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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第57話 役目

 クロアがミュリエルに確認してみたら、部屋は1人部屋でいい、寝る場所は皆と一緒でいい、という事だったので部屋をすぐに用意して寝る布団は真ん中が空いていると伝えたあとに、クロアの指示でディアとロディがミュリエルに仮想体の作り方を説明している。どちらかといえばディアとロディの勉強になっているように見える。


 その光景を見ながら黙って俯いているアディとローアを連れて部屋に入った。

 幼いのに大人みたいに黙って抑えないでほしい。


「2人ともどうしたのよ。同じ悩み?それとも違う悩みで別々に聞いた方がいいの?」

「確認してくる…。」


 アディはそう言うとローアを連れて部屋から出た。少しして2人とも戻ってきた。気にしている問題の根幹は同じみたい。何を気にしているのかは予想がつくけれど、劣等感を持ってほしくない。


「私の言葉は見当違いなのかもしれないけれど、先に言っておくよ。2人が怒ってくれていたのは嬉しかったし我慢してくれていたのも嬉しかった。それと最初から孤児院の子たちを飛ばすつもりはなかった。最低限の勉強だけでもいいからしてくれるのならよかったけれど、孤児院に依存する気だった。オードリーの発言に同意していたのは致命的。それに孤児院を卒業して仕事に就くために勉強してもらうつもりだったけれど、否定されて拒まれてしまった。子供たちを助けたのは奴隷として働かされ飢えに苦しんでいたからで孤児院を運営するためではない。孤児院にいた子たちも出て行った女性たちも同じだった。私たちを否定しても侮辱しても、そのあと力を借りることに躊躇わない。謝罪もしない。孤児院はクロアの負担にしかなっていなかったので不愉快だったけれど、恐らく私のために誰も殺さず世界中の孤児院に飛ばした。それで何を気にしているの?」

「お姉ちゃんのためにディアは動いた。それが例え正しくないとしても動いたのはディアだけだった。何が違うの?私には何が足りていないの?」


 そういうことだったのね…。

 アディは動きたくても動けなかった。


 誰も動かなくてよかった。大人の問題は大人が解決するべきだから。それに人を殺した経験のない2人はそのままでいてほしい。いつの日が殺すときが来るとしてもまだ早すぎる。せめて成人してからにしてほしい。精神が成長してからにしてほしい。人を殺して得られるものは何もない。復讐したい相手もいないのだから。


「ディアはクロアと融合した。それにより血を見ることに慣れてしまった。それが自分の血でも魔獣の血ても関係ない。更に実戦経験まである。実際に人を殺してもいる。相手は人形だったけれど、当時はそのような知識はなかったし記憶で見ても人を殺しているようにしか見えない。それにクロアに悪人ばかりが近寄ってくるのでディアはクロアを侮辱する相手を瞬殺すると決めた。それが私にも適応されたのだと思う。あなた達が1回分見たクロアの記憶をディアは全て見ている。私の過去も知っているのだと思う。クロアは7年間で20万回以上も魔獣に体を食べられて死にかけた。私が死にかけた回数は知らないけれど、100年近く人に体を食べられた。人である王女の生き餌として飼われていた。ディアは私とクロアの境遇が似ていると考えているのかもしれない。2人とも人形との戦いに参戦を約束した。人形は人にしか見えないし壊せば血に似せた液体を撒き散らす。それを覚えておきなさい。そしてクロアは人を殺すことを許していない。ディアの蹴りを結界で防いだのもそれが理由だよ。3歳の子が人を殺してはいけない。人の死に慣れてはいけない。クロアは6歳になったら人形を倒しに行ってもいいと言ったけれど、それは人形を圧倒できる力を得ていたらの場合。私とクロアが警戒しているのは殺すことに楽しみを見出してしまうこと。孤児院を出て行った女性たちは殺すことを楽しみにしていた。あのとき殺そうと動いたディアは陰でクロアに叱られる。2人に足りないものは何もない。今のまま努力しなさい。アディ、それでいいのかな?」


