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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第73話 私の命

 私の計画に姉さんを巻き込んだけれど、家族が笑顔になれるのであれば姉さんは力を貸してくれる。そしてお母さんも力を貸してくれる。

 それにより作戦会議がいつもより白熱していた。明日は馬に何を知ってもらいたいのか、どのような方法を考えているのかをまとめて午前の勉強前にお母さんに提出して審査してもらうことになった。姉さんが付き添ってくれるので問題ないけれど、それでも自分たちで考えなさいという事だと思う。

 それと毎日遊びを変えるのはよくないとお母さんに言われていた。明々後日からは参加した頭数やそれぞれが思ったことまで追記することになった。評判が余りにも悪い遊びは翌日にでも変えるべきだけれど、最短でも1週間は同じ遊びを続けることが理想みたい。

 お母さんの審査に合格すれば遊ぶ内容がどんどん増えていくことになる。毎日全力で遊んで真剣に考えなければならない。5人にはとてもいい勉強になる。6人になれば更に白熱すると思う。

 今日の雰囲気が続くのであれば凄い早さで成長していく気がする。赤ん坊が遊んでいたら間違いなく抜かれる。それに皆で考えるのは見ていて羨ましく感じる。

 私の予想通りであればお母さんの望みに気づき実現すれば乗馬の許可される。そしてミュリエル姉さんの家族入りが決まる。


 夕食の後片付けを終えて私は姉さんの記憶を見ることにした。

 お母さんは作戦会議について指導している。


 姉さんが経験した拷問を1日分だけは見なさいとお母さんが言った意味がよく分かった。とても拷問と言えるような内容ではない。目を覆いたくなるような光景が夕暮れまで続く。集中して半年分は見たと思う。姉さんの表情や言葉が少しずつ変わっていくのが気になったから。

 拷問により精神が砕けてその度に拷問に耐えられるように精神を作り出しているように思う。思考誘導だけではなく明らかに精神が歪んでいるように感じる。泣きながら笑って偽の母に回復されるのを喜ぶ姉さんを見たときにこれ以上は見たくなかった。この拷問を3歳から10歳まで続けたのは狂っている。

 これを見たら復讐したいと決意するに違いない。


 拷問されている記憶を集中して見てしまったのでお風呂に入る時間までこれまでに出会った人を把握していった。それだけなのに分かることがある…。姉さんが何を考えていたのかが全く分からない。魔法技術を得られることもない。そして私が想像していたよりも圧倒的な世界最強だった。

 今後も食事のときは記憶を見よう。そして姉さんが考えていたことを考えてみる。運に命を懸けるような姉ではないと知っているから。

 記憶を見た後では私の勘違いなのかもしれないと思えてしまう。


 思考力も姉さんの方が上に見える。


「姉さんはお母さんに思考力で勝てると思う?」

「絶対に勝てないよ。お母さんは恐怖症に対して無意識で無抵抗になることで精神を守ってきた。そしてお母さんはクロアだと思い込んでいる別人格に気づいていない。別人格の分身がクロアを真似していても気づいていない。仮想体、分身に監視され、思考把握され、記憶を好き勝手に覗かれる状況でも何も気づいていないお母さんは動揺すらしない。そのようなことはあり得ないとリアが気づかなくてどうするの。」


