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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第79話 交渉と確認

 私が怖いのはお母さんが殺されるのを見ること。例え相手が宇宙最強でも私には関係ない。何故なら宇宙一はお母さんだと決まっている。それを分かっていないクローディアには教えてあげないと駄目だね。


「クローディア、姉さんと同じ精神なら相手の強さに関係なく油断していない。そのため私たちの会話を聞いているでしょ。赤ん坊の予想はぶれてばかりだけれど、頑張って考えてみたよ。それなりに当たっているでしょ。全ての実験を生き抜いたクローディアには流石に勝てない。どうしても戦いたいのであれば1対2でお願い。私はあなたの悪口をかなり言ったと思うけれど、予想だから許して。それと頑張った私にご褒美をちょうだい。」

「何しているの!私が交渉するよ。危険だと分かっているでしょ。」


 姉さんは洗脳されていることを忘れているの?

 戦うことを前提に話す気がするので私が話す。それに姉さんは体も精神に影響を与えようとする。その影響でクローディアに何を言うのかが分からない。それよりも目的がはっきりしている赤ん坊の方がいい。


「面白いからずっと聞いていたよ。どこが赤ちゃんなの?立派に予想していたし当たっているよ。」


 お母さんの体を乗っ取って話してくれるのは私にとって好都合。お母さんは絶対に止める。

 それにしてもお母さんを乗っ取っているのに何も感じない…。


「精神はクローディアで体はお母さんの細胞で作ってあるの。そのせいで精神と体が馴染まなくて抱きついて眠ると起きられない。漏らしても眠り続けるよ。赤ん坊でしょ?」

「確かにそれは赤ちゃんだね。ご褒美を欲しがっていたけれど、何が欲しいの?」


 家族を大切にするお母さんの命だけを守っても無意味。それよりも私の予想が当たっているのであれば早く救ってあげたい。聞かれただけで終わるのかもしれない。だけど私が欲しいものを言わせてもらう。


「他の星で幼いお母さんを拷問しているでしょ。救ってほしい。できれば馬と一緒にね。更に望むのであれば私が救いに行きたい。お母さんに関わっているクズが拷問中であれば惨殺したい。拷問されていないのであれば拷問する。太陽が消えるまで拷問中でしょ。だから惨殺したい。」

「この状況で自分たちの身の安全ではなく幼いお母さんを救いたいのね。当然拷問中だよ。痛みを感じるように人形にもしていない。私は赤ちゃんの予想を聞いていただけで何が起きているのかは分からないけれどね。」


 そういうことかな。


「教えてほしいことがあるのだけれど、世界の女王とは何?関係者とは何?」

「それは知らないね…。今は3人が結界の外に出て楽しく暮らしているのではないの?」


 予想通りではあるけれど、最悪な状況でもある。


「他にも体を持つクローディアがいるでしょ。聞かれていないのであれば答えられるよ。」

「私が起きたのは初めてだから誰にも聞かれないようにしているよ。答えてくれる?」


 初めて起きた…。

 私たちの体に仕掛けられているものはこの人を殺すためのものなのかな?


「まだ足りないよ。この星とお母さんを拷問している星が繋がっているでしょ。繋がっているのであれば星に貼り付けた精神が何もできないようにしてから切り離して。」

「念入りだね。星に貼り付けた精神が連携するようには設定していない…。計画外のことが起きているみたいだね。連携を切断して力も封じたよ。私が見ている前で力を使うことはできないけれどね。もういいかな?」


 これで話せる準備はできた。万が一姉さんが暴れてもクローディアが止めてくれる。


「十分だよ。単刀直入に言うね。星に貼り付けた精神がクローディアの拷問を楽しんでいる。もう1つの星ではお母さんの拷問を楽しんでいる。そしてクローディアに初めて声を届けたのが今なのが怪しすぎる。計画した本人が知らないことばかりで私たちの体には何か仕掛けられている可能性が高い。罠があれば私たちを殺すためだと思っていたけれど、違うのかもしれない。星に貼り付けた精神が拷問を楽しみつつ誰かの影響でクローディアを殺すつもりでいる。その条件が整ったので声を届けた。だけど最低限の声しか届けていない。こういう場合は間違いなくクローディアの精神も影響を受けている。星に自由度の高い精神を貼り付けているので意思を持っているよ。」

「言いたいことは分かったよ。根拠はあるよね?」


 疑うのは当然だね。

 貼り付けられた精神が真面目に仕事していると洗脳しているのかもしれない。


「私の存在が証明になる。自由度の高い分身が個性を持ったのが私。クローディアの体がクリスの精神に乗っ取られているときに作られた元分身だよ。お母さんを守ることだけを考え生みの親に激怒しお母さんを侮辱した男を拷問した。そしてクローディアの体ではなくお母さんの体を選んだ。だけど私が元分身の話は先程もしていたよ。星に貼り付けた精神を経由して声を聞いていたのでしょ。自分が消される要因になる声は届けていない。それと星に貼り付けた精神は1つで別の意思を持つ精神を演技するように設定していたの?もう1つの意思はクローディアの拷問が大好きなクズだった。生みの親と似ているはずだよ。」

「嘘は言っていないね。声を意図して届けていないのも間違いない。そして演技する設定をしていない。自由度の高い精神は主に影響を与え予期せぬ新しい意思まで生み出すのかな…。リア、記憶を見るよ…。これは酷すぎる。魔獣に食べられて回復した回数が20万回…。洗脳を使い実験を悪化させている。ここまで好き勝手していた。ふーん…、貼り付けた精神に言い訳されるとは思わなかったよ。クローディアが大好きで愛しているみたい。消そうとしたら自己紹介してくれた。本心なら拷問から救うべきだね。不愉快なので消えなさい。魔石で拷問しているから安心して。これで体に仕掛けがあっても発動しないでしょ。それでクローディアの精神が拷問されない方法は何かな?」


 勝負にならない…。


 100年程度でこれほどの魔法技術を得られるとは思えない。本体で魔法を使ったのであればここまで差を感じることはなかったけれど、今はお母さんの体で魔法を使ったはず。私には何も分からなかったけれど、姉さんが唖然としているから…。


 できないことはなさそうなのに何故その方法が分からないの?

