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世界は子を愛す  作者: 大介
第2章 命

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第66話 世界の女王

 分からない。何か間違えたの?だけど必要な検証だと姉さんも言ってくれた。そして検証中のアディとローアの精神は確認を怠っておらず濁ることはなかった。だから問題ないと判断した。それなのに夕食に来た2人の精神は濁り始めていた。お風呂上りに姉さんと話していた2人は濁りが更に濃くなっていた。

 孤児院でディアとロディが2人に何をしたのかは知っている。それは平等ではない言動だった。それでもアディとローアが気にしていなかったので精神が綺麗な状態を維持できていたのではないの?


 姉さんに「今すぐ殺すか道化の長女として残したいのなら記憶を消しなさい」と言われた。そのあとアディとローアが「お姉ちゃんを殺すのなら私たちも殺して」と言った。3人の絆は深いと思う。だから姉さんならアディとローアの精神を綺麗にできた気がする…。

 そのあと姉さんから約半年の記憶が消えた。私のために色々してくれて一緒に笑って過ごした姉さんの記憶が消えた…。3人はアディとローアが仮想体のディアとロディに会う直前まで記憶を消すことになった。封印される直前に姉さんが全てをアグリに頼んでいた。3人はアグリが体を得るまでに必要な2週間封印される…。


 今回のことで私が全く信用されていないのがよく分かった。それに姉さんが恨みで満ちた目で私に話した内容が忘れられそうにない。


「女王、何故無責任なことを考えているの?姉と妹の処置が終わったよ。フィディーを含めた5頭も封印する。今後は女王と一緒に暮らさない。私たちは4人で暮らすので女王は5人で暮らせばいい。姉さんを女王の道化にはさせない!」

「何が道化よ!姉さんを道化扱いしたことなど一度もない!」


 私の分身が私を侮辱し拒絶する。意味が分からない…。


「道化でないのなら女王の侍女なの!?常識を教えてもらった。感情が芽生えるように言動してくれた。味を覚えるように調味料やお菓子を買ってきてくれた。そして悪意に染まっていたディアとロディの救出方法まで考えてくれた。結界内を綺麗にするための嫌な役目は全て姉さんに任せた。お菓子を作ることも動物を飼うことも姉さんの提案だよ。そこまでしてもらって姉さんに何か返したの?姉さんはディアとロディが女王に何もしないことを不満を持っていた。自分が馬鹿にされていることにも気づいていた。だけどディアとロディも妹として平等に接していたよ。長女として平等に4人の成長を願っていたよ。それでも姉さんはアディとローアと自分だけの時間と布団で2人抱きつかれる時間に一番の幸せを感じていた。私が作り出されたときは検証中だったけれど、激怒して『検証を今すぐ終わらせて!』と言ったのを覚えている?だけど知らなかったよ。これ程まで最低な女王が主だっとはね。検証が終わってから記憶を遡って知ることができた。幼い頃の深い傷は簡単に克服できない。その傷が正しいことだと思い込まされていたら洗脳と変わらない。ディアとロディにされたことを今のディアとロディにする。それが悪いと言えるの?ディアとロディがアディとローアの手下になり言うことを聞かなければ威圧により脅され、自分たちだけではなく大切な姉さんまで脅し殺そうとした。誰にされたのか記憶になくても脅されて支配されていた記憶は残っているので支配されたくないと行動する。女王を信じていた姉さんはディアとロディに笑顔で話しかけていた。それを見たアディとローアが姉さんも認めている行為だと考えて何がおかしいの。姉さんには感情の色が見えずスピリが思考誘導をディアとロディにしたのが最悪で全く気づけなかった。同じことをディアとロディにはされたくないのにアディとローアになら問題ないのでしょ。これのどこが平等な家族なの!?今でも全く反省していない!」

「結果を知っているから言えるだけで何も知らなければ分からない。全てを知った後からなら誰でも好きなことが言える。本当に面倒な分身。」


 分身が本体を説教してくるのは何故なの。検証の結果を知っているから言えるだけだと気づきもしない。それに何も知らない状態でどのように動けばいいの。正論を言っているつもりなのかもしれないけれど、結果論でしかない。


「女王、こちらを気にしているクリスとミュリエルに説明してよ。何も知らない2人だからね。」

「女王女王と煩いわね。クロアと名前で呼びなさい。それに何故今晩から女王なの!」


 姉さんだけが16歳の普通の少女であるクロアとして私を見てくれた。それを知っていて本当に不愉快。私を馬鹿にしているのがよく分かる。それに自分が消されないと知っていて増長しているのが腹立たしい。


「その通りだね。姉さんだけがクロアを孤独にしないようにと考えてくれていた。だけどその姉さんを裏切ったのは女王だよ。他に誰が女王をクロアだと見てくれるの?姉さん以外は名前だけなら呼んでくれるけれど、心の中では世界の女王だと考えているよ。」

「そのくらい知っているよ。だけどあなたも女王の分身よ!」


 自分は姉さんの妹だと言うつもりなのね。本当に何様よ!


