第52話 計画と作戦
コリーは焦っている。今なら私に働き続けたいと訴えてくるだろうか。それはないか…。
訴える機会は何度でもあった。契約者になっているクロアにしか訴えるつもりはない。そして自宅に来ることもない。
子供たちが見ている前でなら安全だと考えているから。
だけど今夜まで待つと夜勤と交代するオードリーに接触する可能性が高い。コリーは付き合っているつもりでいるから、妹のため真摯に働く彼女を利用して働き続ける理由にする気でいる。彼女に接触したのを追い出す理由にしてしまうとオードリーの心に消えない傷が残るかもしれない。
どうしようもないこと以外を記憶消去で対処したいとは思わない。
コリーは子供が最優先の孤児院で自分の利益だけを考え続けている。殺されないと分かっていて死ぬつもりで謝罪すると言っていたくらいだから。真実を知るとあれほど不愉快な行為もない。
親は娘の方がお金になると分かって息子を切り捨てたけれど、息子も親が死ねば自分の取り分が増えると考えた。両方とも腐っている。
≪念話≫
「フィオナだよ。ブレット、コリーが消えても孤児院の食堂を維持することはできる?それとコリーの状態を教えて。」
「新しい料理を生み出せるのかまでは分かりませんが今の料理は覚えました。多少味は落ちるでしょうが問題ない範囲だと考えています。今日のコリーはオードリーの妹であるキャロルにまで声をかけました。『お姉ちゃんと僕が結婚してもお祝いしてくれる?』と聞いていました。キャロルはケイシーから付き合っていないことを聞かされていたのだと思います。そしてコリーがこのような行動に出ると予想していたのでしょう。そのためキャロルは『私にお姉ちゃんいたかな?』と返答しました。コリーがその言葉を聞いて何か言おうとしましたがキャロルはすぐに離れていきました。」
子供同士の喧嘩なら別にいい。大喧嘩になる前に仲裁すればいいのだから。だけど大人が関与して子供が喧嘩することだけは見過ごせない。まだ幼く家族を目の前で殺された子が多いので兄姉が近くで働いている子を仲間ではないと考えてしまう。それを責めることはできない。
オードリーは元気なキャロルを見られるだけで満足している。それにキャロルに姉がいることを知っていても姉が真面目に働いていて襁褓の子の世話ばかりしているので子供たちからの印象がとても良い。更にオードリーに親から虐待されていたと子供たちに伝えてもいいのか確認して、了承をもらえたので虐待については曖昧にして妹を守るために親と離れた立派な姉だと子供たちに話した。
オードリーを姉のように慕っている子も多い。
家族についてはそれとなく子供たちに伝えている。全員が孤児で2人は人工的に生み出されたから顔が同じで両親も初めからいない。そして更に2人救出することができた。
クロアについては凄い魔法使いだけれど、辛い経験をしてきたので人が多いところでは分身を使っているという事にしている。
4人を助けたのはクロアで4人の成長した姿がクロアだとも伝えている。
私の過去については優しく伝えている。クロアに救出されたことも隠していない。
「子供たちはその会話を聞いていたの?」
「はい。コリーは敵だという認識になっていますから問題ありません。話しかけられたキャロルが心配されていたくらいです。そのため八つ当たりに近い形で私たちに話しかけてきました。『何もできないあなた達が残れるのに何で僕は出て行かなければならない!』と言われました。『食事を作るために雇われたあなたと私たちは違いますから』と言っておきました。それと『契約終了まで真面目に働けば好待遇でお店を開くことができるではありませんか』と言うと黙りました。」
余裕がなさすぎる。
