第75話 覚悟
「…、起きて…。」
リオリナの声がした気がする。
「リア様、起きてください。」
はっきりと聞こえた。間違いなくリオリナが私を起こしてくれた。姉さんの魔石の効果で起きることができてよかった。だけど自力で起きることはできそうにない。早く上半身を起こさなければまた眠ってしまいそう。やはり赤ん坊だね。
「リオリナ、起きたよ。ありがとう。私が自分で起きられるようになるまでは声をかけてね。」
「リア様、私は大丈夫です。何も心配いりませんので自宅で寝てください。」
リオリナが襲われたことを心配して一緒に眠っていると考えているのかな。嘘を吐かないと約束したのでリオリナは心配ないと考えている。だけどその理由が今は朝だからなのかもしれない。そして夕暮れが近づくにつれて恐怖心が出てくる可能性がある。そのときに襲われたことが本当に怖くないのかを聞きたくない。私の言葉で襲われたときの記憶を鮮明に思い出してしまうことになる。それだけは避けたい。
考えても分からないのだから、安心だと思える日までは一緒に眠ればいい。
「私がリオリナと一緒に眠りたいだけだよ。邪魔だと言われたら自宅に戻るのでその日まではリオリナの背で眠る。私が抱きついて眠れるのはリオリナだけだからね。妹にお母さんに抱きついて眠りたいので譲れとは言えないでしょ。仔がほしいと言われても自宅に戻るので安心して。最短でも自分で起きられるようになるまではここで眠るつもりだよ。」
「分かりました…。私はまだ仔を産むつもりがありません。リア様のお好きなように行動してください。」
仔を産むつもりがないのは襲われたことが原因なのかもしれない。記憶消去が一番だと思うけれど、他の馬も怪しいと感じていたはず。全ての馬の記憶を消さなければリオリナが不審に感じてしまう。だけどリオリナはそれを望んでいない。内心では望んでいたとしても私には分からない。だから何もしない…。
そのかわりリオリナの言動に注意する。今日のお昼過ぎに私の反省を聞くために必ず散歩することだけは分かる。リオリナはお母さん達と似ているのかもしれない。自分の苦しみや痛みを気にしない。嘘を吐いているのではなく体の痛み等はどうでもいいと考えているのかもしれない。
そしてお母さんを変えるための勉強だとは思わない。今まではそのように考えていたことを否定できないけれど、これからは絶対に考えない。乗馬しているときはリオリナに集中する。
私の駄目なところは遠くを見すぎて近くの大切な命を見ていなかったことだと思う。
「好きにするよ。戻ってくるまで待っていてね。」
「はい。お待ちしております。」
リオリナの背を両手で軽くパンパンと叩くと料理部屋に転移した。
部屋に移動すると本を読むお母さんと料理中の姉さんがいた。2人を見ると気まずいというよりも私だけの力でリオリナを把握しなくてもいい気がした。手を抜くつもりは当然ないけれど、頼ることが悪いとは思えない。
「お母さん、姉さん、リオリナが無理していると思ったら教えて。乗馬の時間は私も集中するけれど、リオリナは無理を無理だと考えていない気がする。だけど今の私ではそれに気づかない可能性が高いから。それと姉さんのお陰で漏らさずに起こしてもらえたよ。ありがとう。」
「リア、自分の専属馬なのに私たちを頼るの?」
お母さんの質問は気になって聞いているだけだと思う。
ここで深く考えて答えに迷う必要はない。
「問題ないのであれば頼るよ。私だけだと無理させてしまうかもしれないから。視界に入ったとき等に違和感を覚えたらすぐに念話して。」
「それは別にいいけれど、何かあったの?」
お母さんに昨晩リオリナと話した内容を教えた。リオリナに恥を掻かせるのではなく私が赤ん坊だという事なので教えても大丈夫。そして協力をお願いしているのに事情を隠すのもおかしな話だと思う。
話を聞いたお母さんは黙って何かを考え始めている。私の言動に問題があればここで言われた方がいい。リオリナが無理する前に止められる。
とりあえず料理を始めよう。リオリナが待っているからね。
「リアはクロアの説明に納得しているの?」