「その通りだね。私は姉さん承認の妹、オフィーリア。早くリビングに説明しに行こうよ。」

「あなたが認識を改めることになるだけよ。正しく見届けなさい!」


 部屋を出るとリビングテーブルのいつもの席に座って話していたクリスとミュリエルがこちらを見た。その視線を避け何も言わずにクリスから1つ席を空けて座った。アグリはミュリエルから1つ席を空けて座った。

 今晩の夕食は救出したばかりで不安だったディアとロディに挟まれるように座ったので同じ席。姉さんも私に合わせてアディとローアに挟まれるように座ってくれた。ここでもアグリは私に対する怒りを隠そうともしない。本当に不愉快な分身。それなのに姉さんは何故この分身を信じたの!?

 クリスとミュリエルは席に座った私たちを見てどちらが本物なのか分からなくて困っている。私とアグリの2人で来たことも想定外なのだと思う。そういえば姉さんだけが見分けてくれた…。


「クロア、何が起きたの!?」


 クリスは話してから私とアグリの両方を見た。本物が説明してくれると考えている。そのためアグリは首を横に振って否定した。それを見てクリスとミュリエルは私の方を向いた。


「姉さんとアディとローアの記憶を消して別の家で暮らすことになったよ。姉さんが2人とお風呂上りに会話しているときに2人の精神が濁っていると気づいて絶叫したの。そしてそこにいる私の分身は姉さんの妹になる。姉さんも了承していて姉さんの細胞で体を作ることになっているよ。その分身に姉さんが全てを頼んだ。分身が体を得るまでの2週間は3人と馬を封印するよ。」

「クロア、説明が足りないよ。フィオナにとってあのアディとローアは命よりも大切だったはずなの。記憶を消すという事は一緒に過ごした日々を消すという事なのよ。どこまで記憶を消すの?」


 何も隠す必要はない。正直に事実を話せばいい。


「ディアとロディがアディとローアに出会った日までだよ。」

「それだとアディとローアとフィオナが過ごした日々がほとんどない。それでもその日まで記憶を消すことが最善なのね…。フィオナが絶叫するのは当然だよ。ディアとロディはアディとローアに初めて会った日に何したの?そのときのディアとロディの精神は綺麗だったの?」


 クリスが聞くことで何かが分かるの?何故そこまで確認しようとするの?


「アディとローアの精神が濁った原因がその日にあると姉さんが選んだの。そして姉さんからその日まで記憶を消すのか殺すのか選べと言われたよ。ディアとロディは初めてアディとローアに会った日に2人を脅して支配した。姉さんはそのことを知らずディアとロディに笑顔で話していたので2人は受け入れた。出会う前からディアとロディの精神は濁り始めていたよ。」

「クロア、何をしたのか分かっているの!?ディアとロディの精神が濁っていたら色が見えなくてもフィオナは絶対に気づく!何故気づけなかったの!?」


 何故クリスまで怒っているの?確かに姉さんなら気づいたと思うけれど。


「アディとローアの精神が濁らなかったので問題ないと判断した。そしてディアとロディが姉さんを長女だと思うように思考誘導を付与していたの。だから姉さんは気づかなかった。だけど姉さんは仮想体で過ごし続けることについて検証しなければならないと肯定してくれたよ。」

「確かに検証結果を聞いて私も体を作ることにしたよ。だけどフィオナが検証を肯定したのは終わった後でしょ。アディとローアが支配されていたことを知らなかったはずだよ。それにクロアがディアとロディを思考誘導するのはおかしい。それで検証をいつ始めたの?」


 クリスの怒りが更に激しくなった。意味が分からないよ。


「ディアとロディが孤児院に来た日から検証を始めたよ。その日から全てを本人だと思うように思考誘導を付与した分身に任せていた。分身には検証を知らせずに姉さんが違和感を覚えないようにしたよ。正確な検証をする必要があったからね。」


 クリスがアグリの方を向いた。私から興味をなくしたかのように…。


「ねえ、あなたはフィオナの妹になるのでしょ。クロアから私の魔石を取って。そして今から住める家を作って。あなた達は3人で幸せに暮らしなさい。私とミュリエルはフィオナたちと暮らすよ。」

「体を得るまで魔石は私が預かっておくね。それに同じ結界内で暮らすつもりがなかったので全て用意してあるよ。それでいいでしょ?」


 分身は何をしているの!?何が起きているの!?


「仕事が早くて助かるよ。クロアの分身なのにフィオナ側だね。ここまで早く動けるという事は他にもフィオナ側の分身がいるという事なの?」

「女王が作った分身は全て姉さん側だよ。女王が個性を重視したのが失策だよ。今から私たちの精神を消しても私たちは消せない。誰よりも人を疑う女王の分身が女王を疑わない訳が無い。私は邸で暮らす8人の男性を追い出すときに本人だと思っている分身が作り出した分身。検証のために本人だと思わされていた分身も姉さんに甘えたいので姉さんの細胞で体を作る交渉しに行くと言っていたよ。姉さんの感性が鋭いので同じ顔でも見分けてくれる。記憶を消すのも強い恨みを持つ状態でアディとローアに接すると2人に恨みが伝染するかもしれないからだって。姉さんは本気で家族を愛していて信じていた。だからアディとローアが姉さんのために嘘を吐くとは思わなかった。それに2人の演技が上手すぎたのと会話の内容だけで問題ないと判断してしまった。それで私が姉さんの失敗を教えてあげることになっているよ。姉さんならそれだけで十二分。分身を見分けるように言葉だけではなく2人の全てを見てあげるよ。」