 洗脳されているのにそちらの方が気になるの?


「相当影響を受けているね。予想だと生命が誕生する可能性のある星を全て監視しているでしょ。それらの星に精神を貼り付けるだけだよ。生物の精神が作り変えられたらその生物が嫌悪している生物を殺す。宇宙最強ならできるでしょ?」

「それだけ!?星に精神を貼り付けるという行為を無意識に除外していた。しかも嫌悪感まである。完全に影響を受けているね…。だけど影響を受ける前から考えていたのだから分かるはず。何故私は分からないのかな?」


 この感じは知っているよ。それでも絶望的な力の差があるけれど…。

 そして実験場を作る前から計画されていた。既に手遅れな気がして背筋が寒くなる。


「星から影響を受けているだけではないみたいだね。体を持つクローディアが宇宙に何人いるのか知らないけれど、精神を入れ換えられた後に洗脳されている可能性がある。今の話し方は明らかにクローディアではないよ。クリスの精神に入れ換えられたクローディアに似ている。簡単に答えを求めるのがクローディアらしくない。それでは実験を生き抜けない。今すぐ精神を換えた方がいいよ!」

「何故焦っているの!?本気でまずいの!?今すぐそこに行くよ!」

「リア、これは終わったかも…。」


 星を消せる姉さんなら想像できる。今のクローディア同士が宇宙を舞台に殺し合いを始めたら戦いの余波で星が消えるかもしれない。星が残ったとしても生命体は確実に消える。

 クローディアは星を作ることもできそうだけれど、私たちには生き残る術がない…。


 絶望の下に更なる絶望が用意してあるとは思わなかった。

 その下には何があるの?


 すぐにクローディアがリビングに転移してきた。姉さんは宇宙一の美女に成長するみたい。これでは街を歩けない。服も凄く似合っている。見たことのない白のワンピースだけれど、体の線が綺麗に見える。そして上半身は花に見える模様が首から肩まで細かく切り抜かれていて肌が見えている。下半身は膝まであるスカートの太ももの左右が細かい網目模様になっていて肌が見えている。靴は黒のハイヒールで丁寧な細工がされている。花模様に見えるので服と合わせているのかもしれない。

 現実逃避しようとしているのかな…。


「姉さんの精神に仕掛けがあるのなら解除してから入れ換えて。そのくらいはいいでしょ?」

「私を殺す罠があると思っているのよね…。クロア、体を見せて。」

「ゆっくり見ていいよ。」

「クロアのお姉さんは凄い美女だねー。」


 お母さんがわざと軽い口調で話した。緊張を和らげようとしているのだと思う。だけど姉さんの姉と言ったのが引っかかる。

 クローディアは姉さんの隣に座り腕を持ち上げて魔法を使った。解析魔法だと思うけれど、半透明で正方形の魔力が姉さんの腕の上に浮かび上がり文字が書かれている。文字を読むこともできた…。

 だけど知らない言葉しかない。頭でも同じものが浮かび上がり文字が見えるけれど、同じように知らない言葉しかない。


「その魔力には何が書かれているの?読めるけれど、知らない言葉だけだよ。」

「これは全て病名。そして病原菌が体内に眠らされている。体に意思を持たせ病原菌を起こすことができるようにしている。特定の言葉を鍵にしているけれど、偶然耳にする言葉ではない…。それに死を望む苦しみが続くものだけ。確かに私を殺す罠の可能性が高い。苦しみに耐え続けると意識が朦朧となり体に支配される。体は研究者の命令に従い動くことすら許されない。これらは私の体で薬を作る実験でも使われた病原菌。私の血や臓器を使い万能薬を作ろうとした。薬で治せる病気から治せない病気まで数多の病気を経験したよ。自殺して終わらせたけれどね。クロアの記憶も見せて。私の考えていた状況と全く違う。」

「好きなだけ見ていいよ。クズ兄の記憶は消してあるけれどね。」


 簡単に話したけれど、森での拷問を耐え抜いた姉さんが自殺を選択する病気…。

 すぐに死を選択するのはあり得ない。精神を歪められ思考誘導され体を支配され監視されている状況で自分の体を作り実験を終わらせた。自殺だけでは同じ記憶と精神で実験が再開されてしまう。二度と実験させない方法を考えていた理由がたくさんありそう…。


 本人を見ると酷い実験を計画するようには見えない。

 計画外のことが起きているのは間違いない。


「お母さんとミュリエルの記憶を見せて。クズ兄について記憶を知る方法はある?」

「私の記憶にあるクロアの記憶で分かるよ。お母さんと呼ばれると懐かしく感じるよ。」

「どうぞ見てください。」


 気がつくとクローディアの分身がお母さんの後ろに立っていた。

 魔力を動かしたことすら感じることができない…。


 お母さんがクローディアに何か感じている。娘だと考えているのは間違いない。だけど懐かしく感じるというのはどういうことだろう。姉さんより大人のクローディアにお母さんと呼ばれたことがあるとは思えない。何か秘密がありそう…。

 クローディアが姉さんの記憶を見て何も言わないのは私の記憶と違いが少なく計画外であると確信したのだと思う。そして姉さんが消した記憶を確認したいのは知らなければならないと判断した。

