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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第70話 お母さんと姉さん

 姉さんの前で食事を作りパンも焼けた。配膳する頃には皆が席に座って待っていた。お茶を用意し全員が座った後に姉さんの「それでは食事しよう。」などの言葉で食事が始まる。

 そして昼食が始まった。


「食事しながら聞いて。ここにいる馬の心には傷があり繁殖期が確か来月までだったと思う。私の予想では今年妊娠する牝馬はいないと考えていた。だけど今朝の様子を見ていたらそうでもないことが分かった。クリスの体が来週には出来上がる。それからはドラゴンを生み出すため本格的に研究すると考えているけれど、乗馬するのか聞いておきたい。クリスとミュリエルは同じ行動すると思っているけれど、そうなのであればクリスが代表で答えて。乗馬するのかしないのか。するのであれば頻度を教えて。それと妊娠して仔馬が産まれたときに世話したいのかも知りたい。仔馬の主は出産した牝馬の主だからね。」

「寿命が最低でも2000年以上になるでしょ。だから大昔に研究者として生きていたときのような研究を再度するのはやめようと思っているよ。乗馬できるのであれば午前は乗馬して午後から研究するのが理想だね。妊娠後期の牝馬に乗馬するのは無理でしょ。それでも会いに行って話はするつもりだよ。仔馬が産まれたらドラゴンの研究が遅れるだろうね。人間だった頃は人や動物と接点を持たなかった。その反動なのか分からないけれど、専属馬が可愛くて仕方ないのよ。心の傷についてはミュリエルの専属馬も含めてゆっくり探っているよ。乗馬ではいつも皆で雑談だね。そしてクロアに聞きたいことがあるの。ドラゴンの素材を消したでしょ。研究所の機材やドラゴンの素材などはクロアの分身に探してもらっていたからね。」

「機材は全て検査して邪魔なものを排除して直したけれど、ドラゴンの素材は別物だよ。あれは悪意に染まった分身の細胞。今まで集めてきた研究素材も確認してから全て消した。それにドラゴンの素材が必要か分からないよ?人間の寿命を延ばすことができて力まで増す。更には誰にでも与えることができる。偽ドラゴンがドラゴンの姿になれるようにしたのは長寿になる研究を隠すため。実はクリスが生きていた頃にドラゴンは絶滅しておらず各国が檻に閉じ込めて管理していたとしたらどのように思う。それに気づいたクリスが世界中に発表しようとした結果が今だとしてもおかしくはない。クリスがされた拷問はかなり酷いと考えられるし理由はそれくらいしか思いつかない。それとクリスは魔石に入っていて思考力が低下したと思っているはず。発展させるのも厳しい。クリスなら私の細胞を一番最初に調べていると思っていたよ。それで体を得ることにしたのでしょ?」


 馬の話からドラゴンの話に突然変わった。そして私たちの細胞にはドラゴンの力が入っていてクリスが人形にされていた理由まで予想している。

 話を聞いているだけなのに別人格ではない本来のクロア姉さんが完全に別格だと分かる。勉強していた班長が超えることができていたとは思えない。


 自分自身の力で世界最強になった人はやはり違う。


「やはりクロアはこうでないとね。思考力の低下は記憶を消されたことが原因かもしれないと考えていたけれど、魔石には脳がないのだから思考力が上がることはあり得ない。経験も蓄積して活かせるのか怪しい。そして新しい何かを発見できていない。魔石の体は便利だけれど、殻に閉じ込められている気がしたよ。長寿で力が増す細胞であれば大昔の私なら飛びついたはず。体を得てから細胞は研究するとしてクロアは実験場でしていた研究を予想できているの?」

「複数の国が管理していたと考えられるけれど、大国が密偵を送り研究結果を集めていたと思う。そして人を作ることができ記憶と精神まで入れることができるのだから簡単だよ。圧倒的な個人の力による永遠の世界征服。自分の周りにいる部下は魔石人形にすればいい。記憶と精神を入れ換える魔石を通路に置くことにより永遠の忠誠を得られる。それ以外の人間は奴隷というよりもおもちゃに近いね。世界征服しただけでは面白くないからおもちゃと魔力製造のために他国を残すつもりでいた。各国がすることを喜劇のように楽しみ気紛れで潰す。そういう世界を作りたかったとのだと思う。」