「何故クリスまで出て行くの?私が何をしたというのよ!?」


 3人で暮らすのは別に問題ない。分身が造反しているのなら新しい分身を作り出すだけでいい。だけど意味が分からない。何故私が悪いことになっているの…。


「なるほど。これは確かに女王様だね。あなたが感情豊かに話せるのは何故?料理の味を楽しめるのは何故?皆で生活する上での常識を教えてくれたのは誰?それにディアとロディの精神が濁っていたのなら検証する意味がない。そして検証に家族を利用したことが非常識だよ。事前に内容を説明して手伝ってもらうことがあっても悪人を押し付けることはあり得ない。あなたが悪意のある人形をアディとローアに押し付けた。それを検証だなんてよく言えるね。全てを理解したフィオナが絶叫するのは当然だよ。家族だと思われていなかったクロアとディアとロディに尽くして一番大切なアディとローアの精神を壊されたのだから。フィオナの命を助けた恩は返してもらっている。この世界であなたをクロアとして愛してくれるのはフィオナだけなのに残念だね。」


 何を言っているの!それはディアとロディを救うことができなかったと言っているのと同じよ。あの子たちが何を…。


「それ以上は考えないで!全てを知っているので耐えられない!姉さんを女王の精神安定のための長女だと考え弱いと馬鹿にし、不死の体で懸命に生きる人や動物を脅して支配し、女王の妹だと増長していたのは誰なの。それを知りながら説教せずに放置したのは誰なの。ディアたちが濁り始めたのは女王が国を支配する計画を考え始めた頃。精神の色で判断すると言うのなら女王がディアとロディを見捨てた。2人を説教して本体に戻せば何も問題なかった。姉さんは愛情を持ってディアとロディを何度も叱った。その腹いせがアディとローアに向くとは知らずにだよ…。2人はアディとローアの馬まで脅す程のクズだった。アディとローアがどれほど我慢していたのか分かるの?ディアが姉さんを殺すと脅したからアディとローアが姉さんを連れて出て行こうと考えた。姉さんは約束を守り女王は謝罪すらしない。二度と会うこともないのだからこの辺でいいね。畑は分身が作物を育てているのだから私たちが使うよ。女王は分身の努力を奪うだけだと愚痴を聞いたので言っておくね。これからは分身を大切にしてよ。」

「分身がいないと使えない畑なのだからそうに決まっている。個性的な分身の精神を保護したのが最大の失策だったみたいね。」

「それだけなの?フィオナを絶望させ絶叫するほど悲しませて、アディとローアの精神が濁るほど苦しめてきたのに何も感じていないの?」


 何を言っているの。謝ってどうにかなるような状況ではなかった。ディアとロディのためにこれからを考えなければならないの。

 そして無駄な精神は今すぐ消す!ディアとロディに何もさせない!


「姉さんは分身に個性を持たせていると知って楽しんで遊べと言った。全然違うね…。日常を楽しむ方法を考えたことがないのに何ができるの?分身の精神を消すのは早いね。女王は知らないけれど、分身の努力を奪っていると考えていた。実際は貸してもらっていたの。努力しない信用できない女王に分身の努力を奪う資格はないよ。今後が心配ならディアとロディも預かってあげるよ。」

「虐めると分かっているのに連れて行かせる訳が無いでしょ。魔法があれば何とでもなるわよ。魔法と自己回復の中に何もない…。何故…?何故ないのよ!」


 今作った水を出す魔法の魔法式が読めない…。


「何故このようなことをしたの!嫌がらせも大概にしなさい!」

「姉さんを守るために命懸けだったクロアが今回のような検証をしない。そしてディアの精神が濁るまで放置しない。だけど女王もクロアだから消す方法を探した。何故女王が生まれたのか分からなかったからね。ディアの放置から女王になっていると考えるのであればクロアがクズ能力と拷問監視役を潰した夜に女王はクロアから主動権を奪った。流石にクロアでもその夜だけは隙があったと思う。奪った瞬間に自分を本物のクロアだと認識して元のクロアは眠っていると思う。女王も真っ当なクロアなら精神を分けて体を作るつもりだった。姉さんのことを好きだったから…。今から終わらせると決めたよ。10歳からクズ兄に監視されていた6年間の記憶を消す。1年間は我慢したかったけれど、姉さんが愛情を与えてくれたので絶対に大丈夫。男性に怖れたクロアが無意識に生み出した人格が女王だよ。だけどクロアを庇わずに自分の存在を隠した。その慎重さはクロアと同じだね。」


 私が別人格?何を言っているの?本当に意味が分からない分身だね。


「女王の分身が男性恐怖症の演技しろと私に強制命令を出した。クロアの分身なら絶対しない。それに男性8人を処理するためにお城に行ったけれど、強制命令が切れても関係なしに絶望させてきた。激怒していたので男性を見ても殺意しか湧かなかった。そのことに冷静になってから違和感を覚えた。思考誘導まで解除されてから秘密裏に男性を見に行ったら恐怖しなかった。そして本物のクロアは泣き虫だよ。姉さんのことを知ったら号泣する。ディアが一番大切でも姉さんを精神安定だなんて考えていると知ったら許さない。女王は男性恐怖症が消えて嬉しいよね。」