「納得していないよ。あれほど都合のいい条件を追加できるのであれば代償を変えることもできる。そして姉さんなら条件を隠すのが自然だよ。それに最初の条件を決めたのが記録係だとは限らない。更に女王候補を決める儀式が実験だとは明言されていない。女王候補がどのような存在なのかも明言されていない。それと私でも条件の確認、追加、消去は死ぬという条件を追加する。だから姉さんが何か隠しているか嘘を吐いていると思う。本当の条件は他言無用にされているのかもしれないけれどね。」
お母さんから予想外の質問をされたので素直に答えたけれど、何を確認したいのかが分からない。少し頭を冷やして考えれば誰でも分かることだと思う。
そして推測のみで姉さんが動くのは明らかにおかしい。敵対を考えた私は確かに愚かだと思うけれど、姉さんの行動も不可解に思う。
それに条件で世界が動くときには代償が必要ないのであれば条件を追加して消した方がいい。違和感しかないけれど、女王ではない私が考えても何かができるわけではない。だから目の前のことをもっと大切に考える。昨晩はそのような会話をしたのだと思っていたけれど…。
「嘘だとしたらクロアの目的は何だと思う?」
「別人格に聞かせるためだと思う。裏にもう1人いると考えて残しておいた。そして仮想体か分身で逃げる機会を用意してあげた。姉さんがクリスの分身では覚えることができない魔法だと判断したのでしょ。それに分身が勉強していたのかも怪しいからね。索敵魔法を消したのも油断させるためだと思う。」
姉さんが隣にいる私を見た。少し驚いているような表情をしている。何も考えずに発言したけれど、姉さんの計画の一部を当てているのかもしれない。
「リアはお母さんのようになりたくてアディの精神を選んでいるので考えるよりも今まで起きたことから思い浮かぶことを話す方が合っているみたいだね。そこまで予想できているのであれば結界から出してあげた理由も分かっているのでしょ。」
「逃がすことでこちらが有利になるような罠を仕掛けていると思う。ところで何故私に聞いたの?」
「別人格もリアと同じ状況で逃げているからだよ。」
記憶だけしかなく自分では何一つ経験していない人格は私と似ている。そのため私がどのような発言をするのか確認してみた。だけど2人の狙いが何か今の私が考えても分からないので本当は別の理由があるのかもしれない。
「クリスはどのように対処するの?拷問で背中の皮を何度も剥がされているのであればその記憶は残さなければ意味がないよ。人形にされていたのが罰だとすればね。」
「魔石はクリスという存在を把握してから消したので大丈夫。別人格も私の渡したい情報を持ち帰らせたので大丈夫。それとリアの言っていたことだけれど、女王が他の女王を世界の力を使って殺すことができないので意味ないよ。考え方は間違っていないと思うのでこのまま勉強を続けるのが一番だね。」
「姉が女王だとリアも大変だね。」
大前提が抜け落ちていたよ…。
クリスと別人格のことを詳しく話さないのは未知の力に対処するためなのか勉強材料にするためなのかが分からない。もしかしたら話す価値もないと考えているのかもしれないけれど。
今後の実験については姉さんが対応しているはずなので気にしない。今の私にはやらなければならないことがあるのだからそれに集中する。
朝食の時間は姉さんの記憶を見て過ごし後片付けを終えてすぐにリオリナの馬房に転移した。
「お待たせ。朝は川でいいんだよね。」
「はい。お昼からは確実に陸を歩きますので川で調整します。」
リオリナが立つと飛行で背に乗る。
やる気に満ちているので私がそれを下げるような発言はしない。
「川まで歩く?魔法で川まで行く?」
「魔法で深い場所まで移動をお願いします。」
痛みに怯えることを防ぎ確実に身に染み込ませるつもりだね。
≪転移≫
牧草地から南に流れる川の一番深くなる場所に移動した、
「朝はいつものような話をすればいいの?それとも私の反省を話せばいいの?無言でもいいよ。」
「朝は私の歩き方がおかしければ指摘してほしいです。それと引越しの理由を教えてください。」
引越しの理由を聞いて集中できるのかな…。
「それを聞きながら歩くと集中できないと思うけれど、大丈夫?」
「リア様の反省に比べれば些細なことです。問題ありません。」
