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世界は子を愛す  作者: 大介
第1章 現実

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第51話 魔力

 生存を諦めてはいけない。それは家族が望む長女の姿ではない。それに弱くても抗うことができる。耐えることができる。末っ子には絶対に負けない!


 100年鍛えた話題逸らしを見せてあげる!


「クロア、クッキーのことは明日考えればいいからリビングで状況整理しよう。状況次第ではアディとローアにも勉強する機会を与えてあげるべきだと思うから。」

「姉さんの言う通りだね。今ならディアとロディからアディとローアを巻き込むことはない。家族会議だよ。全員リビングに移動しなさい。」

「はーい。」


 死地からの脱出に成功。だけど油断は死に繋がるから絶対に隙を見せない。


 リビングテーブルの椅子に私とクロアが隣同士で座り正面には3歳児が4人座っている。

 普段は私とアディとローアの3人とクロアとディアとロディの3人に分かれるけれど、今から話す内容はこの形で座るべきだと理解している。その証拠にディアとロディが椅子を動かして空きを作りアディとローアが椅子を持ち運び座っている。

 私とクロアの表情だけで会話の内容を把握している気がする。3歳児であるはずの4人の表情は真剣そのもので、どのような会話の内容でも問題ないと思えてしまう。


「家族会議を始めるよ。ディアとロディは6歳まで孤児院の子たちと遊ぶのを優先する。帰ってきてから勉強するのは自由だけれど、敵と交戦するのは禁止。不意に遭遇したらに私たちに念話して周りにいる子たちを守ることを優先する。引越し先でどのように動くのかは私とクロアが決める。内容によっては手伝ってもらうかもしれないけれど、遊びを優先できるように計画する。それとクロア本体も異性と接触するのを1年間は禁止する。結界内にいる男性でも分身を使用する。能力に監視されていたときに集められた男性を信用できない。ここまではいいね?」


 皆を見ると頷いているから問題ないと判断した。


 クロアも把握しているはずだけれど、コリーを追い出したいと考えている。

 コリーも同意して妹のケイシーを奴隷商人に売るつもりで家での扱いも酷いものだったにも関わらず孤児院では兄として何度も接触しようとしてくる。その行動によりケイシーは友人から避けられ新しい友達を作ることさえ難しくなりかけた。


 ケイシーから状況を聞き皆を集めてコリーから守るように仕向けた。クロアがコリーを説教から外したのも妹のケイシーには注意したと皆の前で訴えると予想したからに違いない。


 ケイシーはコリーをオードリーと仲良くさせることで追い出そうとしている気がする。

 コリーとオードリーが付き合っているとディアは勘違いしたみたいだけれど、彼女にその気はない。私も付き合っていると勘違いしているように発言したのでコリーはその気になっている。

 しかしあの日からオードリーはコリーの邸に行くのをやめた。結界内だから同僚として訪ねていただけにすぎない。

 孤児院の食堂で出す新作料理の味付けを確認してほしいと頼まれていたのだから。


 オードリーは残って働くつもりでいるけれど、妹のキャロルに自ら接触することはない。血の繋がった姉の存在が妹の生活環境を悪くする可能性があると理解している。


 コリーはこの生活から離れるのを恐れている。残って働く理由を必死に探している。その行動や様子は子供たちから報告を受けているので自滅するのも間近だと考えている。


「ディア、アディとローアに能力を与える条件はクロアが3歳から受け続けた拷問の記憶を見ることにしたいと思う。どれだけ見続けることがでれきれば合格にする?」

「私も拷問に耐えるために精神を歪められてた。それでも3日で精神が砕けてるから1回でいいよ。能力を遊びで使わないように釘を刺しておきたいのでしょ。2人なら記憶を見なくても理解できると思うけど一度は見てほしい。そして知るべきだと思う。3歳でもクローディアなら問題ない。お姉ちゃんが能力を与えてフィオナ姉ちゃんが記憶を見せて説明する。それだけで合格だよ。それとお姉ちゃんに聞きたいことがある。今すぐロディを解放できるよね?」

