


 煩い人の細胞をアンジェの細胞に変える魔法式なのか両親の細胞を合成してアンジェの細胞を生み出す魔法式だと思う。姉さんは世界を憎んでいるはずのアンジェが自分の体を作る方法を考えていたことが不思議なのかもしれない。


【魔法式はリアの予想通りだよ。姉さんは私の最期も分かっているみたいだね。】


「暇な魔法使いは世界か自分のことを調べる。魔法式が役に立つ日が来るとは思わなかったけれどね。記憶が残っていることも不思議だよ。世界に自分の体があるのは嫌だけれど、リアと私が楽しく過ごすためには新しい体が必要でしょ。」

「そうね…。リアを捨てるとは思わなかったけれど、裏切られた事と関係あるの?」


 記憶を見ている姉さんが理解できない。洗脳の強さが分かるけれど、洗脳されていなければこの家族は幸せになれないような気がする。

 私たちの敵を姉さんが許すとは思えないけれど。


「姉さんが家出した日に私と母も家出したの。絶対に見つからないはずだった。母が居場所を父に手紙で伝えていなければね。姉さんの懸賞金が上がらなくなったとき両親が談笑しているのを見て裏切られたと知った。両親の記憶から私を消して姉さんを探そうと思ったけれど、すぐに姉さんが捕まったと知った…。人間を生み出した世界が憎い。醜い欲望の付けを姉さんに押し付けた人間が憎い。だけどリアの作る世界を見てみたいと思った。だからこれからもリアを助ける。姉さんから見てもこの人は正気なの?」

「ごめんなさい。両親を殺して人間と戦い続けるべきだったわ。この人は正気だけれど、3人の劇が続いていると思い込んでいる。今までうまく行きすぎていて何も怖くないのよ。」


 3人の劇だから端役は消えても問題ないと考えているんだね…。

 アンジェはそこまで憎んでいるのに私に会いに来てくれたの?心を使わせてくれたの?アンジェが見えていたわけではないので状況は分からないけれど、何もせずに去ることはできなかったの?


【心がほしいと強く願った想いが私に届いたときリアの目の前にいたの。死んだ直後にそこにいた気分だよ。去るという行動は思いつかなかった。これで消えることができると思ったけれど、リアに欲がなさすぎて残ったの。だけどリアの考え方と見ている世界は好きだよ。下らない劇は終わらせるね。家族を大切にしてきたリアには辛いと思うので私に任せて。疲労がまだ残っているので無理は駄目だよ。】


 アンジェに任せるよ。私は整理したつもりになっているだけだと思う。


「姉さん、この人を黙らせてクロアを話せるようにして。リアに任されたよ。」

「それなら私に文句はないわ。好きなようにしなさい。」


 煩い人が口をパクパクさせているけれど、声は出ていない。それなのに口をパクパクさせ続けている。体を捨てて消えろとまで言われたのに言い足りないみたいだね。醜悪だよ…。


「クロア、あなたが見下し嫉妬までした相手は母に捨てられ消えろとまで言われた。一緒に殺そうとした相手に特別だと思われている気持ちを聞かせて。」

「お母さんには結界を張るに決まっているでしょ。」


 私が溺愛されていると思い込んで殺そうとした。

 記憶で見たクロアとは余りにも違う。これ程までに短慮で幼稚だとは思わなかった。過去の記憶が別人なのかクロアなのかが分からない。強くなる方法もクズ精神に教えてもらった気がする。

 言い訳が見苦しくこの人たちは家族ではない。洗脳により集まっただけの3人。洗脳が解けたらバラバラになるのが当然だね。


「リアを殺すつもりでいたことは否定しないね。お母さんが家族に誘ったことを知っているのはクロアとリアだけだよ。殺す理由なんてあるはずがない。正当な理由があるの?」

「末っ子が嫉妬で精神を濁らすのが予想できるでしょ。同じことを繰り返してどうするの。」


 最初からおかしいと思わなければ駄目だった。私を家族に誘った日に全てを私に押し付けて記憶を消した。そしてフィディーとの記憶だけを望んだ。クズ精神の嫌がらせはこの日から始まっていた。それなのに気づけない私が盲目だった…。


