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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第56話 無理解

 15時を少し過ぎた時間。

 クッキーを焼きすぎて間に合わないのかもしれないと思ったけれど、大丈夫。


 孤児院の左側に大きな資料館ができている。中に入ると倒れないように10台つ本棚が左右の壁に貼り付けられている。そして本は分類ごとに分けられている。クロアだから中を軽く読んで分類を理解しているとは思えない。本棚は子供でも手が届く3段。1段に15冊の本が並んでいるとしても900冊の本を世界中の国に本屋があるのか確認しながら買ってきている。時間を無駄にしないのクロアらしいけれど、頑張りすぎだよ…。


≪念話≫ 


「ディア、子供たちを皆連れて孤児院の左横にできた資料館に来て。砂遊びした子は砂を落としてから必ず来るように。皆揃うまで待っているからなるべく早く来てね。今後の方針を伝えるから。」

「フィオナ姉ちゃんとお姉ちゃんで考えるのはやめたの?」


 クロアの楽しみが半減してしまうと分かったから。だからクロアには多くの楽しさを知ってほしいと考えている。それをディアとロディの計画で叶えてほしいと強く思っている。


「クロアとお茶会したりお菓子作りして理解したのよ。私たちが考えるべきではない。その理由を話すから皆を連れてきて。孤児院の子たちは全員だよ。」

「分かった。4人で全員集める。汚れてたら駄目なんだね。」


 ディアは私の言葉でも素直に聞いてくれる。クロアに何か言われているのかもしれない。単独行動しているのに疑っている様子はない。それに覚悟して叱った後も普通に会話することができた。長女として認めてくれているのかな…。


「駄目だよ。多くの本がここにはある。子供たちに本の価値を教えなければならないから。それとミュリエルとオードリーも連れてきてね。」

「多くの本があるの?相当な計画変更だね。分かったよ。なるべく急ぐね。」


 ディアとロディでクロアを笑わせてほしいだけ。そのためには孤児院の子たち皆の勉強が必要。それは子供たちのためにもなるし損をしない。奴隷だった子たちが奴隷に戻りたいと思うはずがない。読み書き計算ができるだけで就ける仕事が増える。最低限それだけでも勉強してほしい。


「任せたよ。」

「任せてよ!」


 安心できる返事だね!


≪念話終了≫


 大勢で行動するときはディアが頼りになる。分かっていても相手の感情を気にせず動かしてくれるから。それに今朝の騒動でディアが皆を率いているはず。魅了されていたのだから。

 それにしても地図を見ると分かりやすい。人形を南にまとめている。大陸の2割くらいの土地。その中に人の国があるのかは分からないけれど、人形はクロアが引いた線を越えられないようにしていると思う。そして線の北側にいる人形はクロアが殲滅している気がする。妥協しないから。


 予想外なのが浮遊島は大陸の中心にあると思っていたけれど、かなり北寄りにある。

 国により実験に使える範囲が決まっていたのかもしれない。


 そして私たちが今いる森の中が大陸の中心地点。人間が魔獣の棲息地に国をつくろうと考えるはずがないしエルフがいないのであれば誰も気にせずに研究や実験できる場所になる。土地の周りを殺意全開の堀で囲んでいるけれど、幻影で堀が見えないのが恐ろしい。悪人以外が近づいたら教えてあげると言っていたけれど、クロアが思う悪人とは誰だろう…。


◇◇◇

15分後。


 資料館に入った子供たちが驚いた声を無意識に小さく出している。唖然としている子もいる。その気持ちは私にも分かる。本棚に隙間なく並ぶ本を見て唖然とした。本に興味を持てる子たちなら勉強してくれると信じたいけれど、今朝のやり取りがズキズキと胸を痛める。嫌な予感が胸を締め付ける。子供たちも帰っていった女性たちと同じ気がしてしまう。


