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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第77話 特別

 笑いすぎたからだと思うけれど、末っ子の視線が突き刺さる。あと少しでアディかローアが意見を求めてくるに違いない。私の考えが正しいのか馬と遊ぶための条件を詳しく知らないので予想でしかないけれど、お母さんが末っ子に教えたいことが何なのかは分かる。


「リア姉ちゃん、作戦あるんだよね?」


 私に意見がないと馬鹿にしているように挑戦的な上目遣いでアディが口を開いた。急激に助言する気が失せたけれど、この状況で何も言わないのは姉としてどうかと思うので気を取り直す。それに作戦会議を馬鹿にされたと思って怒っているだけなのかもしれない。


「手加減を覚えるのは大切なことだと思うけれど、遊ぶときに手加減するのは駄目だよ。手加減して遊んでも楽しくないでしょ。それに参加した人と馬が楽しく遊べなければ意味がない。馬は手加減されていることに気づいて面白くないと思うよ。まずは簡単な遊びから実施するべき。仲良くなれば馬の意見を聞くことができるようになり一緒に遊ぶ内容を考えられる。簡単な遊びでも手加減が必要だと言いたいのであれば、既にお母さんと姉さんに手伝ってもらっている状態なのに遊ぶときだけは禁止なの?全力で遊べるように手伝ってもらえばいいでしょ。」

「簡単な遊びは分かるよ。だけど全力を出して遊ぶためにクロア姉ちゃんの力を借りてもいいの?それは反則でしょ。具体的なことを言わないのは何も考えずに笑ったことを誤魔化すためだよね。」


 乗馬できないことで意固地になっているのかもしれないけれど、攻撃的に話すのは何故だろう。笑ったことが原因だとは思えない雰囲気を4人が出しているのも気になる…。

 冷静に考えてみても一緒に暮らし始めてから1週間も経っておらず顔を合わせている時間も少ない。そしてお母さんや姉さんと末っ子が楽しむ時間を奪ったりしていない。リオリナの背で眠っているのだから会話した回数も指で数えられる。

 作戦会議にミュリエル姉さんを巻き込んだことに怒っているとは思えないので別の理由があるのかもしれないけれど、それが何かは分からない。

 私に反感を持っているのであればお母さんが私か末っ子を叱る。既に末っ子が叱られていて腹いせに反感を強めているのかもしれない。だけど切っ掛けになるような出来事すら思い浮かばない。


 お母さんが私に何も言わないので私の存在に反感を持っていると思う。

 末っ子が私の存在を否定しているとお母さんが私に言うはずがない…。


 ミュリエル姉さんも家族になったばかりなのだから家族が増えたことは関係ない。そのため私に反感を持っている理由は嫉妬だとしか思えない。クローディアの自尊心が高いのは過去のディアを見ればよく分かる。そして嫉妬は憧れの裏返しだとも考えられる。

 簡単に考えると末っ子は私に嫉妬したことが許せない。姉さん並みに成長した精神であれば問題ないのかもしれないけれど、末っ子はまだ幼く自分の感情を認めることができない。お母さんが叱っても私に嫉妬していることや憧れていることを認めないのかもしれない。

 反感を持たれていること以外は予想を積み重ねているだけなのに余り外れていないと思うのは現状を見ているお母さんと姉さんが動かないから。2人はクローディアの嫉妬がどのようなものなのか知りたいのかもしれない。その前提で4人を挑発する。予想が外れていれば止められるので問題ない。


「なるほどね。アディは私が羨ましいのでしょ。お母さんと同じ細胞で作られた体を持つ私が羨ましくて仕方ない。だけど自分の感情を認めたくない。だから感情を抑えるために反感を持っている。姉さんに体を作り直してほしいと頼めば冷静になれるよ。それで少しは落ち着いて話せるでしょ。」

「勝手に決めつけないで。クローディアは世界最高の体だよ!それなのに羨ましいと思うはずがないでしょ。話をすり替えて逃げるんだね。」


 世界最高の体だと本気で思っている…。

 実験されてきたことを知っているのに世界最高だと言うのは違和感を覚える。


「世界最高なのは実験のお陰でしょ。精神と体を改良されてきたことが嬉しいみたいだね。姉さんが女王なのは関係ないよ。姉さんとアディの体は違う。実験の順番が違うのだから当然だよね。」