「今の体で末っ子が1人増えてリアを除いた8人で暮らすことができればいいの?」

「新しい綺麗な体に決まっているでしょ。何を言っているの?」


 洗脳されていたとしても過去の自分たちの行動は分かるでしょ。

 敵の望む条件を聞いたこともない癖によくその言葉が口から出せるね。


「リアの敵なら姉さんの敵だよ。あなた達に新しい体を用意する理由はない。死ぬか今の体で生きるのか決めて。どちらを選んでも罰は受けてもらう。そして下らない要求を言ったら殺す。生きられる選択があるだけで十分でしょ。」

「リアのせいで私たちの未来が潰れたじゃない。」


 私を殺そうとした加害者が被害者のように語れるのが不思議で仕方ない。

 説教されたら私を憎む3歳児と同じだね。


「3人はリアがいない今日に決めた。姉さん、時間を稼げて同じように暮らせる星はある?」

「あるよ。逃亡生活が長かったからね。だけど魔力のない動物を自然に帰せない。この星の別の大陸でもいいけれど、魔力のない動物が暮らせる土地を用意するしかないね。」


 アンジェ、洗脳された姉さんが本来の姿でいるのか確認したい。いいかな?


【現状は敵に襲われたら姉さんだけしか戦えない。その姉さんがしっかりしていないとリアが鍛える時間を作ることもできないから勿論いいよ。リアが話す?】


 今のままでいいよ。姉さんも私の思考が分からないのが逆に好都合。アンジェと姉さんの念話を傍受不可にして。姉さんを追い詰めてみる。

 自分自身を封印する前の姉さんはあらゆる状況を想定していたと思うけれど、姉さんは洗脳されたことで自信を失っているように思う。宇宙最強が洗脳された程度で揺らいでは駄目だよ。

 失敗したら敵が来るまで努力するしかないね。


【普通なら洗脳されたことで不利な状況に立たされていると感じているはずだからね。リアが追い詰めて気づくことができるのか自滅だね。リアの人生だから好きなようにやってみよう!】


「姉さん、警戒を最大にして私と念話できる状態にして。」

「待ってね…。これでいいよ。」


◇◇◇

念話中。


 今から私が思考したことを姉さんに伝えてね。疑問と質問で押し潰すよ。


【とても頼もしいね。潰れたら情けない姉だよ。】


 移動する前に全員の記憶を消すのが最善だけれど、姿を見られていることを利用できるのかな?死んでも脳が残っていれば記憶を読み取れるのなら誤認させたいけれど、姉さんの魔法技術だとできる?

 そして病原菌は誰にも感染しなければ時間経過で死ぬの?敵は姉さんが作ったクローディアだから確実に失敗したときも計画に含めている。最悪だと姉さんの監視している星に病原菌を撒かれている可能性もある。その場合は病原菌だけを殺すことができる?

 それに病原菌を体に付着させて突撃してくる可能性も考えられる。体の予備を戦いが終わるまでは封印して保持しておいた方がいいよ。

 近づいたら死ぬともう一つの体と他のクローディアが知らないのであれば視察しろと指示して接触させるのも有りだと思う。相手が消えなければ灰になるように仕掛けておけば何も残さない。姉さんが洗脳されたことは最大限に警戒すべきで病気を治せないと知られているのがとても危険。

 敵は体を作ることができるようになっていて病原菌まで克服していると考えて行動した方がいいと思う。1種類だけ克服されているだけでも脅威になる。姉さんが眠っていた時間が敵の準備時間だよ。

 あとは3人が罠の可能性がまだ残っている。知らない魔法を突然使う可能性もある。魔法名と魔法式が違うこともあり得る。3歳児4人も前日に封印することになったので怪しい。フィーを救うことも敵の予定通りの可能性が高い。今晩から姉さんに抱きついて眠ると思うからね。