 クロアはディアたちが6歳になっても人形を倒しに行かせない気がする。最低でも10歳までは引き延ばすと私は考えている。人形の強さを知っているのはクロアしかいないので4人の成長を見ながら人形の強さを設定する。人形を想定したクロアの分身を倒せなければ行かせないと言えばいい。そのときは何歳になっているのかな。確実にクロアの分身も陰ながらついていくと思う。


 私の望みは人形と復讐を忘れて楽しんでほしい。笑顔をたくさん見せてほしい。


「それならお姉ちゃんを拷問した相手は私たちが殺してもいいのよね?」

「アディ、復讐する相手を探そうとするのはやめなさい。足りていると言ったでしょ。それに復讐する相手はクロアが殲滅してくれた。これから勉強を始めていくのに今から焦ってどうするの。人を無理に殺そうとするのと人を殺して楽しんでいる行為は近い気がする…。これ以上考えるのは絶対にやめなさい!私は人を殺していないけれど、精神が濁っている。それを綺麗にするために努力しているのよ。私を拷問した相手を憎むのは当然だと思っている。クロアはディアと融合したときに消されるはずだったのを無理やり残った。そのときにクロアから濁った精神だけが剥がれて能力のように背中に貼り付いた。だからクロアの精神は綺麗なの。ディアが強いのはクロアの経験を全て受け継いでいるから。勉強すれば差は縮まる。ロディは魔力器だったから魔力の扱いは優れている。それでもクロアが上に行けると証明してくれた。そしてクロアが何も隠さず平等に教えてくれる。このような恵まれた環境はどこにもない。焦ると何も覚えられないし身につかない。これから勉強するのだから、とにかく落ち着きなさい!お願いだから殺しの経験を望まないで!私が拷問された経験なんて今はどうでもいい。家族が減ることが嫌なの。もしも私のせいで家族が減ることになったら耐えられない。お願いだからやめて…。」


 ディアが強いことに対する焦りは分かるけれど、2人が真剣に勉強したら差は縮まるし追いつき追い越せると考えている。勿論ディアも勉強するから簡単なことではない。だけど差がある理由を殺しの経験と繋げないで。殺したことがあるから強いと考えないで。血塗れの妹たちを見たくない。


 絶対に見たくないの!


「それなら何でディアが動いたときに喜んだの?」

「アディ、それはディアが私を家族として受け入れてくれていると分かったから。常に不安だった…。家族の中で私だけ繋がりがない。クロアが姉と呼んでくれているだけの存在でしかなかった。それでも家族を失うことが怖いの。それに私のせいで家族が割れるのも怖いの。だから長女として活動しているときは4人平等。今は2人を可愛がる姉。それでは駄目なの?」


 100歳を超えていきなり長女として妹が5人できた。自分の行動が正しいのか分からない。だけど自信を持って行動しなければならない。私が動揺していたら末っ子4人も動揺してしまう。それに私の計画や行動が信じられなくなる。だから虚勢を張ってでも長女として計画し行動する。


「お姉ちゃん、あれは平等な計画ではないよ。私たちだけ蚊帳の外だった。クロア姉ちゃんを笑わせるのはディアかロディがいいとお姉ちゃんは考えているのでしょ。」

「ローア、その通りだよ。ディアとロディはクロアと死ぬ覚悟で生きている。あなた達はクロアが死んだら自殺するの?クロアに対する思いも覚悟も違う。違いすぎる。クロアとディアの最初の目標が何か知っている?一緒に死ぬことだよ。それですら難しい状況だった。ディアとロディはあなた達が救助される前からクロアを笑わせたいと頑張ってきた。常にそのことを考えている。2人ともそこまで考えていない。だから2人は勉強して強くなれる計画にした。ディアとロディがクロアを笑わせる計画を立てている間に勉強すれば差は縮まる。そのように考えて計画を立てた。ディアとロディが体をほしがらないのはクロアと同時に死ねるから。ディアはクロアが感情を失ったことも味が分からないことも男性恐怖症になったことも全て自分の責任だと考えている。3歳児のディアができることはほとんどない。だからクロアを笑わせることにした。平等でも思いの強さによって計画内容は変える。長女として妹たちのために計画を立てた。誰も後悔させるつもりはない。それは駄目なことなの?」


