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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第68話 約束

「自室では姉さんに甘えていいよね。今の私がするべきことは何かな?」

「魔法式に使う辞書があると思うけれど、破棄するか内容を全て確認する。破棄して新しく作り直した方がいいと思うけれど、クロアに確認してみて。そして円卓ではクロアと私に挟まれる場所に座りなさい。末っ子の会話に入るのは躊躇うと思うしクリスとミュリエルの会話にも入り辛いからね。それにクロアと私の会話に入った方がリアのためになる。」


 姉さんが魔法式を確認する辞書が怪しいと感じているのなら全て確認するのは必須。だけど何も見ずに破棄した方がよさそう。姉さんは確認作業が危険だと感じている。家族を守るときの姉さんは間違えない。一番安全な方法を選択すると信じている。

 だけど姉さんは何故私に魔法を使わせたのかな。魔法を使わせることで何もしていないことを反省するよりも強くなることを決意させるのが目的だったのかもしれない。

 私が項垂れていたのが原因なのだと思うから文句は言えない。それでも私が魔法を使うことで一番危険なのは姉さんだと分かっているはず。


 前を向かせるためだけに自己犠牲を選択しないでほしい。


 姉さんは今の席を知らないので私が2人に挟まれる席に座れると考えているけれど、アディとディアに挟まれることになる。クロア姉さんの座っている席に合わせると思うからあえて言う必要もない。どちらにしても姉さんとクロア姉さんの会話に入れるのはとても勉強になる。


「姉さん、私が使った魔法は安全だと思っていたの?」

「当然だよ。転移も転移門もクロアが確認した魔法でクロアの人格が代わる前から使っていた魔法だからね。自宅内なら安全に使えるように解析できていても自宅外だと危険な可能性がある。転移で危険なのは目的地にいる人や物との接触でしょ。転移門も自宅にある物を自室に移動させただけ。クロアが自宅を直しているのだから必ず全ての部屋を解析している。そしてリアに入っている魔法は全て作り直されているはずだから。」


 思考力が全く足りていないのを痛感した。


 全員の魔法を消しているのに魔法が残っているのだからクロア姉さんが全て消してから入れ直してくれたに違いない。

 人格が代わる前のクロア姉さんの記憶があるのに何も考えられなかった。記憶があるだけでは何もできない。成長させるためには自分で考え行動しなければならないと姉さんに言われたばかりなのに。自分の甘さが嫌になる…。


「姉さんはクロア姉さんと私の精神が誰のものなのか当てたでしょ。実験から推測したのではないと思っているけれど、何故分かったの?」

「精神を換えたばかりだからだよ。リアは精神を成長させていない。クロアは生きてきた記憶と経験があるから精神が成長するはずだけれど、封印を解除した日に私と会話しているでしょ。精神がクロアに馴染む前だったので分かったよ。」


 分身に個性があれば見分けられる理由がこれなんだ。

 姉さんは精神を見ることができなくても感じ取ることができる。


 姉さんに追いつくのが想定していたよりもかなり難しい。だけど焦らず身につけるしかない。間違いなく時間と経験が必要な力だから。姉さんに言われたことを思い出しながら努力するしかない。


「思考把握や感情把握を使うのは結界の外か問題が発生したときに限るつもりでいるけれど、姉さんは何故考えていることが分かるの?」

「表情や視線や姿勢などで分かるよ。クロアは演技で騙すけれど、余りそこまで考えている人はいないからね。」


 それで分かるのは姉さんの経験が元になっているのだと思う。

 姉さんに追いつくのはクロア姉さんに追いつくことよりも難しい気がしてきた。


「姉さんの言っていた抜け道で一番簡単だと思うのは何かな?」

「仮想体が考えて行動すればいい。簡単に潰せるでしょ。だから頼ったら駄目なの。」


 余りに簡単すぎて驚いた…。


 この方法なら慣れることで敵を騙すこともできるようになる。仮想体を作る言葉を決めておけばいい。能力に頼ることが危険だとよく分かるし対策できるようにもなる。

 姉さんは能力を得ようとせず仮想体をまだ作れないけれど、対処法を考えている。考える癖がついているから知識を得るとそれを元にして考えることができる。


 魔法に頼っていないからこそ姉さんが遠い…。


「姉さんはどのようにして思考把握を防いだの?」

「頭の中に結界を張っていたの。何故思考把握できないのか考えないと駄目だよ。そして思考把握できないときに原因が分かるようにしないと実戦では使えない。これは全ての魔法に言えるね。」