一番の理由を話して様子を見た方がよさそう。
「引越さなければ死んでいたよ。全滅していた可能性が高い。」
「誰とも争っていないのに命を狙われる理由があるのですか?」
実験の影響があるのかもしれないけれど、一番の理由は独占欲だろうね。
「姉さんは特別な力が使えるけれど、唯一無二ではないの。姉さんはそれを気にしていないけれど、認めたくない人もいる。そういう人に気づかれて命を狙われた。そして特別な力を防ぐことができる場所を用意するために引越す必要があった。攻めてきた人は消えたので気にしなくても大丈夫だよ。」
「序列争いを酷くしたようなものなのですね。まだ狙われる可能性があると思いますけれど、リア様が気にしていないのは何故ですか?」
リオリナは問題なく歩けているように思う。歩くことに集中しているからだと思うけれど、それでも私の気持ちまで把握している。間違いなく私が教わる側だね。
「お母さんと姉さんがいるからだよ。リオリナに私を騙すつもりがなくても歩き方がおかしくなっている可能性があるでしょ。だから違和感を覚えたらすぐに連絡してと今朝2人にお願いしておいたよ。」
「それではリア様が叱られる可能性を高めただけではありませんか。」
騙すつもりがなくても歩き方におかしな癖がついている可能性はあると考えているみたいだね。それならば負担の少ない川の中で癖を直した方がいい。それに比べたら叱られることは些細な問題だよ。
「今の私がリオリナに集中していても気づけない内容なら叱られない。気づかなければならないことを見逃したら叱られると思うけれど、それは私が悪いので仕方ないよ。リオリナが正しい姿勢で歩けるようになる方が大切だからね。」
「分かりました。集中します!おかしなところがあれば教えてください。」
凄くゆっくり歩き始めた。足に痛みがないと確信するためのような気がする。私もリオリナの動きに集中した。無言の時間が続いたけれど、居心地が悪いと思わない。以前よりもリオリナの動きが分かるようになっている気がする。今までは他事を考えすぎていたのだと反省することが増えたよ。
集中していると時間があっという間に過ぎることを初めて知った。姉さんから食事の時間だと念話が届いたのでリオリナと一緒に馬房に移動して念のために回復魔法をかけた。
お昼過ぎからの予定は確認せず「なるべく早く戻ってくるよ。」と、リオリナの背を軽く叩きながら言った。そして脱衣所に転移して下着を乾かしたあとに料理部屋まで歩いて移動した。リビングテーブルでミュリエル姉さんが料理の本を読んでいたので妹ができてから手伝ってもらえそう。
料理部屋に入るとお母さんと姉さんがいて姉さんは既に料理を始めていた。姉さんの料理を確認して冷蔵庫から食材を取り出し料理を始める。
「姉さん、身体能力を馬に把握してもらうことはできたの?」
「5人が自分の身体能力に驚いていたよ。ミュリエルは特に驚いていたね。5人とも馬と遊べるようにならなければならないよ。」
ミュリエル姉さんは最近まで普通の人間だったので驚くのがよく分かる。そのことで調子に乗るような性格ではないので大丈夫だけれど、末っ子が心配だね。
馬を持ち上げて遊ぶことを提案したら乗馬できるのは成人後になりそう。
「私も脅しておいたけれど、ミュリエルが止めるので大丈夫だよ。」
「もうすぐ5人になる暴走3歳児をミュリエル姉さんだけに任せるのは厳しすぎない?」
「私の見える範囲で遊んでもらうので大丈夫。フィディーにも見てもらって問題点があれば反省会だよ。予定は小さくなったフィディーに仔馬の遊び相手をしてもらって私は母馬と会話する。馬と遊んだ方が母馬も安心すると思うからね。」
仔馬は食用にされていたのかもしれない。望まぬ妊娠をさせられて出産したら仔を食べられる。予想通りであれば人と馬を憎むのは当然だと思う
だけど私はリオリナに集中しなければならないので他の馬のことを考える余裕はない。自分の反省を話しながらリオリナの歩き方に気を配るのは絶対に難しい…。
昼食の後片付けを終えてリオリナの馬房に転移した。
「リオリナ、予定通りでいいんだよね?」
「当然です!」
リオリナから強い意思を感じる。