 予想にしては具体的過ぎる。


 クロア姉さんは分身を使って集められていた研究資料を読み終えている気がする。それらの情報から答えを導き出すのはクロア姉さん自身。

 そうだとすると分身の使い方が別人格と違いすぎる。クロア姉さんは分身に何かを考えさせるつもりがない。膨大な情報を時間短縮して集めるのを目的としているのだから。


「現実にそれができるクロアが言うと説得力が違うよ。力と寿命を延ばし人生を永遠に繰り返すことを考えていたようにしか思えないね。それでフィオナは誰を疑っているの?」


 この会話の流れで一番重要なことを姉さんに聞くみたい。

 確かに別人格に助言していたのは姉さんだけれど、それをクリスが知る訳が無い。そして今の姉さんもそのことを知らない。だけど姉さんの感性を疑う理由もない。


「エルフ、ドワーフ、獣人だね。人間に見つかっていないのに種族名と特徴だけが伝わっている3種族。索敵して近づく人間を確実に殺しているのかもしれないけれど、住む場所が違いすぎる。3種族とも偽物の可能性が高い。早く人形と接触してほしいよ。クロアの索敵を警戒しているのか特定の人形を消すことが目覚める鍵になっているのかもしれない。3種族に会いたいはずなのに思い浮かぶのは遠ざける方法ばかりでその気にならない。寿命までに動かなければ疑わしいものは全て消して終わりにすればいいと考えているよ。ドラゴンの星にするのだから人が結界の外に出る必要はないからね。肉食の魔力を持たない動物を生み出せるのであれば動物も住むことができる世界にできるけれど、魔法で滅ぼされているとしたら素材が残らない。それだけは残念だよ。」


 記憶を消す前は会いに行くつもりでいたのに消した後は会うつもりがなくなっている。記憶を消す前よりも今の方が警戒心が高くなっている気がする。

 何故そのような考えに変わったのかを知りたいけれど、今の私がするべきことは考える癖をつけること。クロア姉さんの記憶を全て見ること。

 何もできないのに闇雲に手を伸ばすべきではない。時間の浪費にしかならないのだから。


「そうだね。天変地異が原因であれば化石とかで素材が得られるかもしれないけれど、魔法が原因だと何も残らない。という事で体を得てクロアの細胞を調べて何もなければ再度調査しないとね。乗馬は楽しいから続けるよ。クロアはどこまでの範囲を支配して遊ぶ予定なの?」

「この大陸の中央一帯は支配するよ。姉さんの意見で森の面積を広げて魔獣を増やし魔力を増やせば簡単だからね。やはり土地の中に自然の海と山と川がほしいからね。ドラゴンを飼うのならそのくらいはしなければ駄目でしょ。安全に行動するとしても100年後には支配完了しているよ。それまでに動きがなければ怪しい土地に住んでいる人は消す。勿論人形も同時にね。」


 クロア姉さんの動物愛はドラゴンにも適応されるみたい。だからといって大陸の端から端まで支配するのは話が大きすぎる。本当に近くて遠い存在。

 クロア姉さんも姉さんと同じで自分の力を過小評価する傾向があるけれど、それでも楽にできると考えている。本気になればどこまでできるのかが予想もできない。


「ドラゴンを放し飼いにするのならそのくらいの広さはほしいね。流石クロアだよ。餌まで用意して完璧じゃない。あとはミュリエルと一緒に頑張るだけだね。」

「はい。微力ながら頑張ります。」


 ミュリエルはクリスの助手になったみたいだね。何も目標がないよりもクリスに勉強を教えてもらいながらドラゴンを生み出せたら絶対に楽しい。そしてそこから自分の目標が見つかるかもしれない。新しいことに挑戦しなければ変われない。


「本題に戻すよ。末っ子の牝馬が求愛行動していたのを見たの。という事で末っ子の乗馬を調査するよ。あなた達は馬の心の傷を探るようなことはしないでいい。だけど会話の内容やどのような情報が得られたのかは知っておきたいの。昼食後とお風呂上りに聞き取り調査するよ。そして明日の朝に方針を決めて伝える。牝馬の求愛に牡馬が応えていたら該当する牝馬の飛び込みは禁止する。お腹を冷やすのはよくない。1ヵ月後にクロアが確認して妊娠していなければ解除するけれど、妊娠していたら遊び方を変えてもらう。私たちの指示が原因で流産させたくない。仔馬の命を最優先にするよ。それについて考えていると末っ子の指示を確認しておかなければ後悔する予感がしたの。ディアとロディはクロア、リアとアディとローアは私が話を聞くよ。意見や反論があるのならここで言いなさい。」