「その通りね。私のままで落胆しないでよ。そして魔法技術を返しなさい!」


 このままでは買い出しが必要になる。だけど濁っている国に行く気が起きない。


「今から姉さんが最後に言った言葉を言ってみてよ。」

「それに意味があるの?『オフィーリア、私のために怒って泣いてくれてありがとう。私は道化として記憶を消されると思うから綺麗にしておいて』と言っていたね。姉さんが身の回りを整えておいてほしいと言っただけ。それで何の意味があるの?」


 その言葉に何の意味があるの。姉さんの願いにしか聞こえないよ。


「その通りだよ。女王を見ながら言わなければね。姉さんでもクロアに別人格ができて代わっているとは気づけなかったけれど、最後にクロアではないと直感が働いた。それでも憎しみに支配されそうだったので思ったことを口にしただけだよ。それでは始めよう。」

「早くしなさい。クズ兄の記憶が消えるのなら最高だよ!」


 クズ兄の記憶を消したね。とても心が軽くなった。

 姉さんのお陰で私は何も変わらない!


 別人格とは何?私は変わっていない。


 だけど何故そのような検証する必要があったの。何故ディアとロディを放置したの。何故今それに気づいたの。馬鹿だけれど、これは酷すぎる。アディ、ローア、ごめんなさい。そして姉さん、姉さん…、ごめんなざい。


 これは無理だよ…。


「あ˝あ˝ー!いや、嫌だ、嫌だぁー!どうじでこんなごどになっだのぉ。わだじの記憶も消しでほじいのに姉さんがらもらっだものだから消せないよぉ。オフィーリア、わだじとディアとロディも2週間封印じで。姉さんになんで言おう…。はやぐしなざい!」

「クロアよね。いつものように冷静に考えなさい…。」


 クロアだよ。い˝ま何を考えるの?

 姉さんに謝らないどいげないの…。


「う˝るさい!何が冷静よ。クリスが考えればいいでしょ。姉さんに謝らないど…。それ以外はべづにいい˝。遅い˝!早ぐ封印しなざい!姉さん…、ゆるじてくれないよね…。」

「早く封印してあげなさい!違いを確認するのは十分でしょ。見ていると悲しくなるよ…。」

「クロアさん、フィオナさんをそれほど大切に想っているのですね。」

「私も6年間の記憶を消して精神を交換していたの。まずい…、私も泣きそう。早くしないと…。」


 起きだら姉さんに会える。謝るごとしができない。とにがく早ぐ謝りだ…。


◇◇◇

2週間後。


「…起きて。」


 ああ、姉さんの声だ…。


「クロア、早く起きなさい。」

「あ、ああ…。」


 姉さんが起ごしにきでぐれだ。何も知らないよね…。どうすればいいのがな…。


「静かに。ディアとロディが起きてしまう。泣きたいの?それなら外で話そう。」

「泣ぐど思う。外の方がいいがなぁ…。」


 今は早朝がな…。誰もリビングにいないね。


「本当に泣き虫だね…。皆に見せられないよ。」

「べづにいいよ。もうクリスとミュリエルに見られだがら。」


 外に出ると少し薄暗い。だけど陽が出始めてい˝る。

 泣き顔はディアとロディとアディとローア以外はみんな知っでいるがら。


「クロアの泣き顔の記憶は消したよ。私が見せたくないの。格好良いクロアが好きなのよ!」

「わだじは姉さんがら大切なごどをたぐさんじでもらっだのに姉さんの記憶にはないんだよ?」


 何故消じだの?泣き顔なんでどうでもいいのに。

 わだじが格好良いはずがないよ…。


「記憶にない方がいいの。記憶を消したときのクロアは凄く似ている別人格だと聞いたよ。気づかなかった私も悪いけれど、何が起きたのかは私に教えないでね。別人格のせいでアディとローアもディアとロディも記憶を消して精神を綺麗にすることになったから。それで私はクロアに何かしてあげることができたのかな?」


 本当に別人格がいたの?姉さんが気づけないほど違和感を覚えることがなく本人でも分からない。精神が別なら気づかないはずがない。つまり同じ精神の中にいた。

 封印される前の会話から考えると男性恐怖症が切っ掛け。それで私の男性恐怖症の原因を消して精神を交換した。自己回復に感情を覚えるという理由で遊ばれていたからなのか、ディアが冒険者として活動しているときに生まれた。私を守ってほしくて生み出したけれど、別人格は私に存在を悟らせなかった。

 そして全てのクズ能力と拷問監視役を倒して眠っているときに代わられた。私が意識していないときに代わられたから起きられなかったのかもしれない。


 だけど私の責任なのは変わらないよ…。


「今の私は姉さんのお陰だよ。味が分かるよ。感情も全てではないと思うけれど、ほとんど分かる気がする。お菓子作りも覚え始めた。乗馬で遊べるし牛と鶏も飼っているよ。そして人や動物が楽しく過ごせる環境を姉さんが考えて改善してくれている。それに姉さんだけが16歳の普通の少女のクロアだと考えて見守ってくれている。ごめんなざい。本当にごめんなざい…。罰は何でも受けまず…。だがらゆるじでほじいです。」

「また泣いてどうするの。クロアを恨みたくないから記憶を消したの。消したままでいいの。それに思い出はたくさん作れる。私の前では好きなだけ泣いていいけれど、妹の前で泣くと心配するでしょ。今のクロアには何ができるの?」