 姉さんは思考把握の原理を理解している。だから頭だけ結界で守った。私が魔力を見ていないと判断して。魔力を見ているのか確認されたのかもしれない。

 不完全な能力を便利だと考えて使っていたことが露呈した。私が何も分かっていないので姉さんが注意を促している気がしてきた…。


「姉さんは何故あのような魔法がほしいと言ったの?」

「精神を見る力があるのに鍛えていないから役に立たない。人の精神を詳しく見れるように努力するよりも自分の精神を見て努力した方が健全でしょ。思考も自力で隠せるようになった方がいいね。感情も同じ理由。そして魔力が切れたら気を失うのだから魔力量は把握できた方がいいよ。」


 私がクロア姉さんの力を使いこなせていないと気づいている。それについてはクロア姉さんの別人格にどのような対処したのか聞けば分かることだけれど、クロア姉さんは精神の中にいる別人格を消すことができる。私にも同じことができるのであれば精神を換えるという手段で解決していない。


 今までの会話が全てが私のためだった…。

 姉さんを変えたいのに鍛え方を教えてもらっていた。


 姉さんとクロア姉さんの役目を考えるとクロア姉さんと同じ強さになっても足りない。考える力は姉さんの方が上なのだから。

 クロア姉さんが気づいていても変えられない。そして気づいていると思う。


 2人の姉と差がありすぎる…。


「想定していたよりも差があるよ…。姉さんは何故だと思う?」

「本来であれば記憶していることは経験したことだけれど、リアは違う。記憶は記憶でしかなく咄嗟のときは役に立たない。記憶の中に対抗策があったとしても繋がらない。だから生まれたばかりだと言ったでしょ。考えて行動することで記憶に残る。同じようなことがあれば脳が記憶から成功や失敗を探してくれる。だけどリアにはそれがない。何も考えずに行動した場合は成功や失敗の理由が曖昧になる。だからたくさん考えてたくさん行動して成功や失敗をたくさんしなさい。そして慌てない。焦らない。最短でも私の記憶を消すまで50年はあるのだから。」


 記憶から必要な情報を探している時点で駄目だね。私にあるのはクロア姉さんの記憶であり私の記憶ではない。姉さんの生まれたばかりだという言葉の意味が理解できた。経験が足りない以前の問題でまだ何もしていない。記憶があるので経験した気になってしまうことの方が間違っている。そのためクロア姉さんと比べてしまっていた。同じ記憶があるから…。