「心の傷は癒さなくてもいいの?何も考えなくてもいいの?」


 アディは直球だね。何も考えなくていいはずがない。

 姉さんは2人の成長を見ながら考えるべきことを追加していくと思う。


「あなた達が話して得た情報の中に心の傷に繋がるものがあれば話し方を指導する。心の傷を癒すことまでは考えなくてもいいけれど、刺激しない話題や遊び方は考えてもらう。質問にはいつでも答える。相談にも乗る。だけど馬はあなた達の笑顔と笑い声で心を動かされたと思っているの。あなた達が楽しむことは絶対に必要だけれど、一緒に馬も楽しませてあげて。妊娠している可能性のある牝馬を仲間外れにするようなことはしないで。それができないのであれば私が預かる。仔馬が産まれたら更に遊び方を考えなければならない。思いつかなければ仔馬も私が預かる。できるのかできないのか答えなさい。」

「できるようになります!」

「絶対にできます!」

「できるよ!」

「作戦会議が必要だね。」


 姉さんが命について話すと空気が張り詰める。今までの会話が消し飛ぶかのようにリビングの雰囲気が変わる。2人の姉の存在感は違う。

 そして牝馬が安心した理由は私の予想と違う。姉さんとクロア姉さんの自分自身を除外する癖が間違いに繋がっている気がする。2人を除外すれば理由がそれしか残らない。聞き取りすれば私の悪い予想が当たりか外れなのかはすぐに分かる。外れていてほしいけれど…。


「クリスとミュリエルは今まで通り乗馬してね。妊娠している可能性があれば伝えるから。」

「分かったよ。仔牛と雛も可愛いだろうね。鳥は最初に見たものを親だと思うの。雛の親になりたい衝動に駆られるよ。クロア、有精卵は親に任せるの?」

「鶏が暮らしている邸の中に保温室を用意してあるよ。親離れするまではずっと世話しなければならない。本気なら教えるけれど、もしかして本気なの?」


 クリスはそこまでするのかな?ドラゴンの話はどこへ行ったの?


「寝室に保温器を作ってくれるのであれば親になる。基本的には服のポケットの中に入れる。乗馬服の胸元にポケットを作ってよ。」

「本気みたいだね。今朝有精卵を2つ見つけたよ。本の通りだとすれば鶏の雛は21日で産まれるから20日後から徹夜で卵を見ているといいよ。2匹の親になるけれど、それでもいいのならね。餌は用意するけれど、餌をあげるのはかなり大変だよ。ある程度大きくなれば馬に直接乗せられると思うけれどね。」


 クロア姉さんが大変だという事は恐らく1時間ごとに餌をあげる必要があるとかだと思う。ドラゴンを研究している時間にもピヨピヨ鳴いて甘えてくるはず。乗馬して馬に愛着を持っているクリスが甘える雛を放置して研究できるのかな…。


「大昔の私はドラゴンを研究して拷問されて殺された。それしかしていなかった…。理由はクロアの予想通りなのかもしれないけれど、何も残せていない。だけど二度目の人生を始めることができる。体を得てから二度目の人生が始まるの。人には寿命があるから何事にも本気になれるのだと思う。クロアに力を入れてもらえば睡眠不足はどうにでもなるよ。死ぬときに後悔しなければそれでいいの。だから私はできることをしなからドラゴンを生み出す。ミュリエル、手が届くところに自分のできることがあるのなら挑戦した方がいいよ。あのときやっておけばよかったなんて言わないようにね。という事で親になる!体温調節できる魔法もちょうだい。」

「私もやります。クリスさんと同じようにしてください。お願いします。」

「クリスとミュリエルが親で決定ね。準備しておくよ。」


 クリスには魔石にされたときの思いが残っているのかもしれない。ドラゴンを研究していたことに満足していたのなら今のようには考えないと思う。ドラゴンを生み出してからでも色々なことに挑戦できるのだから。だけど人はいつ死ぬのか分からないと身を以て知っている。だからできるときにやると決めているのだと思う。私も思考力がついて自分で考えられるようになったときには勉強しながら色々なことに挑戦しよう。姉さんを変える方法だけを考えていては何も変えられないと思う。


 昼食が終わりクリスとミュリエルはいつも通り2人で厩舎に向かった。2人の姉と私は後片付けをしてからそれぞれの自室に入った。部屋の中ではアディとローアが座って待っていた。