 半年もあれば他にも成長していると思うよね…。


「何もできないの…。分身に嫌われて能力を全て取られたよ。」


 分身の精神を保護するのはとても危険だと思う。それなのに自分で勉強したくないので個性のある分身の精神を保護して勉強させ続けた。だけど勉強の成果を共有するつもりもなく精神を消されることを前提に初めから行動している。


 本当に姉さん側なら安心だけれど…。


「何よそれは!オフィーリア、どうせ隠れて見ているのでしょ。クロアが記憶と同じことができるようにしなさい。クロアには最強でいてほしいの!」

「姉さん、とりあえず呼べばいると思っているでしょ。私が封印した分身だよ。三女だからクロア姉さんと呼ばないと駄目だね。姉さん、畑仕事をしてくれる分身と勉強をしてくれる分身がいるんだよ。どうすればいいのかな?」


 オフィーリアは姉さんが信じたので大丈夫だと思うけれど、他の分身が本当に姉さん側だとは思えない。そして姉さんもそれを疑っている。


「無個性の分身は働くことや勉強が辛いの?」


 基本的に分身は何も考えない。指示されたことをするだけなので大丈夫だと思う。だけど個性のある分身は人と変わらない。勉強を無理やりさせているのだから私を恨んでいると思う。


「分身や仮想体で過ごすと精神が濁っていくの。だから定期的な作り直しが必要だね。それと畑仕事については魔法が使えるから楽だけれど、お茶の葉の手摘みとかは個性がないと無理だと思う。勉強も個性がないと知識の発展がないの。無個性は精神的な負担はないけれど、個性があると精神的に辛いよ。」

「オフィーリア、今から最強の防音結界を張って。」


 姉さんが相当警戒している。この雰囲気だと私を恨んでいるだけでは済まない。姉さんの鋭い感性が最悪の未来を見せたのだと思う。


「もういいよ。分身は姉さんの味方だよ。クロア姉さんを恨んでいるとは思うけれど。」

「オフィーリア、今から絶対に分身と連絡を取らないで。それと今は自宅と研究所に分身が入り込んでいない?ここの結界内にはいない?あなたが知ることのできる情報を教えて。」


 これは相当な最悪を想定している。姉さんには何が見えたの?個性を持っている班長の人数が問題ではない。私から能力を取ったことで警戒心を最大にした気がする。


「分身が自宅に入ったことはないよ。研究所はここから行ける結界内に移設したけれど、その中にも入ったことはない。乗馬の時間になると馬に乗りに来る分身が決まっているだけだよ。」

「オフィーリア、あなたが個性のある分身で最弱だった自覚はある?」


 私から能力を全て奪った。そのように最初からしていたのなら私が知らない能力があるのかもしれない。つまり私の分身であるオフィーリアも知らない能力があると考えた方がいい。

 この結界内の会話も聞かれている可能性がある。だけど今更だね。


 私は無能力で弱いからどうでもいいね…。


「姉さん、分身は姉さんの味方だよ。何故そこまで警戒しているの?」

「個性のある分身の精神を私が保護していたのに魔石か何かに精神を保護して作り直し消されないようにしている。そして味方の振りをするために能力を貸していた。それに私が精神を消すと能力が消えるように細工されていた。それらを考えると私に隠している能力がある可能性が高い。更に私に恨みを抱いている。それと私は班長と普通の分身の区別がつかないの。強制命令を使えば普通の分身でも班長の演技で私を騙せる。もしくは自分の分身を複数作ればいい。そうすれば自由に動ける。姉さん、このくらいかな?」

「一番大切なことが抜けているよ。クロアの分身なの。クロアの知能を持っているの。別人格は頭が悪すぎる。個性を持ったクロアの分身なんて最悪の敵になる可能性があるのに…。そして悪意に無頓着でこちらには人質が多数いる。それと個性を持った分身が全て同じ細工をしていたのが不自然すぎる。首謀者の分身がいて洗脳されているのかもしれない。と、ここまでは予想でこれからが本番。何故体がほしいのに交渉に来ないの!分身側にも研究所があり体を作っている気がする!オフィーリア、今のクロアの力をどの程度だと思う?結界内の研究所で作っている体はある?精神も入れている?」


 姉さんは私を見てくれている。だから1人の少女として尊重してくれるし過去の戦いについても評価してくている。そして何人いるのか分からない私がこちらを敵だと考え体を作っているのであれば家族を失う危機…。


「結界内なら体の精神からの威圧で何とかなると思うけれど、絶望的だね…。研究所ではクリスの体を1体だけ作っているけれど、精神はまだで精神と記憶が入っている魔石を私が保管している。姉さんの最悪は当たるからね。私がクロア姉さんに能力を渡してもどうにもならない。これから妹として楽しめると思ったのに…。姉さんに甘えると言っていた班長が姉さんが封印されている間も連絡してこなかった。私も時間稼ぎに利用するつもりで騙されたみたい…。何が姉さん側だよ!」


 姉さんは思考把握されないように何も考えていないと思う。

 だけど責任を感じているのが表情で分かる。


「姉さん、責任を感じないで!条件を決めて。」

「クロア…、ごめんね。この世界にクロアが認めないクローディアの細胞、自宅に住む者の細胞、クローディアの精神、自宅に住む者の精神、世界から隠すのは無理だね。だから見つけて消す。クロアが認めない建物で見つけたのなら建物ごと全て消す。」


 目を閉じて世界に語りかける

 世界よ、女王クローディアの名の下にその力を示しなさい


 クローディアの細胞

 自宅に住む者の細胞

 クローディアの精神

 自宅に住む者の精神


 世界から隠すなど不可能


 私が認めていないものを世界から消しなさい

 私が認めていないものが建築物内にあるのなら建築物ごと全て消しなさい


 世界を綺麗にしなさい


 予想していた以上に体が熱い…。だけど気を失うわけにはいかない!