 お母さんを自然にお母さんと呼んでいることにも理由がある気がする。クローディアが3人を見る目には優しさを感じる。拷問を計画した人の目には見えない。

 記憶を確認した後にお母さんとミュリエル姉さんの体と精神を確認している。クローディアの分身が震えているのは怒りのような気がした。


 突然泣いている女の子がリビングに現れた。見た目から幼いお母さんだと思う。私と4人の間くらいの身長なので6歳前後だと思う。

 その子を見てお母さんが慌てて席から立ちあがり駆け寄る。


「お母さん、フィオナを抱いてあげて。それと馬を馬房の近くに集めたので大人しくさせて入れてあげて。厩舎を拡張しておいたので問題なく全頭入れるよ。あとで動物も確認する。」

「すぐに行くよ。フィオナ、泣かないの。怖かったね。痛かったね。だけどもう大丈夫だよ!友達に会いに行こう。私の友達も紹介するからね。」


 いつの間にか分身を解除している。

 そして星から違う星に人と馬を移動させているのに何も分からない。


 救出を最優先にして馬まで救っているので敵がいるのは確定したと考えられる。

 お母さんは幼いフィオナを抱いて頭を撫でながら転移した。馬はお母さんを知らないけれど、お母さんが会いたい馬がいるのかもしれない。

 私の力ではないけれど、新しい目的を達成することができた。


「クロア、研究所に行くよ。ミュリエルとリアはお留守番ね。」

「分かりました。」

「はーい。」


 私の返事が聞こえたのかどうかは分からないけれど、姉さんとクローディアが研究所に転移した。ミュリエル姉さんと私が研究所に行っても手伝えることは何もないので仕方ない。

 これまでの魔法は全て自分の魔力だけしか使っていないような気がする。もしかしたら魔力の質が違うのかもしれない。戦うことにならなくてよかった…。

 敵ではない。私たちに演技する理由もないのだから。


 そしてクローディアの過去が悲しい…。


 苦しみから逃れるために努力して得た力であり本人に望みがあったわけではないと思う。初代以外は生まれた直後から拷問が始まり全てを終えた今でも同じ被害者が生まれないように努力を続けている。それなのに敵がいる。痛みを知らずに邪魔しているのであれば消えてほしい。痛みを知っているのであれば更なる痛みを知ってから消えてほしい。

 宇宙に太陽がいくつあるのか知らないけれど、陽の光が届く範囲を1つ監視するだけでも相当厳しいはず。他の太陽を探すことまではしていないと思う。そしてあれだけの力があれば全ての星を破壊した方が早い。だけどそれをしないのは生命を否定しているわけではないからだと思う。

 状況確認してから最初に行ったのが幼いお母さんと馬を救ったのがその証拠。どこかの星で自分と同じ精神が拷問されるのが嫌だ。その考えであれば姉さんも該当する。知らないうちに自分と同じ精神が酷い拷問を受けていた。

 敵もクローディアであり先程のクローディアが生み出した存在だと思うのでより許せない気がする。同じ記憶と精神を持っているにも関わらず痛みを知らないので勘違いする。生まれたときから強いので傲慢になる。増長して自分より強いクローディアが許せないのだと思う。赤ん坊の予想だけれど…。


「リオリナ、お母さんと幼い子が厩舎に来たと思うけれど、私はまだ行けそうにない。困ったことがあったら声をかけてね。絶対に行くから。」

「フィオナ様から大切なお話をされていると聞きました。私はリア様が来るのをお待ちしているだけです。気にしないでください。」


 とても気になるよ!

 明日はのんびり乗馬したい。


「ミュリエル姉さんは落ち着いているね。何かに気づいたの?」

「リアのお陰で死ぬ確率が下がりました。最悪な状況にも関わらず幼いお母さんと馬を救うことを優先しました。敵がいるのであれば自分を最善な状態に戻してから動くはずです。あの方は拷問の辛さを記憶ではなく痛みで知っています。それは監視者の中であの方だけが知っている可能性が高いのです。努力して手にした力ともらっただけの力の差は歴然です。軽い洗脳はできても迂闊に手は出せません。ただの勘ですがあの方が私たちに接触する機会を狙って病気をうつす計画なのだと思います。あの方がこの星にいる状態で私たちを病気にすれば裏切者が分かる気がします。ですから今は何もできないでしょう。力押しで勝てるのであればこのような方法は選びません。リアの予想で敵は騙されましたね。姉さんが交渉していたらお互いの利害を考えて話したはずです。姉さんもあの方の力を見て唖然としていましたので交渉を失敗していたと思います。ご褒美を欲しがったリアの交渉が成功したのです。これであの方に殺されたら仕方ありません。諦めましょう。」


 やはり過酷な環境を生き抜いてきた人は違う。私も同じことは考えていたけれど、ミュリエル姉さんには魔法の知識がなく姉さんの記憶もない。それでも会話の内容や人の反応など目と耳で知ることのできる情報は漏らさず分析までしている。

 姉さんも私が交渉を始めたら止めるのをやめた。状況判断が早く限られた選択肢の中で最善を選ぶことができる。それを実行するために落ち着いて話を聞くことが癖になっているのだと思う。

 今回は選択肢がなく死ぬ未来しかなかった。そして姉さんは本気で努力すれば戦えると考えてしまう。だけど相手も本気で努力し続けた姉さんであり知識量が桁違い。その知識を力に変えることができる。その知識は魔法だけに限らないので絶対に勝てない。