 円卓だからアディとローアが姉さんの隣を選ぶと分かっている。だから空いている椅子に座ったけれど、私の正面が姉さんになった。


 姉さんはアディとローアに専属馬と準専属馬について聞きながら紙に書いていた。話しやすいように順番に聞くのではなく2人に自由に話させることにしていた。

 そして2人の話を聞いていることに我慢の限界がきて怒りで震える手でペンを置いた。姉さんの後悔するかもしれないという予感は的中していた。私の悪い予想も当たっていた…。


 無邪気に話している2人を見ていると悲しかった…。


「とりあえず我慢しているよ…。乗馬するための注意事項は話したよね!全力で走らせないだけではなかったはずだよ。リアは何故馬が安心したと考えているの?」

「姉さんとクロア姉さんの存在が大きいよ。クロア姉さんが全ての馬を世話しているだけで大満足だと思う。そして末っ子が乗馬する前に姉さんが馬を確認している。馬はクロア姉さんが世界の頂点で姉さんが心まで含めて全てを見てくれていると分かっている。2人がいるから安心安全で何も不安がないの。昨日はクロア姉さんも一緒に遊んでいた。10頭いて1頭も川の深さや水中を怖がらず飛び込むのには違和感を覚えた。問題が起きても必ずクロア姉さんが助けてくれるので飛び込んだとしか思えない。それに姉さんが私とリオリナに同じ場所で指導していた。馬から見れば個別対応までしてくれると信じられる光景が出来上がっていたよ。フィディーが姉さんと何していたのかは話しても問題ないし見ていた馬も興味があるから聞くと思う。更にクロア姉さんがリオリナのためだけに食事を作りに来るので馬は感動したと思う。姉さんとクロア姉さんは自分自身を過小評価しすぎているよ。最初から自分たちを除外しているので末っ子しか理由にする材料がなかった。確認するのは簡単だよ。8頭の馬に聞けばいいのだから。」


 未熟な私でも見た光景をそのまま受け入れることはできる。

 姉さんの沈黙が長いのはクロア姉さんと念話しているからだと思う。


 クロア姉さんも似たような話を聞かされたと思うから…。


「リアの言う通りだったよ…。クロアの分身が確認したから間違いない。そしてクロアと私が見ていないと末っ子と乗馬しない。既に怖がっている。乗馬している馬に無関心なのが心の傷と重なってしまう。幼くても平気で乗馬できる子の指示を無視したら何されるのか分からない。心の傷が更に酷くなりそうだけれど、クロアと私の存在で心の傷の悪化だけは防げていた。8頭の馬はクロアと私を信じてくれている。今朝も午前はクロアが常に一緒だったので大丈夫。末っ子は自分の楽しみを優先させ馬の感情を無視した。先程できると言ったけれど、絶対に無理。ここでは動物の意思が優先される。既に4人は乗馬する資格がない。末っ子は私たちに言わなかったことまで指示していた。クロアがいなければ即死するかもしれない指示。クロアがいたので馬は指示を無視した。3歳児を乗馬させた私が悪いことにする。それしか怒りを抑えられそうにない。クロアの激怒も凄いからディアとロディはリビングにいるはずだよ。一緒に駆けっこでもしてきなさい。」


 アディは絶対に何か言う気がする。それが姉さんを激怒されることになるとも考えずに。それにしても記憶を消した結果がこれに繋がるとは思わなかったよ…。

 姉さんの精神の色は変わっていない。自分の責任にすることで怒りを収めようとしているからだと思う。私のお漏らしを気にしている状況ではない。このままでは2人の姉が末っ子を見捨てる可能性まである。それだけは防がなければならない。


 アディとローアの視線と明確な敵意を感じる…。

 私に八つ当たりするつもりなのか邪魔だと考えているのか理由は分からないけれど、黙って部屋を出る選択肢はないみたい。


 アディが口を開いた…。


睡眠(スリープ)

アディとローアを眠らせた。


 何も言わせないし姉さんには聞かせない。これ以上は2人に呆れてほしくない。アディとローアがここから成長すればいいのだから。


≪転移≫

アディとローアを布団部屋の布団の上に移動させた


「眠らせて布団部屋に移動させただけだから大丈夫。それに姉さんの精神の色は変わっていないよ。」

「2人が何を言うつもりだったのかは分かっているよ。私に聞かせたくなかったのでしょ。本来なら馬に乗るのは半年後だった。過去と一番違うのは何かな?」


 やはり気づいている。私が2人を飛ばすことまで想定内なのだと思う。その力が拷問によるものだとしても姉さんの生き抜くために得た力なのは違いない。だから自分自身を信じてほしい。自分と家族を守るために使ってほしい。