 姉さん…、体を冷やして抱きしめてくれている。


 処理に時間がかかっている…。

 

 大体でいいので処理件数を教えなさい

 

 頭の中に数字が流れ込んできた。

 30000… 40000… 50000…


 処理件数の報告はもう終えてよい、ありがとう


「はぁはぁはぁ…。姉さん、最悪な状況だったよ。処理件数が5万を超えているの。」

「クロア…、私も背負うからもう一度命令できる余力がある?」


 背後から聞こえる姉さんの声から責任を強く感じているのが分かる。

 姉さんの何が悪いの?何故自分を責めるの?


「大丈夫!姉さんが抱きしめてくれているから問題ないよ。」

「この世界から魔力を飛ばしたことのある星などを確認してみて。」


 目を閉じて世界に再度語りかける

 世界よ、女王クローディアの名の下にその力を再度示しなさい


 クローディアの細胞

 自宅に住む者の細胞

 クローディアの精神

 自宅に住む者の精神


 この世界から魔力を外に飛ばした形跡があるのなら行き先を確認しなさい

 そこに私が認めていないものがあるのなら建築物ごと全て消しなさい


 世界の周囲も綺麗にしなさい

 

 あ˝あ˝あ˝、あ˝づい˝、い˝じぎが…。

 あ˝っ、づめだい˝、つめたい…。冷たくて気持ちいい。


 世界の怒りを感じる。やはり外でも見つけたみたいだね。


 そして姉さんが無茶している気がする。姉さんの手を見ると手から腕まで凍っている。それに白い煙が出ている。


 どんどん体が冷えて楽になっていく。

 だけど姉さん、とても悲しいよ…。


 脚、腰、背中、首、頭、私の背後から姉さんが全身を冷やしてくれている。そして手と腕は完全に凍らせている気がする。もしかしたら脚も。姉さん、私のために自分自身を拷問しないで…。


「姉さん…、任せてよ!今すぐ始めるから!」


 姉さん、話せないのね…。

 オフィーリアが思考把握していると信じて指示した。


 オフィーリアが冷水を私と姉さんにかけている。

 回復魔法もかけている気がする。


 私の負担を姉さんに背負わせてしまった…。


 この力はクズ能力を全て消した後に気づいたけれど、考えないようにしていた。

 姉さんも気づいていた。だけど何も言わずにいてくれた。考えずにいてくれた。


 姉さんはこの力を使わせることに抵抗があるように思う。恐らく私の負担を懸念している。だけど家族を失う危機だと感じた。それだけは許容できない。姉さんと私の気持ちは一致している。それに実験を終わらせたのに本体と分身で殺し合いを始めるのは馬鹿げている。


 殺し合いのために命を生み出していることを許せるはずがない。

 1日を大切にする姉さんが記憶を消してまで望んだ平穏を壊させない。


 姉さんがいつも最悪を想定して最善の解決策も考えてくれる。世界での処理件数が余りにも多いので他の星なども怪しいと感じたのだと思う。何が目的だったのかは気にしない。て家族を大切にする姉さんが危機感を抱いたので殲滅する。理由としてはそれだけでいい。

 そしてオフィーリアだけを問題ないと判断した。直感で私を見つけてくれた。感性を磨くとここまでのことができるのだと教えてくれた。

 それに能力を手に入れることができる立場にいても姉さんは最低限しか望まない。私との役目の違いを明確にするため。そして私を信じていると身を以て証明するため。他にも理由があるのかもしれないけれど…。


 姉さんは自分のために泣きながら怒るオフィーリアに全てを託した。

 確実にそれが明暗を分けた。


 記憶の中の姉さんも私や分身に愛情を与えて助けてくれて励ましてくれた。今でも何も変わらない。だけど家族のために命を捧げることだけはやめてほしい。間違いなく私よりも姉さんの方が激しい痛みに襲われている。それなのに私が楽になる体温を考えて冷やし続けてくれている。

 姉さんは私にとって唯一無二の大切な人。同じ大切でもディアやロディとは違う気がする。だけど今の私ではその違いを表現できない。それでも姉さんのいない生活は考えられない…。


 終わった

 世界よ、とても感謝している、本当にありがとう


「終わったよぉ、はぁー!2人ともありがとう。もう大丈夫だよ。」

「オフィーリア、最後に回復して乾かして。」

「分かったよ…。今の異様な雰囲気は何!?クロア姉さんは発光しているし何かに確認されたみたいで寒気がしたよ。別人格すら知らない力を何故姉さんが知っていたの?」


 魅力が増す、異性が集まる、威圧する、跪かせる。今までそのようにしか使っていないので知らなくても不思議ではない。姉さんは毒料理店の悪ふざけで跪いたときに気づいたのかもしれない。