「できるよ。それでいいの?」


 ディアはクロアの経験した拷問は本来ならアディとローアも経験することになったと知っておくべきだと考えている。クローディアは強くなるために実験され続けてきた。それらは私から伝えろという事だね。

 クロアが能力を与えるのは当然で必要な能力だけを与えることができる。だけどロディの解放もクロアに頼むの?ディアとロディとクリスの力で解放すると思っていたから協力すら拒むと思っていた…。


「ロディを今すぐ解放して私の精神の隣に繋げてよ。」

「ディア、私は魔力器です。魔石でいいです。」


 主人格と同格にするとディアは言った。大胆な発言だと思ったけれど、クロアの表情は変わらない。ディアの発言は想定内なのかもしれない。


「関係ない!大きくなったらお姉ちゃんと同じ顔になるから私は今から青色の目にする。ロディは黄色の目にするといい。髪を白くする理由はないし今までクローディアだったのにやめるの?」

「私はクローディアです!やめません!」

「ロディは細胞の汚れを剥がして自己回復に渡した。ロディはいつもの場所まで自己回復に誘導された。ロディは自分の精神がどこにあるのか分からない。だけど魔力器に帰れば自然と戻れる。私が解放する前に少しだけ考える時間をあげる。10分でいいかな。」


 最初から仮想体になって手だけ汚れに触れるように魔法をかけたことになる。流石にそれはあり得ないと思う。それに今のロディは仮想体でも能力を自由に使うことができ魔力器には帰る場所がある。能力の言葉や行動を疑うだけで簡単に見つけられる…。


「ディア、ロディ、私は分かったよ。アディ、ローア、こちらに来て。クロアは魔獣に食べられる拷問をされ続けた。今からその記憶を1回だけ見せる。絶対に耐えて生き抜くと心に刻みなさい。」

「絶対に耐えるよ!」

「絶対に生き抜く!」


 決意したアディとローアが席から立って私の隣に歩いてきた。

 2人の頭に手を置く。


「今から記憶を流すよ。」

「んっ!」

「うっ!」


 記憶を見ても倒れないし叫ばない。これがクローディアの精神力なのね。


「クロアは20万回以上も死にかけているよ。あなた達はそれをどのように思う?」

「残酷なだけだよ。クロア姉ちゃんが外に出ない理由は拷問が関係しているの?」

「そうだよ、アディ。私は拷問に耐えるために作られた精神。日毎に洗脳が酷くなった。痛い、苦しい、辛いは喜びに変えられた。怖い、逃げたい、やめたいは楽しみに変えられた。洗脳を解いて精神を綺麗に作り直しても感情が分からない。それに拷問された回数が多すぎて体が痛みを覚えている。だから感情が大きく動くと拷問の痛みに襲われるの。今は家族と会話しながら少しずつ感情を覚えて拷問の痛みと繋がらないようにしているところだよ。3歳から10歳まで拷問され続けて、10歳から16歳まで男性に監視され続けた。その男性は私を食べるため常に監視し続けた。そのため精神を綺麗にしたら男性恐怖症になってしまった。知らない男性に触れられると気絶する。知らない男性の声が聞こえると震えて動けなくなる。男性恐怖症については1年後に記憶を消すことで克服していく予定だから家から出ないようにしているよ。」


 アディとローアが怒っている。自分たちから飛び込むつもりなの?

 ディアはそれを受け入れるの?