 精神の奥にいた人形も体内に貼ってあった精神も背中の器も取り除いている。

 思考を阻害すると考えられるものは残していない…。


「ディア、ありがとう。まずは文字が読める人は手を挙げて。」


 孤児院の子たちの中には1人もいない。


 末っ子4人は文字が読める。普通の3歳児では全ての文字を読むのは難しいと思うけれど、関係なく読めてしまう。

 ミュリエルは作戦の指示書を読むためなのか訓練されている。オードリーは自信がないみたい。勉強に関しても立場が逆転している…。


「それでは文字が書ける人は手を挙げて。」


 末っ子4人は文字も書ける。教えた記憶もないけれど、生み出されたときから書けるのだと思う。それが残酷な実験によるものだと思うから喜べない。不愉快な気持ちの方が強い。

 ミュリエルも手を挙げた。作戦の状況を手紙で伝えるため。文字の読み書きを勉強だと思っていない。クロアと一緒だね…。


「ミュリエル、勉強したことがないと言っていたよね。」

「文字の読み書きは勉強なのですか?」


 クロアと同じ状態。今までしてきたことを理解していない。世間と触れてこなかったから常識が分からない。だけど文字の読み書きを死ぬ気で覚えた。覚えられなければ死ぬかもしれない日常だった。目の前で人が殺されるのを何度も目撃してきたのだから…。


「オードリーは計算が苦手と言っていたけれど、文字の読み書きも自信がないの?」

「はい。私は教わる側だと伝えた理由です。」


 16歳の少女が自信を持って教わる側だと言うのはいいけれど、教わる気があるとは思えない。質問されたから答えただけのように見える。何故オードリーが楽観的な感情でここにいるの?クロアの記憶を見て今までの行動を見直すべきだと思う。とても反省している気がしない…。


「ミュリエルは読み書きと計算ができるの?」

「計算ができません。時刻は分かるのですが数の足し引き等ができません。」


 何ができないのか理解している。時計が読めるのであれば数字を読むことができる。計算を覚えるのは回数をこなすのが一番。計算できなければお釣りを騙し取られる。人を欺くことが当たり前の世界だから計算はとても大切で絶対に必要な勉強だと考えている。


「ミュリエルは資料館の管理人になっても大丈夫?」

「はい。大丈夫です。」


 ミュリエルは本が読めるから自分で手に取って読んでくれる気がする。だけど計算は先に覚えてほしいから助手をつけるのが一番。

 3歳児だけど計算ができるし本を読んで勉強もできる。2人にとっても損はない。


「アディ、ローア、ミュリエルの助手につきなさい。計算はあなた達が教えてあげて。読みたい本は自由に読みなさい。」

「はーい。」


 3歳児を助手にすると言ってもミュリエルから嫌がるような感情は出ていない。アディとローアも勉強が進められるし大丈夫そうだね。

 だけどここまでは想定通りだと言える。問題はここから…。


 問題だと思っているじゃないの…。


「それでは本題に入るよ。1年後に孤児院に子たち皆に文字の読み書きと計算を含めた勉強を始めてもらう。遊びながら勉強することになる。それは大丈夫だよね?」

「何故勉強する必要があるのですか?ここでは必要ないはずです。」


 オードリー、あなたが孤児院の子たちの代表のように話すのは何故なの?

 


 子供たちも勉強をする気がない。それにオードリーが同意して喜んでいる。やはりと言っていいのだろうか。勉強する側だと言っていた本人が勉強を拒否する意味が分からない。それにここではと言っているけれど、もしかして孤児院に縋りつくつもりでいるの?


「読み書き計算ができないと仕事を選べない。オードリーは私たちが子供たちの面倒を一生見るつもりでいると思っているの?」

「孤児院に入れば最低限の生活と身の安全は保障されていると思っています。」


 孤児院の在り方を好き勝手に考えている…。


 それに今朝注意したばかりでこの発言をする。私たちは努力しない人のために努力するつもりはない。それに努力すらしない人を守る理由がどこにあるの?孤児院の子たちはクロアの意思で助けたわけではない。人形が助けさせたのだから何かがあるかもしれないと考えていた。それでも孤児院を管理して子供たちを助けようとした私が間違っていたみたいだね…。


「ここは全てクロアが作った場所。あなた達を救ったのは奴隷として使われ飢えていて可哀想だったから。子供たちは勉強しなければ奴隷に戻ることになる。それでもいいの?」

「それはフィオナさんの独断で決めていいことではありません。クロアさんに確認が必要です。」


 子供たちもオードリーの言葉に賛成している。奴隷に戻りたいの?