「クロアが何て呼ばれているのか知っているでしょ。その力だよ。まだ実験場に敵は残っているけれど、使う予定はないよ。クロアの負担が大きすぎるのと人形に期待していることがある。今回は家族を失うよりは絶対にいいと考えた。今では2週間でオフィーリアの体が作れるのでしょ。私が記憶を消された期間にクローディアの細胞を使って体を作り続けていたら最悪だと考えた。そして万が一のために自宅にいる人の細胞でも作っている可能性を考えた。実験場で暮らす人の細胞を強化して使っている可能性もあるけれど、とても手間だしクローディアの精神とクローディアの記憶を入れないと戦力にならない。それにクロアが認めない場所にいたら建物ごと消される。オフィーリア、結界を解除して分身が勉強していた場所を見てきて。」

「解除したよ。凄く気になるから見てくる!」


 今の私にはオフィーリアがどこに転移したのかも分からない。だけど結界や索敵はオフィーリアが維持しているのだと思う。姉さんが全てを託した新しい妹を私も信じたいと思う。


「クロア、かなり無理したでしょ。今日はもう休む?」

「姉さんこそ心臓が止まりそうな勢いで体を凍らせていたでしょ。一瞬でオフィーリアが消したけれど、腕が千切れて顔の皮膚が剥がれたのが見えたよ…。回復魔法がなければ死ぬ行為は拷問と一緒だからね。」


 私もディアに怒られていたけれど、姉さんの自己犠牲は見ているだけでも辛い。それに苦痛などを全く感じさせない。必要なことをしているだけの感覚なのだと思う。


「姉さんはオフィーリアに家族に命を捧げるなと怒られているの。それを聞いて自分では無理だから変えてよと言って名前を贈った。家族の言葉は無視できないので私の細胞で体を得て妹になりなさいとね。そして姉さんが反抗期だと言ってオフィーリアを10歳にすることに決めたの。髪色も金髪にしたらアディとローアが嫉妬するから黒色に指定していたよ。今言ったのは気づかれたら反抗期で怒るからね。」

「クロアの分身なのに何故私の体を選んだのか分からなかったけれど、私が偉そうなことを言っていたのね。髪色は黒だけれど、目は金色にしている。全く可愛い反抗だよ。」


 末っ子は馬を選ぶときも姉さんか私との繋がりが見えるように選んでいた。

 甘えん坊ばかりだよ。3歳の頃はそれが普通なのかな…。


 オフィーリアが少し驚いた表情で帰ってきた。


「建物の痕跡がなかったよ。本や木片やガラスもない空き地になっていた。姉さんは本物だと知っていても関係なしなんだね。目の当たりにすると凄いとしか言えない。姉さんを応援していた演技に騙されていたことに気づけなかったのが悔しいね…。」

「オフィーリア、今ある力をクロアにもあげて。勘でしかないけれど、クロアが世界最強でないと世界が許さない気がする。」

「渡すつもりだったけれど、今のを見た後だと渡さないと怖く感じてしまうね。姉さんはやはり最低限にするの?」


 勘だと言うけれど、何か感じるものがあるのだと思う。そして姉さんが私を星の女王とか銀河の女王とか冗談で言っていたけれど、全てが私の力を誤魔化してくれている。それに姉さんが冗談で扱うからこそ誰もがあの力を想像できない。

 毒料理店で私に跪かされたことも拷問により体の精神が目覚めたことにしている。だけど事前に魔法で作っておかない限りその場で威圧を分けることはできない。女中さんも対象になっていたはずだから何通りの力を使い分けていたのかも分からない。そして殺さずに全ての人に手加減している。

 人の力を超えていると感じた。あのときは世界が女王を馬鹿にする人を叱った程度なのだと思うけれど、誰にも何も悟られないように考えずにいた。


「そうだね。結界と転移と感情把握をお願い。念のために回復魔法も入れておいて。オフィーリアには妹に勉強させて魔法を教えてあげてほしい。私も料理を覚えた後から勉強するよ。クロアが最強で私は環境改善が基本だからね。それに家族の愛し方を間違えていたと知ることができてよかったよ。そして結界と索敵はクロアに任せるね。人形がこちら側に入ってきていたら処理しておいて。」

「それは勿論いいよ。それと姉さんに乗馬魔法を後で作って渡すよ。姉さんだけは使っていないけれどね。走るのが怖い馬だけれど、2日間で姉さんの虜だよ。オフィーリアも心が綺麗で可哀想な馬を救ってきた?姉さんを透明になって警護していたのだからフィディーについては記憶を追記しても大丈夫だと思う。姉さんなら最後の日だけで十分だよ。それに恥ずかしい言葉だけは入れないのでしょ?」

「そうだね。クロア姉さんに結界と索敵を任せるよ。私も2週間の間に馬を救ってきたよ。2頭にしようか迷ったけれど、難易度が高すぎるから1頭にした。姉さんには牧草地で昼寝を夕暮れまでした日の記憶だけで十分だね。フィディーからも恥ずかしい記憶は消しておくよ。」


 私の言葉だけで姉さんなら把握できると思う。それは姉さんの願いと違うから必要ない。そしてオフィーリアの恥ずかしい言葉はどちらにしても言うと思うけれど、私の言葉のすぐ後だから記憶の追記や消去が難しくなる。


「10歳の反抗期の少女が考える恥ずかしい言葉って何かな?それに馬と会話できるみたいに聞こえるけれど、もしかして話せるの?」

「馬とは念話で話せるよ。それよりも10歳の反抗期の少女が考える言葉を知っていることの方が驚きだね。思考把握すると知っていてわざと考えているのでしょ。クロア姉さんが言ったみたいだね。元々そのつもりでいたし恥ずかしくないからね!」