ブレットの最後の言葉は皮肉に聞こえたの?もぐもぐ食堂と拷問監視役が約束した内容は破棄して新たに契約書を作った。4人中3人が問題を起こしてコリー1人では食堂を維持することができない。それなのに1億リンもらえると思っていたのだから凄い妄想力だよ。その内容で約束したあの女も馬鹿だとしか思えない。新しい契約で2000万リン払うことにしているけれど、コリーには足りない。
孤児院から出たあとは働く気がないのだから。
「その会話をどこでしたの?子供たちは大丈夫なの?」
「食堂です。コリーの声で子供たちはこちらを注視しましたけれど、私たちが笑顔でいましたから余り気にしていないと思います。ですがコリーは相当焦っているようです。引越し先の国が決まったときに追い出されると考えてるようです。今後も日に三度あのようなことが続けばどのようになるのか分かりません。」
子供に笑顔を見せる余裕もない。
それに引越し先の国が決まったら開店資金と営業が軌道に乗るまでの運転資金を出す約束は契約内容にも入れた。新しいお店を開く準備を追い出されると考えているのだからどうしようもない。
今はオードリーからお金を奪うつもりでいるのだから限界だね。
「コリーは今日中に対処するよ。それよりもあなた達8人は誰も外で働く気がないの?食堂の手伝いもクロアが外で働く切っ掛けになればいいと思って提案したのよ。」
「今のところいません。外が怖いのもありますが私たちはクロアさんの魅力に惹かれていますから。欲を出した者がいれば即報告するつもりです。クロアさんは優しいですから理由もなく人を追い出したりはしません。神々しいですから自然と跪いてしまうのです。」
この信者たちは放置するしかなさそうだね。絶望的な恐怖から助けてくれたクロアは神々しく見えたでしょうし、落ち着いてからも神々しく見える。欲を出さないのであれば問題ないけれど、絶対だとは限らない。1年間はクロア本人には会わせない。
「クロアは裏切り続けられてきたの。あなた達まで裏切ったら許さないよ。」
「勿論です。それだけはしないと心に刻んでおります。」
1年間は男性を外に出したいけれど、ブレッドたちが本気なら仕方ない。
「分かったよ。それと明日からの買い出しはクロアの分身が付き添うことになる。クロアの分身と調理器具を買いに行ったらお店に閉じ込められた。何が起きるのか分からない。あなた達も心して周りの様子を確認して。またね。」
「お任せください!」
≪念話終了≫
「リビングに行くよー。」
「はーい。」
アディとローアは仮想体の練習をしていた。自分を作るのもやはり私より完成度が高い。悔しいけれど、調理器具まで作ってもらったし先に料理を覚えなければいけないね。
クロアが皆の笑顔を見たい気持ちが私にはよく分かる。4人の笑顔を見ることで過去の自分が望んでいた光景を見ることができる。泣き続けていた過去を笑顔で埋めてくれる気がする。
部屋を出るとリビングの椅子がいつもの配置に戻っている。気が利くよね…。
自分のことにも気を利かせてほしいけれど難しいみたい。
いつもと同じ席に座る。正面にはいつもと同じ3人が座っている。
「クロア、コリーのメッキが剥がれているよ。食堂で『お姉ちゃんと僕が結婚してもお祝いしてくれる?』とキャロルに話しかけている。キャロルはケイシーから何か聞いていたみたいでうまく躱したけれど、それが気に障ったのかブレッドに子供たちの前で八つ当たりをした。食堂はブレッドたちだけで問題ないみたい。コリーは夜勤のために孤児院に行くオードリーに必ず接触する。その前に処理するよ。それとも殺したくない?」
「孤児院は姉さんに任せているから好きにしていいよ。アディとローアは何かある?」
「子供側から見れば今すぐ消えてほしい人だけれど、契約内容が凄くいい。住んでいる邸までもらえる。何で殺されるような行動をしてまで残りたいの?理解できないよ。」