 姉さんは即対処できることについては警戒していない気がする。普段はその方が消耗が少なくていいけれど、拠点ができるまでは徹底して調べてほしい。

 クローディアの体にだけ意思があるのも思い込ませる目的があるのかもしれない。当然この体も疑って。拷問したくて殺さなかったのではなく別の目的があったのかもしれない。


 とりあえず姉さんと私たちを除き結界内を封印して様子を見てから私たちも封印して。封印することを想定して誰かが自動で反射を使う可能性もあるから気をつけて。

 そして封印、記憶全消去、記憶を魔石に保管する魔法を所持しているのか確認してみて。


「姉さん、リアから大量の疑問と質問があるから今から伝えるよ。『・・・・』と言っているので答えて。そしてリアは1種類だけなら病気を克服できる可能性のある方法まで考えているので気をつけて。洗脳されている体を泳がすのも面白いね。リアが敵にとっての想定外だよ。」

「多すぎるでしょ。魔法は所持しているので大丈夫。今の質問や疑問には後で答えるのでここの調査を優先するよ。うそっ!?フィーの体が封印を反射した。注意されていたのに焦ったよ…。とりあえずリア以外は全て封印したよ。この状況をリアはどのように考えるの?」


 私は全員を疑ったのだから予想が当たったとは言えない。それなのに姉さんは私の予想が当たったと思い不安になり確認したいと考えているみたい。

 フィーが魔法を使ったようには見えなかった。体が意思を持っている可能性がある。姉さんは反射された魔法を軽く打ち消したけれど、そのことを気にしていない。問題は姉さんがフィーについて見落としていた事と封印を反射された程度で動揺していること。そして所持している魔法は魔法技術が低いと気づいていない。


【情けない姉だね。これが宇宙最強なら残念としか言えないよ。】


 アンジェ、姉さんの状態は何となく分かったので自分自身を疑ってもらうよ。いいかな?


【徹底的にやっていいよ。自分の立場を忘れているみたいだからね。】


 ここからの思考も姉さんに伝えてね。


 浄化と転移は反射せずに封印だけ反射したので敵は姉さんの状態を知ることができる。つまり姉さんのもう一つの体が最も怪しい。もしくは姉さんの体に何か仕掛けがあるのかもしれない。もう一つの体に救難信号を送る魔法を自動化していたりしない?

 もう一つの体は本体が動けなくなったときのために存在するのだから何もない方が不自然だと思える。洗脳されているもう一つの体が敵に伝えるのかどうかは分からない。だけど体が2つあることに気づかれている可能性が高い。それで救難信号を送る魔法はあるのかな?


「リアが『・・・・』と言っているよ。勝率5割と言っていたけれど、本当なの?」

「そのように考えるよね。その魔法はあるけれど、もう一つの体には教えていないし今まで使ったこともない。解析されたか記憶を覗かれなければ気づかれない。そして情報を受け取るだけでこちら側から流すことはないし私ともう一つの体の実体でしか出入りできない結界を張ってある。だけど警戒を最大にしても足りない状況だね。洗脳されていなければ5割に訂正しておくよ…。」


 アンジェも言いたいことがあるでしょ。私たちが超えるべき宇宙最強がこれでは駄目だよ。


【やはり洗脳が響いているね。自分を全く信じていないし状況判断ができていない。】


「何故リアとの交渉に姉さんが応じたの?星に貼り付けた精神はもう一つの体に呼びかけるように設定していないの?本体ともう一つの体の違いはどのように見分けるの?洗脳で記憶を複写されていたら本体ともう一つの体の違いが分からなくなりそうだね。」


 アンジェの言葉に合わせて追撃するよ。


 もう一つの体が外出しているときに時間制限はあるの?調べる方法が魔法を使う場合はその魔法式と救難信号の魔法式を確認してからにしてね。そして救難信号を無効化する結界を張ってから調べた方がいい。

 一番危険なのが洗脳されている本体が敵になることだよ。私なら裏切られても問題ない仕掛けを入れる。本体から離れて自分自身を封印して仮想体で調べさせないとかだね。

 そして誰にも聞かれていないと言っていたけれど、姉さんがもう一つの体なら繋がっているし動きが丸見え。もう一つの体は線を見ることができて本体に繋ぎ直すことが可能なの?

 それに私の予想で起きて眠った演技をさせたと言ったのを姉さんは否定していない。だからもう一つの体は本体に指示を出せるの?