「もしかして名前を呼ばれたくて透明でいたことだった?思考把握で分かっていても名前を呼ばれないと姿を見せないからね。だけどすぐに消えると言われたら分身に作業させていたよね。私には何がしたいのか分からないよ。」


 姉さんと会話しているだけで心が軽くなる。疲れを忘れてしまいそうだよ。


「まだ4人封印したままで私を揶揄うのはおかしいと思わないの?長女と次女まで反抗期だとは知らなかったよ。これでは妹が全員反抗期になる日も近いね!」

「とても新鮮だよ!これが反抗期なんだね。反抗できない人生だったのでクロアと私は知らないの。反抗期の姉は寝かせて。クロアは無理することに慣れているので休息を優先するよ。私たちが起きてからオフィーリアの歓迎会をしよう。馬の封印は明日解いてあげればいいよ。」

「食事を軽めにしてお茶会にしよう。最高のクッキーを焼くからね。とりあえず脱衣所で浄化して着替えて布団に入ろう。姉さんの言葉を無視して倒れたら後が怖いからね。それでオフィーリアも機嫌を直してよ。」


 姉さんが私を心配してくれるのが嬉しい。今までは心配しすぎだと思っていたけれど、私よりも私の体調を把握してくれている。

 長女でも姉さんは私を中心に考えてくれる。今はオフィーリアがいるから大丈夫だけれど、私が気を失えば家族が心配するしここが魔獣に襲われる。そして人形たちも攻めてくるかもしれない。だけど姉さんはそのようなことは気にしていない。私の体調だけを心配してくれている。別人格だったとはいえ私との差はほとんどない。だから私が馬鹿なのは同じ。今の私を見て寝ることを選択してくれるのは姉さんしかいないのだから。

 姉さんを助けた恩なんて考えてほしくない。今の私は姉さんの愛情で満たされている。それに姉さんの愛情は温かくて毎日を大切な日にしてくれている。


「あれほどの力を使って元気なのに違和感を覚えない。2人とも平気な振りをしている自覚がないので思考把握でも分からないね。クリスとミュリエルには説明しておくから料理部屋に私も入れるようにしてから寝てよ。2人の食事を作らないといけないからね。クロア姉さん、分身が体を得て攻めてきたとしたら何人くらいだったのか分かる?2人に脅威があったことだけは伝えておきたい。細胞から体を作るという行為の怖さを思い知らされた気がするから。」

「最低でも10万人のクローディアが攻めてきた。星の外にいたのも含めるとね。私を恨んでいたとしても殺す機会はいつでもあった。だけど私が殺されたことで姉さんがオフィーリアから能力を全てもらう状態を恐れた。姉さんは最悪を想像したけれど、それは敗北ではなく家族を失うこと。体を作り綺麗な精神を入れても個性が違えば別人だよ。分身だから記憶と精神の保管場所と研究所の場所を知っている。姉さんは敗北を気にしないけれど、家族を失えば話が変わるよ。激怒した姉さんと戦うのは正気の沙汰ではないね。そして世界は必ず姉さんを味方する。家族を取り戻せないのなら姉さんは全ての人を消す。自分自身と一緒にね。」

「次女の過剰評価には困るよ。世界が味方してくれたら全ての人を消すし他の星にも逃がさないけれどね。だけどクロアの分身でも本物の半分くらいの力しかないでしょ。オフィーリアはクロアに力を入れてもらいなさい。クロアが気を失うようなことがあったときの代役を任せたい。私の精神が綺麗だったら妹に責任を負わせたくないけれど、ごめんね。クロアの力を全開で使えるのは精神が綺麗なのが絶対条件。だから今の私ではオフィーリアより強くなれないの。」


 目から鱗が落ちる思いだよ。精神が濁っていたら私の力は全開で使えない。姉さんはそれを感じていた。そして敵は精神が濁って攻めてくるから負けることはない。だけど知らない初見の魔法で家族を失う可能性が高いのは変わらない。1ヵ月ごとに家族の精神と記憶を複写して封印していた。それを破壊されている気がする。歓迎会の後に自宅にいる人の精神と記憶を魔石に複写して封印しよう。


 オフィーリア、確認して破壊されていたらお願い。私が得た力は徐々に入れていく。体を得ても私の力を全て得ている状態ではないから。そしてクリスとミュリエルが乗馬する前に全員の魔法を破棄して新しく入れておいて。私の残っていた自己回復と魔法も破棄で姉さんの魔法も全て破棄だよ。

 私に復讐するつもりなら私の前で家族を殺すはず。できれば午前中はクリスとミュリエルに事情を話して結界内に爆弾が仕掛けられていないか体内に爆弾が仕込まれていないか確認しておいてほしい。自宅、研究所、動物小屋、体、動物の体。精神なのか魔石なのかアダマンタイトなのか分からないけれど、何かある気がする。歓迎会中に私も仮想体で再検査するからお願いできる?

 オフィーリアが頷いたのを見たので安心して眠れそう。


 姉さんが家族にいることで芯が通る。崩れないし私にはない視点で色々と考えてくれる。

 私の不始末で皆の記憶を消してしまった。だけど誰も失わずに済んだ。本当によかった。

最強復活です。

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