「孤児院の環境はいいけれど、あの人は食材を買えるだけで何もない。外の世界が怖くなったのかな?それなら謙虚にするべきだよね。うーん、最低な行動ばかりしているし消えても問題ないと思うけれど、少しだけ理由が気になるかな。」
お金を得る手段を見つけた。必死に残ろうとしている理由はそれだけ。
「コリーは孤児院で働いている女性と結婚したいのよ。私たちと繋がりが切れずに結婚できる相手は限られてくるからね。契約でお金をもらって、延長料金でお金をもらって、女性が働いた分もお金をもらう。だからオードリーと付き合っているのを事実にして結婚までしたい。難しく考えすぎだよ。あの人は仕事せずに生活できるだけのお金を持って出て行きたいと思っているだけ。手にできるものだけを考えればいいのよ。」
「姉さんは優しいね。曖昧に説明してくれている。ディア、繋がりが切れずにいる人は笑顔でいてほしい。ディアが実行しようと思っていることは何?」
「結婚した女性に祝儀を出すことだよ。」
クロアの情報収集が魔法だとしても記憶を見ることはない。分身に記憶を見せて意味のありそうなことだけを抜き出すこともしていないと思う。それなのに全てを知っている気がする。
「コリーとオードリーが長く働いて結婚した場合の祝儀は?」
「2人分の祝儀を多く出すつもりだよ…。」
ディアに優しいのか厳しいのかどちらなの。確かに少し自信過剰な面があったから叱っているのかもしれないけれど。
「コリーとオードリーは付き合っていない。働いている女性たちはそれを分かっているから姉さんの言葉を警告だと判断した。あの人はお金しか見ていないから結婚した女性は不幸になる。ケイシーは2人を付き合わせて追い出そうとしていたけれど、自分が間違っていたと反省してキャロルに事情を説明した。オードリーがコリーの邸に行っていたのは孤児院の食堂で出す料理の味見を頼まれたから。ケイシーは両親とコリーが奴隷商人に売った子だよ。両親と兄に近づくはずがない。人の動きと感情把握だけでは分からないことが多い。大勢の前で発言するときは注意しなさい。姉さんがあの後どれだけ動いていたのか見ていたの?何も見ていないでしょ。」
「フィオナ姉さん、ごめんなさい…。」
国を支配することや給与などを勝手に決めて発言したことを叱っているのかな。
それを何故クロアが知っているの?
「孤児院は私が管理しているから気にしなくてもいいよ。勉強中だし今回も勉強になったね。実際はコリーの片思いだよ。一番お金になる女性だと考えている。女性は恋愛話が大好きだからオードリーがコリーの邸に行っている理由を知っていた。だけど関係を疑っている子もいたから釘を刺した。オードリーはあの日から何を言われてもコリーの邸に行くのをやめた。それにコリーが兄だと声をかけ続けるからケイシーは友達から避けられて新しい友達も作れなくなるところだった。だから子供たちを全員集めてケイシーを守れと私が言ったの。ケイシーから事情を聴いてクズ兄を近づけさせるなとね。『私たちと繋がりのある人は笑顔でいてほしい』とても素敵な言葉だと思うけれど、拷問監視役がもぐもぐ食堂に大金を払う約束をしていた。女性たちにもお金をばら撒いた。あの女の記憶を消しても私たちがお金持ちだという印象までは消せない。ディアの言葉はお金が見えるの。妹が言ったことは全て修正すると働いている女性たちに言ったよ。感情把握を孤児院にいる子たちに使わない方がいいのは、表情や雰囲気や言葉で伝わるものがある。それを感じ取ってほしいからだと私は思っているよ。」
「姉さんは優しいね。ディア、まだ隠されているよ。気づかないの?」
「私とロディが孤児院で遊んだこと?だけどアディとローアも遊んでいるじゃない。」
何故そのことまで知っているの。結界内の声を全て拾っているのかな?