 クロアは笑えても必ず最初の笑顔はディアとロディに見せる。どちらが面白い計画を立てたとかではない。本気になって計画してくれた2人が嬉しいから…。

 アディとローアにそこまでの気持ちはない。だから末っ子4人の気持ちを平等に考えて計画を立てた。クロアが死ぬときにアディとローアも死ぬべきだとは思わない。だけどその覚悟を持った2人を優先することは悪いことではないと考えている。

 クロアはディアを守るために無理やり残った。ロディはクロアの魔力器の精神。3人は一緒にいるのが当たり前。中途半端な気持ちで邪魔してはいけない。それを分かってほしい。


「言いたいことがあるのなら全て吐き出しなさい。3歳児が遠慮してどうするの!何もないのなら今日は早いけれど、お風呂入って寝るよ!」

「あるよ!お姉ちゃんの計画にはお姉ちゃんがほとんどいない。何でいないの?クロア姉ちゃんの方が強いからなの?」


 確かにそのように見えるのかもしれない。クロアの強さに頼っている計画もあるのだから。だけど私が計画にほとんどいない理由は違う。計画に参加したいと思わないから。手伝うために参加することはあっても中心にいることはない。何故なら幸せだから…。


「私たち家族の長女と次女には役目がある。次女は世界最強だけれど、家族を見守ることを最優先とする。私は長女として妹たちが楽しめる計画、遊べる計画、学べる計画を立てる。料理を覚える。仮想体を覚える。だけど強くなるのは後でいい。何故なら家族に最強のクロアがいるから。私とクロアが強さで競っていたらあなた達は何するの?料理するの?買い出しに行くの?勝てない敵と戦うの?あなた達4人が好きなことに集中できる環境を私とクロアが用意しているの。私にも強さが必要だとは思うけれど、あとでいいの。あなた達が先に強くなる方が大切だから。勉強できることの方が大切だから。私はクロアとお茶したりお菓子作ったりと楽しめている。一番の理由は既に幸せで楽しいから。だから家族を強さだけで判断しないで。私たちが何をしているのか考えてみなさい。あなた達が何故自由なのか考えてみなさい。私はクロアに命を助けてもらった。そしてクロアより弱いことを恥だとは思わない。だけど強くなる努力はする。順番が違うだけなの。そのくらいあなた達なら分かっているでしょ。あなた達がディアに劣等感を持っている間は絶対に追いつけない。視野が狭くなり成長も遅くなる。家族は敵てはない。協力する約束したのだから努力して強くなりなさい。約束は守りなさい。もしかしてディアに弱いと馬鹿にされた?それなら今すぐ叱りに行く。だけどそのようなことはない!ディアも努力する。それに努力する人を馬鹿にする子ではない。自分の劣等感を私とクロアに当てはめるな!アディ、言いたいことは?」

「ごめんなさい…。」


 こういうときは素直なのよね。


 今は弱くてもいいじゃない。これから勉強すれば強くなる。家族は敵ではないし劣等感を持つべき相手ではない。勉強をどれだけしても強くなれないのならクロアに相談すればいい。クロアは必ず平等に強くなる助言をしてくれる。本当に恵まれた環境にいるの。

 それに本を少し読んでみた思った。強くなるためだけの勉強ではない。本には色々な想いが込められている。それを感じ取りながら勉強してほしい。


「ローアはいいの?何も残していないの?」

「お姉ちゃんはクロア姉ちゃんが怖くないの?間違いなく世界最強だよ。怒らせたら殺されるかもしれない。それなのに何で怒れるの?」


 それが何故怖いのかが分からない。家族の中に世界最強がいるだけ。姉を信じられないのであれば直接言えばいい。姉が強すぎて怖いと。間違いなくクロアは優しさを証明するために手を優しい味のクッキーに変える。それだけだよ。私が怖いのは過労死することだけ。強さを怖いと思ったことはない。それに今まで頼ってきているのに怖いと言うのは裏切りに近いと思う。