「そろそろ戻ろう。クッキーが焼き上がる時間だからね。」

「分かったよ。」


 姉さんがポットとカップを持っているので私はカップを持った。


≪転移≫

リビングテーブルの前に移動した


 既に椅子の配置が変わっている。

 姉さんがクロア姉さんに念話で伝えていたのかもしれない。


 私が席に座ると姉さんが私から1つ席を空けて座った。知らないはずなのに迷わずにその席に座ったという事は間違いなく念話で話している。

少しするとクッキーが50枚ずつ乗っていそうなお皿を2枚持ってクロア姉さんと末っ子が来た。

 末っ子の頬が緩んでいるのはクッキーを食べるのが楽しみで仕方ないのだと思う。

 皆が座った後に姉さんが私の事情を説明し私は簡単な挨拶をした。そのあと歓迎会という名のお茶会が始まったけれど、皆の話す相手は決まっていた。

 姉さんはクロア姉さんとしか話していない。お互いに末っ子を世話するときはあるけれど、会話は最低限で済ませている。

 私の左右にはディアとアディが座っているけれど、末っ子4人だけで話している。クリスとミュリエルも2人だけで話している。

 ローアとミュリエルに挟まれて座っていたら孤独を感じていたのかもしれない。今の席だから皆の会話を冷静に観察できている。姉さんのお陰だよ。


 姉さんとクロア姉さんの会話が一段落ついたみたい。


「クロア姉さん、私に力を追加してほしい。それと同じ結界を張りたいから魔法がほしい。あと辞書は新しいものを作っているの?」

「勿論いいよ。力については今晩から少しずつ追加していくね。それに結界を張ってくれるのは助かるから魔法を渡すよ。それと辞書は中を見ずに破棄した。新しいものをついでにあげる。他に気になっていることはある?」


 姉さんの話していた一番安全な行動。人格が代わる前のクロア姉さんのことをそれだけ理解している。姉さんはクロア姉さんがすると思われる行動を話してくれていたのかもしれない。


「どこまで疑ったの?」

「私は魔法を消去して解析魔法と辞書も作り直したけれど、姉さんが全て疑ったよ。私は言われた通りにしただけ。体内も全て疑っていたね。本当に元の体のままなのか、回復すると脳や心臓を突き刺すようになっていないのか調べたよ。どのように調べようか迷っていたら姉さんに全ての骨を消せと言われたよ。それで残っている骨が何か解析して消してから回復して終了だよ。それと魔力器が本物なのかも調べたよ。今作っているクリスの体もね。全ての臓器の中まで見たから大変だったよ。動物も同様に対処したからね。」

「クロア、まだ記憶を残していたのね。それだけなら問題ないからいいけれど。」


 私ではそこまで考えられない。クロア姉さんが話したという事はその仕掛けがあったから。そのためには人体実験していなければ偽装した骨の適切な配置が分からない。

 つまり私が見ていた班長は強制命令で班長を演技していた分身。班長の精神は濁りきっていたに違いない。姉さんの味方だと思い込んでいた。確認していたらここに私はいなかったかもしれない。だけどこれからは確認する。姉さんの妹であり家族の一員として。

 姉さんは皮膚から骨まで全て好きなように変えることができるのだから変えていないはずがないと考えた。徹底的に全てを疑った。


 姉さんとの差は今の私では分からない。

 背中も見えない…。


 落ち着く為にクロア姉さんからもらった結界の魔法式を見た。新しい辞書を見ても何も分からない…。魔法を奪われたときの対策をしているのかもしれない。私で対策を確認したのか私を試したのかどちらかだと思う。


「クロア姉さん、魔法が奪われたときの対策を私で試したの?結界が何しているのか全く分からないよ。暗記しているわけではないのでしょ?」

「何故使ってくれないの?もしかして姉さんに注意されているのかな。クッキーを焼いている間に賢くなったみたいだね。本当の辞書と結界をあげる。それを使っていたら全ての魔法が消えていたよ。」


 指導したと言える内容なのが酷い。先程の辞書と結界を捨てて新しい辞書で新しい結界の魔法式を見た。だけど何も分からない…。


「リア、その手に持っている辞書は紙なの?」

「姉さん、早すぎるよ。私が思い込みの怖さを教えてあげようとしていたのに。」


 辞書も魔法で作っていることを気にしていなかった。

 そしてクロア姉さんが言っている思い込みが何のことなのかが分からない。自分に自信がなく全ての行動が間違っている気がしているからだと思う。


「クロア姉さん、辞書を見るための辞書をちょうだい。」

「分かってきたみたいだね。これだよ。理解したら消してね。」


 消去という魔法が入ってきた。名前がとても物騒だね。とりあえず消去を開いてみる。1ページしかないから辞書の仕掛けもそれ程のものではないのかな…。

 完全に誘導されている。それなのに私は何もできない。自信がないから、経験がないから、何もないから…。


 助けてほしいと思わず姉さんを見てしまった。


「リア、クロアが別人格になって何が起きたのか忘れたの?簡単に魔法を入れられすぎ。即死魔法の自動起動だったら死んでいたよ。魔法をもらうのなら魔法式を見てから入れるくらいのことはしないと駄目。辞書が空白でも敵に見られなければいいの。確認されているという事で相手の感情が動く可能性がある。クロアとリアは皆を守る側であり敵と戦う側でもあるの。ゆっくりでいいから考えながら行動する癖をつけなさい。クロアはあなたが生まれたばかりという事がどういう意味なのか知りたかったのだと思うよ。」