「3年後なら間に合わせる。ディア、ロディ、私たちも手伝う。クロア姉ちゃんの力を借りずに戦うのでしょ。ディアは精神を砕かれているしロディは魔獣に食べられ続けている。次は私かアディの精神が砕かれる予定だったはず。ディア、参戦してもいいよね?クロア姉ちゃん、私たちだけ体が弱いから強くしてよ。」


 説明することがほとんどないと思わせるような発言。クロアの経験を聞いてディアと今の自分を比較するだけで、そこまで理解してしまうのね。

 拷問の記憶を見た直後に参戦を希望する。戦うことから逃げない。


 やはり普通の3歳児ではない…。


「もちろん参戦していいよ。家族としてクローディアとして敵は殲滅しないとね。だけど孤児院の子たちとは寿命が違う。それにお姉ちゃんの許可が出ないと戦えない。敵は人形だから簡単に増える。早く潰したいけど私たちが弱いから許可が出ない。フィオナ姉ちゃんは同じ体だから心配しなくてもいいよ。」

「強くなれば3年後まで、弱ければ強くなるまで、敵が増えていくんだね。それに成長が遅いとクロア姉ちゃんが殲滅する気がする。んー、寿命が延びても家族が一緒なら別にいいね。」

「姉さんの予想通りにはならなかったね。私の隣に来て。アディとローアに能力をあげる。体は寝ているときにゆっくりと強くしていくから。孤児院で能力を使うのは禁止。4人が模擬戦したいのであれば私の前でしなさい。あなた達が人形と接戦する程度の力しかなければ許可しないから。敵を圧倒しなさい。能力をあげたよ。席に戻りなさい。参考までに私の力を見せてあげる。全員に魔力が見えるようにした。それでは始めるよ…。」


 突然5㎝程の立方体の魔力が机の中心に浮かんだ。間違いなく今までそこには何もなかった。それはディアとロディの顔を見れば一目瞭然。同じ魔力を扱っているから見えるはずなのに魔力が移動している様子がなかったから驚いている。


 クロアが小さな粒を立方体の魔力に飛ばした直後に魔力が消えた。


 それと同時に今までなかったはずのものが皆の前にある。コップには飲み物が入っている。氷まで浮かんでいる。1口飲んでみてクロアの言っていた特別をより理解することができた。何故ならお茶会のために用意した飲み物で家には残っていない。


「お茶会で出した飲み物をコップに入れて氷まで浮かせている。それと皆は勘違いしているみたいだけれど、私は恐怖で言葉を間違えたのよ。そのときは頭が麻痺していたの。本当は『クロア、一緒にクッキー作りを楽しもうよ』と言うつもりだった。何故なら5体1で模擬戦する予定だったからね。クロアが恐怖を教えてあげると言うから、恐怖でも人は死ぬと訴えていたのよ。」

「長女が次女の言葉に恐怖を感じたら駄目だよ。結界から熱を感じてクッキーのように温めてあげると言っただけなのに。姉さんは言わなかったけれど、模擬戦が何故か説教だと思われているから家族の勘違いを正そうと思ったの。アディ、ローア、私の言葉は怖いの?」

「怖い!」


 長女でも世界最強の説教は怖いよ!

 それにこの流れはまずいね。ディアとの模擬戦が決定してしまう。


 助けてあげるから空気を読みなさい…。


「クロア、明日はクッキー作りを楽しもう。4人には私が注意しておくよ。クロアの手加減は生きているだけでいいと考えているはずだと思って恐怖を感じたの。それは3歳児には余りにも酷だよ。アディとローアは痛みを知らないのだから徐々に訓練で知るべきもの。それなのに最初に知る痛みが姉に体を少しずつ炭にされていくとか酷すぎるから。罰として明日の買い出しは5人でクッキーの作り方と材料の保存方法を調べることにする。クロアも調理器具を作ったのに見ているだけではつまらないでしょ。今回はそれで水に流してよ。」

「別にいいけれど、4人とも姉さんを本当に手伝うの?」

「当然手伝うよ!」

「お手伝いです!」

「当たり前だよ!」

「任せてよ!」


 幼くてもクローディア。危機察知能力が高い。何が切っ掛けでクロアの矛先が自分に向くのか分からない。全員で協力するのか一番安全で確実だと分かっている。


 家族なのだからこれでいいのよ。


「そろそろ10分を過ぎたね。ディア、ロディの精神の場所は分かった?」

「分かったよ。ロディは閉じ込められてない。魔力器の魔力の中に精神がある。今は分身体の中にある。自分が外に出てるからどこにいるのか分からない。それにロディは細胞の汚れを剥がしたけど自己回復に渡してない。魔力を使って汚れを剥がせても触ることはできないから。クズ能力の言葉は全て忘れた方がいいね。ロディが3歳児なのも記憶だけでは成長しないから。生きてきた経験が足りない。私たちは3歳で生まれるから3歳。ロディ、今から魔力器ではないからクロアやフィオナさんではなく2人ともお姉ちゃんだよ。」