「中途半端な覚悟で長女をしていない。クロアが怒って私を殺すのならそれでもいいと思っている。幼い頃から私は家族がほしかったの。今はとても幸せで長女として死ねるのなら十分だよ。それに妹に怖がる長女がいてどうするの!クロアが常に正しいとは限らないじゃない。それなのに誰も何も言えないの?それが家族なの?私は死んでもいいから注意するし叱るし怒る。仮に長女が次女に怯えていたらあなた達は誰を頼るの?次女が怖いのなら長女に頼るしかない。それとあなた達も妹として言いたいことがあるのなら私やクロアに言いなさい。遠慮する必要はない!血の繋がりのない私たちが何故家族で暮らしているの。皆で傷の舐め合いをしているの?違うでしょ!楽しく暮らすためよ。姉が間違っていると感じたのなら言いなさい。それができないような関係を家族だとは思わない。私はクロアの強さを怖いと思ったことはない。クロアの強さに怯えたことはない。クロアが強くなったのは何故か知っている?家族を守るために強くなってくれたの。それなのにクロアの強さに怯えたら裏切りと同じだよ。家族を信じていない証拠。だから家族であることに自信を持ちなさい。強くなることについてはクロアに相談しなさい。困ったことや迷っていることがあれば私に相談しなさい。それで何かあるの?」

「何もないです。ごめんなさい…。」


 死ぬときまで長女としていられたら十分幸せだよ。だけどクロアが狂ってしまうようなことがあれば命懸けでとめる。次女と末っ子4人の命が懸かっているのだから。私の命で5人を守ることができるのであれば躊躇う理由は何もない。自分が死ぬよりも妹たちが死ぬところを見ることが怖い。


「まだ何か吐き出していないね。言いなさい!中途半端に残していると日が経つごとに膨らんでいく。それは恨みや憎しみの感情に変わってしまう。だから言いなさい!」

「孤児院にいた子たちはあれが本音なの?洗脳されていたのなら治せるかもしれないじゃない。」


 本当に言いたかったのはそれみたいね。一月も遊べば友達ができる。洗脳が理由だとしたら治せるかもしれないと考えるのは当然だね。クロアが治せても治すつもりがないと言ったから余計に気になっているのかもしれない。


「孤児院の子たちを預かるのは16歳までと決めていた。奴隷の子を助けろと言ったのは敵である精神の奥にいた人形。クロアは強いし凄いけれど、何でもできるわけではない。この大陸に1体でも人形が残っていたら洗脳方法を解析して治せたかもしれない。だけどクズ能力が人形の力を隠した。とにかく人形は危険だったので全てを破壊した。クロアも子供たちが洗脳されているとは思っていなかった。脳を洗脳されていた場合、解析で見つけるのは不可能。何が洗脳による発言や行動か分からない。治るか分からないけれど、試すことができるのは記憶の全消去。2人は襁褓の子230人近くをクロアに任せるの?成長したときに治っていない可能性もある。それに洗脳を破ったミュリエルがいる。私もいる。それにあの状態で孤児院に残したとして勉強するように説得し続けるのは誰なの?あなた達がしてくれるの?それだと勉強する時間がない。どのように考えても家族が孤児院に潰されることになる。この大陸は実験場だった。大人も子供も勉強しないようにされていた。これから生まれてくる子は違うと思うけれど、人形を破壊する前に生まれた子は洗脳されている。クロアは家族を守ることを優先した。私も同意している。何か方法があるのなら言ってみなさい。」

「お姉ちゃんやミュリエルさんが治った方法を試せばいいと思う。」


 私とミュリエルは死が身近にあった。激痛に襲われることが多かった。それを子供たちに試せと言っているの?少しは考えて発言しなさい!