「孤児院は家族を殺された子が多い。4人が受け入れられていることに違和感を覚えないと駄目。幼い子たちは経営者の家族だから特別だなんて考えない。それに同じ顔が4人。姉妹にしか見えない。アディとローアが孤児院で遊ぶ前から姉さんは子供たちに伝えている。私たちの家族は全員が孤児で2人は人工的に生み出されたから顔が同じで両親は初めからいない。このときの2人はディアとロディ。そして更に2人を救出したとね。この2人はアディとローア。孤児院で遊ぶ順番が逆になってしまっているけれど、姉さんが微調整している。落ち着いてから遊びに来ると思うから受け入れてあげてとね。姉さんの言葉を信じている子たちはアディとローアを見て受け入れた。そして買い出しでディアとロディも見たから遊びに来たら受け入れようと決めていた。ディア、ロディ、今日は皆の名前を覚えられなかったはずだよね。何人で遊んだの?」
「全員だよ…。」
「196人です…。」
声を全て拾っている以外の理由が思いつかない。どこまで知っているの?口にしていないことまで把握されている気がしてきた。
「2人とも気にしなくていいよ。明日も4人で遊びに行けばいいし買い出しのときは皆を守ってあげてね。クロア、今日は料理を出してくれないかな。食堂に行かない方がいいから。」
「そうだね。私が食べたことがないものを出すよ。よし、これにしよう。」
クロアが冒険者登録した日の晩の食事。クロアの食事まで再現していなくてよかった…。
頼むべきではなかった。クロアには料理を見た記憶が少ない。だから記憶の中で印象に残っている料理から選んだ。クロアの知っている料理は裏切りと繋がっているから…。
陽が落ちかけていても買いに行くべきだった。
「みんな食べよう。それにしてもクロアは知りすぎだよ。秘密でよかったの。」
「孤児院を管理する大変さを知っておくべきだよ。クローディアなら問題ないからね。それに私の思考力を使っていても気づいていないから。知らないと思うけれど、教えてあげる。孤児院の子が全員と働いている女性たちと邸の8人が姉さんの情報源だよ。」
ディアに向けて言っている。私がクローディアではないことを配慮していないから怒っている気がする。ディアはクローディアを特別視している。だけどディアにとってのクローディアはクロアだから。そのことをクロアが理解していないはずがない。
それに孤児院をどのように管理しているのかも把握されている。私の好きにしていいと言っておいてコリーのことはクロアが対処するつもりでいる。人を殺すことが精神を綺麗にするためにはよくないと知っているから。
「私たちは監視されてるってことなの?」
「それは違うよ。私は1人で孤児院を管理できると思っていない。それで全員に手伝ってもらっているの。楽しい場所だと子供たちが喜ぶ。働きやすい場所だと大人たちが喜ぶ。だけど子供は大人に嘘を吐くからしっかり顔を見て本当に訴えたいことが何かを見逃さないようにする。そして全員に嘘を吐くことはできない。誰かが必ず見ている。併せて感情把握を使えば孤児院を管理することができるの。孤児院にいるときは全力で遊びなさい。ん…?コリーに強制命令を使ったの?」
「『計算外だよ。何をしても状況が悪くなるじゃないか。お金をもらって出て行く!』と食堂で言わせてこちらに向かわせた。誰も見えなくなったところで厨房を戻したもぐもぐ食堂に移動させた。結界内での記憶は消してポケットに200万リン入れておいたよ。明日からの買い出しには私の分身が付き添う。それなのに姉さんが私に一度も言わないことがるの。4人にはそれが何か分かる?」
思考把握もできるみたいだね。それを私が確信するようにコリーを追い出した。
末っ子はクロアの力に気づいていない。これから勉強しないとね。
「お姉ちゃんなら別人に変身できるという事かな?」
「ディアがすぐに当てたね。何故だと思う?」
自分のことまで勉強材料にする必要はないのに。
クロアは自分自身を軽く見すぎだよ…。
「変身してもお姉ちゃんの魅力は消せないから。」
「世界最強が変身する理由はないからです。」
「変身できることを孤児院の人たちが知るとお姉ちゃんの管理に影響が出るから。」
「うーん、クロア姉ちゃんと買い物をした記憶に思えなくなるから。」
