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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第62話 乗馬 後編

 クロアの分身による転移で自宅前に移動した。


 自宅前に着くと嫌な予感が膨らんでいく。男性8人が給与をもらって結界内から出て行くのが理想だけれど、絶対にそれはないと考えている。悪い予想だけがよく当たるのは本当に嫌だね…。


「クロアが蹲る姿は殺す相手にも見せたくない。これ以上は厳しいと思ったら右手を軽く挙げるか私に触れてね。それと追い出すのか殺すのか基準を決めておくよ。クロアに性欲を向けるだけで出て行くのなら追い出す。男性恐怖症を利用してクロアを襲うための言動をしたら殺す。オルグレン帝国と近隣5ヵ国だけなのかもしれないけれど、性欲が高まると死の恐怖を忘れて行動した男性が多い。実験場で暮らす男性の行動を見ていると相当数がそれに当てはまるのかもしれない。基準はそれでいいかな?」

「それでいいよ。理由としては十分だから。穏便に終わることはなさそうだね…。基本的には姉さんに任せるけれど、殺すのだけは私に任せて。それでは呼び出すよ。」


 クロアが邸の男性8人を自宅前に呼び出した。

 8人が自信に満ちた目をしている。何に自信を持っているのかは考えるまでもない。


「あなた達に今後してもらうことが決まったよ。準備はいいかな?」

「はい。お任せください!」


 8人が同時に跪いて代表のブレットが自信あり気に口を開いた。何を言われても同じ返事をすると思う。私たちが無茶なことを言わないという信頼から出る言葉ではないと感情を見れば分かる。今は近くでクロアが見られることに満足しているだけだから。


 本当に気持ち悪い…。


「保護期間は終了。外で仕事して暮らして。今まで働いた給与は払うよ。準備はいいみたいだし何も問題はなさそうだね。要望はないみたいなので一番人気の国にするよ。」

「それはどういうことでしょう?」


 何が疑問なのか理解できない。こちらは丁寧に対応しようとしている。もしかしたらこの人たちは保護されていることすら恐怖と一緒に忘れているのかもしれない。だけど任せてと言ったのだから言葉通りに行動してほしい。


「何が疑問なのかな?ドラゴンに食べられそうになっていたのをクロアが助けた。そのことであなた達が恐怖していたから保護までしていた。だけど世界にドラゴンはいない。あなた達を食べる相手がいないのだから、恐怖する理由はない。それに任せてと言ったばかりだよ。」

「その通りですが私たちはクロア様に生涯尽くすつもりです。」


 一度もクロアのために何かしたことがない。言われたことだけをしているのに尽くしているとはよく言える。それにこの状況で8人に余裕があるのはおかしい。私の予想でも甘かったのかもしれない。


 これから何か仕掛けてくる気がする…。


「クロアがそれを望んでいない。だから気持ちよくお別れしようとしているの。私たちは感情が見える。心にもないことを言い続けるのであれば記憶を消して追い出すよ。あなた達のために言っているの。給与を受け取って国で暮らしなさい。」

「お金はいりません。クロア様と一緒に暮らしたいのです。」

「結界内に入れてあげただけで一緒に暮らしたことはない。これから先も絶対にそれはない。」


 クロアが堪らずといった様子で口を開いた。動物小屋で壁まで作られているのにその言葉を口にするのはおかしい。それなのに余裕の態度で跪いている。


 やはり仕掛けてきた…。


 クロアが分身ではないのか試すようにブレットが性欲をクロアに向けた。私たちに殺される恐怖を性欲が上回った男尊女卑の屑。死にかける恐怖を経験して命を助けられたとしても、その恩人に向かって平気でこのようなことができる。男女ともに拷問を経験しなければ普通の人になるのは難しいみたい。それが人なのか実験場だからなのかは分からないけれど…。


「クロア、大丈夫なの?これで追い出すのは決定だよ。クロアが動けなくなったら私にはあなた達を殺すことしかできない。私に惨殺される覚悟があるという事だね。」

「ね、姉さん…。大丈夫だよ。早く追い出そう。」


 クロアが小刻みに震えている。演技すると言っていたけれど、とても演技には見えない。男性恐怖症を演技するように強制命令を付与しているのかもしれない。それを見た屑の性欲が一斉にクロアに向けられた。事前に相談していたのか行動が統一されすぎている…。