「はい…。分かりました。」


 クローディアは3歳で生み出されるけれど、0歳からの記憶があるからロディは0歳でないとおかしい。だけどクロアの記憶を見ているから3歳になっている。精神を能力に作られたクロアには3歳からの記憶しかない。それも残したくない記憶ばかり…。


 私の魔力器にいる子は0歳。

 精神が綺麗になったらどのように育てるかクロアと相談する必要がある。


「その通りだよ。それに自己回復が魔力の中にある精神に気づかないはずがない。今まで能力たちから聞いたことは全て忘れなさい。そして能力たちに監視されていたときの私の言葉も忘れなさい。ロディ、魔力器に戻って。ディアの隣に精神を移動させる。仮想体で動いてきた経験があるからすぐに作れるはずだよ。仮想体を作ることができたら分身体に戻りなさい。2人の分身体の髪は黒色で目の色を青色と黄色に変えるよ。」

「お姉ちゃん、戻りました。お姉ちゃんは魔法式の文字が読めます。そして魔法式を書くことも文字を消して書き直すこともできます。能力も改造しているのか作った魔法の保管場所として使っているだけです。それでなければ先程の現象も調理器具の機能も説明できません。ディア、お姉ちゃんは最低でも100人以上の分身を1日中勉強させ続けています。4人で情報共有して遊びながら同じことができるようになる必要があります。4人ともこれを見てください。お姉ちゃんが読み書きしている文字を見せます。」


 クロアとロディの会話に間がないのが凄い…。


 席を立ってロディの後ろに移動する。

 そしてクロアが作ってくれた魔力を見ることができる眼鏡をかけた。


 ロディの手には魔力があり文字を見えるようにしている。

 これが文字といえるものなの?


 何一つ読める文字はなく見たことがない記号しかない。記号というのもおかしな気がする…。

 記号なら意味が分からなくても何を伝えたいのか読み取ることがある程度はできるけれど、この文字からは何も伝わってこない。人が自由に扱うことができる文字だとは思えない。


 調理器具を簡単に作った。


 私は本当に馬鹿だよ…。クロアが解析しているのはこの文字の羅列だとしたら私に何が分かるの。この文字で何ができるのか全く分からない。調理器具に使われているとは思えない…。


 クロアが席を立って隣に来た。そしてロディの魔法式を見た。


「無駄が多い魔法式だね。コップに水を入れるためだけにそれだけの行数を使っていたら魔力消費が多い。ロディ、能力で作った魔法の魔法式を見えるようにしただけでしょ。絵がないのは評価できるけれど、文字の意味を理解していない証拠だね。」

「お姉ちゃんは強すぎます…。」


 魔力の中にいたロディの正直な気持ちが口から零れた。この文字を扱えることは強さにも繋がる。それはクロアとの会話で十二分に理解している。


「ロディ、それはどのようにすれば見えるの?」


 とても気になることだね。

 何をすれば能力の中にある魔法の魔法式を見ることができるの。


「ディアが今作った魔法はこれだね。魔法は魔力だから起動させずに手元まで持ってくるだけだよ。魔力の右側に絵が入っているでしょ。コップに水が入っているのを想像して能力を作った証拠。私が調べなさいと言った意味が今は分かるでしょ。同じ魔法を私が作るとこのようになる。」


 クロアは人の魔法を抜き取ることができるの?

 それとも自分が作った分身体だからできたの?