 命を捧げていることだけは私が成長して必ず変える。


「復讐だよ。クロア姉さんの拷問されていた記憶を見て4人とも人形に復讐するために勉強していた。相手が人形だから殺すのではなく壊すことになるので2人とも許していたの。今の方が3歳児らしいけれど、乗馬するのが早かったのだと思う。それに半年後でも4人が乗馬を正しくできていたのか分からないよ。4人は1日しか乗馬していないし乗馬中は姉さんと一緒にいたからね。それに途中で姉さんは考えを変えているの。復讐を忘れさせようとしていた。そのための乗馬でもあったから。」

「命を大切にする事と真逆じゃない。どこか歪んでいてもおかしくないね。それでリアから見た私の失敗は何なの?」


 姉さんの失敗はない。あるとしたら自分の力を過小評価していたこと。

 そして自分をいつも除外して考えていたこと。


「失敗はしていないよ。だけど姉さんが自分自身の力や存在感も含めて考えていれば違っていた可能性がある。クロア姉さんが別人格だったときには姉さんしか考えていないの。今の私では命を捧げるのを止めることはできないけれど、姉さんが自分を認めることはできる。末っ子を乗馬させるべきか把握できていなかったとは思えない。今のままでは無理だと言えばよかった。そうすれば4人は乗馬したいから勉強したはず。何故憧れていた家族に力を出し惜しみしているの?姉さんとクロア姉さんの力が違うからいいの。本来のクロア姉さんは凄いけれど、長女として家族の方針を決めるのは姉さんだよ。クロア姉さんも家族の方針は姉さんを頼っているのだから。全部姉さんが決めたの!これからの方針を決めるのも姉さんだよ。お漏らしする赤ん坊に言われているのにいいの?姉さんが私を赤ん坊にしたのだから私のお母さんだよね!」

「赤ちゃんに言われても腹立つことはないよ。それではもう一つ過去について教えて。オフィーリアを考えたのは私だと思うけれど、予定と違う行動している気がする。私が誰に付けた名前なの?」


 何故それに気づけるの?

 名前だって姉さんが考えたのか分からないはずなのに全く疑わない。


「姉さんが自分の魔力器の精神を赤ん坊から育てるときに付ける予定の名前だった。名前を考えて努力した方が精神が綺麗になると考えてね。だけど私にくれたの。初めて考えた名前をあげると言ってね。お母さんの細胞を使って10歳の体を得なさい指示したのもお母さんだよ。私は別人格の姉さんに激怒していたしお母さんにも怒っていたので反抗期だと言われてね。お母さんが最初の子供を私にしたの。そして赤ん坊に全て任せて記憶を消したの。育児放棄だよ!」


 お母さんは私の話を聞いて声を出して笑っている。


 お母さんが転移を使ったと思うけれど、リビングテーブルには姉さんとクリスとミュリエルが座っていた。何か決めるのであれば情報は統一しておいた方がいい。姉さんがクリスとミュリエルを呼んだのだと思う。


 お母さんだけ笑顔なのが場の雰囲気と合っていない!


「反抗期の妹が私をお母さんと呼ぶことに決めたみたい。クロアならどのように対応するの?」

「先程まで怒っていたのにご機嫌だね。リアだけお母さんと呼ぶのは嫉妬が凄いよ。そして1日でも生きた日を大切にするのが姉さんでしょ。だからリアの歓迎会を終了した直後まで記憶を消す。それに皆がお母さんと呼べば解決するからね。それと全ての動物から4人の記憶を消す。8頭の馬については名前も考え直す。4人に馬を見せて名前を考えさせて私たちが修正する。動物に餌をあげたり撫でるのは許可してそれ以上は勉強次第にする。4人の教師は姉さんが最適だよ。だから料理よりも仮想体を優先して。命について教えるのは姉さんが一番。馬の総意だから認めるしかないよ。あとは8頭の馬に姉さんと私が乗馬してしまうと末っ子の乗馬を拒否する可能性が高い。リアが乗馬してもリオリナが怒る。クリスとミュリエルも他の馬に乗馬したいとは思わないでしょ。そのため基本的には自由行動にするしかない。クリスとミュリエルには説明してあるから大丈夫。私が別人格になる前の希望が叶う日が来たみたいだね。」

「フィオナ、100歳以上なのに姉は無理があったよ。今回ばかりは諦めた方がいいね。」


 早く姉さんの記憶を見なければならない。私は分かっていて当然だと思うはずだから詳細までは誰も話さない。記憶は絶対に見るとして嫉妬されても関係ない。お母さんと呼ぶことに決めたから!