 絶対に殺すべきだよ!私が口を開く前に屑が動いた。


「クロア様が動けなければフィオナさんが私たちを殺すのですか。それでは服を脱いでフィオナさんに敵意がないことを伝えましょう。無抵抗の私たちを殺すことはできないはずです。」

「分かりました。」

「クロア、屑の動きは無視して記憶を消して玉座の間に飛ばせばいいよ。」


 何故動かないの?このままだと最低な状況になる…。


「姉さん、男性恐怖症を感じたら震える強制命令が邪魔で集中できないの。それを消したいから背中に隠れさせて。なるべく早く消すから…。」


 クロアが震えながら私に近寄って耳元で囁いた。

 そして視線から逃れるように私の背後に隠れた。


「分かったよ。真面目に対応しすぎだからね。」


 男性恐怖症で震える強制命令を付与しておけばそれ以上はないと考えたのね。だけど男性恐怖症の強制命令で集中力まで乱されるのは想定外だった。

 クロアは演技しているつもりでもそれは違う。震えるのは本当に男性恐怖症だから。男性恐怖症を経験していなければ強制命令でも震えることはできない。それを知らない人では何故震えるのか、いつ震えればいいのかが分からない。


 屑の言動を真面目に確認しようとしすぎだよ…。


 跪いていた8人が立ち上がると服を脱ぎ始めた。最初にズボンを脱ぐと下着は穿いていない。そしてそこには硬く大きくなっている性器があり、先端をこちらに向けているのも偶然ではない。上着を脱ぐときにわざと振っている屑までいる。


 何も言わない。この光景はクロアの集中力を更に乱れさす。


 それにしても下卑た表情がよく似合う。何もしていないから贅肉でたるんでいる体が女装させて売った貴族と同じようにしか見えない。態度も似ているからそのように見えるのだと思う。


 私の殺意が漏れているはず。殺さないことを我慢するのは結構辛いね…。


「フィオナさん、これ程までに無抵抗な私たちを殺すのですか?」

「クロアの症状を知っていてそれを見せたという事は殺すのが決定だよ。クロア、大丈夫?」

「感情把握を切って落ち着いてきたよ。あと少しで動けるから…。」


 感情把握を切るように言えばよかった。早く落ち着こうとしているクロアが焦っているように感じられる。クロアは女王様らしく悠然と構えていればいいの。


「動いたら拷問する。爪を剥いで、腕の皮を剥いで、腕を切断して、回復して繰り返す。精神が壊れても気にせず続けるから。」

「動くと拷問ですか。皆さんこの場から動かないように注意してください。フィオナさんにはこれが敵意に見えているのですか?敵意をなくすためには一度出すしかありません。女性に見せたくないのですが拷問されてから殺されたくありませんので仕方ありませんね。お2人が手伝ってくださるのであれば早く終わりますけれどね。私たちの誠実さを証明するために手伝ってくださると嬉しいです。」


 記憶が駆け巡る…、まるで何かを探しているかのように。

 今は関係ない!意識をしっかり持ちなさい!


 男たちが手を上下させる度に殺意が強くなる。


 屑1人が白い液体をこちらに向けて飛ばした。

 それを見た屑7人は笑っている。


 体の力が抜けていく。殺す。殺す殺す殺す殺す。絶対に殺す!

 視界が濁り始める。そして暗闇になった。


 いつもの部屋。

 壁に凭れ掛かって眠っていたみたい。幸せな夢を見ていた気がする。


 こいつらの声で起きたのか。

 既に全裸の男が8人もいる。どいつもこいつも似たような顔。


「情けないですね、早すぎますよ!ここからだというのに何しているのですか。」

「お、俺は何度でもいけるぜ!絶倫なんだよ!」


 ああ、いつもの光景。ゴミ女の趣味の悪さには反吐が出る。

 そろそろいつも通りに…、違う!


 何故か殺せる力がある。笑っている男を皆殺しにできる。

 城中のゴミを殺せる。偶には私が血塗れにしてあげるよ。


「姉さん、姉さん、姉さん!」


 姉とは誰のこと?幻聴かな。だけど耳に残る綺麗な声。

 背中が温かい。お腹も温かい。不思議な日…。


 さて、殺そう。


 あれ?体が動かない。

 まあいいや、早く来い。何を迷っている。


 首が何かで濡れた。天井を見ても雨漏りはしていない。

 だけど温かい液体が首を濡らし続ける。


 不思議な日…。

 男が近づいてこない。喚いているように見えるけれど、何も聞こえない。


 あれ、おかしい。

 この部屋に入って男を見たら何も考えないはずなのに。


 今の状況が分からない。どうすればいいのかな。

 だけど背中とお腹の温かさは消えていない。


 誰かを姉と呼んだ人が抱きついているのかな。


 あ、あー、おーい。誰か聞こえている?