「リアも『・・・・』と言っているよ。ここで判断を間違えると終わるよ。」

「分かっているわよ。ここは最重要だね…。星に貼り付けた精神はもう一つの体に呼びかけるように設定していた。そしてこの星からの声だけは結界を通り抜けると本体に届く。体の違いは強さ以外では分からない。起きて眠った演技をさせたのは事実だけれど、本体に指示を出せる体はないはず…。誰にも聞かれていないのは本体から情報を共有することがないから。それと本体が結界の外に出たら線は切断するようにしている。だけど線を見ることができるのは本体だけで繋ぎ直すことができるのも本体だけ。それなのに洗脳されていた私は線のことを気にせず飛び出しているし線の構成を知らない。私が本体だとしても、洗脳の影響が大きすぎる…。」


 洗脳を解いた姉さんは冷静な振りをしていたみたいだね。


「クローディアは馬鹿で決定。これでリアに警戒心が足りないとよく言えたね。」

「返す言葉がないね…。」


 あとはこの状態を反転させるだけ。


 救難信号が飛ぶのであれば無効化する結界を張って確認するしかない。

 記憶全消去と記憶を魔石に保管する魔法式を確認してみて。宇宙最強のクローディアなら機密情報だけは絶対に漏らさない。それ以外は消されても問題ないと判断している。

 そして本体に何か仕掛けることはできない。封印で眠っていたときも何かされたら起きる結界を張っていた。誰も信じていないのにもう一つの体を信じているはずがない。

 全部用意できたら記憶を魔石に保管してから初めてね。


「リアから『・・・・』と言われているよ。姉さん、やるしかないよ!」

「分かっているわ。用意できたよ。リアの思考力は生まれたばかりだとは思えないね。」


 宇宙最強が何を言っているの…。

 アンジェの思考力が元になっていると分かるでしょ。


「私の思考力が下地になっているの。だから脳筋が勝てるはずがないでしょ。リア、何をするの?」


 アンジェは姉さんが記憶を保管した魔石に自分の名前があるのか確認してみて。それと線の構成は分からなくても線で繋がっている事と体に何か仕掛けられていると分かる情報があるのかも確認してみて。

 姉さんは記憶全消去を自分にしてね。


「姉さん、リアが『・・・・』と言っているよ。私も魔石の記憶を確認するので諦めて記憶消して。」

「これで記憶が消えたら脳筋決定なのね…。」


 大切なのは記憶を共有するために線で繋げていることで構成ではない。そして体に何か仕掛けられていても困るのは敵であり姉さんではない。

 記憶を見ることで敵は線で繋がっている事と体に何か仕掛けられていることを知る。だけどその内容が分からない。敵は姉さんのいる星に入れないという情報だけで接近できなくなるので十分。だから姉さんが記憶を消している可能性が高い。


【完璧な流れだね。記憶が消えなくても脳筋決定だよ!】


「記憶が消えた気がしない。なるほど…。この程度の魔法式では無理だと思ったけれど、リアが伝えたいことが分かったよ。洗脳されたことで記憶を抜かれたと考えていたけれど、冷静になれば所持している魔法を見るだけで敵に使わせるために用意しておいたと分かる。魔石には敵が知りたくない情報だけを保管している可能性が高い。洗脳されて自信喪失し不利な状況だと考え浮足立っていた。所持している封印を使い反射されて慌てた。本体ではないのかもしれないと自分自身を疑った。地に足をつけた状態で最大限に警戒する。宇宙最強の矜持を忘れていたわ。」

「リアの予定通りだね。敵が知りたくない情報しかないけれど、内容が全く分からない。姉さんに魔法を使うのは危険だと判断して仮想体を洗脳して魔法を使わせていると思う。敵に情報を与える必要はないので太陽の中の仮想体はそのままでいいと思う。無駄な魔法を破棄して私たちを封印してから調査し直して。」


 現在は宇宙最強の姉さん、調査をお願いね。


「現在は宇宙最強の姉さん、よろしくね!」

「可愛くない妹たちね。現在も宇宙最強の調査結果を待っていなさい!」


念話終了。

◇◇◇


 姉さんの封印で意識が薄れていく…。

 劇の終わりを端役で出演した元人形は不思議なほど何も感じなかった。

フィーは悪い見本が隣にいたので大丈夫です。

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