 例え家族は疑わないと考えていても別人であれば関係ない。別人格ですら家族と認識しない可能性が高い。それなのにお母さんは一度も疑っていない。余りにもおかしい…。

 分身を個性だけで見分けることができ精神が見えなくても違いが分かる。それなのに本体と分身の違いにも気づいていない。だけど演技していたようにも見えない。


「あり得ないのにお母さんが演技していないと分かる。演技した直後に気づかれるから。」

「もっと考えなさい。分身を個性で見分けることができるのにクロアだと思われる分身だけは疑っていない。そして分身を個性で見分けることができると知った敵はお母さんに近づく分身を厳選した。だけど家族として接するのであれば気づかれないと考えた。お母さんが全く気づかないので敵は騙された。それにお母さんは私の別人格が男性恐怖症により生み出されたとは考えていない。生まれた直後に私から隠れ全ての敵を潰したと考えて眠ったときに体を乗っ取った。それならば最初に考えることはクロアを消す方法だとね。別人格が眠ったら私が起きる可能性がある。だからリアも勘違いしているよ。分身なのに男性恐怖症ではなかった。そのため原因は男性恐怖症だと考えるのは安易すぎる。逆に敵にとっては好都合だった。別人格を入れら乗っ取られたとは考えていないのだから。」


 生まれた直後に隠れて隙を見て乗っ取ったのであれば本来の人格を消しておかなければ再び奪い返されると考えるのが普通なのに別人格はそのようなことを考えていない。

 そもそも別人格は自分が本来のクロアだと考えていた。他の人格があるとは考えていない。この場合だとクロアだと思い込む別人格に乗っ取らせたとも考えられる。

 だけど男性恐怖症から生まれた人格だとしか考えていないのは敵にしてみれば何度でも乗っ取れるので好都合。だから油断していたのかもしれない。

 姉さんに戻す方法は精神を入れ換えるだけでよかった。それでも敵に警戒させないためには理由が必要だった。お母さんが私の考えを見透かしていたのであれば任せるはず。それが綺麗にするという言葉に繋がったのだと思う。


「姉さんはお母さんが何したのか分かっているの?」

「お母さんに確認したわけではないので絶対ではないけれど、予想はできているよ。仮想体や分身魔法という力を知ったお母さんは私の精神が乗っ取られる可能性を考えた。強制命令のように未知の魔法などであれば防げないかもしれない。乗っ取られた私が家族を殺そうとしたら抵抗できない。だけど家族の振りをするのであれば救うことができる可能性がある。お母さんは恐怖症に対して無意識に無抵抗になると知っている。だからお母さんは自分自身に仕掛けていた。私に違和感を覚えたときは無意識に疑わない。私の振りをしている存在を本物だと考える。そして違和感を消す方法があれば実行する。つまり私のためだけにお母さんは自分自身を洗脳しているの。いつそのようなことが起きるのか分からないので常に備えている。本来の私に戻せば誰かを失っていても家族を作り直すことができる。危惧していることがあれば私に言えばいいと思うでしょ。口に出せば記憶に残り私がその問題に対処できなければお母さんが確実に殺される。お母さんは弱く脅威になり得ないと敵が思うからこそ私を救うことができた。無害で殺す価値もないと敵に思わせることがお母さんの狙いなのだと思う。あくまでも私の推測だけれど、このくらいのことをしなければ敵を騙せない状況だった。お母さんは精神が少し濁っているので私より強くなれない。お母さんの精神が綺麗になれば私と同等かそれ以上の強さになるよ。思考力で勝てるのであれば私が自衛している。」


 姉さんの推測がほぼ当たっていなければ今回は絶望的な状況だった。そしてお母さんは姉さんを1人でも救うことができた。別人格の本体に男性恐怖症を解決しようと言えばいいのだから。但し、周りに班長の分身がいない状況で別人格に分身を作らせなければならない。

 それが可能なのはお母さんが絶叫を上げることになった前後しかない。ディアとロディが研究所から自宅に来たときには分身に代わっている。本体に会えて精神を交換する理由まで言えるのはあの日しなかなった。私がいなければお母さんはアディとローアの精神が濁っていることに耐えて姉さんを元に戻してから自分の記憶を消した気がする…。

 封印から解除された後も敵の仕掛けを全てお母さんの指示で排除している。記憶を消したお母さんは何も知らずに全て対処しているのだから私の酷い間違えだね。


「それでミュリエルと話したお母さんが姉さんに念話した理由は秘密なの?2人だけで話す時間はいつでも作れるのにあのときに念話しなければならない理由が何かあったのでしょ?」