「3人は似ているよ。特に姉さんとミュリエル姉さんは考え方が似ている。育った環境が似ているからではないと思う。クローディアはお母さんとミュリエル姉さんを呼び慣れているように見えた。3人は家族でここに父親がいないのはお金に目が眩んで情報を売った。初代クローディアは家族との繋がりを完全に消した。だけど懸賞金がかけられるようになって売られた。馬鹿な父親も実験対象で母親と娘は人質にされた。世界を滅ぼす程の力がなかったクローディアは母親と妹を見捨てることができなかった。予想通り裏切られて結局は全員が実験対象にされた。一般家庭にクローディアが産まれたら圧倒的な力を得るしかない。クローディアが初代の気がして仕方ないよ。初代クローディアが世界を滅ぼせる力を持たずに産まれてきたら幸せになれる方法が分からない…。」

「関係は分かりませんがお母さんや姉さんと呼ぶことは凄く恥ずかしいと思っていましたが意外とそうでもありませんでした。私は孤児院に来てから幸せです。色々と嫌なこともありましたがお母さんと姉さんに悪いところがあったとは思いません。姉さんは男女関係なく虜にしてしまいますからね。今でもそうなのに更に美しくなるのですから大変です。実験場にいる人の反応が正常なのかは分かりませんけれど、普通の家庭に産まれていたら権力で奪われるか悪人に攫われると思います。権力者と犯罪組織は裏で繋がっていることも多いので似たようなものですね。今の生活が安定するのが一番幸せに近いと思います。」


 ミュリエル姉さんの一番の楽しみはマリベルだと思うけれど、本当に欲がない。そういう意味でも姉さんと似ている。お母さんも欲がない。だけどアディとローアと毎晩話し一緒に眠るのが幸せだったはずなのに大丈夫なのかな…。

 お母さんは口にしなかったけれど、幼い頃の自分が拷問されているのであれば救いたいと思ったはず。幼い自分を馬と話せるようにしてあげて馬を名付けて楽しんでいると思う。お母さんならフィディーも一緒に楽しませてあげていると思う。リオリナにも話してくれているし気配りが上手い。


 姉さんとクローディアが帰ってきた。全ての体を作り直してきたのだと思う。

 そして2人とも先程と同じ席に座った。


「遅くなったね。精神も戻ったし全ての体を作り直してきたよ。それではせっかく来たことだし何か聞きたいことがあれば話してあげる。交渉人はリアだったね。何かある?」

「クローディアは初代なの?それと監視させている人が全員裏切っていた場合でも勝てるの?」


 私の聞きたいことを聞くのだから実験については別にいい。


「本当に予想外のことばかり話すね。私が初代だよ。あれ…、驚かないね。それと監視していると言っても生物が生まれる可能性のある星だけを見させているので体を与えたのは3人。私に許可なく体を増やしたら死ぬように仕掛けているけれど、見破られていたら面倒だね。各個撃破なら可能だけれど、3人が結託して集結していたら厳しい。だから勝率は5割くらいかな。」

「それなら長女として姉さんを鍛えて。私はまだ鍛えてもらえる段階にはいないので後になるけれど、クローディアなら必勝にしないと駄目だよ。どちらにしろ戦いに巻き込まれて死ぬのだから徹底的に巻き込んで。戦いの余波で死ぬくらいなら戦いたい。クローディア姉さん、長女だと姉さんになって姉さんがクロア姉さんになるね。ここならのんびり乗馬しながら妹を鍛えられる最高の環境だよ。500年か1000年くらい鍛えたら戦力にならないかな?足りないのなら戦力になるまで鍛え続けるよ。お母さんも本気で鍛える可能性がある。家族と一緒に暮らして一緒に戦いたいでしょ?」


 困っている感じがする。迷惑だったのかな…。


「突然…、何を言っているの?同情したの?」

「私はお母さんのために戦いたいの。初代クローディアが世界を滅ぼす力を持たずに産まれたのは残酷だと思ったけれど、同情はしていない。まだ生きていて終わっていないから。死ぬのなら家族と一緒に死んだ方がいいよ。戦うのであれば家族と一緒に戦うべきだよ。1人の時間は終わりでいいと思うけれど、この雰囲気は私が説教されて泣かされる感じかな…。」


 沈黙はやめて、あとが本気で怖い。説教の前触れにしか感じないよ。


「赤ちゃんが長女を勝手に決めてもいいの?」

「お母さんがクロア姉さんの姉だと言っていたでしょ。お母さんは場の空気を和らげるように軽く話したけれど、クロア姉さんの姉だと言ったので姉だよ。あとは姉さんが家族と一緒に暮らすのか1人で戦うのか決めるだけ。私は腐った世界に復讐したいと思っていた。そこに敵のクローディアが追加されただけだよ。」


 何を考えているのかな?思考把握しても同じだよ。お母さんと一緒に長く過ごせるし勝てば死ぬまで一緒に暮らせるという目的はあるけれど、弱いまま自惚れて戦いに行くほど馬鹿ではない。

 敵がお母さんの拷問を計画したのであれば私が復讐する理由になる。


「警戒心が足りないよ。」

「警戒しても無意味。姉さんの方がよく分かるでしょ。家族を警戒するのは息苦しいだけだよ。それに怖くもない。怖いと思う人を家族に誘わない。やはりお母さんに確認した方がいいのかな。」


 すぐに返事してもらえると思ったけれど、予定と違う。強くしてほしいというのが欲張りすぎなのかな。それか3人に過酷な日々を過ごさせてしまったことを気にしているのかも。だけど3人とも気にしていないという事で一致している。星に貼り付けられた精神がその部分を届けていなくても全員の記憶を見たので分かっているはず。洗脳で無意識に除外されていなければね…。


「姉さん、何も察することができないので言ってよ。迷っているの?疑っているの?」

「何も聞かないの?私の過去を予想して家族に誘っているのではないの?」


 絶対に分かっている。それなのに質問してきたという事はお母さんが帰ってくるのを待っているのかもしれない。だけどお母さんの楽しんでいる時間を奪いたくないので質問に答えよう。