「実験で世界最高の精神と体にされてしまった私は被害者なの。過程がどうであれ世界最高なのは事実でしょ。だから羨ましくはないよ。」


 アディとローアは実験開始前に保護されたという事は知っていても実験の内容までは知らない。だから実験されていたらどのような目に遭っていたのかを教えてあげる。だけど世界最高を主張するアディに残りの末っ子が反応していたのが気になる…。


「アディは実験の内容を知らないよね。拷問から始まる実験でアディの精神は確実に砕けるよ。精神を持つ自己回復が拷問に耐えられる精神を作り続けるのでアディは確実に消える。残念ながら世界最高の精神は実験を生き抜いた後でなければ言えない。だけど世界最高の精神と体なら拷問されている記憶を見るのは余裕でしょ。」

「それで脅しているつもりなの?拷問の記憶を見るのは余裕だよ。それに私の精神が砕けると勝手に決めないで。私が実験されたとしても今のまま生き抜くからね。」


 自尊心の高さと未熟さが合わさると話にならない。2人は未だに見ているだけなので記憶を消すつもりでいる気がする。それならば今から4人が喧嘩してもいいよね。


「4人の順位を決めてよ。世界最高は1人でしょ。」


 アディと3人は私に向けていた視線を戻した。

 作戦会議とは違い明らかに敵視している…。


「話し合うまでもないよ。私が世界最高だからね!」

「挑発に乗せられせているアディが世界最高のはずがありません。私です!」

「拷問の痛みを知らない2人が何を言っているの。私のことだよ!」

「実験を知っている私が世界最高です!」


 4人が世界最高を主張し言い争いを始めた。誰も世界最高を譲るつもりがない。この状態が続くのであれば女王になった後でも殺し合いを続けていたことに納得できるけれど、姉さん以外の女王は精神が未熟だったとは思えない。それよりも姉さんが特別だと考えた方がいい。

 姉さんは消されたはずの精神であり自分がクローディアになることを拒否した経験がある。だから自分が世界最高のクローディアだとは考えていないはず。精神をクローディアに換えられても意思までは変わらない。世界最高だという感情を持ってしまったクローディアに問題があると思われる。

 アディとローアは私を認めたくなくて自分を世界最高だと考えた可能性がある。もしくは実験対象だったという事実が世界最高だと思わせるのかもしれない。だけど今の考えでは違和感が消えない。答えには近いと思うけれど、何かを見落としている気がする…。


「戦えば分かります。」


 言い争いを続ける末っ子の誰かが言った…。

 4人が同時に席を立ちリビングテーブルから玄関付近まで歩いて移動した。それなりの広さがあるけれど、普通の3歳児の喧嘩ではないので4人が戦えば悲惨なことになる。

 末っ子が口喧嘩しているのを見ているだけのつもりでいたのに戦うことを決断したのは余りにも予想外。戦った経験がなく激痛を知っているのはディアのみ。そしてロディ以外は戦いを見たことすらないのに戦うつもりでいる。

 手加減を覚える方法を考えていたのだから本気で殴り合えばどのようなことになるのかが分かるはずなのに戦いを決断したことがとても怖い…。


 絶対に止めなければならないという焦燥感に駆られる。


≪転移≫

4人の近くに移動した


「順位を見ていてあげる。最後まで立っていた1人が世界最高でいいよね?」


 4人がどのような戦いをするつもりなのかを確認してみた。

 必要ないと分かっているのに認めたくない…。


「3人は死ぬから生きている1人だよ!」

「その通りだね。それ以外に戦う理由はありません。」

「戦うのは嫌だけれど、言葉では分かってくれないから。」

「最高の大人である私が世界最高です!」


 同じ歳の家族に殺意を向けているので分かっていた…。

 3歳児が私の一言で殺し合いを決断しているのは異常だとしか思えない。だけど4人は残りの3人が世界最高だと考えていると今知ったとは思えない。アディとローアは自分の感情を否定するために世界最高の体だとお母さんに言っている気がする。

 戦うという言葉が切っ掛けになったのだと思うけれど、それが今なのは不自然すぎる。お母さんの前でも殺し合いをしようとしたのであれば納得できる。過去のアディとローアがそうだったようにクローディアは勝てない相手とは戦うつもりがない。お母さんと姉さんに脅されて勝てないと分かったので大人しくしていた。今は2人が見ていることさえ忘れてしまっているので戦うつもりでいる。