 

 訓練してきた知識が何も役に立たない…。

 お城での魔法の訓練は遊びだと言われてもその通りだとしか思えない。


 ディアが作ったとクロアが言った魔法には右側にコップに水が入っている絵が描いてある。絵といっても実物にしか見えない。左側には文字の羅列があるけれど、絵を実現させる魔法を魔法陣にするためのものだと思う。それだけしか考えられない…。

 それに対してクロアが作った魔法式には2行だけしか文字列がない。魔力の消費量が文字数や絵によって変わるのであれば違いが大きすぎる。魔法が起動するまでの時間にも差があると思う。


「この魔法式には魔法陣にする記述が入っていない。入れるとこのようになる。」


 クロアが見せている魔法式に新たな文字を書き加えていく。手は使っていない。魔力に文字を書くのだから魔力を使っているのだと思う。それでも1行追加されて終わった。これを魔法技術の差とは言えない気がする…。


 やはり格が違うよ。


「お姉ちゃん、この文字は読めるの?どのくらい勉強したの?」

「読めるけれど、読む意味はないよ。水とは書かれていないから。分身たちが勉強している時間を足すと50年以上になると思う。とにかく焦ると何も身につかないよ。勉強にも順序がある。まずは絵があってもいいから綺麗な魔法を作れるようになりなさい。そして1つずつ単語を覚えていきなさい。同じものを使う魔法なら同じ単語が必ずある。最後に解析するのを習慣にすること。解析結果や覚えた単語を単語帳にすることができれば魔法式を書くのが楽になる。4人が分身して勉強できるようになったときには私の分身を減らす。実験場の結界に使われている魔力以外は全て好きなように使っているから。空気を魔力に変えて使うのは緊急時を除いて禁止。生物は呼吸して生きているからね。さあ、妹たち。遊びながら勉強しなさい!」

「はい!」


 魔力を好きなように使っているという言葉に疑う余地がない。

 純然たる世界最強が家族にいて世界一の技術を見せてもらえた。そして勉強の順序まで教えてもらえた。贅沢すぎる環境にいるね。


「姉さん、アディとローアに説明してあげて。何故ディアとロディが分身体なのか。何故私がこの体を動かしているのか。家族に隠し事はなしでいいよ。アディとローアが知りたいだけ教えてあげて。」

「分かったよ。アディとローアは部屋に行くよ。」

「はーい。」


 部屋に入ると大きなベッドが消えていて中心には木製の丸机と丸椅子が3脚ある。奥には窓とカーテンがあり左端には木製の机が3台と背もたれのついた木製の椅子が3脚。それと3段の桐箪笥が1棹ある。全て以前はなかった物だからクロアが用意してくれたのだと分かる。


 次女は気が利きすぎる…。

 注意しないと当たり前だと思ってしまう。


「丸椅子に座って話すよ。ベッドがないのは今日からみんな一緒に寝ることになったから。寝るための部屋が別にある。私たちが寝るまで枕投げをしていてもいいけれど、クロアが寝ているときに枕投げをして顔に当てても私は知らないからね。さて、気になることは全て聞きなさい。」

「何で私たちは顔が同じなの?」


 必ずこの質問をされると思っていたけれど、最初に質問されるとは思わなかった。

 それと何故か話をするときは必ずアディから話す。アディとローアは双子に近いと考えていたけれど、何かあるのかもしれない。


「質問に答える前に教えてほしいことがある。何故いつもアディから話すの?」

「んー、拷問される順番なのかな。何故かディアより先に話す気にはなれないからね。」

「私もディアとアディより前に話す気にならないだけだよ。」


 殺し合いのときに必ず先手を取られるように生み出されている。これが癖になる前に早く精神を綺麗に作り直した方がいい。人形や能力にも後手になる可能性がある。


「リビングに戻るよ。ついてきなさい!」

「えー!?」


 本当に腐っている!