「過去について私から聞くことはないよ。共感できないし理解できるはずがない。クロア姉さんの過去は勉強のために見なさいと言われたけれど、お母さんとミュリエル姉さんの過去はほとんど知らない。拷問の痛みすら知らない私が実験について聞くのは厚かましいよ。そして今の私では姉さんの過去に触れられる器ではない。心を軽くすることも受け止めることも言葉を返すこともできない。最初に初代か確認したのは今後は初代について会話しないためだよ。お母さんを信じていて存在意義なの。だからお母さんの言葉を聞いて誘っているだけ。だけど会話していて過去を考えることはあるよ。それは考える癖をつけるための勉強でもあり私なりに理由を考えているの。過去を知りたいからではないよ。全て知っていて聞いたのは何故なの?専属馬のリオリナは特別だよ。私に命を預けているので相応しい主にならなければならない。」

「興味本位で聞けばいいのに赤ちゃんらしくないことを言うね。お母さんが一番なのは知っているよ。だけど隠している本音は言わなくていいの?」


 本音を知らないのは4人だけ。クローディアを聞きすぎて耳に胼胝ができそう。

 強くて聡明で美女なのは認めるけれど、一番はお母さんで決定している。


「言わなくても気づいていると思う。誰も彼もクローディアで煩い。お母さんが宇宙一だと私が証明するよ。だから手伝って!」

「無敵赤ちゃんだね。2人は知っているの?」

「知っているよ。話題はクローディアの実験ばかり。世界の女王はクローディアしかいない。本当は精神もお母さんと一緒にしたいけれど、お母さんが拒否している。濁るかもしれないからとね。強くなる方法も聞かれたよ。」

「私も知っています。交渉することにしたのもお母さんを救うためですからね。3歳のクローディア4人を殺さなかった本当の理由はお母さんが悲しむからです。痛みを知らないと言っていますが自分で腕を切断して3歳児の顔を血塗れにしました。そして今朝からクロア姉さんを煽り続けている無敵赤ちゃんです。」


 何も隠していないのだから知らない方がおかしいよ。

 クロア姉さんを煽っているのにも理由がある。


「クローディア大好きクズ精神から届いていないね。クロア、どのような感じで煽られたの?」

「洗脳されていたのに予想と推測が当たりすぎていたことをおかしいと思わない。大枠は決められていて細かな設定は私が考える人形劇。その他にも色々と言われたけれど、最後に『クローディアは全員馬鹿という結論でいいよね?』と締め括られた。今日はリアの言葉を一切否定できないので拷問だよ。ほとんど当たっていたのとリアが話しているときにも洗脳されていたからね。」

「それでは馬鹿なクローディアに聞きたいことはもうないの?」

「貼り付けた精神に命を数値化して削る魔法を覚えさせたの?あれは駄目だと思う。だけど演出なのか本物なのか分からない。」


 お母さんが宇宙一だと思っている私でも意味なくクロア姉さんを煽ったりはしない。クローディアを煽れば体が私を殺すためにクロア姉さんを動かそうとする。それに抗えるのか確認しておきたかった。当然理解しているので気にしない。


 この機会に疑問を解消させてもらう。


「何それ!?記憶を見たはずなのに覚えていない。クロア、記憶を見せて。どのような状態だったのか知りたい。」

「いいよ。最近の記憶だからすぐに見つかると思う。私の記憶を見たあとにリアの記憶を見ればどのような状態だったのかよく分かる。」

「2人を見続けていたので確かにそうだね。」


 この反応では本物か演出なのかは分からない。

 命を削る魔法を使ったのか確認したいのかもしれないから。


「クロア、このとき何が起きていたのか分かる?」

「心臓の鼓動が速すぎたのと呼吸がうまくできなかった。その影響か分からないけれど、体内が燃えていると思うほど熱かった。そのときに知らない文字の羅列が頭の中を駆け抜けていったよ。」


 魔法式に使う記号文字だと思うけれど、クロア姉さんの頭を通すという事は星に貼り付けられた精神はクロア姉さんの頭から情報を得ることができた。これでは簡単にクロア姉さんの人質が誰なのかが分かる。何も隠すことができず裏に隠れている敵の気分次第で誰でも殺すことができた。

 姉さんが自宅にまで来てくれている状況は相当に運が良い。


「貼り付けた精神に記憶する機能は与えていない。精神を貼り換え記憶領域まで与えたので新しい意思が生まれた可能性がある。貼り付けた精神と念話を繋いだ状態だと考えて。そしてあなたの心臓の動く速さを魔法で操作して体内の破損個所を貼り付けた精神に送り続けていたと思われる。全て嘘で拷問を楽しんでいたみたいだし私への当て付けだね。他に気になることはある?」

「細胞の提供が怪しい。人型になれて魔法を使えるドラゴンの細胞は手に入ったの?世界に提供可能な細胞の一覧を提示させるべきだし生態情報を知ることができた方がいい。実験場の本屋で魔獣の情報が手に入るとは思えないし敵の研究所の情報は嘘の可能性がある。そして細胞を見ただけでは何か分からない気がする。多くの細胞を提供してもらったのは情報隠蔽のために行ったと思うけれど、その元となる情報はどこで手に入れたの?私が研究所に行かなかったのは貼り付けられた精神に警戒させないためだけれど、お母さんとクロア姉さんは研究所で何していたの?それとこの世界を支配する生物の細胞が何か姉さんに確認してもらった?」

「大方は予想できているでしょ。人形劇の台本を読まされていただけで登場する動物について知っていたつもりになっていたけれど、実はクローディアだけの劇だったの。だから提供された全ての細胞がクローディアだった。宇宙最強で人型になれて魔法も使えるドラゴンの細胞を姉さんが用意してくれたよ。そして姉さんを殺す罠に利用されたの。」