「何故私の理由まで当てるの…。リアは姉さんと私を追い越すのでしょ。16歳の考えていることなんて姉さんにはお見通しだよ。分身でも体を乗っ取っても今の姉さんを騙すことは不可能。姉さん、私が何したと思う?」


 生まれたばかりだという言葉に安心してしまっている。そこに逃げ込めば全てそのせいにできる。だけど逃げたら駄目だ。ゆっくりでいいから成長しなければならない。考えながら行動する癖をつける。まずは姉さんに言われたことを考えてみよう。


 今まで自動起動する魔法はなかった。だからといってこれからもないとは言えない。それに私は魔法を入れられることを警戒していなかった。家族だからだと言い訳はできない。姉さんと違って本物かどうかを見ただけでは分からないのだから。


「リアが辞書を開いた時点で全ての魔法を消すように魔法式を書き変えているはずだよ。だからリアの魔法は全て同じ魔法式になっていると思う。魔法式を消して複写するだけだから簡単にできる。そして辞書をもらうにはクロアの設定が必要だよ。そこでリアは選択しなければならない。クロアが仕掛けをしている辞書を使うのか自分で作るのか。とりあえずリアの魔法を全て捨てて結界までは入れてあげて。結界も使ったら消えるでしょ。」

「悪戯を叱られている気分になってきたよ。リア、辞書はどうするの?」

「辞書は自分で作るよ。結界だけは張っておく。」


 クロア姉さんに全ての魔法を消されて新しく魔法を入れてもらった。


≪結界≫

姉さんの予想通り使った後に結界魔法が消えた


 姉さんから見ればクロア姉さんも子供で何しているのかも想像できている。思考力と経験の差が大きいと思うけれど、今の私が慌てたところで何も変わらない。2人を追い越すのが大変だという事は分かっていたのだから。だけど2人を追いかけるのは今の私では早すぎると分かった。


 まずは考えながら行動する癖をつける。


 今日からお風呂上りなどで姉さんに相談できる。相談するときはアディとローアのことも考えてあげないと駄目だね。2人の姉になるのだから姉さんを独占しないように気をつける。

 問題点が多すぎて自分を見失いそうになったけれど、姉さんに助けてもらえた。今の私は姉さんに甘えることでしか成長できない。自立できるようになるまでは姉さんに甘えよう。


「今日は歓迎会という事で色々と助言してくれているの?」

「リアに結界を張ってクロアが気絶したときに備えるだけの予定だったのにクロアが予定外なことをしたからこの状況になったの。」

「私が姉さんに相談する時間を使ったのだから問題ないでしょ。リア、姉さんを追い越すのは大変だよ。辞書の解除方法まで予想通りだからね。ちなみに姉さんならどのように辞書を守るの?」


 食事の時間などで円卓に座るときはクロア姉さんが姉さんに相談する時間なんだ。過去の記憶を見直すのは腹が立つからしていないけれど、一度は見ておいた方がよさそう。


「辞書が取られることを問題だと考えなさい。一番安全なのは精神の奥に置いて解析魔法を繋げる。精神と繋がっていれば魔法は使えるのだからそれで十分。そして魔法の中に偽の辞書を入れておけばいいの。リアはまだできないけれど、クロアならできるでしょ。自分だけにしかできない力を利用しないでどうするの。分身に使われたくなければ体温確認などをして自動消去すればいいよ。」

「それを私の力だと考えたのは初めてだよ。自然体に見せることもできるし無能力に見せることもできる。仕掛けも隠せるから悪くないね。」


 クロア姉さんは分身が辞書を使って何したのか推察している。だから絶対に誰にも使わせないようにしようと考えた。だけど姉さんの案で今まで起きたことの全てを対策するはず。間違いなく解析魔法も精神の奥に配置する。そして人格を守る仕掛けも作っていると思う。