「ミュリエルと会話しながら私とも話したかっただけだよ。念話の理由はそれだけだよ。ついでに違う話題も話したから教えてあげる。私には精神に別人格が隠れていても見える。アディとローアの精神に別人格は入っていなかったので実験開始からではない。そして封印解除されたときに別人格の精神が皆に仕掛けられていたので私も同じ方法で乗っ取られたと考えているのか確認されたよ。リアの考えを教えて。」


 記憶と精神は繋がっている。そして別人格という言葉に惑わされてしまっていたのかもしれない。別の精神を精神の中に埋め込まれていた可能性がある。乗っ取りとは精神を上書きしているに等しい行為。だけどその後は記憶と繋がって影響を受ける。最初から自分の体だと考える。

 しかし未熟な精神で乗っ取っても姉さんと変わらないはず。


「個性的な誰かの精神と交換された。もしくは入れ換えられた。皆の精神の中に入れられていたのは人として行動できない特定の行動のみを行う疑似精神だと思う。そして本物のクリスは姉さんの精神がほしくて交換したという事なの?クリスは自己回復から全ての能力を与えられていた。もしくは同じ魔石の中に入れられていたので能力を全て複写できた。クリス単独だと考えるとこのくらいしか思いつかない。その検証を頼まれたの?いや…、それだけはないね。お母さんの嫌いなことだから。」

「よく考えているね。クリスは好奇心だけでそれらを行ったと推測できる。そして私のような考え方をするクリスは確実に精神が濁る。取り返しのつかないことをしてしまったと思うから。だから身の安全を最優先に考える。その行き着く先が私を殺すこと。だけどクリスには精神の色が見えない。そして私には精神の色が見える。悪意を持つクリスや分身は索敵範囲外まで逃げるしかない。だけどクリスの計算通りに私を無能力にすることができた。これで確実に殺せると思ったらリアが私と同じ結界魔法と索敵魔法を使った。ディアとロディを入れるため私の魔力を持つものと姉さんは特別扱いに変更したけれど、私の作った仮想体を入れる体を与えてからは結界を張り直している。私の作った体に入っている人と姉さんは特別でそれ以外の悪意のある存在は結界を張った人が許可しない限り入れない。そのため皆を直接殺すような仕掛けはできなかった。半年前の私が作った結果を突破する方法で封印中に殺すことができなかった。当然私の性格だから保険をかけている。それが10万人を超える敵が私を殺しに行く準備をしていた。つまりリアの存在は大きいよ。お母さんだけで私を救った場合の行動は予想できないけれどね。」


 姉さんが作った結界なら経験した危険な仕掛けは全て排除するはず。結界内での害意は私が見逃さない。だから悪意を持たない分身に頼めることは限られる。結界内で魔石を作り何でも言うことを聞く精神を貼り付ける。体内も同様だと考えられる。魔法も与えてあげと説明した。悪意のない分身は当然中身を確認するから強制命令の理由も必要になる。


 お母さんと姉さんが一緒に行動している時点でどれだけ保険をかけていても負ける気がする。


 姉さんを助けたらどのような状態になるのかお母さんが分からないはずがない。記憶を消して封印されていても私が結界魔法と索敵魔法を維持していれば死ぬことはないと考えていた。お母さんが家族を助けて死ぬ確率の高い行動をするはずがない。アディとローアの精神が濁っていてもお母さんは家族を守ることを優先すると確信が持てる。


 白熱中の作戦会議について指導していたお母さんが戻ってきた。

 これは私の興味本位の質問でしかない。それを聞くべきなのだろうか?


「リア、私に聞きたいことがあるのなら言いなさい。」


 敵が勝てる気がしない。姉さんの思考力が上だと思った私は何も見えていなかった。


「お母さんは恐怖症に対して無意識に無防備になるよね。それ以外にも無意識で何かできるの?」

「クロアと分身の反乱について話していたのね。リア、それも命を捧げているからできるのだとしたらどのように思うの?精神を守るために無意識で無防備になって無関心で無感情で無感覚を追求し続けたのは私だからね。私の望まない状態を見たら無頓着になるくらいはできるよ。そして助けられると感じたときは解除して状況を把握して解決策を探す。」


 命を捧げているからできる。それが自分自身の洗脳に繋がるの?