 ミュリエル姉さんの予想通り。会話に参加して意見を言わないのは本当に勿体ない。間違いなく過去が影響していると思うけれど、私と2人のときには話せるのだからあと一歩だと思う。


「リアがうんざりする劇だね。それで他にはあるかな?」

「当時はその服でも男性が寄って来なかったの?体の線が見えるような服で激しく動いたら破れるよ。ハイヒールも走れないでしょ。それと本当はいつ星に声をかけられる設定だったの?そして何するつもりだったの?」


 戦うつもりで交渉していたらどのような結末になったのかを知りたい。


「着てみたかった服を着ているだけよ。私の自己満足。当時の私には懸賞金がかけられていた。居場所を特定するだけで家が建つ。捕まえたら大富豪の仲間入り。それで真面目な質問についてだけれど、私と同じ精神になったときに一度目、3人で暮らし始めたときに二度目の声がかかるはずだった。二度目の声の後に痛みのない死を望むのか戦いを望むのか別の星で暮らすのかの3択を聞きにくる予定だった。3人のクローディアは生命のいる星を拠点としていて好きなように活動させている。私の拠点は太陽。時間の感覚を消した仮想体で鍛錬しながら待っていた。計画していた内容とは全く違っていたけれどね。それではリアに問題。他のクローディアが知らない私の秘密は何でしょうか?」

「体が2つある。記憶を共有させている。だからもう1つの体は太陽で封印中。ここに来ている本体は3人と繋がっていないので何が起きているのか分からない。だから敵は考えるしかない。洗脳しすぎてしまったのか実験場のクローディアが強くなりすぎているのか等々。太陽の中で起きて眠った演技をさせてから2つの星に貼り付けてある精神を同時に消した。クローディアは絶対に勝てる戦いしかしない。そして太陽で眠っている体に別の体が近づいたら消滅するようにしている。他の体に近づいても消滅する。更に他の体は弱体化して作ってある。太陽の中で封印中の体もね。時間の感覚を消せるのであれば極小の仮想体に監視させている。自分のもう1つの体が裏切っている可能性もあるからね。計画通りに進めるのも難しいのに計画を大幅に変えたら計画外のことも大きくなると予想して対策を考えておかないと駄目だね。」


 どれだけの人が住んでいたのか知らないけれど、それを許す世界は滅ぼしていいと思う。嘘の理由で懸賞金がかけられそれが事実か確かめもせずに世界は許した。権力者や影響力のある人にお金を握らせて情報操作していたと思う。だけど発展した世界なら情報の真偽を確かめることができたと思う。クローディアについて調べようとした人は口封じされてきたのかもしれないけれど…。


 綺麗な街で綺麗な服を着て生活しても人は綺麗になれないみたい。


 戦いを望めば100年は確保できたのかもしれないけれど、姉さんが自殺した病気になるのが確定する。死ねなかった場合は自殺も考えなければならない。そして魔法技術を高めても細胞に仕掛けれているものが病原菌だとは分からない。それに人が死ぬ方法でしか病原菌を消せない可能性が高い。


 病原菌だと知っていてこの状態なのだから知らなければ話にならない。


「怖っ!リアが交渉した理由は?」

「クロア姉さんは努力すれば戦えると考えていると思った。だけど私はあらゆる分野の研究結果や技術を知っている相手に勝てるはずがないと考えていた。情報は1人の努力で手に入らないから。そのため戦いを前提として交渉されたら困る。魔法技術をどれだけ高めても相手が魔法を使うとは限らない。それに洗脳されていたので交渉も利用される可能性がある。あとはお母さんに怒られるけれど、最初に死ぬのは私でいい。私が勝手に話し始めて死ぬ日を早めたと考えているよ。とにかくお母さんに長生きしてほしいので最も計画外だと思われる状況にしたかった。家族のことも考えたよ。お母さんが大切にしているからね。」


 何かに違和感を覚えて黙っていてもお母さんには気づかれる。問い詰められて話すことになる。

 そして戦うことになれば楽に死ねる可能性は低く拷問のような日々を過ごすことになると考えていた。拷問大好きな敵が簡単に殺してくれるとは思えない。だからそれだけは避けたかった…。


「家族で一番賢いのはリアなの?」

「それは違うよ。洗脳されていなければ間違いなくお母さん。戦いに関してはクロア姉さん。情報の分析はミュリエル姉さん。2人洗脳されているしミュリエル姉さんは話すのではなく聞いていて最適解を見つけるのが得意なの。そうすると私しか残っていない。だから家族に誘う話とかお母さんならすぐに終わる。お母さんの人や動物を見る目は限界突破しているからね。」


 玄関のドアが真正面に見えるのでお母さんが帰ってきたことがすぐに分かる。抱っこされて帰ってきたのは幼いお母さん。帰りは牛舎や鶏舎を見ながら歩いてきたのかな。もしくはゆっくり帰りたいと幼いお母さんが甘えたのかもしれない。

 私の役目はここまで。あとはお母さんに引き継いで終わり。


 玄関のドアを開けてリビングテーブルの近くまで歩いてきたけれど、立ち止まった。

 全員が説教される気がしてきた…。


「まだ話していたの?何が決まらないの?」

「姉さんを長女として家族に誘っているけれど、返事を濁され続けているよ。」

「無敵赤ちゃんは流石だね。完全に私が悪者だよ。」


 お母さんには何か気持ちがある。だから姉さんと話してくれるのは間違いない。


「クロアの姉だから私の娘で決定だよ。家族に家族になるのか聞いていたので終わらないの。少しは成長したけれど、まだ赤ちゃんだね。それに限界でしょ。昼食後は布団部屋で寝なさい。リオリナには話しておいたから大丈夫。クロアは反省して午後からクローディアと乗馬しながら話しなさい。ついでに専属馬を選んでもらわないとね。ミュリエルも自分の意見を言いなさい。ここでは間違えても私に説教されるだけよ。あなたも反省して3人で午後から乗馬しなさい。クローディア、私は怒っていないし恨んでいないし後悔していない。今から人生を始めなさい。背中を押されないと歩けないの?靴が悪いのなら履き替えなさい。そして長女の敵は家族の敵よ。クロアとリアは鍛えてもらいなさい。リアはまだ早い気がするけれど、クロアならすぐに伸びる。あとこの子は愛称フィーだよ。怖がっているので話せるようになるまで待ってあげて。今からクロアとミュリエルは昼食の準備を始めて。」