 孤児院を管理してきた私を否定する意味を理解しているの?クロアはどこかで見ているはずだし同意を得て管理しているとは考えられないのだろうか…。

 それにクロアの方が優しいと何故考えているの。あれだけの会話と記憶でクロアを理解したつもりになっているの?クロアは子供にも容赦しない。私も容赦する気はないけれど、クロアよりは優しくできると思う。だけどあなたに理解していると思われたくない…。


「何を言っているの?孤児院の管理を任されてきて子供たちが勉強するための本を買ったのはクロアだよ。何故クロアに確認する必要があるの?任されて管理しているのよ。」

「それではクロアさんと話をさせてください。横暴です。」


 何が横暴なのだろうか。将来のために勉強を拒む方が横暴だと思う。それにクロアを出せと要求している。オードリーの発言が横暴で子供たちを不幸にするだけだと理解していない。それにクロアを呼んだら終わりだと気づけてもいない。やはり同じみたいだね。力がある人には縋っていいと考える…。


「私の言葉は信用できないと言いたいの?クロアが勉強させると言ったらあなた達は勉強するの?それとクロアが自宅にいる理由を知っているはずよ。あなたが簡単に呼べる相手ではない。自分の立場を理解しなさい。」

「分身を洗脳するだけではありませんか。クロアさんと相談されると困るから呼ばないだけですよね。勉強が必要な理由を教えてください。」


 分身を洗脳するだけ…。


 勉強する理由は話した。そしてクロアに何を相談するつもりなの?勉強するのかしないのかの話だけしかしていない。相談内容は勉強したくない以外の何かがあるの?勉強するのをもっと大きくなってからにしてほしいの?それを言われても信用できない。あなたが先に勉強すると言わないから余計にね…。


「ミュリエル、読み書き計算ができない女性は何ができるの?」

「奴隷か娼婦です。美人ならお金持ちの男に囲われるでしょう。」

「それはクロアさんがいない孤児院の場合です。ここは特別な場所です。」


 限界だよ。計画は全て潰れた。本の価値を話す理由もない。クロアを特別だと思うのは好きにすればいいけれど、だけどクロアの力に縋ることは許さない。一生面倒を見てもらうと平気で考えられる人は無価値だから…。


「4人とも感情把握を使いなさい。勉強しない子は追い出す。あなた達の将来を心配していた私が愚かだった。とても優しく勉強する理由を教えてあげた。あなた達はクロアに一生縋りつくつもりなの?」

「ですからそれはクロアさんがいない場合の話です。フィオナさんが決めることではありません。何故孤児を助けたのですか?」


 話すのが面倒になってきた。私を否定しクロアに縋ろうとするこの人は確実に追い出す。子供たちも同様。年齢は関係ない。奴隷を経験しても勉強して奴隷にならないように努力する気のない子は好きにすればいい。


「それは既に話した。勉強すれば他国で生活できる。それだけの知識を得ることができる。奴隷だった子たちも勉強を拒むとは思わなかった。私たちにはあなた達の生活を保障する理由がない。クロアの記憶を1回分だけ見て立てもしない甘い生活を続けてきたのに、何を偉そうに子供たちの代表のように話しているの?あなた達の処遇は決まった。もう黙りなさい。」

「フィオナさんは耐えられるのですか?私が苦しんだ事とフィオナさんが耐えられるのかどうかは別です。クロアさんの記憶は酷すぎます。」


 口先だけの女だと言いたいの?それとも苦しむ私が見たいだけ?この人を殺したらオフィーリアと会える日が遠くなるから我慢しているけれど、私の過去を見たいの?だけど私は黙れと言ったはず。全く話を聞いていない。自分の利益になる言葉しか聞こえていない。


「もう一度だけ言う。黙りなさい。家族についてあなたに話すことは何もない。」

「クロアさんに縋りついている長女のフィオナさんらしい発言ですね。何を恐れているのですか?記憶を見せて耐えられたら自分の立場が悪くなるから逃げているだけですよね。」