 爆弾を仕掛けられていたのに先に話せないようにするのは悪意を感じる。


「クロア、アディとローアの精神を綺麗に作り直して。無意識に近い洗脳をされているよ。体内に爆弾が仕掛けられていることを想定しているのか話す順番を決められているみたい。2人はディアより先に話せないしローアはアディより先に話す気が起きない。」

「普段は違和感を覚えないけれど、今日のような会話だと顕著になるね。アディ、ローア、精神を作り直すから感想を聞かせて。それでは作り直すよ…。今はどのように感じる?」

「んー、私がディアより先に話すのは。あれ…?止められる感じがないよ。ローアは?」

「本当だ。ディアに遠慮して後に話すようにしていると思っていたけれど、違うみたい。」


 この世界にはクズが多すぎる!


「クロア、ありがとう。あなた達もお礼を言いなさい!」

「ありがとう!」

「流石姉さんだね。問題を未然に防ぐことができると気持ちがいいよ。」


 クロアの力のお陰なのに世界の女王様は自覚がなさすぎる。本気を出されると今の私では消えそうなので待ってもらうしかないけれど。


「それでは部屋に行くわ。また後でね。」

「ええ。もう少しで結界内も綺麗になるから。」


 思考誘導している女性は自分で出て行くからコリーを今日中に対処するのかもしれない。


 部屋に戻り丸椅子に座る。

 アディとローアの雰囲気は何も変わっていないから本当に不愉快な洗脳だよ。


「それではアディの質問に答えるね。私以外はクローディアなのよ。この地では残酷な実験をしていたの。それはクローディア同士を殺し合わせて強いクローディアを生み出すこと。あなた達はディアと同じように拷問される予定だった。だけどクロアがその実験を終わらせて封印されていたあなた達を救出したの。それに人工的に生み出された存在だから親がいない。あなた達の精神が拷問に耐えられないのは計画通り。能力によって精神を保護することになっている。今回の計画で能力に作られた精神がクロア。クロアは拷問を耐え続けた後にディアに全て引き継いで消える予定だった。しかしクロアは能力の作った法則に抗い耐え抜いた。ディアを守るために残ったの。そして体がクロアを主人とした。あなた達の魔力器の中にもロディと同じ精神がいるけれど、話しかけられない限りは眠っている。外に出すつもりがないのであれば話しかけては駄目だよ。そして顔が一緒だから目の色を変えたの。それと封印を解除するときに体中に仕掛けられていた爆弾も取り除いた。会話の順番の意味が分かるでしょ。」

「酷いね。後手は爆発させられる可能性が高い。クロア姉ちゃんは先手を取られなかったの?」


 アディは分かっていても気になるみたいだね。


「クロアは殺し合う予定だったクローディアを何もさせずに殺した。相手は封印されて眠っていたからそのまま永眠させたよ。負けたクローディアは死ぬべきだって。殺し合いで勝ち続けていたとしても計画通りに動かされ続けたから負け。クロアの圧倒がどのようなものか分かったでしょ。」

「強すぎるよ…。計画通りに最後まで動いたら負けとかクロア姉ちゃんらしいね。強いクローディアどころか世界最強が生まれた。別格だよ!」


 クロアはクローディアだから強いわけではない。

 クロアが純粋に強いだけ!


「何でディアとロディは体を作らずに分身体なの?精神がないクローディアをクロア姉ちゃんなら作れると思うんだけれど。」


 ローアの言いたいことも分かるけれど、クロアとディアは私たちが思っているよりも深い繋がりで結ばれている。過ごした時間は関係ないだろうね。


「クロアと一緒に死にたいからだよ。クロアとディアの最初の約束が死ぬときは一緒。ディアはクロアから記憶を引き継いだときに、この世界に1人でいることが怖くなったのだと思う。今は克服しているのかもしれないけれど、最初の約束は絶対だよ。そしてロディはクロアの体内にある魔力器だから一緒に死ぬのが当然だと考えているのだと思う。」

「お姉ちゃんは何でそんなにクロア姉ちゃんのことが分かるの?」

「それもあるけれど、不愉快だよ。拷問してディアの精神を壊してからクロア姉ちゃんが拷問を耐え続けた。そして保護されていたディアに引き継いで消えろとかふざけているよ。」

 

 初めて話す順番が変わった気がする。癖になる前でよかった。


 それとクロアに詳しいのは能力がクズだから!