「私とミュリエルは拷問により洗脳が解けている。孤児院の子たちをあなた達が拷問するの?そして拷問した記憶を消すの?記憶を消しても拷問されたときの痛みは体が覚えている。子供たちが死ぬことに怯えて勉強するまで拷問し続けることになる。やるの?やらないの?」

「できません。ごめんなさい…。」


 クロアと私は子供たちを拷問できない。その辛さを誰よりも知っているのだから。


「あとはローアだけよ。孤児院の子が気になるのなら解決策を言いなさい。」

「孤児院の子たちだけ洗脳が強く感じる。皆あの状態だったら国が成立しない。何故なの?」


 救出されて孤児院ができてから洗脳されている。人形とクズ能力の嫌がらせは最悪。


「クズ能力と人形の嫌がらせ。助けさせて困るように仕向けた。助けた子のうち88人が人形でクロアや虫に化けたりもした。それをクロアの責任だと言いたいの?クロアが家族を助けるために頑張ったから悪いと思っているの?それか私が声をかけたら勉強してクロアが声をかけたら遊ぶように洗脳する?あの子たちは孤児院に助けられてから洗脳されている。飢え死にさせた方がよかった?どれがいいのか選びなさい。ないなら他の意見を言いなさい。」

「何もないよ。ごめんなさい…。」


 何もできない。クズ能力はクリスの記憶を消して人形に関しては分からなくした。実験場での人の命の価値が分かるような行為。


「今日はお風呂に入って早く寝るよ。疲れているでしょ。2人は起きていてもいいけれど、私は寝るからね。」

「私も寝る。」

「私も寝ます。」


 部屋のドアを開けるとミュリエルが仮想体の練習を続けていた。

 少しだけ切ないのは何故だろう…。


「先にお風呂に入って寝るよ。クロアも皆の前で話して疲れたでしょ。早めに休んだ方がいいよ。本体で見に来ることはなかったのに。」

「妹を目の色でしか見分けられないお姉ちゃんがクロア姉ちゃんが本体か分身か見分けられるの?クロア姉ちゃんも気を遣ってそういうことにしなくてもいいからね。」

「ふーん…。アディはお風呂で自分の手を齧るそうだよ。優しくて甘い味でよかったね。」


 容赦なく姉妹の手をクッキーに変えようとするローアも優しさが足りていないね。


「ローア、姉妹の手をクッキーにしようとする発言は優しいのかな?」

「何故クッキーにしようとするの?それにクロア姉ちゃんが本体かどうか分からないよ。」

「姉妹を叱っただけです。私は妹の間違いを正す必要がありましたから。」


 この会話の流れだと全員の手がクッキーになる…。


「それで姉さんは本体が答えでいいの?ミュリエル以外は答えなさい。」

「本体と分身の2人がいて私が怒って呼んだから本体にした。クロアも早めに寝なさい。」

「何で巻き込むの?まあ、私とロディは分かるからいいけどね。本体だよ。」

「本体です!」

「本体だと思うね。」

「私も本体だと思っていました。」


 アディとローアはディアとロディの答えを聞いてから直している可能性がある。


「正解よ。姉さん以外は理由も言いなさい。」

「まだ続くの?命令で全員の視線を下げたから。」

「記憶を消して世界中の孤児院に飛ばしたからです。」

「孤児院の経営者としての責任だよ。」

「最終確認は直接しようと思ったからです。」


 クロアが許すはずがなかった。これでクッキーになるのかな?


「姉さん、正解は?」

「既に答えを言ったじゃない。私が呼んだからだよ。」


 結界内でクロアを呼べば確実に本体が来ると思っている。


「姉さん以外は外れ。片手クッキーの刑ね。」

「それだけなの?それなら分身で行っても気づかれないじゃない。」


 ディアも諦めが悪いね。手がクッキーになるのだから諦めるのもおかしいけれどさ。


「色々な理由があるけれど、ディアが最も納得する答えにするよ。結界内で私がクロアを呼べば絶対に本体で来る。」

「お姉ちゃん、本当なの?」

「その通りだよ。今日だって資料館では私を呼ぶつもりはなかったはずだけれど、相手が要求してきて収拾がつかなくなった。人の話を全く聞かないから。姉さんが邪魔だと思って飛ばすと4人がどのように思うのか分からないから私を呼んだの。家族全員が納得する形を選んだという事だよ。ミュリエルもお風呂に入ろう。4人は手を齧りながら反省しなさい。」