 私の予想が正しければ、私に勝てないと分かると4人は戦うつもりがなくなる。あとでお母さんに聞けば詳細が分かる。だけど殺し合いを止めようとする嫉妬の対象を4人はどのように思うのだろう…。


「4人は家族なのだから仲良くしないと駄目だよ。」

「最初に敵を排除してから始めよう。」

「そうだね。殺すなら敵からの方がいいですから。」

「目障りなので死んでください。」

「敵は速やかに排除するべきです!」


 敵だと思われているのは悲しい…。

 殺意を向けてくる4人に少しだけ戦いを教えてあげる。


魔法全消去マジックオールデリート

4人の保持している魔法を全て消した


「殺し合いを手伝ってあげる。」


≪威圧≫

4人がうつ伏せになり動けなくなっている


風魔法(エアロカット)

自分の右腕を切断した


 私の腕から流れ出る血が床を赤く染めていく。

 そのまま4人の元まで歩き流れ出る血を4人の頭にかけていった。


 顔が血塗れになるまで…。


高位回復(ハイヒール)

切断した右腕を治した


「殺し合いを手伝ってあげると言ったでしょ。だから世界最高だと主張してよ。世界最高には死ぬほど苦しい痛みを教えてあげる。それ以外は私が代わりに殺すよ。」


 今の威圧であれば4人とも話すことができる。それなのに誰も何も言わない。自分が世界最高だと証明するために3人を殺すつもりでいたのが嘘のように静まり返っている。私の予想通りだけれど…。


「誰も主張しないので今から私が4人の腕と脚を切断していくね。最後まで生きていた1人が世界最高という事にしよう。どちらにしろ1人になるまで殺し合いをするのだから賛成でしょ?」


 誰も口を開こうとしない。そして姉さんが助けてくれるのを待っているようにしか見えない。だけど私が止めなければ確実に殺し合いをしていた。3歳児でもクローディアの思考力は高く殺意まで向けていたのに冗談でしたと言わせたくない。

 威圧をやめたけれど、4人は身動きひとつしない。動けば殺されると思っているのかもしれない。


「お母さんと姉さんが見たかったものは見せることができたと思うけれど、このあとはどうすればいいの?ミュリエル姉さんの妹には問題ないから安心してね。」

「リアは4人の敵であり殺意を向けられて殺すとまで言われたのだから殺す権利があるけれど、興味ないみたいね。それならクロアが対処して。生かすのであれば記憶を消すことは許さない。」

「当然そうなるよね。私が4人を封印して研究所まで運ぶのでリアはお母さんと話していて。」


 2人が動かない理由は違ったのかもしれない…。


 姉さんが転移で席から研究所に移動するとき床に伏せていた4人も同時に移動させている。そして私の服の腕の部分が直っており床に血の跡もなく切断した腕まで消している。魔法技術の差がよく分かる…。


≪転移≫

リビングテーブルのいつもの席に移動した


「お母さんの前でも殺し合いをしようとしたの?」

「その通り。4人を威圧で動けなくして次に戦おうとしたら縁を切ると言ってあるよ。リアに嫉妬していると分かって何度も説教したけれど、効果がない。そして私が監視していたけれど、先程は私に見られていることも忘れてしまったみたいね。記憶は消さない。4人を見ていて問題は見つけたのでクロアが戻ってきてから話すよ。」


 お母さんに縁を切るとまで言われたら4人は大人しくすると思う。それにお母さんは嫉妬の対象として見られていないので敵だとは思われない。姉さんと協力していないみたいだけれど、姉さんが説教した場合はどのようなことになるのだろう…。

 お母さんでも私に嫉妬し4人が殺し合いをしようとしたことまで見ていても問題は見つけられなかった。私を敵だと考えて殺そうとすることも予想できたはず。やはり違和感が残っているのは私が何か見落としているのが原因だね…。