「半年間は長女として過ごして記憶を消して母になるのね。時間まで過去に戻された気分だよ。そういえば悪意のある気体はどのような状態なの?」

「消してあるよ。魔力に精神を貼り付けていただけだからね。クズ能力から解放されるまでに得た情報は全て嘘だと考えた方がいい。強制命令で嘘を吐いたのか分かっていて嘘を吐いたのかは分からないけれど、当てにしない方がいい。お母さんは元々当てにしていないけれどね。世界中から魔石を集めたら人形が殲滅されるはずなのに残っているから。そして分身が完成するまでお母さんが勉強を教えている時間はフィディーを小さくして机に乗るくらいにすればいいよ。」

「お母さん、私のことはしっかり説明してね。早く始めよう。」


 姉さんが打診したけれど、お母さんは長女になることで逃げたみたいだね。

 私がいるので絶対に逃がさないけれどね。


「クロア、今の話し通りに準備をお願い。記憶を消して魔法も全て消した4人を起こして椅子に座らせて。今までと少し設定を変えるよ。作り話を入れるけれど、その通りだという顔をしておいて。」

「少し待ってね…。準備できたよ。お母さんの好きなようにして。」


 お母さんの作り話は現実に起きたことに繋がっている可能性がある。

 何を話すのか楽しみ。


「それでは私に注目して。特にディア、ロディ、アディ、ローア、あなた達4人から半年間の記憶を消した。あなた達の悪行を見逃した罰として私も半年間の記憶を消した。記憶をリアの歓迎会の後にしたのはこの日から4人に乗馬してもらったから。まずはオフィーリアについて詳しく説明しておくよ。私の細胞で私が名付けた私の子なの。10歳だけれど、中身は生まれたばかりの赤ちゃん。クロアの記憶があるから話せるだけ。10歳にしたのは別人格に激怒して私にも怒る反抗期の子だから。そしてこれまでは長女だったけれど、今から母になることに決めた。だけどリアに嫉妬して敵意を向ける子が2人いた。自室で座っていただけのリアを邪魔だと考えて追い出そうとした。記憶を消したけれど、状況はクロアから聞いているからね。それにクロアとリアは私を母と呼ぶみたいだけれど、4人は好きにしなさい。但し、乗馬させない。命を大切にせず死ぬような指示を出し続けた。心の傷を考えず8頭の馬が4人に恐怖していた。4人には2頭の主になってもらっていたけれど、あなた達の馬からも記憶を消してある。今から馬の見学に行く。これから先も乗馬する気のない子は手を挙げて。」


 4人に話し始めたお母さんの雰囲気が一瞬で変わった。激怒しているのを抑えているのだと誰でも分かるようにしている。完璧に感情や雰囲気を消せるお母さんが怒りをぶつけるように話している。念話で姉さんからどのような情報を聞いたのか分からないけれど、相当危険な指示を出していた。

 姉さんがいるから馬は指示を無視することができた。とても乗馬させられない。目を離すことはできない。恐らく普通の3歳児はこのような状態なのだと思う。

 記憶を消した流れが4人が悪意に染まってしまったときと似ている。似せて話している気がしてくる。

 そして誰も手を挙げない。流石にそれは私でも予想できた。これから勉強すれば乗馬させてあげるとはしないはず。ここでは動物の意思を尊重するのだから馬が決めるようにするだろうね。


「1人もいないみたいね。記憶を消したけれど、馬に謝罪してもらう。クロアのお陰で馬に言葉が通じるからね。クロア、この子たちが乗っていた8頭の馬と私の馬を広場に集めて。私たちも移動する。クリスとミュリエルはそこから厩舎に向かってもいいけれど、見届けておく?」