 殴りにくる侍女もいない。この部屋では男が帰るまで殴らなかったね。


「フィオナ姉さん…、聞こえているよ…。」


 姉は私のことなんだ…。

 何で泣いているの?私のせいかな?私が失敗したんだ。ごめんね。


 失敗する姉は邪魔だよ。妹を悲しませてもいる。だけど家族がいると分かって嬉しい。

 これは私なんかが幸せに過ごした罰。だから私を消して。変なお願いしてごめんね。何も分からない姉は消した方がいい。ゴミ女の気紛れで処分されるよりは妹に消されたいから。悪いのは私だから気にしなくてもいいよ。優しく消してくれると嬉しいな。


「姉さんのお陰で私は大丈夫だよ…。ありがとう…。それでは消すね。すぐに会えるよ。」


 ふふっ、優しい妹…。


「姉さん、起きて。」

「んー、ん!?嘘でしょ!?この状況で寝るのはあり得ないよ。クロアが眠らせたの?記憶も消しているね。殺そうとした?暴走した?はぁ…、クロアを守るつもりでいたのに、ごめんね…。」


 芝生の上に足を伸ばして座っている。クロアも私を抱きしめて座っている。今の状況はよく分からないけれど、私が何か失敗したからだと思う。

 クロアに「もう大丈夫だよ」と言って2人とも立ち上がった。


 性器のない8人が喚いているように見えるけれど、何も聞こえない。

 8人が横並びで立っているけれど、歩くこともできないみたい。


 結界で防音して閉じ込めてもいる。


「姉さんに守ってもらったの…。ここに来る前の助言がなかったら蹲っていたよ。それと姉さんに記憶を消してと頼まれたの。殺すのを我慢するのが辛かったみたい。記憶を消してもまた同じようになったら意味がないので眠らせたの。記憶を消すのと同時に処理するのが難しかったから。姉さんも終わったら記憶を消すつもりだったのでしょ。私も激怒して本体にこの人たちへの殺意を送りそうになったよ。男性への耐性を相当高めてきたけれど、危なかった。」


 クロアの前で全裸になったのだから性器を使って何かしていると思う。できることは限られるけれど、確実に私は殺意で満たされる。クロアが動けなくなったら惨殺するつもりだったけれど、大丈夫だったので私の記憶を消して屑を無害にしてもらった。クロアの言う通り全てを終えたら記憶を消してもらうつもりでいたので別にそれは気にならない。

 だけどクロアが激怒したのは何故なの。男性への耐性を高めていても怒りには繋がらない気がする。それなのにクロアが激怒するような言動をした。そしてそれは私に対してだと思う。クロアは自分自身のために激怒するような子ではないから…。

 これ以上は考えない方がいい。クロア本体が私を見たときに男性恐怖症を悪化させてしまう可能性がある。屑を見ると私の予想は当たっていたみたいだね…。


「クロア、8人の記憶を消してから剣を持たせて玉座の間に飛ばして目に映る男性を殺し続けてもらおう。私は後ろを向いているから飛ばす直前に性器を治して。流石に性器のない人が暴れているのは不自然すぎる。奇襲だから何人かは殺せるけれど、すぐに串刺しだね。色々なことがあったけれど、ここは力を得たクロアが大切に守っている場所。屑の血で汚すのも屑をこの場所で殺すのも聖域が穢れる。星の女王様が守っている土地は聖域だからなるべく穢したくない。」

「姉さん…、私を星の女王にしたいみたいだね。分かったよ。後ろを向いていて。その称号を考えたことは少しずつ後悔してもらうことにするね。」


 後ろを向いて考えよう…。星の女王様では物足りないという事だね。だけど宇宙の女王様は格好が悪い気がする。銀河の女王様にしよう!この銀河はクロアのものだね。私も少しずつ料理以外の勉強をしているけれど、今日はよく役に立つ。勉強はこのように日常を充実させるものに違いない。早く仮想体を覚えたいけれど、フィディーから離れられない。そして記憶を消しても治せない気がする。日常的に同じような扱いを受けていたと思う。だから私が頑張るしかない。