「所詮クローディアはこの程度だよ。姉さん、正解は?」
私は気にしていない。自分たちを貶めるのはもうやめなさい。
「全く…、困った妹だよ。正解はクロアの13年間を否定したくないから。」
「買い物で変身するとお姉ちゃんの否定になるの?何で?」
「分からないです。」
「クロア姉ちゃんを邪魔だと感じさせたくないとかなら分かるけれど、否定になるの?」
「んー、分からない!」
「私も考えたけれど、姉さんの考えを知るまで理解できなかった。」
思考把握してクロア自身も勉強しているのかな。困った妹だよ…。
「クロアが権力者や有名人として姿を見せていて、街を歩くときに変身するのであれば否定していると思わないよ。変身するという事は本来の姿では問題があるという事だけれど、今のクロアには問題が何一つない。それなのにクロアに変身を求めたら問題があると言っていることになる。美少女、魅力的、人を惹きつける、他に何があったとしてもクロアは望んでいない。生き抜くことだけを望んでいたクロアに変身を要求する。それは生き抜いたことが問題だと言っている。さて、妹たち。クロアが変身する理由は何かな?。」
「ない!」
クロアを否定したくない気持ちは一緒みたいだね。
「その通りだよ。権力者なら命を狙われるかもしれない。有名人なら支持者に囲まれるかもしれない。だけどクロアは全力で生き抜いてきた少女。生き抜いたら付属がついただけ。付属が問題だと言われてもクロアは生き抜いてきただけ。つまり生きていることの否定に繋がる。明日からは何があっても気絶か強制命令で対処しなさい。子供が暴力による血を見てはいけない。大人の女性も一緒だよ。どれだけ不愉快でも我慢しなさい。我慢したくないのであれば不愉快な思いをする前に対処しなさい。それも勉強よ。明日からが引越し先を決める買い出しになる。約束は絶対に守りなさい!」
「はい!」
約束は絶対に守ってもらう。3歳児でも勢いで人を殺すことは許さない。
クロアの説教と自宅謹慎だね。
「それでは作戦を伝えるよ。楽しんでほしいけれど、家族が最優先。買い出し中の能力使用は問題なし。先頭はディア。クロアに近づこうとする人と不愉快な店員は気絶させなさい。中心はクロアと私。左右にアディとローア。左右から近づいてくる人がいるかもしれない。強制命令で世界に謝罪させなさい。最後尾はロディ。倒れている人と謝罪している人を血が出ないように重傷にしなさい。作戦を忘れて楽しんでも叱らないから安心して。但し、クッキーのことまで忘れていたら私たちがクッキーのようになるだけだから。あとは私も探すけれど、料理の本を見かけたら購入して。質問はあるかな?」
「フィオナ姉ちゃんとお姉ちゃんは何をするの?」
ディアはまだまだ甘いね。クロアを頼らずに敵を倒すつもりでいるのにクロアを頼る癖がついているのかな。問題が起きなければクロアには結界を頼むだけで済む。あの結界を張るのはクロアしかできないからね。
「私は国の様子とディアたちが排除している人数を見ているよ。全て踏まえて引越し先に相応しいのか確認する。それと孤児院の子の動きも見ている。クロアの分身には買い物を楽しんでもらう。往復するから帰りの買い物は皆で楽しめるようにしたい。それは4人の力にかかっているからね。他に質問は?」
「気絶させる人はその場でいいの?」
移動中にできることは限られているみたいだね。
勉強してできるようになると思うけれど、今はそちらの方が都合がいい。
「いい質問だよ。邪魔にならないように道の端に寄せて。回復はしない。ディアは気絶させた相手の骨を折れる?」
「歩きながらだと無理だよ。ロディに任せる。」
「ボキボキです!」
どのくらいの人数を相手することになるのか分からない。4人だけで全てを行うと買い物を全く楽しめなくなる。楽しみながら勉強をして敵も倒さないとね。
「クロアには結界をお願いするよ。明日からの買い出し中は子供たちも殴ったら気絶させられるようにして。私が指揮するから大丈夫。」
「買い出しの話をしているとは思えないね。分かったよ。」
これで準備は整った。
「ディア、移動させるのが面倒ならブレッドたちに頼んでいいよ。」
「姉さん、隠す必要はないよ。既に頼んであると言えばいいから。」
「隠す必要ないよ。それでやる気が落ちたりしないからね。」