 クロアが望んだことではない。私の事情を知っているクロアが自分の記憶を私に入れようと思うはずがない。それにクローディア同士の殺し合いについてクロアの考えを入れるように魔法に頼んでいる記憶も入っていたから。能力たちは嘘と嫌がらせばかりで腐っていた。クロアは裏切られ続けていたのに、それにも耐えていた。

 ディアを絶対に守り抜くために。そして家族を守り抜くために。


 ボロボロの自分を大切にしてほしいと思うディアの気持ちが痛いほど分かる。


「クロアはクローディアの殺し合いにの計画を予想して情報共有するつもりだったけれど、能力がクロアの記憶を全て入れた。能力たちはクロアに嘘を吐き嫌がらせばかりをしていた。今の能力に精神はないから大丈夫だよ。」

「クロア姉ちゃんが拷問の記憶を家族に入れたいと思うはずがないからね。納得できる理由だよ。」

「それなら大丈夫だね。ところで何でクロア姉ちゃんは敵を残したの?」


 ディアとロディに緊張感を持たせ勉強させるため。

 何よりディアが本命を潰すつもりだから。


「研究員はほとんど潰している。だけど本命が残っているよ。クロアにお願いすれば殲滅してくれるけれど、ディアは絶対にしない。何故ならこの計画に激怒しているのがディアだから。それにクロアは怒れない。家族が無事ならそれだけでいいと思っている。あなた達はクロアが拷問されているのを見た直後に参戦を希望した。姉を拷問した敵が許せないのでしょ。それなら力をつけて潰しなさい。敵は魔石を頭に入れただけの人形。姉の敵としてクローディアの敵として殲滅しなさい。」

「絶対に殲滅する!」

「クロア姉ちゃんの代わりに私たちが潰す!」


 3歳なのに人工的に生み出されたことに対する不満や怒りがない。

 そして戦う恐怖よりもクロアを拷問された怒りの方が強いのはディアと同じだね。


 孤児院で他の子と遊んでいるときは幼い子にしか見えないのに本気になると違う。戦いの経験もないのに突き刺さるような鋭い雰囲気を出している。


「ディアとロディが戦う理由はよく分かる。あなた達は何故戦うことにしたの?」

「家族だから!」


 それ以上の戦う理由はないよ!


「家族だから助け合わないとね。まずは魔力だけで分身を作れるようになりなさい。私は練習している最中だけれど、それを仮想体というのよ。クロアは家族が傷つくことを許さない。つまり本体はクロアが守る。分身は必須技術だよ。手から魔力を出したいと思えば出せる。自分と全く同じ姿にする必要があるよ。それにディアとロディは既にできるからね。」

「自分の魔力は見えるんだね。全ての魔力が黄色いの?ロディの目を黄色にするのは魔力の色と一緒だからでしょ。」


 ディアは理由を言わなかったけれど、それしか理由がない。

 アディの予想通りだと思う。


「見たことがある魔力は黄色だけだよ。魔力には変更できない項目があるから個人を識別できる。アディとローアの魔力も違うから世界が管理しているのかもしれないね。」

「なるほどね。んー、完成度が低い気がする。」

「うーん、私も何か自分と違う気がする。お姉ちゃんからはどのように見える?」


 魔力が見える眼鏡をかける。

 クロアを助けられるようになりたい!


 2人とも仮想体の完成度が私よりも高い。私の2週間を既に超えているじゃない!

 4人は常に自分を見ているようなものだから比べるものでもないけれど…。


 それでも悔しい!


「クロアに見てもらいなさい。基礎だから慎重に確認した方がいいよ。」

「分かった!」


 子供は何でも覚えるのが早い。


 だけど家族を守るのに必要なのは強さだけではない。常識を教え過ごしやすい環境を維持していくと自分で決めた。4人に常識を教えてほしいとクロアに頼まれたけれど、初めから教えるつもりでいたよ。言われたことをするのではなく自分で考えて家族のためにできることをする。

 クロアに救われ家族の長女として受け入れられ今の日常が最高に楽しい私にできることは何でもするつもりでいる。この日常は壊させない!