「姉さん、銀河の女王が無重力で呼吸できないのを体験してからフィディーの元に飛ばそうと思うけれど、どのように思う?」

「女王様、それは魔力の無駄遣いです。だけど他の星に住むのも面白いよね。住める星があればの話だけれど。ん…、この近くに魔力で届く星があれば消して。主犯が実験場で眠っている可能性を考えたけれど、近くの星で封印されている可能性もある。封印されている主犯をこちらに転移させてお祝いしてあげてもいいけれどね。実験場は生身の体で他の星は人形の可能性もある。敵は殲滅しないとね。」


 逆の可能性もあるけれど、呼吸できない恐怖を考えたら人形の可能性が高い。それに魔力だけを送る転移門があれば封印は解けない。


「なるほど。封印を維持するための魔石を人形が踏み続けている可能性があるね。流石姉さん、もし見つけたらお祝いしてもいいけれど、宇宙に捨てよう。星を消すとこの星にまで影響があるからね。お祝いするのは生身か人形のどちらかでいいよ。精神を自動複製する拷問を1000年して死にたいか聞いてみて何を言っても1000年追加。そして私たちの寿命が来る前に終わらない拷問の仕組みを完成させておく。星の寿命で拷問を終わらせるなんて優しいよね。泣いて喜ぶと思うから遣り甲斐があるよ。私は屑の立っている場所を浄化して邸も消して浄化して動物小屋の配置も変えて本体に終了を告げて消えるね。それと姉さんの大活躍は銀河の女王にも伝わっているからね。それでは飛ばすよ。」


 気に入っているね。間違いなくその気になっていると分かるよ。

 銀河の女王様の誕生だね!


「ただいま。こちらは何もなかった?」

「お帰りなさい。何故か分身が壊れたよ。有益な情報もあったけれど、銀河の女王とか言っていたからね。アルティーは飛べるようになるのかな。それよりも姉さんの助言で相当男性への耐性を高めていたの。それでもギリギリだったと伝えてきたから異常だよ。そして私の大失態で姉さんに辛い思いをさせてしまったの。ごめんなさい。分身が何も言わないのは思い出してほしくないからだよ。私はいつも通り感情把握で結界内を見ていたけれど、自分の責任で状況が悪化したのは分かった。姉さん、強制命令で男性恐怖症を感じたら震えると付与していたらどのようになると思う?」


 震えることでクロア本体だと屑に思わせたかった。だけど男性恐怖症を知らなければ震えられない。今回その強制命令を付与していたら男性恐怖症で震え続けることになっていたはず。実際には付与していなかったからよかったけれど、とても危ないね。


「付与していたら震え続けていたと思う。屑を確認するためだけにそこまではしなくて正解だよ。男性恐怖症のクロアが震えていても普段と同じなら問題ないけれど、震えて何もできなくなる可能性が高いと思う。強制命令を付与していても実際に震えているときは男性恐怖症が理由なのだから。」

「確認を間違えたくなくて付与してしまい、それで何もできなくて姉さんの背中に隠れてその強制命令を解除したの。そのとき姉さんは自分自身に激怒していたよ。精神を綺麗にするために避けては通れないから言うね。激怒して踏み止まっていたけれど、一瞬で感情が希薄になった。姉さんは無感情、無表情、無反応、無気力、意識が曖昧な状態でお城で過ごしていた。無意識で切り替えてきたからその状況の象徴的な言動で過去の状態になる。無意識に切り替えてしまう。少し確認するね…、過去を見てから切り替えているね。今では過去と全く同じ状態になるのは難しくても記憶から得られる情報で似た状態になるみたい。姉さんが復讐するために過去を見ていると思っていたものは過去の自分を今に反映させるためだった。だけどその状態になるのは相手の言動次第だって。それならば対策できるね。過去に抗い今の自分に自信を持てばいいのよ。」


 自信のなさがそのようなことをしているのは酷いね。そして先程も無抵抗になっていたからクロアが抱きしめていた。相手が誰であれ過去にお城で雑用していた自分を無意識に反映する。それは余りにも情けなさすぎる。過去を見るのはお城で生き抜いてきた自分を探すため。自分に自信がないのは間違いなく特に力に関しては全く自信がない。だけど力があればいいというものでもない。昔と違い今は自由なのだから自信を得る手段は多くある。不器用だから1つずつ自信を持てるようにしよう。まずは家庭料理からでいい。