「そうだね。見届けておくよ。フィオナの怒り方を考えるとかなり危険な遊びをしたみたいだね。クロアも激怒していたけれど、フィオナが母になって収まったからね。」


 動物大好きな姉さんが激怒していた。だけどお母さんになることが決まって怒りを収めた。全て任せるつもりだね。お母さんが激怒して行動すればそれで済むと考えているに違いない。


「クロア、お願いね。」

「分かったよ。」


 9頭の馬が東を向いて私たちの目の前で横並びで立っている。私たちも西を向いて横並びで立っている。末っ子の前にいる馬が謝罪するべき馬に違いない。


「フィディーは待っていて。クロア、8頭は並んでいるの?」

「並んでいるよ。4人は2頭の前に立ちなさい。」

「はい…。」


 姉さんの指示に怒りが漏れていた。本当は怒っていると4人に教えるためだと思う。

 完璧に感情を制御している2人を見ていると戦闘中に感情把握を使うのは魔力の無駄だね。


「あなた達の主は目の前にいる子だったの。だけど教育が足りなかったから子供たちが主として過ごした記憶は消してあるよ。名前も子供たちに考えさせるけれど、最終決定は私たちがする。それと8頭は今日から暫くは自由に過ごして。私とフィディーは午前中に4人に勉強を教えるので他の主についていって遊んでもいいし好きなように過ごしてもいい。だけど毎朝この子たちが話しに行くので遊ぶのはそのあとにしてあげて。今日は今から勉強するので明朝に話し相手をしてあげて。背に乗せてもいいと思えたらあなた達から伝えて。無理に主になる必要はないよ。妊娠したら伝えるし仔馬が産まれたら私とクロアが一緒に遊ぶから心配しないで。背に乗せる主がいなくても孤独にはしないと約束するよ。4人は謝罪しなさい!」

「ごめんなさい…。」


 これで末っ子が乗馬するのは難しくなった。勉強すればいいのではない。

 8頭の馬から不安は取り除かれている。背中に乗せて一緒に散歩したり遊べば楽しいと信じてもらえるまで努力し続けるしかない。

 今年は乗馬させる気がないのだと思える。


「4人を謝らせたのは指示が自分の楽しみだけを考えた危ない内容だったから。1頭も怪我させていないから大丈夫。私とクロアが常に見ていたけれど、指示していた内容までは意識していなかったの。あなた達も私たちが見ている前ではこの子たちの指示を無視していたからね。クロア、魔法は入れてくれた?」

「3つ作って入れておいたよ。机の大きさと手に乗る大きさに変えることができる魔法と解除する魔法。」


 厳しい勉強期間になりそうだね。


「ありがとう。フィディー、どちらの大きさがいいの?勉強する部屋には今の大きさだと入れないのよ。半日だけでも自由にすると拗ねるか泣くでしょ。勉強に付き合いなさい。あなたにも馬の気持ちを伝えてもらうという役目があるの。そちらがいいの?本当に甘えん坊ね…。4人は勉強する?諦める?」

「勉強する!」


 普通に話して念話で返事を聞いている。

 専属馬のことをどれだけ理解しているのか見せつけられる。


 フィディーは手に乗る大きさになるとしゃがんだお母さんの右手に乗って腕を走っていく。

 肩まで行くと前足と後足を使って跨った。


 馬はお腹を触られるのを嫌がる子が多いとお母さんが言っていたけれど、フィディーには当てはまらない。見ている8頭は驚いている気がする。更にフィディーが前足と後足を器用に使ってお母さんの髪の毛で隠れそうなくらい顔に接近していく。動きが止まったので顔に触れていると思う。これを見た8頭は羨ましいと思いお母さんに乗ってほしいと考えているに違いない。フィディーの心の傷について知っているとしたら間違いなく思う。


 簡単に乗馬を許可させないため8頭に見せた気がする。

 そのくらいお母さんが怒っているという事だけれどね。


「今日は今から資料館で勉強するけれど、明日からは午前中に勉強しているよ。8頭は困ったらクロアかクロアの馬に言いなさい。名前は早く決めるつもりだから心配しないで。あなたはかなりその気があるみたいね。来年が楽しみだよ。妊娠を強制するつもりはないけれど、仔馬は大切に育てるからね。妊娠しているかもしれないと思ったら川に飛び込むような遊びやお腹を冷やす遊びは控えて。ここでは命と心を大切にするから妊娠したらお腹の中の命を大切に行動して。それでは勉強に行くよ!」