 お母さんは私が最強になることを期待しているのでこれからの話をしよう。


「お母さん、話を変えるね。守ると思う?」


 誰がとも何をとも言わない。これだけで十分に伝わる。


「私以外は大丈夫だよ。隣にいれば続けることができる。」

「なるほど…。手が届く範囲は掃除しても大丈夫かな?」


 お母さんと会話しているときには何も考えない方がいい。


「天井は必要ないよ。床だけにしなさい。」

「自宅ならそれでいいけれど、動物小屋は風が吹けば落ち葉や砂が入ってくるよ。」


 頭を空にして会話を続けよう。


「魔法で隙間を塞ぐことや風を防ぐことができるでしょ。魔石で換気もできる。それよりもリアは誘惑に弱すぎるので努力して惑わされないようにしなさい。そして新しい自分になりなさい。」

「誘惑に弱いのはクリスの影響が残っていると思っていたけれど、私の問題みたいだね。」


 難易度が高すぎる。


「お母さんと姉さんに相談してもいい?私はまだ赤ん坊だよ。」

「オフィーリア、自分で道を切り開き焦らずゆっくり進みなさい。私を変えるのでしょ。私は自分を変えられない。クロアも私を変えられない。だけど私を変えることができなくてもいいの。自分の人生を楽しみなさい。」


 お母さん、それだけは絶対に譲れない。


 姉さんがいつの間にか席に座っていた…。

 気配を消していたのか今戻ってきたばかりなのかが分からない。


「終わったよ。リア、私に聞きたいことがあるでしょ?」

「そうだね。4人の会話を聞いていて何も思わなかった?それと姉さんの精神が残ることは想定されていた実験だったの?」


 姉さんには世界最強で唯一無二の存在という確たるものがある。だから何も気にならなくても不思議ではない。それに精神力だけで魔法の理を壊している。姉さんは明らかに別格だと思う。


「何も思わなかったよ。リアの予想通りだと思うけれど、私は特別や別格ではなくおかしな存在。実験の計画書を読んだけれど、私が残ることは想定されていない。だけど4人のクローディアは実験に選ばれた特別な存在だと考えている。その実験が女王を決めるためだと知った。そして姉が女王でクローディアなのが特別だという思いをより強くしたのだと思う。長寿に耐えられる別の精神に換えて実験と女王についての記憶を全て消さなければ一緒に住むのは無理だね。お母さんはどのように思う?」


 姉さんらしくない。それだと先程の行動が理解できなくなってしまう。


「待って!4人は自分が世界最高だと思っているので殺し合いで決めようとした。クローディアが特別だと思っているのであれば4人が殺し合いをする理由はないよ。クローディアが特別なのではなく自分だけが特別だと思っているのであれば姉さんが女王でいることにも不満を感じるはず。姉さんが気づかないのはおかしいよ!」

「簡単なことだよ。クロアもクローディアが特別だと思えば殺し合う理由になると思い込まされているの。だけど4人の特別だという思いはリアを見るまで眠っていた。アディとローアが私の細胞で体を作り直してほしいと考えたときに特別だという思いだけでは止められない。自分の体が世界最高だと思い込まさなければならない。つまり精神支配に近い影響力あるという事だよ。それとクロア、戻ってくるのが遅かったのだから実験してみたはず。隠していると全てを失うことになるよ。」


 嫉妬や憧れだから精神の問題だと思った。だけどお母さんの言葉で違和感が消えて繋がった。アディとローアは間違いなくお母さんの細胞で体を作り直してほしいはずなのに拒絶するのは体が精神に影響を与えているから。自分が消されるのを拒絶するのは当然なのだろうね…。

 そして体が精神に影響を与えて殺し合いまでする。恐らく細胞が感情を持っている。現状では細胞が持つ感情を消すことができない。感情把握でも細胞が持つ感情は分からない。


 間違いなく関与している。


「そうだね…。4人の精神を換えて私が本気で脅してもリアに対する復讐心が消えなかったよ。」

「クロアが本気で脅してもリアに復讐するつもりであればクロアにも復讐するつもりでいるよ。勝てない相手が近くにいるときには何もしないけれど、見えないところでは弱者に何をするのか分からない。そして記憶を消しても意味がない。クロア、気づかなかった理由は分かった?」


 誤認させられたのか偶然なのかは分からない。


「今まで拷問された経験により生まれたものだと思っていたよ。以前は体の痛みに悩まされることがあったので余計にね。そしてリアが指摘した特別だけれど、体が精神に与える影響を全て阻害できていない。そのため4人が殺し合いをする理由に違和感を覚えなかった。だけど復讐しない私に怒った体が精神が壊れそうになる程の痛みで無理やり復讐させようとしてきたことがある。だから体には感情があるだけではなく痛みを与えることもできる。今は女王なので満足していると思うけれど…。お母さん、対応策はあるのかな…。」