「方針は決まったよ。ところでこの林はどこにいるのかな。それとクリスたちはあえて別行動にしたのかな。それに分身がまだ働いているのはおかしいよね。」

「その方針でいいと思う。クリスたちは少し走らせたいみたいだから池と厩舎の中間辺りにいるよ。ここは池から更に北に来た場所。勿論あえて別行動にしたよ。分身が残っていることを不審に思うのは姉さんくらいだね。私の分身は激怒しているから…。とりあえず八つ当たりでお城と周辺を将来は湖になるようにしていたよ。そして8人には強制命令を2つ付与しているの。1つ目は目に映る男性を処理すること。2つ目は魔力器に身体強化を使わせている。更に無敵紙を体に貼り付けて切れなくしてある。燃やされたり殴られたりすれば終わりだけれど、8人が立っている場所を浄化すると言ったでしょ。八つ当たりと無敵紙は姉さんが寝ている間に終わらせているよ。分身は物騒だね。」


 高台にあったお城が湖になる。間違いなく平地になるような極大の攻撃魔法を放っている。少し心の靄が晴れた気がする。そして切ることができない屑を身体強化している。犠牲者は多いだろうね。そして分身は浄化魔法を使わない。私のために激怒してくれている銀河の女王様は破落戸騎士がいるお城も消すのかな。全く何するのかが予想できない。屑が勘違いしたところを絶望させる気はするけれど。


 とにかく焦っても前に進めない。今できることをしよう!


「フィディー、こちらへ来なさい。約束を守ったよ。疑っていてもいいと言ったでしょ。私の顔を忘れたの?戻ってきて驚いているの?」


 こちらを見ているフィディーの元まで歩いて行くと首を下げてくれたので顔を両手で優しく挟んだ。そして本日3回目の睨めっこ。


 私を見ているので忘れられてはいないね。


「帰ってきて驚いた?それとも恥ずかしいの?どちらかな?」


 恥ずかしいという言葉のときに耳が僅かに動いた。


「恥ずかしいみたいだね。もしかして嬉しくて恥ずかしいの?」


 鼻を高く鳴らして胸に押し付けてくる。決して強くはないけれど、これ以上は聞かないでほしいと訴えているみたい。喜んでくれているのなら嬉しい。そして顔を持ち上げて本日4回目の睨めっこ。


「乗馬して散歩する?一緒に並んで歩く?昼寝する?厩舎に戻る?フィディーの望みを私にも分かるように教えてよ。」


 フィディーは悩まなかった。私の左横に立って体当たりしてくる。普通の人なら尻餅をつく。乗馬してほしいみたいだね。少しだけ注意しておこう。この子は序列2位なのだからミュリエルの馬が真似したら危ない。


「フィディー、乗馬してほしいときは優しく触るように体を当てるの。このような感じでね。」


 フィディーの左横に立ち触れるように体を寄せる。そして触っている状態を維持した。伝わったと思うので馬具を装着するために少しだけ離れた。


≪乗馬≫


「今後はあのようにするのよ。私はあなたの序列が何位でも主でいるけれど、他の馬はあなたを真似して序列を上げようとするかもしれないのだから。」


 鐙に左足を乗せてふわりと鞍に跨り鐙に右足を乗せる。

 身体強化がなければ馬に乗るのも大変だから本当に助かる。


「林から出よう。8頭を連れて12頭が走ってくるからね。」

「あの子たちにしては遅いね。牡馬を誰が選ぶのか考えていたのかもね。アルティーは序列の低い牡とも仔馬を産むつもりはあるの?」


 やはり会話している様子はない。これは絶対に念話。それより馬が念話で答えるのが凄い。念話の使い方を理解しているのだから。賢すぎるよ!


「数を増やすのも本能だから余程の屑馬でない限りは大丈夫みたい。当然だけれど、仔馬の主は母馬の主だよ。それで悩んでいたのかもしれないね。」

「3頭でも難しいのに何頭の主になるつもなのかな。フィディーも仔馬がほしかったら産みなさい。何頭でも可愛がってあげるから。妊娠しても厩舎には行くから安心して。一緒に歩いて散歩と昼寝はするからね。クロア、動物の餌は買ってくるの?それに厩舎や牛舎や鶏舎はどのようなに維持していくの?」


 本に記載されていた野菜が実験場で見かけないことはよくある。だけどクロア1人で世話する気がでいるし絶対に妥協しない。


「餌は買うけれど、今年で最後にしたい。来年のために馬糞、牛糞、鶏糞を堆肥にする場所を用意したし動物にトイレの場所を伝えてある。それと結界内の牧草地は回復すれば元に戻る。あと浄化しているけれど、蹄の汚れを取るために小屋に入る前に底がタワシ状になって水場がある。最終確認は私がするから大丈夫。それと飼料も追加で与えた方がいいものは調べたよ。だけど初めての飼育だから慎重になりすぎているのかな。」