「散歩する場所は任せるよ。私は横になりながら反省していることを話せばいいんだよね?」
「それで構いません。静かな場所を散歩します。リア様の話しに集中したいですから。」
リオリナが立ち上がると背に乗り横になる。そして厩舎の外に出てから話し始めるとリオリナに告げる。厩舎での足音にも集中する。足の動きにも集中する。今の私にできることは全てする。
厩舎の外まで歩く動作に違和感を覚えなかったので話すことにした。
「それでは話すよ。前提として今の私は1つのことしか考えられない。複数のことを同時に考えようとすると自分を見失って何も考えられなくなるの。それについては想像できるでしょ?自分では起きられないし漏らしても気づかずに眠り続けるくらいだから。見た目は10歳だけれど、中身は話せる赤ん坊だよ。」
「分かりました。難しいですがその前提で話を聞きます。」
肉体と精神が本来の形ではないので馴染むのに時間がかかると言っても意味が分からないと思う。そして話せる赤ん坊だと言ったけれど、それを理解するのも難しいと思う。普通であればそのような存在はいないのだから。
「引越すことになりお母さんと姉さんが会話していた。それを見て私は引越す理由を作った相手と戦う方法を考えていたの。そのため2人の会話を全く聞いていない。それに考えるべきことを間違えていた。2人の会話を聞きながら結界内にいる全ての命を守る方法を考えるべきだったの。」
「その通りだとは思いますが攻めてくる相手のことを考える人も必要だと思います。」
私の反省材料を減らそうとしてくれているのかな…。
「魔法を使えば感情と思考を把握することができる。それを利用して殺す相手を選ぶこともできる。私でもここにいながらリオリナを救ったお城の人間を全て把握し皆殺しにすることも私たちに害意を持つ相手を殺すこともできる。姉さんだとその範囲が全世界になる。そして攻めてきた相手も同様の力がある。それに攻められるのではなく攻められる可能性があっただけ。相手がこちらのことを監視していたとしたら私がどれほど愚かなことをしてしまったのか分かるでしょ。実際に攻めてきたけれど、私の感情と思考を把握していたからなのかもしれない。相手から見ると戦うつもりの人がいて自分を標的にしているのだから。こちらを見下していたのと姉さんを勧誘したいので攻めてきたけれど、遠距離から皆殺しにされていてもおかしくはなかった。それなのに私は頭が冴えていると勘違いして思考し続けていた。だけどお母さんと姉さんが私の考えそうなことを想定して対処してくれていたので無事なの。それとお母さんが結界内で感情と思考を把握する魔法の使用を禁止しているので安心してね。」
「非常に厳しい問題ですね…。フィオナ様とクロア様に叱られたのですか?」
攻めてきた理由は違うと思うけれど、リオリナにはこちらの方が分かりやすいと思う。
実際は私が思考している間に結界内の人と動物の情報を世界が記録しないようにしているはず。相手の居場所が分からなければ遠距離から殺すことは難しい。そのため直接見に来るしかなかった。相手の発言を聞いた限りでは自分の力を誇示したかったみたいだけれど…。
そして自分が殺されてもいいように予備が控えていたに違いない。
あのときはお母さんと姉さんの会話を聞いて勉強するのが一番だった。全て姉さんに敵わないのに私が戦うことを考えるべきではなかった。敵対したら消されると知っていても敵対の条件を知らないのだから何も知らないのと変わらない。本当に愚かだよ…。
「叱られていないよ。問題点を指摘されて自分に何ができるのか考えて動けと言われたよ。」
「リア様はお二方に追いつき追い越したいのに今のままでよいのですか?」
リオリナは問題なく歩けているように感じる。今のところは大丈夫だね。
「お母さんと姉さんに追いつきたいとは思っているけれど、焦っても追いつけない。追いつくには10倍以上の歳月が必要だと思うけれど、勉強する時間は用意してもらえたので私は一歩ずつ前に進むよ。2人を追いかけるのが大変なので手伝ってね。」
「私はここに来るまで自分の命について考えたことがありませんでした。リア様は何年生きることができて私は何年生きることができるのでしょうか?」
それがリオリナの望みなの?