「黙れ!」


 結界が光ってディアがオードリーの頭を蹴り飛ばすことはできなかった。


 私が侮辱されたことにディアが激怒してオードリーを殺そうとした。私を家族として受け入れてくれていた。侮辱されたことよりもディアの行動が嬉しい。勢いで殺そうとしたことを叱らなければならないのに嬉しい。クロアの結界で防御されたけれど、関係ない。

 アディとローアは殺したら私が悲しむと思って我慢している。ロディも激怒している。私のことを想ってくれる家族がたくさんいることが嬉しい…。


 家族がいれば前を向ける。


「ディア、私は大丈夫だよ。ありがとう。クロア、出てきなさい!本が血で汚れるから結界で防いだとでも言うつもりでしょ。」

「姉さん、怒らないで。オードリーの発言は想定内だけれど、子供たちに勉強する気がないのは想定外だから。姉さんの計画が全て潰れてしまったね。」

「お姉ちゃん、フィオナ姉ちゃんが誰のために計画を立てて潰れたの?」


 潰れた計画はどうでもいいの…。

 言わなくてもいいのにクロアが説明する気でいる。


「私と孤児院の子たちの将来のため。ディアとロディのためでもある。読み書き計算は最低条件だよ。それができないのであれば全員追い出す。私が自由に動けるようになったときに人形や能力たちが関わっている人は全て追い出すつもりでいた。だけど姉さんは孤児院をディアとロディのために整えてくれていたから任せたの。私の記憶1回分よりも姉さんの記憶の方が厳しい。それにオードリーは悪癖を治さないとディアかロディに殺されると今朝姉さんに警告されたばかり。それを忘れるどころか姉さんを侮辱した。姉さんの計画は全て楽しみだった…。姉さんが私に縋っていると発言するとは思わなかった。あなた達を一生保護するつもりはない。姉さんは私を楽しませながら多くの子を幸せにしようとしていた。そしてディアとロディの目的をもっと楽しいものにする予定だった。奴隷にされていた子が新しい人生のために勉強しない理由が私なの?私よりも姉さんの方が優しいのに全く理解力が足りない。姉さんも本当は孤児院を邪魔だと考えていた。私の負担にしかならないから。それでも4人が遊べるように立ち回った。孤児院は潰すよ。全員の記憶を消して世界中の孤児院に飛ばす。オードリーは姉さんの記憶を見て死ぬのか妹と同じ孤児院に行くのか選ばせてあげる。」

「クロアさんはそれだけの力があるのに何故人のために使わないのですか?」

「クロアの力で勉強できる環境を整えた。何故クロアが努力する気もないあなた達のために力を使う必要があるの。クロアが力を手にするのにどれ程の努力をしているのか知りもしない癖に。」


 本音が隠せていない。自分のために使ってほしいだけだと感情で分かる。伝えているのに理解していない。孤児院をクロアが保護していたのは私の我儘。好き勝手に遊びたいのであれば自分でその環境を用意しなさい。これからのあなた達がどのようになろうと興味ない。もういい…。


「そ…。」


 オードリーが突然蹲った。

 殺さないように解放した。やはりクロアの体はオードリーを敵だと認識している。


「姉さんに黙れと言われていたでしょ。話しかないで。これが最後の機会だと思いなさい。子供たちは本当に勉強しないの?読み書き計算すらできない状態でいいのね。庇ってくれると思っていたの?そう…、これは無理だね。絶対に勉強しない。今すぐに記憶を消して飛ばしていく。不愉快で仕方ない。今でも脅しているだけで勉強しなくてもいいと思っている。記憶を消して世界中の孤児院に飛ばす。襁褓の子も飛ばす。姉さん、ごめんなさい…。」