「今の私では何もできないから諦める。だけど私がそれを絶対に終わらせる。」

「期待しているよ。それで今のクリスをどのように考えているの?」


 予想できているけれど、そのように行動できるのかは疑問が残る。


「今のクリスは姉さんに何したのか知っている本来のクリスだと思う。」

「正解。クリスは生きていれば勝ちなの。最後の保険がクロアの中の魔石に記憶を追記した状態。仮に反省していても絶対に許されないことをした。すぐに消したいところだけれど、記憶に記憶を乗せる方法があるかもしれない。作られた記憶を見て誰もが価値がないと思う。それなのに手間をかけすぎている。もし記憶があれば細心の注意を払って見なければならない。記憶が魔石に入っているのが前提の可能性がある。魔力を複写して確認する。似た光景の記憶の魔力も複写して確認する。不思議に思うこと。自分ならしないことについて考えてみなさい。行動した理由を全て考えていたら疲れてしまう。勉強で大切なのは続けることだからね。」


 いつの間にか焦っていたのかもしれない。お母さんは100年以上も考え続けている。それができるのは何を考えるべきなのか分かるからなのかもしれない。

 今の私は全てを考えようとしていた。分からないことしかないから。だけど順番がある。分からないのは何も知らないから。知識を蓄えることで分かるようになることもあるかもしれない。

 見えない2人を追いかけてもどこにいるのかも分からない…。


「私は短い手を伸ばしすぎたみたい。自分の立っている場所は忘れないようにするよ。」

「リアのお陰で家族を守ることができたし自宅の雰囲気もより良くなった。だけどクロアを巻き込むときは慎重に考えて行動しないと震えることになると忘れたら駄目だよ。」

「私も説教の手加減の仕方を覚えなければならないから手伝ってね。」


 説教の手加減とは何かな…。


 お母さんがいつものようにお風呂に入る時間だと皆に声をかけ、お風呂上りの寝るまでの自由時間に末っ子が作戦会議を始めた。ミュリエルが孤独になると考えての行動だと思う。

 お母さんと姉さんもリビングテーブルに座っているので私も座って姉さんの記憶を見直していた。お母さんに言われた魔法を作る手掛かりになりそうなものを探してみたけれど、短期間に出来事が溢れていてこれだと断言できるものが見つからない。

 私はまた焦っていたみたい。自分の立っている場所も分からなくなっていた。だけどお母さんに時間がないような気がして仕方ないの…。

 だから常に初心を忘れず考え行動しよう。私の名前はオフィーリア。


 絶対に私がここにいる目的だけは忘れない!


 お母さんと姉さんが遠くても関係ない。追いつくつもりも追い越すつもりもない。2人の道を進んでもお母さんを助けることができない。考える癖をつけることは大切なことだけれど、お母さんを助ける方法を考え続けていれば自然と身につく。

 姉さんと精神を交換したクリスとクリスの精神だった姉さんの分身の力だけでは10万以上の戦力を用意することなどできるはずがない。確実に暗躍している存在がいる。難しく考えなければ答えは目の前にあった。姉さんに外の世界を滅ぼせる力があるのであれば敵はクローディア。

 姉さんよりも長い時間をかけて力をつけているはずなのに自分の手は汚さない。家族を殺すこともしない。姉さんは理由を知っているでしょ。

 言葉ではなく感じているはずだよ。違うの?