「はい!」


 8頭は普通に立っていただけにしか見えない。違う行動をしていたようには見えない。お母さんが話しかけた馬が一番妊娠する可能性が高い馬に違いない。尻尾の振り方が違ったのか耳の動かし方が違ったのか感じ取ったのかは分からないけれど、話しかけられた馬は恥ずかしそうに俯いている。それを見てお母さんは楽しそうに資料館に向かった。


 隠し事はできないと分かりやすく伝えている。

 悪いことをしている馬であれば怖く感じるけれど、普通の馬であれば安心できる。


 怒った意味が少しはあったのかな…。


「私たちは厩舎まで転移しよう。行くよ。」


 姉さんの転移で残っていた皆は厩舎に移動した。


「私が全頭を世話しているけれど、お母さんが全て把握しているよ。相談したいことがあるのなら明日の午後から散歩するはずだからそのときにしなさい。私かクリスとミュリエルについていって会話に参加してもいいけれど、リアは駄目だよ。昨日見ていたでしょ。4本の足で歩けるようになるための練習するから。クリスとミュリエルは雑談していると言っていたけれど、多重念話を持っていないでしょ。皆に聞こえるようにする魔法だけれど、使ってみる?話したい相手を選ぶのは念話と同じだけれど、皆に聞こえるようになる。念話と多重念話を併用するのは今のクリスとミュリエルの魔法技術と馬では無理だけれどね。」

「それは便利でいいね。秘密の話はしていないのでちょうだい。」

「私もお願いします。」


 今の私でも併用できない。そもそも併用できる意味が分からない。念話も多重念話も重なって同じ魔力の線にしか見えないはず。話すときにどちらの線を使うのか指定できるように魔法を作ってあるのかもしれない。姉さんが魔力の線ではなく魔法と言っているのだから。


「2人に渡したよ。クリスかミュリエルのどちらかが使えば大丈夫。馬にも違う魔法だと教えてあげて。話しかけたい相手を思い浮かべて発動すればいいから。」

「ありがとねー!それではいつも通り散歩に行こう。ついてくる子はいるのかな?基本的には歩いているけれど、偶に走ったりしながら雑談するだけだよ。水の中には入らないからね。希望が多ければ入るけれどさ。」


 5頭もついていった。お母さんに声をかけられていた馬もついていった。

 昨日は飛び込み続けていたから疲れが残っているのだろうね。


「姉さん、私も行くね。今日は絶対に起こしてね。そして私で検証しないでよ。」

「あれはお母さんの案だからね。それなのに世話を押し付けるのがおかしいと思わない?仕事量の調節のために魔法を覚えないようにしているよ。昨日確信したからね。ところで今日の聞き取りでお母さんに何か言ったの?」


 指導方法や内容を考えるために私の状態を確認したのかもしれない。お母さんなら私の様子を見て違和感を覚えていてもおかしくはない。それを確信に変えたかったのであれば文句は言えない。

 結界を張って眠り続けたのは私だから。トイレに行きたくなって起きると思われたのも当然だと思う。赤ん坊でない可能性を全て捨ててしまったのは自分なのだから…。


「お母さんが名前を考えたのは自分だと確信していたけれど、予定と違う行動していると考えていたの。誰に付ける名前だったのか聞かれたよ。隠すことが何もないから正直に答えて家族の前で力を出し惜しみするなと怒ったのと、私を赤ん坊にしたのに全て任せて記憶を消したので育児放棄だと言ったよ。赤ちゃんに言われても腹立つことはないと笑われたけれどね。」

「魔力器の精神を消すしかなくて寂しかったのだと思う。だけどリアが正真正銘の自分の子だと分かったので母になる決意して本気だよ。赤ちゃんなのは私の記憶を見ていない事と体と精神が違うのでまだ馴染んでいないからだと思う。起きていれば漏らさないよ。食事の30分前に起こすからね。」


 姉さんも笑顔で私に助言すると5頭の馬と一緒に厩舎から出た。


 姉さんから見ても私はお母さんの子で間違いないみたい。これからは堂々と甘えればいいと考えると痛い目に遭うのは予想できる。自分の子には厳しい可能性がある。

 器用ではないのだから1つずつ覚えていくしかない。目の前のことを精一杯頑張るしかない。小さな経験でも積み重ねていけば大きなことが考えられるようになるのかもしれない。

 お母さんや家族と一緒に長い人生を楽しめなければ私がここにいる意味がないのだから。

家族の結束がより強くなりました。

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