◇◇◇

5分経過。


 それにしても戻ってこない。

 一発合格はないと思うけれど、何を言われているのか気になる。


 私より完成度が高かったから…。


 足音が聞こえるけれど、元気がない。

 ドアを開けて入ってきた2人は明らかに項垂れている。


「クロアの審査は厳しかったの?」

「おかしいよ…。お互いを見ながら仮想体を作るのは駄目だって。4人を目の色で判別していない人が家族にいた。それを聞いてディアとロディも驚いていたよ。」


 アディの言葉に衝撃を受けた…。


 4人のどこに違いがあるの?クロアの見る力が凄いのは知っているけれど、アディとローアと一緒に寝ていた私は2人の目の色が同じだったら違いが分かるのかな。まあ、無理だろうね…。


「アディ、違いは何と言われたの?」

「髪の長さや腕の太さと脚の太さが違う。私とローアは利き手と利き足が違うから腕と脚の太さに僅かな違いがあるのは不思議ではないけれど、利き目が違うとまで言われた。確認したら違ったよ。それに分身は自分で操作するからお互いを見て作ると操作できない可能性があると言われた。あとは魔力の濃さが均一ではないって。それと髪の毛まで意識して作っていないと言われた。だから髪の毛の魔力にムラがあるって。その流れてディアとロディも指摘されていたよ。足りない髪の毛の本数を言われたときには恐怖した。最後に完璧に作らなくてもいいけれど、真面目に作りなさいと言われたよ。」


 クロアは毛の長さの違いまで分かるの…。孤児院で遊ぶアディとローアを見ているから利き足が違うのも食事のときに使う手が違うから利き手が違うのも分かっていたけれど、クロアはどのようにして分かったの。

 それに利き目の違いが普段の行動にどのような影響があるのか分からない。それと髪の毛の本数の違いが分かるのはおかしいとしか言えない。足りない本数まで言われたら私も恐怖する。


「アディ、利き目の違いを教えてよ!」

「お姉ちゃん、私は世界一の審査を甘くみていたよ。この甘さは死に繋がるね…。」

「アディ、クロア姉ちゃんの審査が厳しいのは当然だよ。敵と戦う私たちへの優しさだと思う。それと利き目の調べ方は簡単だよ。私とお姉ちゃんが1mくらい離れているからこのままでいいね。親指と人差し指で輪を作って私の目のどちらかを中心にして片方ずつ目を閉じるだけだよ。私の目が中心に見えるの方が利き目で位置がずれた方が利き目の視力を補助しているみたい。体の仕組みを理解しながら仮想体を作りなさいと言われたよ。」


 ローアの左目を輪の中心に入れて左目を閉じた。ローアの目は綺麗に見えている。今度は右目を閉じた。ローアの目の位置が輪の中心から左にずれた…。手で隠れて半分程しか見えない。

 利き目が右目だという事と左目だけでは敵に攻撃が当てられない可能性がある。


 想像以上に差があって驚いた。


 利き目という言葉を知らない。クロアが利き手だから目は利き目にしたのだと思う。

 クロアは拷問中に片目だけ潰されることが多かったはずだから違いに気づいたのだと思うけれど、アディとローアの違いは何で分かったのかな。

 実験のためにアディとローアは利き手などが全て逆に生み出されていると分かった。クロアもそれで分かったわけではないと思うから後で聞いてみよう。


 クロアは自分の体と魔力を丁寧に把握することをとても大切にしている。妹たちにも教えたみたいだね。妹たちを通して私も教えられたよ。まだまだ甘いみたい…。

 僅かな違いが生死を分けると誰よりも知っているから絶対に妥協しない。教えてあげられることを全て教えてあげるつもりだね。


 優しくて厳しい次女だよ!

これでロディも安心して甘えることができます。楽しめることができます。

ディアの言葉でロディが引いていた線を消しました。

クロアはディアの言葉を待っていました。

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