「その通りだよ。それをすれば一番手放したくない力を失う可能性が高いと考えているはず。それだと疑問が残るよね?」

「そうだね。実験を続けていた理由が分からない。自分以外のクローディアが死んでも興味ない。拷問されていても興味ない。そのような性格だとしても実験は止めるべきだった。姉さんは何がしたいか予想できているの?」


 敵のクローディアも実験の結果により生まれたのだとしたら実験は潰すはず。特殊な力を手にしたのであれば同じ力を手にするクローディアが生まれる可能性がある。

 そして姉さんがその力を手にしたら殺そうとしている。最低でも同等の思考力はあるはず。姉さんは実験を潰したのだから敵が潰さない理由が分からない。

 それに特殊な力は手にしたと分かるの?それによっても大きく違いがある気がする。


「分からないよ。だけど自分が選ばれたという感覚は分かる。力を手にした時点で力に関係なく対等に戦える相手がいないくらい強いからね。そして私と同じではないと思う。私の精神を受け入れると濁る。それに実験が私の経験した内容とは違うはず。同じ実験であれば私を拒否したら生き残れない。だから思考誘導を解除し精神を綺麗にしたことで力を手にしたと考えているよ。」

「それはありそうだね。だけど何故クローディアなの?実験場の外にも精神が綺麗で強い人はいたと思う。姉さんはクローディア以外にも選ばれていたと思う?」


 確かにあの実験を乗り越えるにはディアだと無理がある。姉さんの思考力が絶対に必要だけれど、姉さんの精神は濁っているからディアも拒否している。姉さんの精神が綺麗なのは実験の過酷さと精神力によるものでしかない。

 そして特殊な力は世界最強で精神が綺麗でなければならないのであればクローディアしかいないのかもしれない。だけど常に世界に1人は必要であれば誰か選ばれているはず。

 それに敵を対処するために姉さんはその特殊な力を使った気がする。何故記憶を消したのかが分からない。記憶を消すことを指示したのはお母さんだから必ず意味がある。


「クロア、話しすぎではないの?」

「リアに完全に気づかれたよ。何故お母さんが記憶を消すことにしたのかリアが気にしているけれど、実は私も気になっているの。それとクローディア以外には絶対にいない。どれだけ強くても精神が綺麗でも関係ない。興味ないからね。これは私の考えだけれど、同じ血が大地に大量に染み込み続け死に続ける人がいる。同じ精神が死に続けている。何も考えずに出来事を記録していた人がいたとしてそのようなことが地上で起きていれば気になるでしょ。痛みを肉体が覚えてしまうように記録していた人もクローディアを覚えてしまった。力を手にするのではなく力を使うことができる。お母さん、敵はクローディアだよ。私たちの記憶を消しても記録している人は覚えている。私が記憶に残した10万。敵がクローディアであれば力を使うしかない。敵がクローディアではなく実験場の首謀者であれば記憶を消す意味があると思う。だけどこのようなことができるのはクローディアしかいない。力を使って敵の数を増やしたと思う。外の世界にいる無関係な人も消しているくらいだから首謀者も探して消しているよ。」

「お母さん、体を作って入れ換わって。姉さんもね。20歳と16歳でいいでしょ。寿命で死ぬつもりなのは知っているけれど、私を騙して死ぬのは許さない。それなら焦らずに力をつけてお母さんの考え方を変えるために努力する。拒むのなら封印して記憶を消して何もなかったかのように体を交換する。絶対に嫌だと拒むのなら私も一緒に死ぬ。お母さんが死ねば皆殺しになってクローディアの実験がまた始まるよ。」


 お母さんを守ることを考えている方が頭が冴えている気がする。


「リア、根拠があってそれを言っているの?」

「根拠は必要ないよ。お母さんは寿命が80年延びる。姉さんは体の痛みを忘れられるかもしれない。永遠に生きようとしているわけでもない。敵は姉さんとお母さん以外を殺しても力を失わない。それに気づかれたときは皆の死を受け入れるよね。」