 姉さんの精神力は桁違いなので影響を与えても思い通りには動かない。だから精神が壊れる程の痛みを与えて復讐するのを急がせた。人形の母を殺そうとしたときが顕著だね…。


「クロアは女王なのだから実在したクローディアの細胞を手に入れることができるでしょ。アディとローアは私の体にしてもいいよ。人体実験に近いけれど、必須だから仕方ないね。」


 今なら選ばれた女王がいるのだから特別な体は必要ない。姉さんの次の体も自分の細胞が元になっているので何も問題ない。

 お母さんが右手を広げてできると言っているので大丈夫。そのあと右手の親指と人差し指だけを立てている。そして人差し指を回し親指を曲げた。


「そうだね。家族で殺し合いはあり得ない。お母さん、注意点は何かある?」

「喧嘩するといけないので同じ時間だけ体を成長させて同時に起こすこと。寿命を延ばすことも忘れたら駄目だよ。そして同じことができるのか確認する。そこまで運動能力は変わらないと思うけれどね。」


 私の理解力を試すための試験なのかな…。


「それでは早速研究所に行くよ。リアはお母さんと話していて。」


 先程と同じようなことを言って姉さんが研究所に転移した。


「お母さんは初代の体に感情がないという確信があるの?」

「遥か昔は娯楽で溢れているように見えたからね。憧れや嫉妬が排除に繋がるのだとしたら初代は生活するのも大変だよ。魔法で見た目を変えることはできたと思うけれどね…。」


 広い世界に溢れるような数の人が住んでいたのだとしたら残酷だよ。

 本当に残酷だよ…。


「ディアとロディは拗ねないの?」

「細かい違いが分かるはずがないので大丈夫。3歳児だからね。」


 間違いないね。


「一時的に女王が2人になるけれど、大丈夫なのかな。姉さんは自分で自分を殺すはずだよ。命に対するこだわりがあるから。もしかして女王は女王を殺せないという条件が残っていたりする?」

「以前話した条件は言ってみただけ。今の条件は6つだよ。


1.女王と関係者は世界と敵対することが許されない。

2.女王は世界が記録しない生物を決めることができる。

3.女王が生物を生み出すために必要な細胞は世界が提供する。

4.女王は生物本来の生息地を知ることができる。

5.女王は関係者との契約を白紙に戻せる。

6.条件の確認、追加、変更、消去をする度に女王の命を5000年削る。事前に確認。


クロアは1人になるつもりだけれど、世界はクロアが増えても怒らないよ。世界一の美女だからね。」


 以前の条件の多さに比べたら少なすぎる。皆を安心させるような条件を即興で考えて話したのだと思うけれど、姉さんが「私がいるから大丈夫だよ」と言えば誰でも安心すると思う。


「敵を倒してもらうつもりがないのは姉さんの命が削られるから?」

「私たちの命が削られるよ。だけど敵の姿を見ることもなく死ぬのは嫌だからね。」


 雑草ですら敵にすることができるね…。


「ミュリエル姉さんも話そうよ。難しい話は終わりにするから。」

「それなら私も参加できますね。お母さんの隣に移動します。」


 1人で料理の本を読んでいるミュリエル姉さんが気になって仕方なかった。本当はもっと早く声をかけたかったけれど、このような話は知りたくない気がする。ここに来るまで過ごしていた環境の影響があるのかもしれない。


「名前は決めたの?4人の末っ子と同時に目覚めさせることもできるけれど、早い方がいい?そういえば何故3歳なのか説明していなかったね。精神が綺麗で辛い記憶がないのは3歳までなの。ミュリエルが自分の記憶を入れてもいい思うのであれば近い年齢にすることもできるけれど、どうする?」

「名前はマリベルに決めました。早い方がいいですけれど、確認に時間がかかりそうなのであれば一緒でもいいです。年齢も3歳でいいです。私の記憶は話すべきではないと思っていますので。」