「かなり大胆だよ!クロア、今の話で思い出したけれど、馬の蹄は人の爪と同じだから金属で巻くのはよくない。自分で言っことだけれど、蹄が脆くなるし垢も溜まる。だから序列と名前が入っている首輪とかの方がいいと思う。無敵紙で作って全てを弾くようにすれば問題ない。そして馬が横になったときに邪魔にならないように序列は無敵紙の色と数字を変える。あと蹄の窪みだけに水を弾く無敵紙を貼り付けてあげると汚れが落ちやすくていいと思う。どうかな?」


 コーヒの木を探したのだから果物の木も探して育てているはず。お茶と穀物と野菜は同じ条件でどちらの品質がいいのか確認するに違いない。地理の本で学んだ気候を魔石で再現するはず。実験場の中心で食べることができる最高品質の食材がここに集まる。これが商人だったら隠すのが大変だと思うけれど、クロアは売らない。私たちと動物の食事のためだけに育てる。隠蔽はどちらでもいい。強力な魔獣の棲み処に近づく人はいない。それに魔獣の森だから魔力で満ちている。


 人と関わらないから魔獣の森に移住したと思っていたけれど、先を見据えている。


 動物については優しく丁寧に世話してあげるのが一番だと思うけれど、末っ子と馬が仲良く遊ぶためには序列が見えるようにしておいた方がいい。


「透明な無敵紙で首輪を作って胸で幅を広くして序列と名前と主の名前を入れるよ。窪みに無敵紙を貼り付けておけば汚れも溜まり難く落としやすい。4人がここまで8頭を連れてきたときに一斉に変えるよ。成長する場所を固定するのはよくないね。それにしても12頭だけでも凄い迫力だね。後ろの馬は序列で抜かないようにしているのか抜けないのかどちらなのかな。」

「4人は競争しているのかもしれないけれど、他の馬にはついてきてと指示を出しているのかもしれないね。競争している馬は同着になるように調整していると思う。勝つことが怖いのか負けることが怖いのかどちらかなのだろうね。生活環境が改善されたのはすぐに分かるけれど。人により動物との触れ合い方が違うと理解してもらうには時間が必要だよ。4人は無茶させずに楽しめばいいよ。乗り手が楽しめばその気持ちは馬に伝わる。」


 12頭で走っているのは楽しそうだね。4人は私たちと100m程離れた場所から減速させた。急停止させないのはいいことだね。そして私たちの前に来る頃には歩いていた。

 クロアは12頭を序列順に並ばせると予告通り一斉に金属を蹄に巻くのをやめて無敵紙の首輪に変えた。4人はまだ何も言っていないのに序列と名前と主が分かるのはおかしい。牡は2頭いるみたい。

 牡の主はディアとアディ。早く牡に乗りたかっただけだと思う。


「クロア、単独行動するね。夕暮れ前には厩舎に戻るよ。」

「分かったよ。楽しんできてね。」


 フィディーは単独でも前のめりに全力疾走するのだろうか。4人が私に何か言おうとしたけれど、クロアが止めたみたい。少しの期間は実験のようになってしまうけれど、フィディーのことをよく知らなければ何もできない。そしてフィディーの心の傷は私が治す。


「フィディー、池までゆっくり走ろう。」


 左手を優しくフィディーの肩に置いた。ゆっくり走ってという想いを強く込めて。それでもフィディーは前のめりになり全力で走り出してしまった。

 フィディーに止まるように指示を出した。私が急加速と急停止をさせているのが何とも言えない気持ちになる。そしてフィディーから下りた。


≪下馬≫


「フィディー、私と同じ速さで走りなさい。池まで行くよ。同じ速さだよ!」


 私が下馬したことで前のめりになっていた首が更に下がったけれど、捨てられていないと分かって安心したみたいで首が上がった。そしてフィディーは主を抜こうとしないはず。まずはゆっくり走るという事から覚えてもらう。フィディーも私と一緒で勉強しないとね!


「ゆっくり走るよ。ついてきなさい!」


 ゆっくり走るのに盛大な嘶きをしてからフィディーと私は一緒に走り出した。

心の傷を見せることなく日常を楽しもうと努力しています。

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