「リア、私の家族は力で消すことはできないはずよ。何に気づいたの?」


 姉さんはお母さんに説教されるのは当然のことだと考えている。だから気づけない。


「リア、焦っていたのに急にどうしたの?まるで別人のようじゃない。」

「私が焦る理由はお母さんに残されている時間が分からないからだよ。優先順位に従って考えることにしただけ。姉さんは普通の家族を想像しているから違和感を覚えない。姉さんを説教できる存在はいないはずだよ。いたとしても敵のクローディアくらい。お母さんにそれができるのは記録係に認められているからでしょ。試しに私が姉さんに対して激怒してみようか?以前はクリスの精神だから平気だったはずだよ。」

「私に問題があれば誰でも怒ればいいよ。リアは何を言っているの?」


 無理だね。姉さんに説教したり激怒しようとすると死が迫ってくるのを感じる。それも絶対に避けられない死。やはり記録係が許さないみたい。本当に酷い話だよ…。


「やめなさい!よく分かった。私とクロアが新しく体を作って換えればいいのね。」

「姉さんも知っていた方がいい。姉さんは何しても精神が濁らない。記録係が全てを許すから。逆に姉さんを説教することは許されない。全て正しい姉さんを説教する理由は誰にもない。私は激怒しようと考えただけで死ぬと感じたよ。だけどお母さんは記録係に認められることでそれが許されている。家族でお母さん以外が姉さんに説教すれば死ぬ。心の中で思っているだけは許されても口に出すことは許されない。そして記録係から身を守る手段がなければ絶対に勝ち目がない。恐らく敵は自分を複製して封印して備えている。記録係は何を思ったのかクローディアの実験を再開させた。人形ばかりだから複写するように環境と研究員を用意できる。それを見たら敵も手出しできない。だけど自分が力を失っていない。お互いを消すことが許されないから必然的に三女以降の誰かが戦うしかない。だけど力が使える相手に勝てる手段がない。殺しに来ていると気づかれても駄目。殺されても駄目。お母さんは自分の寿命が近づいたら姉さんの年齢の体を作って入れ換えさせたに決まっている。家族が崩壊すると言っているのに!」

「肩書を軽く言うことで私を勘違いさせたね。寿命の最低が2000年なのはクズ兄の設定にすぎない。本当なら5000年は生きられるはず。お母さんが私を説教するために力を使うときの代償の肩代わりをしたのであれば何年くらいの寿命を削ったのか分かっているよね。教えて!」


 最悪な状況を言ってみただけなのにお母さんが否定しない…。


 記録係も姉さんを殺したいわけではないので代償はそれほど重くないはず。だけど敵は自分の寿命が尽きるまで力を使う。自分を使い捨てにしている。結果的に寿命を使い尽くす代償になっているに違いない。


「10万人以上だと考えると私の寿命から4500年削ってクロアの寿命から500年削っている。敵は全ての寿命を使い尽くしているでしょうからもう少し増える。記憶を消したことで私の方が焦っていたみたいね。」

「隠すべきことではない!今すぐ作ってくる!」


 姉さんも激怒できるようになったんだね…。

 お母さんが普通に話した内容が余りにも酷すぎて現実逃避したくなる。


「リア、激怒すると思ったのに静かなのは何故なの?」

「隠していたことには怒っているけれど、肩代わりしていなければ姉さんが死んでいた。どちらにしても5000年以上の寿命が削られる。私の予想が当たっているんだね…。」


 敵は常に2人以上で活動しているはず。そして何人封印されているのかが分からない。

 嫌な予感が増していく…。


「女王同士は力を使って殺せないと分かるの?女王を殺せば力を失うと分かるの?状況から当てずっぽうで言ったけれど、敵は自分を殺させたりして試している気がする。そしてクリスの精神だったときの姉さんは女王ではなかった。クローディアの精神に戻った姉さんが力を使えると敵は知らないはず。実験を潰したクローディアは女王で決定だという行動をしている。力を使うことだけに頼っているとは思えない。お母さんと姉さんは星に攻撃できない。私が攻撃しようとしたら消される。勝ち負けに関わらず実験再開の可能性が高いよ。それに守るものがない敵は女王の殺し方を知っている。星の寿命まで生き続けるつもりの敵は無視することもできたのに攻撃を仕掛けてきた。お母さんはどのように感じているの?」