「4人同時に起こして私についてどのように思うのか聞くだけだよ。記憶消去で解決させるのは好きではないけれど、本気で記憶を消さないつもりなの?」


 殺し合いをして世界最高は自分だと証明しようとした記憶を消さなければ一緒に遊び辛くなる。そして私を敵として殺そうとした記憶を消さなければ精神が濁る切っ掛けになるかもしれない。


「ミュリエルはどちらがいいと思う?」

「記憶を残し本気で反省させるべきだと思います。そして3歳児でも知るべき痛みがあると思います。人や動物を簡単に殺す力があるのですから相応の罰を与えるべきです。」

「お母さんが威圧で潰しながら説教すれば解決だね。」


 ミュリエル姉さんの記憶はあるけれど、見ないようにしている。そして罰ではなく殺される環境を生き抜いてきたのだと思うけれど、精神が濁っていないのは凄い。


「母として説教するよ。痛みを与えるのは得意だからね。」

「私もマリベルに教えられるように手加減を覚えなければなりません。」

「おかしいと感じるのは気のせいかな…。威圧で息苦しくしたりお尻を叩いて椅子に座れなくするくらいでいいと思うよ。恐怖心を植え付ける必要はないからね。」


 母と姉が痛みは拷問だと考えている気がする。酷い痛みを与えたら私が恨まれる可能性が高くなる気がするけれど、その恨みすら痛みで解決しそう。

 姉さんが戻ってきて皆でお風呂に入った。お風呂の中で説教の方法について話し合いお風呂から出ても続いている。姉さんが参加して説教の方向性が更におかしくなったので私はリオリナの馬房に転移した。

 対岸の火事なのに私に飛び火する気がしたからね。


 馬房で私を見たリオリナが立ってくれたので優しく背に乗る。

 立ったままで大丈夫なのかは聞かない。4本の足を使えているのかは確認するけれど、言いたいことがあれば気にせず言えばいいのだから。そして5000年も一緒に過ごすのだから主従関係を続けたいとは思わない。家族や友達として楽しく暮らしたい。


 頭の中に仮想体を作り魔力操作の練習を始める。


「遅くなってごめんね。何か話したいことはある?明日でもいいのであれば眠らせて。」

「リア様が背に乗っているだけで十分です。お話はいつでもできますので眠ってください。」


 リオリナの好意に甘えて抱きつく。

 すぐに眠気が来たけれど、今日の情報を整理しておく。


 クローディアの細胞が長年の実験により今のように変化したとは思えない。細胞に付与された能力が色々あると考えた方が納得できる。必ず別の目的があるはずなので使うべきではない。

 ディアとロディで安全なのかは分かるけれど、いつでも細胞に付与できるのであれば厄介極まりない。

 そしてお母さんの最悪の予想は私が防ぐ。永久に利用され続けることは絶対に阻止しなければならない。魔力に証をはめる所があるのは実験の成果ではなく結界に隙間を残す意味も持ち合わせていると考えるべき。結界は魔法ではあるけれど、物質化していない。あくまで魔力なのだから証に誘惑される可能性も隙間を通される可能性もある。

 最初に実験があったのか実験をさせたのかは分からないけれど、全てに意味があり繋がっていると思って対応策を考えなければならない。


 新しい結界を生み出す必要もある。


 理想的なのは隣にいるのに手が届かない、声が届かない、解析ができない、姿が見えるだけ。近いのが転移門を結界として利用することだけれど、視界を防がれるし魔法も簡単に解除されてしまう。結界内に侵入されて体を乗っ取られることも考えられる。

 だけど戦うためには守りたいものを切り取る結界が必須。隙間を塞ぎ誘惑に負けない結界を作るのは魔法技術を高めるためだと考える。新しい道を切り開く力が必要なのだから。

 普段使う魔法を完璧に把握し魔法式で書けるようになることから始める。意味不明な記号の集まりの意味を知らなければならない。


 とりあえず一番使う転移から始めよう。

 一瞬で移動できるけれど、詳しいことは何も分からないのだから。


 移動中の体はどのようになっているのか、どこを移動しているのか、今のままでは考えることさえできない。やはり自分を知ることが大切で、使える魔法を知ることも大切。それに…。


「リア様、頑張りすぎです。そろそろお休みください。」

「うん…。手伝ってね。」


 リオリナが喜んでいる気がする。

 今日はここまで…。

罰を考えている3人の過去が酷すぎるので…。

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