「分かったよ。」

「分かりました。」


 姉が席を立ち料理部屋に向かったのを見届けて机に突っ伏した。

 手を重ねてその上に顎を乗せお母さんを見ている。安心して疲れが押し寄せてきたのか少し視界がぼやけている。だけどお母さんの話は勉強になると思うので聞いておきたい。


 何故か姉さんも慌てて席を立った…。

 座ったままでは叱られると思ったのかな。


「お…、お母さん、何を言っているの?拷問した私を許してくれるの?」

「終わったことを気にしてはいないよ。それにあなたの計画ではない。だけど計画した敵は必ず潰しなさい。クロアとリアを鍛えて勝ちなさい。リアも私の復讐相手だから本気になる。クローディア、もう一度言うけれど、私は怒っていないし恨んでいないし後悔していない。あなたにしか言ったことがないよ。それとも怒ってほしかったの?そうね…、親でもクズだと気づいていたのであれば殺してから家出しなさい。実験に関与している人の拷問は終えているでしょ。だから人生を始めなさいと言っているの。清算を終えたのだから前に進みなさい。敵は残っているみたいだけれど、焦る必要はないよ。クローディア、母が娘のために残した言葉は消えない。母が娘を間違えるはずがない。だけど特別扱いはしない。全員家族なの。妹を平等に可愛がってあげて。そしてあなたも体を作り直しなさい。母より先に死ぬつもりの娘は許さないよ。料理が作れるのなら手伝ってあげて。他にも言いたいことがあるの?長い話ならお風呂上りに聞いてあげる。」


 もしかして私も怒られた?

 私が話していた理由を見抜かれた気がする。


 背中しか見えないけれど、姉さんが動揺しているのが分かる。お母さんが余りにもおかしいので普通の反応だと思う。お母さんは当時を知っていて現状も知っていて話しているようにしか思えない。

 当時の母が娘のために残した言葉を話しているのだとしたら理解できない。


 限界突破して人の枠は超えていると思っていたけれど…。


「お母さんに追い出してほしいと思っているの…。」

「家出した娘を追い出す母はいないよ。それにあなたが悪いわけでもないでしょ。クローディア、あなたが家出したので母と妹が死んだの。当時を後悔しているのなら残って守りなさい。そのために強くなったのでしょ。繋がりを消して遠くに行っても守れないと知ったでしょ。また同じ失敗するの?娘が家出した時点で母は幸せになれない。娘が犠牲になることで幸せを感じるのは母ではない。あなたの選択肢は2つ。また家出するのか帰宅する。それと家出して帰ってきたのに一言もないの?」


 当時のお母さんが乗り移っているように感じる。予想して話しているとは思えない。そして家出した娘を叱る母になっている。これには姉さんも動揺するしかない。当時の行動で説教され予定した行動まで説教されている。


 考えても答えが出せずに疲労で眠りそう。

 お母さんの話を聞くことに集中した方がいい。


「ただいま…。昔の私は守れなかったよ…。」

「お帰りなさい。それは違うよ。一緒に行動するだけで守れた。手の届く範囲なら守れた。世間の評判、妹の幸せ、自分だけで考え勝手に家出した。だけど襲ってくる敵を返り討ちにし続けるだけで世界は恐怖した。それを知っていてもあなたや妹を幸せにしたいと本気で歩み寄ろうとする男性を見極めるだけでよかった。敵がいなければ別にいいけれど、大切なら自分の手で守りなさい。強くなっても昔と変わっていないね。代わりをクロアに任せ家族が幸せに暮らしているのを見守るつもりだったのでしょ。そのために何人の家族が殺されたの。自分は不幸を呼ぶと決めつけ人に任せた結果だよ。家出娘、あなたはどうしたいの?」


 姉さんに殺す気はなく家族が幸せに暮らしているのを見たかった。だけど姉さんが私たちをどのようにするのか話していたときにお母さんは自宅にいない。お母さんには姉さんの考えていることがお見通しみたいで説教される。姉さんも何人の家族が殺されたのかは知らないはず。だけどそのことを説教できるのはお母さんだけだと思う。姉さんの当時と過去と未来を説教している。逃げ道がない…。

 お母さんは家出するのか帰宅するのか決めなさいと言っているけれど、家出した結果で説教しているのでまた家出するとは言えない。反抗期の赤ん坊なら言えるけれど、あとが怖い。


「許されるのなら…、残りたいよ…。」

「はい、許した。クロアたちが入った部屋が料理部屋だから全て確認してみて。食事に病原菌が付着していたら体を新しくしても意味ないでしょ。余裕があれば料理も手伝って。」


 姉さんの重い決断を軽い返事で終わらせた。お母さんが強すぎる。

 家出するのか帰宅するのか聞いているのに許されたいと言われたからだと思うけれど、姉さんが可哀想になってきた。やはり宇宙一は違うね!