「敵が殺したクローディアは騙した相手かもしれない。最初の頃は本当に実験を止めたかったかもしれない。私がクロアの力を頼るなら必ずクローディアの細胞と精神を結界内以外は完全消滅させようとする。それなのに死んでいないのだから殺せない。直接女王を殺そうとしていないので力を失ってはいない。敵は騙したクローディアに私は疲れたから殺してほしいと言いつつもう1人は隠蔽して見学する。そのあと実験が再開されたのを見て力を失ったクローディアが潰しに行ったら消された。そのように自分の予想を確認していく。例えば結界内にいる女王の関係者以外を殺せと力を使った場合は私とクロアしか生き残らないと思う。クロアは誰が中にいるのか見えないようにしているけれど、間違いなく分身から情報を得ている。皆が生き残る方法は全員がクロアに命を捧げるか隠れる。その場合は敵を倒す手段がクロアを殺させるしかない。嫌な作戦ばかりが思い浮かぶ…。ちなみに私が命を捧げていると考えられているのはクロアに命を助けられた時にクロアのために生きると考えて実行し続けていたからなのかもしれない。リア、変えられそう?」


 お母さんもここまで酷い状況は絶対に想定していなかった。今話した命を助けられたから姉さんのために生きるということを変えてという事だったはず。それなのに何なのこれは…。


 クローディアの殺し合いを楽しんでいるのが世界だとかふざけるな!


 怒りが湧いてくる。今は激怒するときではない…。

 焦るな、慌てるな、落ち着け、落ち着け、落ち着けー!


 誰も犠牲にならない。誰も犠牲にしない。

 私たちは命を大切にするのだから。


「体を作り始めてきたよ。リア、そんなに怒ってどうしたの?」

「全員聞いて!今すぐ姉さんに命を捧げて!世界の女王の姉さんに命を捧げて!理由は後で話すから命を捧げて!そうしないと殺される!心の底から本気で命を捧げて!ミュリエルもお願い!」

「今すぐクロアに命を捧げなさい!敵が迷っている時間はそれ程ないはず。ミュリエルも今から家族入りを許すよ。クロアは世界の女王だから命を捧げて問題ない。命を奪われるわけでもない。だから今すぐ捧げなさい!」


 お母さんの迫力が凄かったのか誰も何も言わなかった。私も姉さんに命を捧げた。雑に消されるわけにはいかない。私の命はお母さんのためにある。簡単に消させない。命を大切にするお母さんに消えたら体を作ってなんて言えない。それに今はこの方法でしか助からない。


 私はお母さんと家族と一緒に楽しむのだから!

 

「姉さん、全員から捧げてもらった?」

「大丈夫だよ。全員の心の声が届いたから。」

「クロア、今すぐ引越して。魔獣を狙った攻撃の巻き添えで殺そうとしてくる可能性が高い。それで相手の攻撃力を見極めて。リアが激怒してから危機感が強く増していく…。森の端から端でいい。もしくは森の中で完全隠蔽。皆が自宅にいるように魔石を置いて結界も残したまま引越して。ここからは20㎞以上離れて!」


 20㎞と具体的なのはそれ程の危機が迫っているという事だと思う。巻き添えで殺すにしても攻撃の威力はそのままで範囲を狭くすることはできるはず。お母さんの危機感の通りだと被害が届いてしまう国や街がある。クズばかりなのは予想がつくけれど、顔も見たことがない人を殺そうとまでは思わない。

 それが世界の女王のすることなの。世界が力を使えないようにすればいいのに…。


 順々決勝がクローディア同士の殺し合いで、準決勝が世界の女王同士の殺し合い。

 それならば決勝の相手は世界だよ!

リアがお母さんを変えてお母さんと一緒に楽しむ。家族と一緒に楽しむ。

簡単に殺されるつもりはありません!

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