「絶対に皮膚も噛んで痛いです!」

「自分の手を美味しいと感じたら危険な気がするよ。」

「クロア姉ちゃんも疲れているはず。無理したら駄目だよ。」


 クロアの計画に協力する形で助けてあげようかな。


「クロア、1年後の模擬戦で最下位だったらクッキーにしよう。それに毎年お菓子を変えると面白いと思わない?協力して勉強すれば接戦で誰が最下位になるのか分からない。個人で勉強すれば努力の差が出るから負けたら悔しいと思う。協力して勉強して負けたときの言い訳にした方がいいよ。負けたら泣いちゃうでしょ?」

「何も問題ないね!個人で勉強してボコボコにするから。」

「言い訳を用意するとかあり得ません。毎年私の優勝です。」

「お姉ちゃん、言い訳ではないけれど、ディアとロディの16年間の差は1年間の勉強で届くの?」

「それはとても気になりますね。」


 クロアが説明してくれるみたいだね。4人が競うことになったからその方向で説明するはず。4人は気づいていないようだけれど、これが私たちの役目なの。

 今回の計画は人形を倒しに行く日を延ばしつつ4人を個性的に育てる。姉妹で競う中に刺激を入れることで勉強を頑張れる。そして4人が負けず嫌いで言い訳が嫌いなことを知っている。

 個人で勉強して強くなりすぎる可能性もあるけれど、それはクロアに任せる。


「ディアとロディが見ることができる知識で役に立つものはほとんどない。それに背中に能力があるときの知識だから。差があるとしたら体内の魔力の動かし方だけ。1年の努力で簡単にひっくり返る。ロディの魔法式も模擬戦で使うには書き込みが遅い。つまり1年あれば余裕で追いつけるし追い越せる。そして毎年最下位が代わってもおかしくないと考えている。例え初年度最下位でも勉強方法が正しければ次年度以降は優勝が続く。姉さんに言った通り個人で勉強するの?努力量は明確になるけれど、人形を倒しに行ける日が遅くなる。4人全員が合格するまで人形を倒しに行かせないから。」

「弱い姉妹を待ってあげる優しさはあるよ。私が最強だからね!」

「ふふん!残念ですが私が最強です!」

「追いつくのは楽みたいだね。花を持たせてあげないよ。」

「とりあえずこの中で最強になっておこうかな。みんな勉強するのが苦手そうだからね。」


 子供はこれでいい。姉妹に負けないように努力しなさい。

 それにしても最強になって最下位が合格するのを待つ日々を楽しみにしている。合格するまで煽れるからだろうけれど、気が早すぎる。

 クロアも人形を倒しに行ける日が遅くなると言葉にしているのに姉妹と競うことを優先している。これが何年続くのか分からないけれど、楽しめる環境にしてげないと。


「お風呂に入るよ。明日からも買い出しは続けるから。分身でも負担の少ない朝一に国を見に行くべきだからね。」

「はーい。」

「分かりました。」

「私も入る。ミュリエルも入って今日は休んだ方がいい。色々あって疲れているはずだよ。」

「分かりました。そうさせてもらいます。」

「今日は疲れたね。お風呂に入って寝よう!」

「色々ありすぎです。休みましょう!」


 静かにお風呂に入りたかったのに既に競い合っているみたいで4人が煽り合いを始めた。クロアの「骨だけクッキーにして砕けやすいようにする」という言葉は末っ子4人を一瞬で静かにさせた。クロアは冗談を言わない。今なら言える気がするけれどね…。


 お風呂から出るとミュリエルは真ん中の布団に入った。布団も9枚敷かれていたから選びやすかったと思う。私はいつもの布団に入って暫くするとアディとローアが抱きついてきた。

 計画に私が入っていないという言葉には2つの意味があった気がする。私を楽しませたり喜ばせたりする計画は誰が考えるの、とね。この時間が本当に幸せでこれ以上があるのだとしたらオフィーリアも一緒に抱きついてくれることくらいだね。今感じている幸せが最高でいい。

 目に見えないものを研究することは大切だと思うけれど、人の感情は研究したとしても私は知りたくない。この幸せを難しい言葉にしたくない。


 家族がいて可愛い妹2人が抱きついてくれるから幸せだよ。

2人の姉に踊らされる3歳児たち。実に微笑ましい光景です。

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