「私の一大決心なのに返事が軽いよ…。」

「リアは皆に許せるのか確認してから交渉を始めたのに聞いていないの?早く行きなさい。」


 確認したのは間違いないけれど、それをここで持ち出すとは思わなかったよ。


「お母さんと交渉していたら公開説教だよ。リアの言う通りだね。」


 姉さんの表情は見えないけれど、喜んでいる気がする。

 話し終えたあと料理部屋に転移した。


 誰が聞いても家出娘と母の会話で当時の記憶が残っていると錯覚してしまう。お母さんは姉さんの母だと全く疑っていない。そして話していた内容が全く理解できない。何一つ情報がないはずなのに何故あの言葉が出てくるのかが分からない…。


「リア、お疲れ様。体を起こすのも大変そうね…。」

「お母さんが姉さんの話し相手になってくれた途端に力が入らなくなったよ。勉強のために耳は傾けていたけれど、姉さんの望む言葉を話していたの?それとも言葉が自然と込み上げてきたの?姉さんの話し方から当時を思い出しているように感じたけれど、脳や精神に言葉が残っていたの?」


 上半身を起こして椅子にもたれ掛かりたいけれど、力が入らない。この姿勢でお母さんと会話するのは確実に怒られると思うけれど、今だけは許してくれるみたい。


「一目で娘だと確信したよ。クロアを見たときには何も感じなかったけれど、母として覚悟を持って見ていたら違ったのかもしれないね。恨んでいない等の言葉は本人に言えずに亡くなった母の思いが体に刻まれている気がしたよ。何故言っているのか分からなかったからね。それ以外は母として感じるままに言いたいことを言ったよ。そしてリアが話し続けていることに腹が立ったのでクロアとミュリエルは説教決定。昨晩の出来事で疲れていて更に夜遅くまで起きていたので寝不足でしょ。早朝に起きて朝食作ってから話し続けているのに姉は何しているのと思ったからね。何を話していたの?」

「家族に誘った理由や私が交渉していた理由を聞かれて答えていたよ。分かっているのに質問されている感じがして余計に疲れた。私の記憶を見ているし思考把握も感情把握もしているはずだからね。返事だけしか求めていないのに会話を延ばされ続けたよ。」


 お母さんが言葉の出どころを理解できずに話していたのは超常現象だね。姉さんの当時の母には特殊能力があったと言われた方が納得できる。言いたいことを言っただけで説教になるのだから…。

 姉さんはお母さんの記憶を見ているので当時の記憶がないことを知っている。それなのに全く反論していないのでお母さんの話した内容が全て事実であることを証明している。


 子を持つ母が凄いのかお母さんが凄いのかは分からない。

 お母さんも理解していないのだから考えなくて正解。


「交渉をリアがした理由でクロアをボコボコにした?」

「自分が感じたことを話したよ。クロア姉さんは努力すれば戦えると考えていると思った。私は何しても絶対に勝てないと考えていた。知識量の差は魔法技術を高めても埋まらない。クロア姉さんは戦うことを前提に交渉すると思ったので私が交渉することにしたよ。命を削ることについては嘘みたい。それと細胞の提供も嘘みたい。星に貼り付けられた精神が使った魔法も嘘みたい。」


 星に貼り付けられた精神に洗脳されても気づくことができないのに交渉するのは危険だと思った。そして研究所に行ったお母さんとクロア姉さんは星が敵だと認識した後でも確認作業をしていない。

 姉さんは星に洗脳されていたので厳しい。お母さんも研究所から帰ってきたときに違和感を覚えていない。ミュリエル姉さんは見知らぬ人と話すのが苦手だと思うので私しか残らない。

 それに交渉していたつもりはない。敵であればこちらが強くなる時間を与える理由がない。望みを叶える理由もない。だから確認することしかできないと考えていた。


「クロアとミュリエルはリアを邪魔しない方がいいと考えたのだろうね。体を乗っ取られていたときの会話も覚えているよ。クローディアはリアがご褒美を望んでその内容が余りにも予想外で驚いたと思うよ。」

「私の本音を言っただけだよ。ところでフィーは眠っているの?それとアディとローアはクローディアの細胞にした方がまとまりそうだけれど、お母さんの細胞に変えるの?」


 フィーは眠っているのか分からないけれど、お母さんに抱っこされている。顔が左を向いているけれど、目を閉じている。相手が誰でもお母さんの一番近くを譲るつもりはないと訴えている気がする。これならお母さんは大丈夫。


「起きています。だけどここは譲りません。」

「フィーも今日からお母さんの娘だね。フィーから奪うつもりはないよ。だから目を開けて。お母さんの娘のオフィーリア。姉だからリア姉でもリア姉ちゃんでも好きなように呼んで。これからよろしくね。それとフィーは着替えた方がいい。その服は処分するべきだよ。私の服でも孤児院のために買った服でもいいからさ。それにお母さんは髪と目の色を戻してもいいと思う。ミュリエル姉さんが赤茶色の髪で緑色の目だからね。フィーも緑色の目が似合いそう。あとは人形と魔力拡散器を確認しておいた方がいいよ。」


 予想通り独占するつもりだね。フィーを見ると純白のドレスを着ている。何故白を着ているのか、何故袖がないのか、余り考えない方がいいと思うけれど、惨殺しに行きたい。


「なるほど…。私のお姉ちゃんで間違いないようですね。呼び方は考えておきます。私がこの服を嫌いだとよく分かりましたね。流石お姉ちゃんです。」

「フィーはクローディアが確認したので大丈夫。4人についてと髪や目の色については昼食後に話すよ。フィーを着替えさせてくるね。」


 フィーは私の見た目ではなく内面を見た気がした。

 幼いのにお母さんらしさは既にあるみたい。これは負けられないね。


 フィーを抱っこしたお母さんが自室に入っていく姿を見届けた。

 本当によかった…。

リアの独擅場でしたがお母さんには勝てませんでした。

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