「計画はまた何か考えるからいいよ。力がないのに多くを救おうとした罰だと思う。」


 世界は滅び残ったのはこのような人たちが暮らす実験場。

 この場所で何ができるのだろう…。


「オードリー、妹と同じ孤児院に行くか死ぬか決めたの?」

「い…。」


 クロアは相当怒っている。声すら聞きたくないと証明しているかのように飛ばした。せっかく美味しいクッキーが焼けたのに気持ちよく帰宅できない。奴隷だった子も読み書き計算すら勉強しないのがこの世界の基準にしているのかもしれない。世界はとても厳しい。新しい孤児院が受け入れてくれるといいね。少しは長生きできるから…。


「ミュリエルは邸に1人だと寂しいでしょ。自宅に来る?それとも1人の方が楽かな。」

「自宅に行きます。いいのですか?」

「実はもう1人いるけれど、帰って来ないから同じでいいと思う。家族枠と自由人枠があるけれど、とりあえずミュリエルは自由人枠だね。家族枠に入りたいのであればクロアとディアが認めるだけの努力をして望むだけだよ。努力する内容は教えるから安心して。クロア、ミュリエルにも魔法を努力してもらう?」


 一緒に暮らすのに仲間外れにするようなことをクロアはしない。


「そうだね。魔法を努力しつつ4人と一緒に勉強して。資料館は家に近づけるけれど、勉強すればこのようなことができるようになるよ。」


 水を電気分解して集めた水素がある気がする。

 実験していないけれど、大丈夫なの?


 クロアが小さな火の球を空に向けて放った。ボンッと大爆発が起きた。やはり水素を集めたものに火を入れたね。それができるのは解析できるのが前提になる。クッキーの焼き時間の合間に本を読んだけれど、知識通りの結果だよ。


 クロアが動揺しているのが珍しい。


「クロア、大失敗だね。水素を集めすぎだよ。やはり昔の人の知識は勉強になるね。」

「本には火を近づけると爆発するとしか書いてなかったから…。あの気体は水を分解するとできるよ。クッキーを焼きながら本を読んでいたら面白い実験が書いてあったから試してみたけれど、凄いね。今の気体を人形に吸わせて爆発させて終了。普通なら呼吸困難で窒息死するけれど、人形には関係ないから。少しは勉強する気になった?」

「本当は爆発させるための知識ではないでしょ。悪用してるよね?」


 ディアに気づかれている。感情把握しているからだね。それに明らかに検証していないと分かる。自宅や邸の窓に無敵紙が貼り付けられていなかったら割れた可能性がある程の爆発だった。衝撃も伝わってきたし音が凄かった。


「クロア、ディアが賢くなっているよ。成長を感じるね。」

「私が焦ったからそのように思っただけだよ。昔は勉強していた9年間の知識を詰め込めば魔法式が書けなくても人形は楽に倒せる。今のは13歳くらいで覚えていた知識。魔法を使って悪用すれば簡単に人を殺せるような内容を教えていたみたい。悪用しないのが普通だと思うけれどね。ところでミュリエルは結婚したい?」

「いいえ。特にそのような気持ちはありません。」


 男性が嫌いな女性ばかりが集まっていく。4人は3歳だけれど、すぐ16歳になる。女性だけで楽しめる場所を作るのもいいかもしれない。その前にクロアの努力を無駄にしたくない。実験場にいる可能性がある種族には会っておきたい。日常が楽しくなる可能性があるかもしれないから。拒まれたら争わずに帰るだけ。世界一のクロアが同じ場所に留まっていては勿体ない。


 自宅に帰るとクロアが直ぐにリビングテーブルを円卓に変えてくれた。椅子も9脚用意してある。人数よりも多く置くことでミュリエルが座ることへの抵抗感を薄めている気がする。孤児院に飛ばしてあげたクロアも優しいね。


「リビングのテーブルを円卓にしよう。ミュリエルやクリスが座る位置に困らないようにね。」


 クロアが私に何か言いたそうだね…。


「姉さんは優しすぎるよ。おかわりのクッキーと緑茶と紅茶をクリスに何度か持っていかせたからね。みんな適当に座ってクッキーとお茶を飲みながら姉さんに今後について決めてもらおう。」

「驚く程の丸投げだね。会話の流れがおかしいよ。フィオナ姉ちゃんの計画は凄かったの?」


 クロアは楽しんでいるの?それとも面白がっているの?