このあとの流れが予想できて胸が痛くなる。
「私は5000年前後でリオリナは30年前後だと思う…。」
「お手伝いできる時間がとても短く感じます。私はリア様の最初で最後の専属馬でいたいのです。リア様が嫌なら諦めます。そうでないのであれば何とかなりませんか?」
リオリナを嫌だと拒絶したくない…。
そしてリオリナに何でも言ってほしいと言ったのは私なのだから何もせず有耶無耶にはしたくない。だけど今の私にできるのは確認することだけ。
弱くて愚かな自分が嫌になる…。
≪念話≫
「姉さん、馬の寿命を延ばすことはできるのかな?リオリナは私の最初で最後の専属馬になりたいみたい。リオリナの意思を無碍にはしたくない。姉さんなら話も把握していると思うけれど、私が寿命を延ばせるとも言っていない。手伝ってと言ったのが切っ掛けなのかもしれないけれど、私は死ぬまでリオリナが専属馬でいいよ。」
「今から分身を転移させてリオリナの覚悟を確認するよ。リアは何も言わないでね。」
≪念話終了≫
念話を終えると姉さんの分身が隣に転移してきた。
リオリナが驚いていないので予想通りなのかもしれない。
「リオリナ、リアから相談されたよ。リアの妹になれば簡単に実現できる。馬としてリアと同じ寿命になりたいのであれば最低でも5回は体を換える必要がある。どちらがいいの?」
「専属馬としてリア様を背に乗せ続けたいので馬のままがいいです。」
妹になれば一緒に自宅で暮らせるのに専属馬を選ぶのは何故なの?
リオリナを縛り続けたくないよ…。
「寿命を延ばすと最強の馬になる。私が求める条件は何だと思う?」
「他言無用で序列除外です。例え仔ができても何も言いません。そしてリオ様が年老いても背に乗ってほしいので私は歩き続けられる体がいいです。理想はリア様が亡くなられたと同時に死ぬことですが、リア様が私を専属馬として必要としてくれる限りの命でいいです。」
縛りすぎだよ。これでは私に命を捧げているのと何も変わらない。それだけはやめてほしいのに止める言葉が出てこない。リオリナの意思を否定したくないから…。
「私が命を大切にしていると知っているのに死を選ぶのは何故?」
「目的のための命ですので目的が終われば失うのが自然です。」
リオリナと最期まで一緒に楽しめるように提案するしかない。
「リア、思っていることを言えばいいよ。」
「リオリナは専属馬ではなく私の専属でもいい?」
「リア様を背に乗せることができる専属であればいいです。」
馬でいることにこだわらないのであれば一緒に自宅で暮らせる種族がいる。
姉さんの条件が本当であれば生み出せるに違いない。
「私を背に乗せて歩くことも空を飛ぶこともできて人にもなれる種族がいる。姉さん、リオリナを私の専属ドラゴンにして。」
「ドラゴンは絶滅した最強の魔獣だよ。自宅で一緒に暮らせるし背に乗せて散歩できるし空も飛べる。リアが希望する専属ドラゴンになるのか専属馬で寿命を延ばすのかリオリナが決めて。」
「クロア様、私をドラゴンにしてください。リア様が望まれていますので姿形は気にしません。」
同じ時を過ごすのであれば一緒に楽しみ続けたい。
それだけしか考えられないよ…。
「リオリナはドラゴンに進化したことにするよ。リアに専属馬がいないのはおかしいからね。進化条件は命懸けで私と交渉すること。勿論他言無用だからね。20日以内に体ができると思うので待っていて。」
姉さんの分身は楽しそうに手を振りながら消えた。話の流れが想定内なのだと思う。
リオリナの気持ちを理解できていないのは私だけだね…。
「リア様、ご自分を責めないでください。リア様が私を専属から外すことができないと分かっています。最高の形で望みが叶ったのです。リア様を背に乗せるのは私だけです。誰にも譲りません。リア様は私が楽しめるようにドラゴンを提案してくださいましたが、私はリア様を背に乗せている時間が楽しいのです。リア様の優しさを利用して自分の望みを叶えた私が悪いのです。それで納得してください。」
「分かったよ。リオリナの言葉を信じて納得する。」
リオリナは私に命を捧げているのではなく自分自身が楽しむために私を背に乗せ続けることを選んだ。その考えを否定することはできない。リオリナの望みを大切にしたい。
これから死ぬまで一緒に過ごすのだから一緒に楽しめることを私が探せばいい。だけどリオリナに成長を手伝ってもらう。そのためにたくさん相談するからね。
そして絶対に大空を自由に飛び回ろう。
専属としての覚悟です。