「姉さんは魔法が精神に付いていると知っていたの?」

「知っていたよ。クズ能力が精神だったからね。クロアは隙をなくして過ごそうとせずに緩ませることも大切だよ。今できる最善の対策をしているのだからのんびりする日と考える日を分けてみたら?それで鈍ることはないよ。半年間も何も考えずに過ごしてきた記憶があるから鈍っていた。隙をなくして考え続けていたらクロアが潰れる。それが最大の隙に繋がるからね。」

「確かにこれ以上は何も浮かばないから経験が足りないね。考えても答えは出ないと思うから姉さんに甘えるよ。」


 クロア姉さんが素直に応じたけれど、よく考えれば甘えられる相手が姉さんしかいない。私がその時間を奪っては駄目だし記憶の確認などできることがたくさん残っている。この時間は知識を得ることに集中した方がよさそう。

 私がクッキーを食べて余りの美味しさに感動しているときにクロア姉さんが乗馬する上での注意点などを末っ子に説明し始めた。そして結界内に来てからのクロア姉さんと末っ子の馬の記憶を消して名前を付け直すことになった。残りの馬からは10頭の馬の記憶を消した。馬はクロア姉さんが選んだことにしているけれど、こちらの都合で記憶を何度も消される馬を可哀想だと思う。


 命を大切にする姉さんの言葉を忘れないように胸に刻んだ。


 お茶会が終わり乗馬服に着替えて皆で厩舎に向かって歩いている。

 クロア姉さんによって乗馬や買い出しに必要な魔法は全員に入れてあるみたい。末っ子は馬に会えるのが楽しみで少し興奮している。復讐を考えず力の差もなく少し賢い3歳児の方が断然いいよ。


 名付けでクロア姉さんは同じ名前を付けたけれど、末っ子は4人とも自分の名前を入れている。だけど姉さんによって数字を入れるのを禁止された。何故なら名前が序列に見えてしまうから。そして序列を決めるのはクロア姉さんの馬だと説明を聞いて末っ子も納得した。

 クロア姉さんが乗馬した途端に馬が光り輝いているので誰でも納得すると思う。

 全ての説明が終わった後にクリスとミュリエルはいつも通り好きなように馬を走らせていった。


 私が助けた馬は騎士により足の骨を折られて処分される直前だった牝馬。名前はリオリナ。

 毛が淡い黄色で鬣と尻尾は黄色みを帯びた白色のとても綺麗な馬。馬房はフィディーの隣にした。


「オフィーリア様、あの方はどのようなお人ですか?」


 リオリナがクロア姉さんを見たのは初めてだったね。

 乗馬したら馬が光り輝くのだから気にならない方がおかしい。


「次女のクロア姉さん。世界の女王と呼ばれているよ。このように話せるのもクロア姉さんの力によるものだと思う。様はいらないしリアと呼んで。それに口調が硬いからくだけた感じでいいよ。」

「リア様、これが普通ですので気にしないでください。世界の女王様ですか。納得の雰囲気ですね。普通の人とは全く違います。」


 クロア姉さんは別格みたいだね。


 姉さんはいつも通りフィディーの背に跨ってうつ伏せに寝ている。何も知らない人が見れば乗馬に興味ないようにしか見えない。何故馬具を装着させずに寝ているのかも理解できない。だけど馬の感性で見れば違うはず。


「隣にいるのが長女のフィオナ姉さん。クロア姉さんが唯一甘える人だよ。どのように見える?」

「とても強くて優しい方に見えます。先程目が合ったときに微笑んでおられましたが全て見透かされたような気がしました。不思議な感じです。リア様以外は背に乗せたくないと思っていましたがあの方でしたら乗ってほしいです。」