 だけど計画の丸投げは酷いと思うよ。今も考えてはいるけれどね。


「今回はクロアとディアとロディを優先して考えたからね。それにアディとローアも楽しめるようにした。ミュリエルも私も一緒に楽しめたよ。1つ目はクロアに買い物を楽しんでもらう。ミュリエルと一緒でクロアも買い物を楽しんだことがない。2つ目は末っ子4人と孤児院の子に勉強してもらう。そして孤児院が特別な施設であると理解してもらう。あの施設が当然だと思うと依存する可能性が高いから幼い頃から出ていくことを考えて勉強してほしかった。勉強すれば子供たちで国づくりを考えることができるようになる。3つ目が子供たちで国づくりについて計画を考えてもらうのが目的だった。私たちが考えて国をつくるとクロアに驚きがない。楽しませることはできるけれど、驚きからの楽しさや、恐怖からの楽しさの方がより一層楽しめる。滑り台を楽しんでいたクロアを見てそのように思った。だけど私たちが国をつくるとそれがない。クロアは国を全て把握するから見ないように頼むしかない。それだと驚きが少ない。いつどこで何が起きるのか分からないから待つ時間も楽しめる。ディアとロディの計画を全力で楽しむのが最大の目的だった。他には遊具の本を買ったから結界内を楽しめる遊具で埋める予定だった。とりあえず1年後のクロアを見て計画を考えるからそれまでは買い出しで世界を見ていこう。4人は本の勉強と魔法の勉強。ミュリエルに仮想体について教えてあげて。同い年の子と遊べるようにしてあげたいけれど、世界中の国を見てから考えるよ。それでいいね?それとクロアは信者に連絡しておいて。]

「姉さんに仕事を丸投げされた。男性恐怖症の私に連絡させるとか嫌がらせだね。」

「お姉ちゃんの感情が豊かになってきたのは分かったよ。それよりフィオナ姉ちゃんはたくさん考えてたのに潰れて何で平気なの?」


 計画が潰れても誰も失っていない。それだけで十分だから。計画は何度でも考えることができるけれど、失ってしまった命は戻せない。だから危険な計画は立てない。


「計画は潰れてもいいのよ。皆でクッキーを食べてお茶を飲んでいる。それにミュリエルが増えた。計画は家族を楽しませるために考えているので潰れるのは別にいいの。だけど絶対に失敗だけはしない計画を考えている。家族が減ることだけは耐えられない。買い出しも万が一が許せないからクロアに付き添いを頼んだ。色々なことを考えていたけれど、一番の理由はそれだよ。ディアとロディより弱い私は2人を止められないし守れないから。それよりも姉の計画が潰れることを分かっていて黙っているのが甘えることだと考えているクロアに何とか言ってよ。」

「それは誤解だよ。姉さんが計画を潰さないように動いているのを見ているのが好きだったの。姉さんは頑張っているんだよ。ディアとロディも協力しないと駄目だよ。」

「確かに私とロディの行動によって計画が遅れたことは認めるけど違うよね。ほとんどの計画が潰れた理由は何なの?」

「遅れたのは私も認めます。ですが潰れた理由は違う気がします。」


 今にして思えば邪魔されていたと分かる。


「私の確認不足だよ。奴隷で苦しんでいた子たちは奴隷にならないために勉強してくれると考えていたから。それとクロアがオードリーに思考誘導をたくさん付与していたみたいで誤認してしまった。だけど気にしなくていいよ。そのクッキーは一番簡単なお菓子だよ。凄いでしょ。緑茶も美味しいでしょ。売っている人の話は全く当てにならない。本の知識の方が凄いし今の人たちは、ほとんど本を読んでいないと思う。これが本当のクッキーだよ。薄力粉3kgを使ってたどり着いたからね。」