信じているのか二月ならば問題ないと考えているのかどちらかな。
「クロアにしては珍しいね。私の考えを知っているでしょ。あえて話さないの?」
「最低でも二月は大丈夫だよ。それに働いてくれている女性たちの負担も増えるからね。」
「フィオナ姉ちゃんは邸の8人も邪魔だと考えてるんだね。」
「徹底的です!」
「1年間は男性がいない方がいいよね。」
「邪魔というよりも外にいてほしいという事じゃないのかな。戻ってきてもいいけれど、1年間だけは外で暮らしてくれるといいよね。」
ローアの正解。1年間は邪魔。
記憶消去の後にゆっくりと異性とも会話していけるようにしていきたい。
「ローアの言う通りだよ。1年間は外で暮らしてほしいと思っているけれど、クロアの信者は動くつもりがない。自浄作用もあるみたいだから放置することにしたよ。もう質問はない?」
「何で全員連れていくの?」
精神を綺麗にしても質問するのはディアだけだね。アディとローアはクロアについて知らないことが多いからだと思うけれど、今日のロディは少し遠慮している気がする。少しすれば馴染むと思うから問題ないと思うけれどね。
「クロアは分身でも少しだけ解放できる?」
「本体みたいにはいかないけれど、できるよ。」
それなら計画を同時進行できる。
「クロアの分身は少しだけ解放して歩いてもらうよ。全員がクロアを知るべきなの。それを見て孤児院で働くのを辞めるのであればそれでいい。そうしないとクロアの友達が見つけられない。全てを同時に進めていくけれど、ゆっくりとだからね。」
「仲良くなってからクロア姉ちゃんと買い物に行って離れていくのは最悪だね。よく分かった。」
「それは大切だね。私はそこまで考えれなかった。作戦を頑張るよ。」
3歳児なのに頭が固い!
本当は自分たちで楽しみ方を見つけてほしかったけれど、仕方ない。
「あなた達は全て楽しみなさい。遊びでいいのよ。そして人に頼ることも覚えなさい。周りにいる子たちにあの男を気絶させてと頼めばいいの。4人は主力だけれど、明日から子供196人、全員でクロアを守る。協力することも大切だよ。1人で全て対処できたとしてもあえて頼みなさい。4人だけで何かしていると思わせては駄目。頼ることは迷惑ではない。一体感はとても大切なことよ。遊びながら勉強して敵を倒しなさい。」
「分かったよ。魔法以外はフィオナ姉ちゃんの方がお姉ちゃんより考えてるの?」
「ディア、気づくのが遅い。クリスも考えられるのにドラゴンで頭がいっぱい。手伝っているから教師は絶対にしてもらう。」
クリスは食事と睡眠が必要ないから喜んで研究し続けているだろうね。夢に手が届きそうだから一区切りつくまでは待っていた方がいい。
「質問はもうないね。買い出し中に質問してもいいよ。さて、お風呂に入って寝ましょう。クロアの顔に枕を当てる勇気があるのなら別だよ。」
「お姉ちゃんに先制攻撃するとか馬鹿だよ。」
「大馬鹿です!」
「純金の枕が飛んできそう。」
「枕を投げた腕が純金になりそうだよ。」
「本体の睡眠と食事は大切なの。休まないと分身の勉強効率が落ちるからね。睡眠を妨害して、その程度で済むと思っているの?関節がない金の骨にしてあげる。」
クロアは有言実行だから恐ろしい。
お風呂に入りスッキリしてから布団に入る。末っ子が寝る布団は特に言わなかったけれど、私とクロア以外は何となくで決めていた。
私の左右にはアディとローアが寝ているし、クロアの左右にはディアとロディが寝ている。
予想通りだね。
明日のことを考えながらぼんやりとしていたらアディが抱きついてきた。少しするとローアも抱きついてきた。寝心地が悪かったのかほとんど無意識だと思う。
クロアも2人に抱きつかれているのが見える。ロディは馴染めたみたいだね。
2人に抱きつかれるのを待っていたかのように強い眠気がきた。
これは言い訳できない。待っていた。眠れないから明日のことを考えていた。
4人の笑顔を見るのと2人に抱きつかれて眠るのはどちらが幸せなのかな。
んー、どちらも幸せでいいね。
クロアを笑顔にする計画は妹たちに任せよう。
家族みんなが笑顔になれたとき心の底から笑顔になれている気がする。
あの日から嫌な夢は見ていない…。
長女は頑張っています。