 やはり姉さんも違うね。リオリナは本当に見透かされたのだと思う。

 それに誰も乗せたがらないのにが自分から乗ってほしいと言うのは驚いたよ。


「フィオナ姉さんの馬はフィディーという名前だけれど、あの子が許さない限り他の馬には絶対に乗らないよ。見ての通り私も姉さんの乗り方を真似しているの。馬の気持ちがよく分かると言っていたからね。馬具は意思疎通できるので必要ないみたい。話せるから楽になったと言っていたけれど、話せなくても意思疎通できる人だからね。」

「馬の気持ちを優先してくださるのですね。誰にも譲りたくないと思うのは当然ですよ。フィオナ様の愛情を独占したいのです。」


 確かに独占できたらしたいよ。

 だけど私も姉だから妹のことを考えてあげないとね。

 

「ディア、ロディ、アディ、ローア、あなた達は今後4人で遊ぶの?不安ならクロアとリアに日替わりで見てもらうようにする?」

「私は少し不安だよ。」

「私がいるので大丈夫です。ふふん!」

「私たちの遊びについてこれるのならいいよ。」

「遊び方が決まっていないのに何を言っているの。」


 大人を極めた3歳児が一番心配だよ。


 ディアが不安に思っているのが新鮮に感じる。魔獣に食べられた恐怖が残っているのもあるだろうけれど、素直で優しい子なのだと思う。無理やりな急成長が精神に影響ないはずがない。


「それなら遊びを教えてあげる。私とフィディーで考えてリアが作った遊びだよ。今日から4人で遊びを考えて皆が楽しく遊べるものを私に提案しなさい。クロア、水を怖がっている子以外は飛び込んで遊ばせてあげて。クロアもまだ飛び込んでいないのでしょ?新しいことをすれば新しい発想が生まれるよ。リアも飛び込みたいと言っていたでしょ。」

「私はまた末っ子が飛び込みたいと言ったときに参加するよ。あそこで遊ぶときだけは監視がいた方がいいでしょ。」

「それなら今日は私が面倒を見るよ。これからは新しい遊びが増えるのね。楽しくて時間を忘れるような遊びを4人で考えて。」

「ええー、考えること多すぎだよー。」

「恐らくフィオナ姉ちゃんの予定通りです。ふふん!」

「ロディの言う通りだよ。私がお姉ちゃんの予定を早めてあげたの。」

「アディ、黙って!ここまでは予定通りでもここからは違うからね!」


 うつ伏せのままクロア姉さんに指示できるのは姉さんだけだよ。

 他の人が同じことをするとクロア姉さんの意思に関係なく消される気がする。


 次女と末っ子と馬10頭は賑やかに川に向かっていった。


「リア、どうしたの?のんびり散歩するのでしょ?」

「そのつもりだよ。今のはクロア姉さんのためでしょ。姉さんはどのように考えているの?」


 クロア姉さんに怒っていることはまずない。そして5人の笑顔を見て微笑んでいる。だけど姉さんは自分自身を殺すのがうまいから…。


「記憶を消したことについて?誰も悪くないよ。家族がバラバラになることはあっても解決する方法がなかった。だけど今は違うでしょ。クロアが対策していると思うし私も考え方を変えた。そしてリアが妹になった。何も問題なしだよ。家族として前進したね。」

「姉さんが犠牲になっている気がするよ。」


 間違いない…。姉さんは記憶を消した理由に気づいている。記憶を消しているのに誰も悪くないと言い切れるのがおかしい。今のディアとロディを見てクロア姉さんと話したことで何が起きたのか把握したのだと思う。


「私の犠牲とは痛みと苦しみが続くだけで何も得られずに死ぬこと。これから私の身に何が起きても妹が笑顔でいられるのなら犠牲だとは思わないよ。」

「今はそれでいいよ。私が強くなって姉さんを守り抜いて変えるからね。」


 姉さんはいつも自分自身を入れない。誰よりも自分自身を過小評価している。だけど姉さんがいなければ家族がまとまらない。そのことに気づいていないはずがない。それなのにいつも入れないのは家族に命を捧げているのが原因だと思っていたけれど、今回の問題で違う見方をすることができた。


 自立するまで甘えることになるけれど、必ず成長するよ。

 そして約束通り私が変える!

フィオナ以外は甘えん坊です。

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