「美味しすぎる!もしかして売っているお菓子は不味いの?」

「美味しいです!凄いです!」

「姉さんを騙すつもりはなかったよ。それに思考誘導を解除したときに私の記憶を見て出て行くか反省すると思ったけれど、甘かった…。それと売っているのは不味いよ。だけど不味くても売れるから研究していない。工夫がない。お菓子も魔法と一緒。何となく作っている人と全ての素材の重さと焼く温度と時間を正確に丁寧に整えてから研究する。味の変化が分かり好みの味に変えることができるのも全て揃えているから。素材の味を知り香りを知ることで全てを調和させている。だから誤魔化さない。素材だけで甘みを出せるから。」

「美味しいです。最初は焼き加減を変えて味を調節しようとしていた形跡がありますが途中から形も変えてもいますね。だけどある程度の予想はできているから焼き色で味見してから焼く温度と時間で味を変えていったように思います。」


 ミュリエルは目がいいし味もかなり正確に把握している。途中で形が変わったと気づいているのは何人いるのかな。


「ふるいを見せてあげてよ。今の世界とクロアが作った物でどれ程の違いがあるのか分かるから。クロアは凄いけれど、昔の人はこれが普通だったの。」


 皆ふるいを見て唖然としている。クロアが左右の手でそれぞれ持っているふるいの差に驚いている。だけど昔の人はこれを魔法を使わずに作っていたと思うから。


「昔の人は私が作ったふるいよりも小さい網目のふるいも作っているからね。世界が退化しているのがよく分かるし今の職人が努力していないのも一目で分かるでしょ。私は使う金属が分からなくて特殊なことをしているけれど、昔の人は違う。余計なことはしていない。魔法式と一緒。無駄なことはしない。今後産まれてくる子は努力できる子になっているはず。ミュリエルも1年間努力してみて。それを見てから判断してもらうことにするよ。」

「覚えるのは得意です。頑張ります。」


 覚えなければ殺される日常だったから。クロアと一緒でその背景が悲しい…。


「クリスが遺伝を否定していたね。やはり人形だけを入れて解放したのかな?」

「魔法も人形の正確な力を話さなかったからね。人形だけで完結する可能性はあるよ。だから襁褓の子も飛ばした。人形の洗脳を突破できるのは最低でもミュリエルくらい苦しい生活をしなければならない。解除しても洗脳されていたときの感覚から抜け出せない気がする。脳を対象にしているから精神を作り直しても一緒。元に戻せたとしてもそこまでするつもりはなかったけれどね。オードリーを殺そうと思ったけれど、ディアが殺そうとしたのを見て私の中で死んだことにした。相手にする価値がない。姉さんを侮辱したけれど、私たちが殺すと姉さんが悲しむから。それに姉さんが何度話しても伝わらない。それで4人に感情把握を使わせて現状を伝えることにした。あれは友達がいるのかもしれないけれど、諦めてという合図だよ。人形やクズ能力の指示で集めた人は全員飛ばした。ディアとロディに勉強させるために孤児院は必要だったけれど、もういい。前に進んでいるから問題なし。」

「感情把握を使ってなかったら疑問が残ったかもしれないけどもういいと思ったよ。やる気のない感情とオードリーに期待してるのとお姉ちゃんに縋ってるのを見たからね。これでいいと思う。」

「その通りです。お姉ちゃんが誰かに縛られる必要はありません。お姉ちゃんは世界一自由でいるべきです!」

「2人の言う通りだと思う。クロア姉ちゃんが誰かに縛られるのは絶対に違うよ。世界一努力しているのに努力していない人のために力を使うべきではないよ。」

「とりあえずミュリエルさんと一緒に頑張ろう。お姉ちゃんもできないけれど、綺麗な仮想体を魔力で作ろう。仮想体とは魔力で自分と全く同じ姿を作ることだよ。魔法の基礎だから頑張ろう!」

「誰でも魔法が使えるのに誰も努力して使おうとしないのですね。頑張ります!」


 ローアが私に圧をかけてきた。私を追い詰める言葉を知っているみたいだね。だけど孤児院が消えて身軽になった私の努力を見せてあげる。


 今の私が怖いのは家族が減ることだけだから。

孤児院を管理していたのがフィオナだったので誰も殺しませんでした。

フィオナは優しく皆の幸せを願っていたのに拒否されてしまいました。

それでもなんとか伝えようとしたのが彼女の優しさです。

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